知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)医療のサムスン・車のLG ?-サムスン電子・LG電子の特許出願動向-

2015年05月09日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.80)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 笹野 秀生(特許庁出向者)

韓国を代表する企業であるサムスン電子、LG電子は現在どのような分野に注力し、どのような分野を淘汰しようとしているのでしょうか?本稿では、技術・製品開発の動向に密接に関連する特許出願状況に着目し、近年の傾向を紹介します。

全体的な傾向

以下のグラフで見られるように、2013 年までの5年間で、サムスン電子が全体の件数としてはほぼ横ばいであるのに対し、LG電子は近年出願が減少する傾向が見られます(2013 年は確定値でなく推定値)。

サムスン電子・LG電子の韓国特許出願推移

分野別傾向

LG電子が出願を減らしている原因は、情報/移動通信や家電機器といった主力製品に関する特許出願が減っていることが挙げられ、直近では増加傾向のサムスン電子とは傾向が異なります。なお、ディスプレイの出願が減っているのは、両社ともグループ会社に特許出願や出願管理を移管しているためと考えられます。

サムスン電子の分野別韓国特許出願推移LG電子の分野別韓国特許出願推移

また、その他の件数が増えていることからわかるように、両社ともに共通する特徴として、新しい又は小規模な事業分野の開発を比較的盛んに行っていることが推測されます。続いては、この「その他」に含まれる特許出願の技術分野の内訳を見てみましょう。

医療機器分野の伸びが目立つサムスン電子

サムスン電子では、応用ソフトと医療機器の分野で出願増が目立ちます。応用ソフトはモバイル機器やウェブ技術に関するものなど多様な出願を含んでおり、医療機器は超音波診断装置、X 線診断装置、バイオセンサーなどの出願を含んでいます。特に、サムスン電子が2010 年次世代技術に選定した5大技術(太陽電池、二次電池、医療機器、LED、バイオ製薬)にも含まれる医療機器分野については、ここ5年間の出願の伸びが著しく、同社が同分野への投資を拡大している傾向と符合しています。また、医療の特許分類(A61B)に加えて、デジタルデータ処理(G06F)やイメージ処理(G06T)などの分類が付与された出願が多く、同分野においても得意のIT技術を活用していることが伺えます。

一方で、前記5大技術のうち、太陽電池やLEDに関しては、グループ会社も含めて出願をかなり減らしています。バイオ製薬は少ないながら出願数を増加させており、二次電池はサムスンSDIから多く出願されています。

サムスン電子のその他分野の出願内訳(合計件数上位5項目)

電気自動車の出願が伸びているLG電子

LG電子ではサムスン電子と異なり、太陽電池の出願が一定数なされているほか、自動車分野の伸びが目立ちます。自動車分野では電気自動車関係の出願が大半を占めています。

LG電子のその他分野の出願内訳(合計件数上位5項目)

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 笹野 秀生(特許庁出向者)95 年特許庁入庁。99 年に審査官昇任後、情報システム室、審判部審判官、(財)工業所有権協力センター研究員、調整課品質監理室長を経て、2014 年6 月より現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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