カンボジアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は6.0%。前年の5.0%を上回る。
  • 輸出は前年比15.7%増。主要品目の縫製品が牽引。
  • 対内直接投資は前年比32.6%増。投資元国は中国が筆頭。
  • 日本との輸出入は増加。日本企業の進出は低迷。
  • 2029年に後発開発途上国(LDC)からの卒業が確定。

公開日:2025年8月21日

マクロ経済 
外需主導で経済成長、建設・不動産セクターは低迷続く

IMFによると、2024年のカンボジアの実質GDP成長率は6.0%で、前年の5.0%を上回った。外需回復が成長を牽引した。主要輸出品目である縫製品関連が牽引するかたちで、前年に停滞した輸出が15.7%増加した。また、2024年の外国人観光客数は前年比22.9%増の670万人となり、新型コロナウイルス禍の落ち込みから回復し、過去最多を記録した2019年を上回った。

一方、建設・不動産セクターは低迷が続いており、経済成長の足かせとなった。カンボジア南部の港湾都市シアヌークビルを中心に、中国資本による商業施設、ホテル・娯楽施設、高層ビルなどの投資が、新型コロナウイルス流行をきっかけに止まり、未完成や休眠状態のまま多数放置された状態が続いている。中国国内での不動産市況が回復に至っておらず、不動産分野では中国資本がカンボジアに回帰していない。そのため、カンボジア政府や地方行政が復興・優遇策を発動しているものの、建設・不動産セクターの回復は遅れている。また、同セクターの低迷は金融セクターのリスクを高めている。カンボジア国立銀行によると、2024年末時点の不良債権率は銀行が7.9%、マイクロファイナンスが9.0%と過去最高を記録しており、経済成長の阻害要因となっている。

IMFによると、2024年の消費者物価上昇率は0.9%で、前年の2.1%を下回った。2024年末の外貨準備高は前年末比12.1%増の222億7,400万ドルで、輸入額の9.4カ月分相当の安定した水準を維持している。対外債務残高は209億4,100万ドルで、前年から減少した。

貿易 
縫製品関連や農産物の輸出が増加

カンボジアの輸出入は、縫製関連や簡易な部品組み立てといった労働集約型の軽工業が中心で、資材、原料、部品を輸入し、製造した製品や半製品を輸出する構造になっている。

カンボジア関税消費税総局(GDCE)によると、2024年の輸出は261億9,700万ドルで、前年より15.7%増加した。品目別に見ると、主要輸出品である縫製品関連〔衣類・付属品(ニット製品・布帛製品)、革製品・かばん類、履物〕が前年比23.6%増の135億2,800万ドルと伸びた。そのほか、構成比5.7%を占めるゴム製品が63.8%増と目立った。特に米国向けが前年比で倍以上に伸びた。近年、中国からカンボジアへタイヤ工場の進出が相次ぎ、タイヤの輸出が増えたことが主な要因とみられる。

穀類、果物、野菜といった農産品も前年から伸びた。その中でも金額が大きいのは、コメを中心とした穀類で、前年比11.0%増の19億4,100万ドルとなった。コメに次ぐ輸出産品として、今後の伸びが期待されているのがカシューナッツだ。カンボジアカシューナッツ協会によると、2024年の国内生産量は約85万トンで、輸出額は世界2位となったが、同国が有数のカシューナッツ生産国であることは世界的にあまり知られていない。国内生産量の9割以上が生原料のまま隣国のベトナムに輸出され、同国で加工された上で世界に輸出されている。そのため、カンボジア政府は、収穫されたカシューナッツを国内で加工し、付加価値を高めて輸出・拡販する政策を推進している。その結果、昨今は日本を含めて複数の海外事業者がカシューナッツの加工事業に参入している。

一方、電気機器・製品の輸出は39.9%減少した。これは、太陽光パネル関連の米国向け輸出が落ち込んだことが要因とみられる。米国政府はカンボジアからの太陽光パネル輸入に対して関税免除措置を適用していたことから、中国企業がカンボジアで同製品の製造を開始し、2023年は米国向け輸出が急増した。しかし、2024年6月6日に免税措置は終了した。さらに、米国政府より迂回輸出と見做され、カンボジアから輸入される太陽光パネルには補助金相殺関税とアンチダンピング税が適用されることとなり、2024年に輸出が急激に落ち込んだ。

