知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)便乗映画の便乗タイトル-本や映画のタイトルはどうやって保護する?-

2015年01月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.76)
Y.S. CHANG 特許法律事務所 朴鎭佑 弁護士・弁理士

大ヒットとなった映画やドラマ、本などのタイトルなどを真似ることで、大ヒット作品と関連があるかのような印象を与える模倣作品を目にすることがあります。このような場合、オリジナル作品の権利はどのように保護されるのでしょうか?最近の事例を挙げつつ解説します。

左:Kung Fu Panda、右:Kung Hu Panda

米ドリームワークス社(以下、ド社)のアニメーションシリーズ映画『カンフーパンダ』(原題: Kung Fu Panda)はご記憶に新しいことと思います。韓国でも数百万人の観客を動員したヒット作ですが、2013年7月、『カンフーパンダ(Kung Hu Panda)』というタイトルの中国アニメーション映画が韓国で封切りされました。内容に類似性はなく、特にタイトルの類似性が問題になりましたが、その違いがわかりますか?

表記上はFuかHuかの違いですが、ハングルの文法上Fuは「プ」と発音し、Huは「フ」と発音するので、称呼上の違いもあります。後者の原題は中国では『The Adventures of Jinbao』ですから少なくともタイトルにおいて中国側がオリジナルに便乗しようとしたわけでなく、韓国の輸入・配給業者が国内タイトルを上述の通り「Kung HuPanda」に変えて上映していたのです。

さて、道徳的に言えばド社の権利利益が保護されるべきであろうことは言うまでもないでしょう。ただこのような場合、原著作者はいったいどのような法により、どのような法律構成で保護され得るが問題になります。紙面の関係でかいつまんでいうと、主に著作権法、商標法、不正競争防止法(以下、不競法)などの適用が検討されます。

まず著作権法の適用を検討します。韓国の大法院は「作家やマンガ家が考案した題号はそれだけでは思想または感情の表現とは言いがたくその題号は著作物として保護することができない」と判示しており、著作権法で本件の保護は厳しいと思料されます。続いて商標法による保護ですが、保護する商標は「商品」の出所を表す「識別表示」のため、定期刊行物やシリーズ物の題号として使用するなど、取引界で題号が出版社、映画会社を表示する識別表示として認識され得る場合には商標法で保護され得ます。したがって本オリジナル作品の場合でも「シリーズ物」として認定されればド社の識別表示として商標法の保護を受けることができると考えられています。

この商標法による保護はド社の当該商標が出願・登録されていることが前提ですが、仮に出願・登録されていなければどのような法律構成を検討できるでしょうか?それが3つ目、不競法による保護です。同法は「国内に広く認識された他人の氏名、商号、商標、商品の容器、包装その他、他人の商品であることを表示した表示と同一もしくは類似したものを使用し、またはこのような物を使用した商品を販売、頒布もしくは輸入、輸出して他人の商品と混同を引き起こす行為」を禁止しています。したがって本オリジナル作品のように韓国内に広く認識されている場合には不競法によっても保護されることになります。実際に不競法が適用された例として、韓国内では韓流ドラマ『宮』の制作会社が『宮s』の制作会社を相手取った題号使用および制作禁止仮処分申請を裁判所が認容した事例などもあります。

便乗映画やパロディー映画なら原著作者に対するオマージュやリスペクトが含まれているものもあるので一律に法的に潰してしまうのは個人的にはどうかとも思いますが、本件の場合、タイトルを変えた韓国側の輸入・配給業者がやり過ぎたことは確かなようです。

タイトルや題号の保護は商標として登録することが最も安全な保護策と言えますが、万全ではありません。また不競法による保護も国内に広く知られているという周知性の立証は侵害を主張する側にありこれも大きなハードルとなります。結局のところ、万能薬というものは存在せず、それぞれの事案によって法律構成をしっかり練って相手を追い詰める必要がありますので、具体的な問題が生じた場合はご贔屓の弁理士・弁護士にご相談ください。

今回の解説者

Y.S. CHANG 特許法律事務所 朴鎭佑 弁護士・弁理士、嶺南大学ロースクール卒(法学専門修士)、慶熙大学ロースクール博士課程在学中(知的著作権)。専門は著作権・商標権。韓国造形デザイン協会諮問弁護士、蔚山大学繊維デザイン学科諮問弁護士。
(監修:日本貿易振興機構=ジェトロ=ソウル事務所副所長 笹野秀生)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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