知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)商標権等は無いのですが、模倣品に対抗できますか

2015年08月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.83)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 笹野秀生(特許庁出向者)

自社製品が模倣品被害に遭った時、商標権等の産業財産権を有しているのであれば、相手との交渉や訴訟で有利な立場に立つことができますが、そのような権利が無い時はどうすれば良いでしょうか?本稿では、不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下「不競法」)に基づく対応手段についてご紹介します。

識別力のある商品の特徴を模倣された場合

自社の商品を特徴付けるロゴやパッケージ等が韓国国内で識別力を獲得している場合、不競法による保護を受けることができます(不競法2条1項イ目)。
識別力を獲得するとは、その商品を一定期間使用した結果、例えばその商品パッケージ等を見るだけで、多くの消費者が自社の会社の商品であると認識し得る周知の状態になっていることをいいます。被害に遭った時には、まず自社商品の特徴が識別力を有しているか、他社商品が自社商品との混同を生じさせるものかを点検することが必要です。
以下は、裁判でオリジナル商品(左側)の識別力が認められ、類似品(右側)はオリジナルと混同を生じさせるとして、不正競争行為と認定された事例です。

オリジナル商品(左側)、類似品(右側)

※事例については金&張法律事務所提供(以下同様)

商品の形態を模倣(デッドコピー)された場合

商品の特徴が識別力を獲得しているといえない場合でも、自社商品の形態と実質的に同一な形態に模倣された商品に対しては、不競法で対抗できる可能性があります(不競法2条1項二目)。
ただし、他社に「模倣の意思」があることの立証が必要であり、保護期間が試作品製作等により商品の形態が備えられた日から3年と短く、商品が「通常的に持つ形態」は対象外といった制限があります。したがって、これらの点を点検することが必要です。
以下は、裁判でオリジナル商品(左側)の形態は商品(扇風機)が「通常的に持つ形態」ではないとされ、類似品(右側)がデッドコピーと認定された例です。

オリジナル商品(左側)、類似品(右側)

その他自社の成果を不正に使用された場合

上記のような不競法2条1項で明示的に定められた類型に当てはまらない行為であっても、「他人の相当な投資又は労力により作成された成果等を公正な商取引慣行又は競争秩序に反する方法で自身の営業のために無断で使用することにより、他人の経済的利益を侵害する行為」(不競法2条1項ヌ目、2014年1月31日より施行)については不競法による保護を受けられます。
この条項(「不正競争行為の一般条項」という)については次の特徴があり、今まで泣き寝入りせざるを得なかった模倣品被害にも適用できる可能性がありますので、被害に遭った際には本条項の適用可能性を検討することが有用です。

  • 使用による識別力不要
  • 成果(物)認定の柔軟性
  • 混同可能性不要
  • 権利行使期限の明文制限なし

以下は、ソフトクリーム店舗の営業形態を模倣した事例に関し、外部看板や商品の陳列状態等の複数の観点で類似が認められた結果、不正競争行為が認定された例です(左がオリジナル店舗、右が後発店舗)。現在控訴中ではありますが、不正競争行為の一般条項が適用された初めての判決であり、看板やメニューなどの店舗の装飾(いわゆる「トレードドレス」)が保護すべき対象と判断されたことでも、注目すべき判決といえます。

オリジナル店舗(左側)、後発店舗(右側)

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 笹野秀生(特許庁出向者)
95年特許庁入庁。99年に審査官昇任後、情報システム室、審判部審判官、(財)工業所有権協力センター研究員、調整課品質監理室長を経て、2014 年6 月より現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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