知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)コロナ禍でも伸びる韓国の産業財産権出願件数
2022年02月09日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.161)
ジェトロ・ソウル 副所長 土谷 慎吾(特許庁出向者)
韓国の産業財産権(特許・実用新案・デザイン・商標)の出願件数は、近年大幅な伸びを示しており、四法合計で2019年には初めて50万件を、2020年には55万件を突破し、2021年の数字がどうなるか、注目が集まっていました。
果たして、2022年1月11日の韓国特許庁発表によると、2021年の産業財産権出願件数は、過去最高の592,615件でした。
本稿では、日本の出願件数(2021年の出願件数は本稿執筆時点で未公表)との比較も交えて詳細をご紹介します。
※実用新案については、件数が少ないため割愛。
1.特許
韓国特許庁への特許出願は、過去最高の23万7998件を記録しました。この件数には日本、米国等の外国からの出願も2割強含まれている点に留意が必要(後述するデザイン、商標は1割前後)ですが、マジョリティーは韓国国内からの出願となります。
日本国特許庁への出願件数は、2001年に43万9千件余りとなったのをピークに、量から質への転換が進み、徐々に減少する傾向にある一方、韓国出願は対照的に増加傾向にあり、これが継続するのか、変曲点を迎えるのかが注目されるところです。韓国の特許出願は日本と異なり、中小企業、個人出願人によるものが多く、動向予測は困難です。

2.デザイン
韓国特許庁へのデザイン出願は、近年横ばい傾向にありますが、おおむね日本の意匠出願の2倍の件数があり、制度活用意欲が旺盛な状態が続いています。

3.商標
商標出願の件数はその国の景気動向に左右されるといわれます。韓国特許庁への商標出願は近年大幅に増加しており、2021年は前年に続いて2桁%の増加となり、特許とともに過去最高件数を更新しました。
韓国特許庁によると、コロナ禍の世相を反映し、特にデジタル放送通信、ソフトウエア開発、SNS、オンラインショッピングモールなどのサービス業に関する出願が増えているとのことです。
デザインと同様、近年韓国の出願件数は日本よりも多い状況が続いています。

産業財産権の出願件数は国のイノベーション力を表す重要指数であり、数は力という側面がある一方、数だけではなくその質も重要で、韓国でも大企業を中心に既に量から質への転換が進みつつあるといわれています。
韓国は、主要国の中で、単位人口当たり、単位GDP当たりの産業財産権出願件数が群を抜いて高い状況が続いています。韓国の出願件数の上昇トレンドはまだまだ続くのか、それとも変曲点を迎えるのか、2022年の出願動向に注目です。
今月の解説者
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 土谷 慎吾
2001年日本国特許庁入庁。通信・半導体分野の審査官・審判官、情報技術統括室室長補佐、審判課課長補佐、主任上席審査官等を経て、2020年7月から現職

本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
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