知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2021年に新しく変わる韓国の知的財産制度

2021年02月10日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.149)
ジェトロ・ソウル
副所長 土谷 慎吾(特許庁出向者)

2021年の年頭に当たり、韓国特許庁は、アイデア奪取に対する懲罰的損害賠償制度の施行、中小企業の特許調査・分析費用に対する税額控除、モバイル特許出願システムの導入など、「2021年に新しく変わる知的財産制度」を発表しました。
今年1年間の韓国知財の動きを占う内容ですので、本稿では、この概要について、ご紹介します。

1. 知的財産の保護強化

懲罰的損害賠償制度の拡大
2019年7月9日施行の不正競争防止法改正で、故意の営業秘密の侵害行為については懲罰的損害賠償制度が導入されていましたが、これに加えて、故意に他人のアイデアを奪取した者は、損害として認められた金額の最大3倍まで賠償しなければならなくなります(2021年4月)。
生産能力を超える部分への損害賠償の拡大
既に特許法においては、2020年12月10日に施行済みですが、商標法、デザイン保護法、不正競争防止法においても損害賠償額の算定方法が見直され、権利者の生産能力を超えた販売量に対しても損害賠償を受けることができるようになります(2021年6月)。
不正競争行為に違反した事実の公表
不正競争行為に対する是正勧告に従わない場合、不正競争行為に違反した事実を官報などに公表することができるようになります(2021年4月)。
紛争調停と行政調査の重複防止
産業財産権紛争調停と不正競争行為に対する行政調査が同時に行われれば、行政調査を中止して紛争調停の結果に基づいた再調査の実施可否が決定されるようになります(2021年4月)。
デジタルフォレンジックの支援
営業秘密の流出が懸念される中小企業は、民・刑事訴訟に必要な初期の流出証拠を確保するために、デジタルフォレンジックの支援を受けることができるようになります(2021年1月)。

2. 中小・中堅企業の支援

特許調査・分析費用の税額控除
中小企業が「産業財産権診断機関」に支出した特許調査・分析費用を、R&D税額控除の対象に含められるようになります(2021年1月分から適用)。
中小企業との共同研究による手数料減免
中小企業と共同研究をすると、手数料を減免する対象を全ての主体に拡大し、出願料・審査請求料だけでなく、設定登録料も50%減免されるようになります(2021年3月)。
紛争情報のモニタリングを拡大、紛争対応支援
素材・部品・設備分野における輸出企業の特許紛争対応支援を強化するため、紛争情報のモニタリングを拡大し、紛争リスクの事前診断およびアドバイス、紛争対応戦略の確立を支援します(2021年1月)。
グローバルIPスター企業の支援拡大
グローバルIPスター企業(地方の有望な中小輸出企業)の海外出願審査対応と登録料の支援対象を特許から商標・デザインにも拡大します(2021年1月)。

3. 出願人の利便性向上

スマートフォンを用いた手続き
2020年3月からの商標出願に続き、特許・実用新案・デザイン権もスマートフォンを活用して出願できるようになります。また、モバイルで手数料の納付、通知書の受信など、多くの手続きができるようになります(2020年12月)。
商標関連の利便性向上
新しいタイプの商標の細部審査基準を確立し(2021年1月)、立体・位置商標の図面の提出件数を緩和します(2021年2月)。
一括審査の利便性向上
類似な製品で構成された製品群やデジタルサービス関連も一括審査の対象となり、スタートアップも一括審査を利用できるようになります(2020年12月)。また、一括審査を申請した出願が拒絶決定された場合は、それに対する不服審判を優先審判対象に追加して早期に再検討できるようにします(2021年3月)。
その他の利便性向上
論文や研究ノートなどをそのまま出願することができる臨時明細書制度の活用を促進するために、出願料を引き下げます(2021年3月)。
デザイン一部審査制度の対象になる物品類を食品・雑貨類・包装容器・宝石・装身具類などに拡大適用します(2020年12月)。
シニア退職者を対象にした特許基盤技術創業の支援を行います(2021年1月)。
特許審判事件における映像口頭審理および技術説明会を拡大します(2021年1月)。

韓国特許庁による発表は、既に実施が決定しているものに限られています。上記の他、2021年には、実用新案法の大幅改正法案、韓国型ディスカバリー制度、デザイン保護法の保護対象拡大など、大きな改正法案が審議される見込みであり、今年も韓国知財から目が離せません。

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 土谷 慎吾、2001年日本国特許庁入庁。通信・半導体分野の審査官・審判官、情報技術統括室室長補佐、審判課課長補佐、主任上席審査官等を経て、2020年7月から現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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