知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)オンライン模倣品市場の最近の動向

2022年12月14日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.171)
株式会社FAIKERZ 代表 李宗宰 米国ニューヨーク州弁護士

世界中のオンライン市場が国境を越えて爆発的に成長するにつれ、オンライン上での模倣品による被害も日増しに深刻になっている状況です。模倣品といえば、普通はルイ・ヴィトン、エルメス、ロレックスなど世界的な高級ブランドを思い浮かべますが、実際の模倣品問題は高級ブランドに限られたわけではありません。売上が一定額を超え、市場である程度認知度を確保した中小企業も、模倣品により莫大な被害を受けているのが実情です。
そこで本稿では、これまで当社が独自に開発した人工知能ソリューションに基づいて、オンライン上の模倣品探知・除去活動を通じて得た経験をもとに、オンライン模倣品市場の新たなトレンドについてお話しします。

1.ヒットアンドラン

オンラインプラットフォームの多くは、正規品を模倣品から保護するためにプラットフォーム内の申告機能を提供しています。しかし、この機能は業務時間外や週末には作動しないという点が問題です。模倣品販売業者らはこの隙を利用して金曜日の夜から月曜日の明け方までの間のみ大量に模倣品を販売し、月曜日の業務時間前に販売リンクを自発的に下ろしてしまいます。そして、これらの行動は毎週繰り返されます。このような知能的な模倣品販売に対応するためには、プラットフォームが手をつけられない時間帯に模倣品販売が行われているという証拠を確保することがまず必要です。

2.オンラインショッピングモールからSNSへ

最近では、模倣品販売業者が大型のオンラインプラットフォームから取り締まりの難しいSNSプラットフォームに移行している傾向にあります。 代表的なSNSプラットフォームであるインスタグラム、NAVER BAND、カカオストーリーなどで有名ブランドを検索してみると、数百の個人セラーが運用するページにつながり、これらのほとんどは模倣品を扱っています。注目すべき点は、彼らが個人間取引の形を取っているため、模倣品を販売する人も購入する人も、特に法を犯しているという意識を持っていないという点です。SNSを通じて取引される量はかなりの規模と推定されますが、ほとんどが個人セラーとして点在しており、会員を対象にして閉鎖的に販売が行われるため、取り締まりはもちろんのこと、探知自体も極めて難しいのが実情です。

3.オンライン中古品取引による模倣品販売

ポンゲジャントやタングンマーケットなどのオンライン中古品取引プラットフォームで中古にかこつけて模倣品を販売することも新しいトレンドです。中古品プラットフォームでは、価格に新品とは違いがあるのは当然であるため、ブランド側では価格に基づいて非正規品を正しく探知することは困難です。オンライン中古品市場では、少しだけ使用した正規品のように模倣品を販売するケースがあるかと思えば、きちんと模倣品をフィルタリングしない中古品取引市場の特性を利用して堂々と模倣品を販売するケースまで存在します。

4.模倣品は中小企業にも大きな被害

模倣品問題は、少数の高級ブランドに限られた問題ではありません。むしろ、中小企業ブランドにとってはより致命的かもしれません。高級ブランドの場合、消費者が既に模倣品であることを知って購入することがほとんどであるため、購入した製品の品質が劣悪であっても、その高級ブランド自体のイメージは損なわれません。しかし、中小企業ブランドは正規品か模倣品か知らずに購入することが多いため、製品の品質が悪いと、その中小企業ブランドのイメージが深刻なまでに損なわれることがあります。また、一度オンラインで評判が悪くなると回復が難しく、これは企業の死活問題になる可能性があります。ファッションブランドの場合、一般的に規模が100億ウォンを超えた時点で、韓国だけでなく中国、東南アジアでも認知度を確保し始めるため、この時から模倣品への関心を持って対策を講じなければなりません。

5.提案

過去、模倣品は商品名を含む製品デザインをできるだけ正規品と同じようにコピーする形が典型的でした。しかし、最近は模倣品の形態と販売方式がより知能的に発展し、法の網をくぐり抜けています。これほど巧妙に進化していく模倣品問題に対応するためには、これよりも知能的で精巧な探知技術が求められ、模倣品除去においてもより専門的で創意的な措置が必要となります。

今月の解説者

株式会社FAIKERZ 代表 李宗宰 (イ・ジョンジェ) 米国ニューヨーク州弁護士
1989 年ソウル大学国際経済学科卒、2009年 New York Law School (JD)卒業後、ニューヨーク弁護士資格取得
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 土谷慎吾)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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