知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国特許庁が「半導体審査推進団」を新設

2023年05月10日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.176)
ジェトロ・ソウル 副所長 土谷 慎吾(特許庁出向者)

2023年4月11日、韓国特許庁は半導体技術だけを専門に審査する「半導体審査推進団」を設置しました。どのような組織で、どのような狙いがあるのでしょうか。

1.「半導体審査推進団」の設置とその概要

2023年4月11日、韓国特許庁は、特許審査を担当する6つ目の局相当の組織として「半導体審査推進団」(以下、「推進団」)を設置しました。下図左側のように、これまで半導体分野の特許審査は、その技術分野により電気通信審査局の3つの課、化学生命審査局、機械金属審査局でそれぞれ審査されてきましたが、下図右側のように、既存の3つの課を移管するとともに3つのチームを新設して、合計6つの課・チームからなる推進団が設置されました。
素材、製造装置、設計、前工程、後工程と課・チームの名称が半導体の上流から下流までの製造工程を示したものとなっており、分かりやすいのが特徴です。
関連する産業通商資源部令によると、半導体審査推進団は2024年12月31日までの時限組織とされており、その後については運用状況を見て決定されるものと思われます。

2.推進団によって何が変わる?

韓国特許庁は、プレスリリースで推進団の意味を以下のように説明しています。
「特許庁は、今年3月、技術流出の防止および迅速・正確な特許審査の提供のために民間の半導体専門家30人を審査官として採用した経緯がある。しかし、従来の半導体審査官が電気(素子工程)、化学(素材)、機械(装置)局に分散しており、新規人材が投入されても審査能力を一つに結集させてシナジーを創り出すのが難しかった。また、3ナノ以下などの先端工程技術が次々と登場したにもかかわらず、半導体審査専門組織がなく、韓国企業のコア技術を体系的に保護するのに限界があった。そのため、特許庁は、従来の審査官と新規人材を一か所に集中させ、半導体優先審査の拡大による審査処理期間の短縮および3人協議審査の成果を高める方向に半導体専担審査組織の新設案を行政安全部と持続的に協議し、『半導体等国家コア戦略技術の保護・育成』のような尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の重点国政課題を積極的に後押しする趣旨から推進団の新設に至った」
多分に国内向けのメッセージとなっていますが、韓国に特許出願をする外国企業もこの恩恵にあずかれることになりますので、今後の半導体分野の特許審査動向に注目したいと思います。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 土谷 慎吾 (特許庁出向者)
2001年日本国特許庁入庁。通信・半導体分野の審査官・審判官、情報技術統括室室長補佐、審判課課長補佐、主任上席審査官等を経て、2020年7月から現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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