知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2014年の商標・デザイン法改正動向

2014年04月09日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.67)
特許業務法人ネイト鄭 元基(ジョン・ウォンギ)(韓国弁理士/日本弁理士)

朴槿恵大統領の創造経済実現に向けた動きの中で、韓国では、特許法など知的財産権法の見直しが適宜迅速に行われ、ほぼ毎年のように法律改正が行われているところである。今般、韓国特許庁は、商標ブローカーの根絶、ブランド力のある商標の登録拡大など、企業の成長を促す価値ある商標・デザイン権の創出を支援するとともに、公正な取引秩序の確立に寄与する審査の定着をめざし、法改正、審査基準の改定を発表している。そこで、それらの中から上述のような観点から主な事項をご紹介したい。

商標ブローカーなどの根絶

商標ブローカーとは、他人の商標を無断で先に登録し、本来の使用者に使用料や損害賠償を要求し不当利益を得る者たちのことであり、韓国では、残念ながらその事例が散見されます。そして、この被害者は、零細企業や有名芸能人だけでなく、有名海外企業にまで及び、真の使用者のビジネスに支障を来たすだけでなく、消費者の混乱、ひいては国家イメージにまで悪影響を及ぼしているため、これを根絶すべく、次のような改正を行われることとなりました。

模倣商標などに対する審査強化

これまで、国内外の著名な先使用商標に対する模倣商標、人気芸能人名、放送番組名等に対する審査官の実態調査は、真の使用者等による異議申立や情報提供を受けて行っていましたが、今後は、インターネット検索などを活用し積極的に行うとともに、商標法第7条第1項第6,11,12号によりきちんと拒絶し、このような不当な登録を遮断します。

商標の外観の類似性に対する審査強化

ネットショッピングの普及などにより、消費者が商標の外観を中心に出所を判断し購入するようになっており、商標の外観を模倣する行為も増加しているため、審査において、外観が似ているか否かについての判断を強化します。

商標の使用意思確認を強化

商標の使用対象として、必要以上に多数の商品やサービス業を指定している場合や、個人出願人が人工衛星や半導体など実施が難しい商品等を指定している場合、模倣が疑われる商品等を指定している場合などについて、その使用計画書を精査し、単なる先占目的の出願を拒絶します。

海外企業商標の不正登録禁止強化

海外企業の韓国代理店など現地子会社であっても、親会社である海外企業の同意がない商標出願を拒絶します。

ブランド力のある商標の登録拡大

これまで、韓国では、例えば「K2」など簡単な商標について登録を認めていませんでした。そのため、使用によりブランド力を獲得した商標であっても保護を受けることができず、模倣品対策などがきわめて困難となる事例が発生していました。そこで、このように使用により一般消費者に広く認知されるようになった商標について、審査官が積極的に調査を行い、これを登録することで、その保護強化を行います。

デザインの保護範囲拡大

PCやスマートフォン(多機能携帯電話)、デジタルカメラなど、様々な機器の横展開が重要となっている昨今、企業イメージ確立のため、それらの機器における画像デザインを統一する動きが活発となっております。しかし、過去、このような画像デザインは、その機器ごとに別々に出願する必要があり、手続が煩雑となっておりました。そこで、このような画像デザインに関し、実際に表示されている「ディスプレーパネル」を商品として保護するようにすることにより、当該画像デザインが実際に使われている商品がスマートフォンであろうと、他の家電製品等であろうと、一括して保護を受けることが可能となります。韓国は、2011年基準において商標出願世界5位、デザインに至っては、日本の2倍近くの出願を有する世界2位の出願大国となっています。また、既に音やにおいといった商標を保護したり、ニース協定による国際デザイン制度を導入したりするなど、法律による保護水準や手続きの緩和の面からも日本に先んじております。一方で、商標ブローカーの問題や、模倣商標など不正目的による出願が少なくなく、また、上述の「K2」の例にみられるように、韓国特許庁の審査も必要以上に厳格であり、本来であれば受けられるはずの保護が受けられないといった課題も有してきました。
しかし、今般の改正、ないし発表されている改正予定の内容は、これらの課題に対し一定の対策を講じるものとして、実務的にも期待が持てるものとなっておりますので、今後も注視していきたいと思います。

今月の解説者

特許業務法人ネイト 鄭 元基(ジョン・ウォンギ)(韓国弁理士/日本弁理士)
2009年東京理科大学院MIP修了。92年弁理士試験合格。97年より現特許業務法人開設。2012年日本弁理士試験合格。
(監修:ジェトロソウル事務所 副所長 岩谷一臣)

どうなる韓国 新・知財最前線は今

本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195