知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2018年に新しく変わる知的財産制度
―第4次産業革命への対応と、中小・ベンチャー企業支援―
2018年02月14日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.113)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)
韓国特許庁は2018年1月11日に、「2018年に新しく変わる知的財産制度・支援施策」を発表しました。
この新しい知的財産制度・支援施策は、第4次産業革命関連分野における早期権利化への支援と、中小・ベンチャー企業における知的財産の競争力強化および国民向けサービスの改善などに重点を置いており、本年1月より実施済みもしくは今年上半期までに実施される予定となっています。
本稿では、この韓国特許庁の「2018年に新しく変わる知的財産制度・支援施策」の概要について、ご紹介します。
第4次産業革命関連分野の早期権利化支援
特許優先審査を拡大
第4次産業革命分野に対し、企業が特許を先取りする権利を支援するために7大産業分野(※)を特許出願優先審査の対象に含め、従来は16.4カ月であった審査期間を5.7カ月レベルに短くします。(2018年上期に施行)
※AI、IoT、3Dプリンティング、自動運転、ビッグデータ、クラウド、知能型ロボット
デザイン優先審査を拡大
第4次産業革命の技術を活用したデザイン出願を優先審査の対象に含め、従来は5カ月であった審査期間が2カ月レベルに短くします。(2018年1月施行)
中小・ベンチャー企業における知的財産の競争力強化
年金登録料の減免拡大
中小企業などに対する特許・実用・デザインの年金登録料の減免を3割から5割に増やし、9年目まで適用した減免期間も権利存続期間全体に拡大します。(2018年4月予定)
スタートアップ特許バウチャー
スタートアップが必要とする時期に希望するIPサービスを選択し、支援を受けられる特許バウチャー(500万~2000万ウォンの範囲)を提供します。(2018年2月施行)
特許成長リワード制度
中小企業および個人が特許庁に納付した年間出願料および最初の登録料総額が基準金額を超過した場合に、金額規模により一定の割合(10~50%まで差をつける)をインセンティブとして提供し、他の手数料を納付する時に利用できるようにします。(2018年4月予定)
国民向けサービスの改善
特許先行技術調査の結果を提供
専門人材が不足しているため、先行技術調査が困難な中小・ベンチャー企業の出願人を対象にし、先行技術調査の結果を審査前に提供するモデル事業を実施します。(2018年1月施行)
一部指定商品の取消手続きを簡素化
商標権の設定登録とともに一部指定商品を放棄する時、別途放棄書を提出せず、納付書にのみその趣旨を記載して提出するよう簡素化します。(2018年1月施行)
韓国では近年、大企業による特許出願件数が減少する一方で、第4次産業革命関連分野の担い手となり得る中小企業や個人の出願件数が増加傾向にあり、韓国特許庁では中小・ベンチャー企業の知的財産の更なる競争力強化のための知的財産制度・支援施策の拡充に力を入れています。
スタートアップ特許バウチャーや、特許成長リワード制度など、他国には見られないユニークな制度も導入予定となっており、これらが実際に中小・ベンチャー企業における知的財産の競争力強化につながるようであれば、日本の今後の知財施策の参考になると言えるでしょう。
今月の解説者
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)
98年特許庁入庁。情報処理分野の審査官・審判官、国際課課長補佐、審判課課長補佐、知的財産活用企画調整官等を経て、17年6月より現職
本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
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