知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)商標国際登録出願(マドプロ出願)を行う際の注意点と回避策

2020年02月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.137)
特許法人 Y.S. CHANG 崔ジョン娟(チェ・ジョンヨン) 弁理士

日本から韓国に商標出願するルートは、韓国特許庁への直接出願と、国際登録出願(マドプロ出願)とがあります。日本から韓国へのマドプロ出願件数は5年前と比較して約50%増加しています。商標出願全体の件数が20%強の伸びであることから、相対的に直接出願よりマドプロ出願の利用割合が増加していることになります。マドプロ出願は、低コスト、手続きの簡便性、登録後の管理の利便性などでメリットがあり、この増加傾向は今後も続くことでしょう。しかしマドプロ出願を行う際には、あまり知られていない注意点があり、その回避策と一緒にご紹介します。

分割出願ができない!

直接出願では、いくつかの指定商品についてのみ拒絶理由が存在し、その解消が難しいか、解消に時間がかかる場合には、分割出願が有用です。しかしマドプロ出願は韓国国内段階では制度上、分割出願ができず、拒絶理由がない商品まで含めて全て拒絶されるリスクを負うか、拒絶理由がある商品を削除する対応を取らざるを得ないという注意点があります。

マドプロ出願において、拒絶理由のない商品については安全に登録を確保しつつ、拒絶理由のある商品について、分割出願のメリットである「原出願日の維持」をしたい場合には、拒絶理由のある商品について出願人名義変更をする方法があります。そうすることで別出願として扱われ(元の国際登録番号の末尾に「A」が付されます)、新たに審査されます。ただし、この方法を用いる場合には、代わりに国際登録出願人になってくれて、商標登録後に権利を返してくれる信頼ある人が必要であることは言うまでもありません。

取りたい商品が十分に保護されるか?

韓国をはじめ各国特許庁に認められる商品の名称は、その国の特許庁ホームページなどで簡単に調べることができます。認められた商品の名称だけを用いて指定することにより、商品記載が不明であるという拒絶理由を容易に避けることができます。しかしながら、商品名が同じであっても、その名称でカバーされる範囲が国ごとに異なる場合があることには、注意が必要です。

たとえば、日本で第21 類の「化粧用具」で商標登録し、これを基礎に「cosmetic and toilet utensils」を指定して国際登録すれば、「soap holders and boxes (せっけん入れ)」「tooth brushes、non-electric (歯ブラシ)」「shaving brushes(ひげそり用ブラシ)」も当然保護されるものと考えられるでしょう。しかし、これらの商品は、韓国では「化粧用具」に分類されていないため、保護を受けることができません。

したがって、マドプロ出願の基礎となる日本出願を行う時点で、日本のプラクティスだけでなく、外国のプラクティスも念頭に置いて商品を指定することがベストですが、現実的には簡単ではありません。上記の例で実際に保護を受けたい商品が「歯ブラシ」である ならば、むしろ韓国に新たに直接出願したほうがよいでしょう。

今月の解説者

特許法人 Y.S. CHANG 崔ジョン娟(チェ・ジョンヨン) 弁理士
延世大学国語国文科卒(法学/日本学/英語英文学学士学位を保有)、日本商標協会メンバー。専門は商標。
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 浜岸広明)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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