知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)WIPOグローバルアワードを韓国スタートアップ企業の「コードグリム」が受賞!

2025年08月13日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.203)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

2025年7月14日に韓国特許庁は、「韓国女性・青年スタートアップ企業である『コードグリム』が2025年のWIPOグローバルアワードを受賞した」と発表しました。今年度の受賞者は10社で、韓国関係者の授賞は昨年に続いて2年連続となりました。韓国特許庁の報道とWIPOの広報内容を踏まえて解説を行います。

1.WIPO Global Awards

世界知的所有権機関(WIPO)は、スイスのジュネーブにある国際連合傘下の専門機関の一つで、知的財産分野を総括する国際機関であり、毎年本賞を通じて、受賞者の貢献をたたえています。本年度の当該賞は、95カ国に及ぶ過去最多の780件の応募の中から選ばれた10件となっており、知的財産を活用して課題解決に挑んだ応募案件の中から、最も評価された受賞者となります。WIPOグローバルアワードは、特に「知的財産を活用した戦略による事業成長の達成」、「国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献するイノベーションの開発」などに焦点を当て、知的財産に裏打ちされ、革新と創造を卓越した方法で活用し、ビジネス目標の達成と社会の改善に貢献した中小企業、新興企業、および大学のスピンアウト企業等を表彰しています。なお、WIPOグローバルアワード受賞企業には、知的財産を活用したイノベーションと創造を商業化し、新たな資金源につなげることを目的として、受賞企業をさらに後押しするための戦略的支援が提供されます。具体的には、資金調達や商業提携の機会など、知的財産を商業化するための戦略について、1対1の個別指導や、国際的なプロモーションとさまざまなビジネスシーンでの知名度向上の支援、そして、ジュネーブで開催される栄誉ある授賞式およびネットワーキング・イベントへの出席(旅費負担)、さらには、WIPOネットワークおよび知的財産管理アドバイザリーのためのリソースへのアクセス権付与等が挙げられます。

2.受賞者

今年度の受賞者とその概要は以下のとおりとなります。より詳細は、「WIPO Global Awards 2025」のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます をご参照ください。

Startup
  • CodeGream
    3D product showcase — 韓国 — Creative Industries
  • 「Glovatrix」
    Sign-to-speech gloves — インド — Health
  • Smart Drain - Urban Inventors
    Anti-flood drain system — スリランカ —Environment
  • Planetary
    Mycoprotein fermentation tech — スイス — Agrifood
  • 「Quinas Technologyt
    Next-gen memory chips — イギリス — ICT
SME
  • Hummingbird Bioscience
    Antibody therapeutics — シンガポール — Health
  • Carbfix」
    CO₂mineral storage — アイスランド — Environment
  • PhageLab
    Antibiotic alternatives — チリ — Agrifood
  • ClicknClear
    Music rights licensing — イギリス — Creative Industries
  • Unitree Robotics」
    Quadruped robotics — 中国 — ICT

3.コードグリム

「コードグリム」は2022年に設立され、女性最高経営責任者(CEO)のユン・ジュウォン代表が率いています。同社は3Dウェブサイト制作に関する特許(特許番号10-2556998)を取得し、プログラミングの知識がない人でも3Dコンテンツを用いてウェブページを簡単につくることができるプラットフォームを開発しました。教育、文化、観光、ショッピングなどさまざまな産業に採用可能な技術として注目を集めています。WIPO国際審査委員は「コードグリムは、女性・青年起業家が知財を活用して実用的なプラットフォームを生み出した模範的な事例だ」とし、「今年受賞した企業10社のうち3社が35歳以下の女性が立ち上げた企業である点も印象的だ」と述べたということです。

まとめ

2025年7月1日の韓国特許庁の報道では、「平均業歴9年以上の女性ベンチャー企業は約5,000社があり、製造業、ソフトウエア情報処理業、研究開発サービス業など高付加価値を生む業種が76%に達し、平均12名を採用して良質な雇用を生み出す経済主体として地域経済の活性化や産業高度化に寄与している」と報告されています。知的財産を活用して、女性・青年起業家がビジネスを推進する環境構築が今後も進むものと期待されます。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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