2024年の輸入は285億4,500万ドルで、前年より18.0%増加した。品目別に見ると、鉱物性燃料・石油類が筆頭で、前年比13.6%増の38億4,800万ドルだった。カンボジア国内には原油精製施設がないため、ガソリンや灯油、ガスなどのエネルギー資源を輸入に依存する。そのほかの主要な輸入品目は縫製事業などに必要な部材・資材が中心だ。海外から縫製品関連の受注が増加した結果、縫製事業で使用するニット、人造短繊維・織物などの輸入が増加した。

表1-1カンボジアの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
衣類・付属品(ニット製品)(61) 5,479 6,639 25.3 21.2
衣類・付属品(布帛製品)(62) 2,390 3,153 12.0 31.9
革製品・かばん類(42) 1,708 2,055 7.8 20.4
穀物(10) 1,748 1,941 7.4 11.0
電気機器・部品(85) 3,130 1,880 7.2 △ 39.9
履物(64) 1,365 1,681 6.4 23.1
ゴム製品(40) 919 1,505 5.7 63.8
家具類(94) 890 1,170 4.5 31.5
果物(08) 662 856 3.3 29.5
野菜(07) 666 693 2.6 3.9
合計(その他を含む) 22,645 26,197 100.0 15.7

〔注〕品目欄の括弧内数字はHSコード。
〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2025年2月時点)からジェトロ作成

表1-2カンボジアの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料・石油類(27) 3,388 3,848 13.5 13.6
ニット(60) 2,597 3,081 10.8 18.6
電気機器・部品(85) 1,577 1,951 6.8 23.7
機械類・部品(84) 1,307 1,733 6.1 32.6
車両・部品(87) 1,339 1,717 6.0 28.3
人造短繊維・織物(55) 1,099 1,349 4.7 22.8
プラスチック製品(39) 1,072 1,313 4.6 22.5
アルミニウム製品(76) 615 787 2.8 27.9
鉄鋼製品(73) 529 780 2.7 47.5
綿・綿織物(52) 562 766 2.7 36.3
合計(その他を含む) 24,183 28,545 100.0 18.0

〔注〕品目欄の括弧内数字はHSコード。
〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2025年2月時点)からジェトロ作成

輸出先は米国、輸入元は中国が中心

国・地域別に輸出を見ると、米国向けが前年比11.4%増の99億1,600万ドルで、輸出額全体の37.9%を占めた。米国向けは縫製品関連が輸出額の過半の52.8%である。電気機器・部品は前年より54.1%減少した。前述のとおり、太陽光パネル関連の優遇措置変更の影響を大きく受けた。米国に次ぐ輸出先はベトナムで、21.6%増の36億1,600万ドルだった。主要な輸出品目は穀物で、同国向け輸出額の38.6%を占めた。

一方、輸入は中国が前年比24.6%増の134億3,900万ドルで、全体の47.1%を占めた。中国からの輸入品目は、縫製業で使用する繊維(ニット、人造短繊維・織物)が中心で、28.3%増加した。海外からの縫製品関連の発注増加に伴い、輸入による原材料仕入れが増加したものとみられる。中国に次ぐ輸入相手国はベトナムとタイで、それぞれ15.4%増の41億7,000万ドル、18.9%増の34億4,300万ドルとなった。これら2カ国からの主要な輸入品目は鉱物性燃料・石油類だった。

表2-1カンボジアの主要国・地域別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 8,897 9,916 37.9 11.4
ベトナム 2,973 3,616 13.8 21.6
中国 1,479 1,750 6.7 18.4
日本 1,176 1,409 5.4 19.8
カナダ 870 1,110 4.2 27.6
スペイン 713 1,042 4.0 46.0
英国 796 959 3.7 20.4
ドイツ 816 911 3.5 11.7
タイ 818 845 3.2 3.3
オランダ 565 801 3.1 41.9
合計(その他含む) 22,645 26,197 100.0 15.7

〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2025年2月時点)からジェトロ作成

表2-2カンボジアの主要国・地域別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 10,786 13,439 47.1 24.6
ベトナム 3,612 4,170 14.6 15.4
タイ 2,895 3,443 12.1 18.9
インドネシア 995 1,009 3.5 1.4
シンガポール 866 799 2.8 △ 7.8
日本 624 753 2.6 20.7
マレーシア 527 718 2.5 36.2
台湾 661 703 2.5 6.4
韓国 470 521 1.8 10.8
香港 269 384 1.3 42.7
合計(その他含む) 24,183 28,545 100.0 18.0

〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2025年2月時点)からジェトロ作成

対内直接投資 
対内直接投資額は前年比32.6%増、中国からの投資が大半

2024年の適格投資案件(QIP:Qualified Investment Project)ベースによる対内直接投資認可額は前年比32.6%増の45億4,900万ドルだった。過去最大の2019年の認可額(47億4,500万ドル)には届かなかったが、これに近い水準まで回復した。投資認可件数は前年比1.8倍の406件だった。中国からの投資件数が全体の74.6%を占めており、投資元国が中国に集中する構造は変わっていない。その中で、2024年は認可額以上に件数の増加が目立ち、比較的投資額の小さい案件が増加している。これは中小規模の中国企業の進出が加速したことが背景にあるとみられる。

投資分野別では、従来から主流である縫製業を中心に、梱包材や家具、生活雑貨・日用品などの軽工業が多数を占めている。投資金額が大きかった案件は、経済特区(SEZ)内での中国系のタイヤ事業2件(それぞれ4億3,000万ドル、2億5,600万ドル)、SEZ外では南部シアヌークビル州での高級ホテル(5億7,400万ドル)開発、南西部の水力発電開発(4億4,200万ドル)、トンレサップ川の河川港開発(1億1,000万ドル)などが挙げられる。今後QIPの認可が見込まれる大型投資案件は、中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)によるEV組み立て工場の投資がある。総投資額3,200万ドルで、現在シアヌークビル州のSEZ内に年間生産能力約1万台のEV組み立て工場が建設中であり、2025年第4四半期に稼働を予定している。

中国以外からの投資では、近年大型投資がほとんどなかったベトナムの6件、総額5億5,700万ドルがQIPとして認可された。投資分野は農業・農産品関連が3件、その他衣料品などの製造業が3件だった。日本からのQIP認可件数は2件のみだったが、認可額は4,000万ドルで、前年を大きく上回った。ただし、国・地域別では5位だった。

表3 カンボジアの国・地域別対内直接投資[QIP認可ベース](単位:100万ドル、件、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
件数 金額 件数 金額 構成比 伸び率
中国(香港を含む) 199 2,875 301 3,394 74.6 18.1
ベトナム 0 0 6 557 12.3 全増
シンガポール 7 107 24 263 5.8 145.8
マレ-シア 1 91 3 45 1.0 △50.5
日本 1 3 2 40 0.9 1,233.3
台湾 11 134 4 30 0.7 △77.6
米国 2 16 6 28 0.6 75.0
タイ 2 20 2 27 0.6 35.0
その他 8 184 58 166 3.6 △9.8
合計 231 3,430 406 4,549 100.0 32.6

〔注〕小数点以下の四捨五入の関係で合計と一致しないことがある。
〔出所〕カンボジア開発評議会(CDC)のデータからジェトロ作成

投資環境 
投資元国の多角化に向け、物流インフラ整備や課題解決が進む

カンボジア政府は、投資元国が中国に集中していることにリスクを感じ、投資元国の多角化を目指している。そのため、フン・マネット首相自らが日本を含む海外に出向き、投資促進のトップセールスを進めている。これまでカンボジアの投資環境の魅力となっていた人件費は、2025年の法定最低賃金が月額208ドルとなった。2014年の最低賃金、月額100ドルから段階的に上昇しており、必ずしも競争力が高いとはいえなくなっている。それでも、インドシナ半島南部を貫く南部経済回廊の中央に位置する地理的な優位性をはじめ、政治・社会の安定、投資優遇措置、若く良質な労働力、自然災害の少なさなど、カンボジアには投資・事業環境のメリットとなる要素が複数挙げられる。

また、地理的な優位性を生かすため、同国では物流ハブ機能の整備も進められている。2024年8月には、プノンペンから南部沿岸都市ケップまでの大型運河(フナン・テチョ運河)の開発計画が発表され、起工式が行われた。これまでプノンペンからの貿易は、プノンペン河川港とベトナムのホーチミンの大型国際コンテナターミナル港を結ぶメコン川が主要な貨物輸送ルートのひとつだった。この運河の完成により、水上貨物輸送がカンボジア国内で完結できるようになり、輸送効率の改善などが期待される。さらに、この運河を経由することで、日本のODAにより拡張・整備が進む国内唯一の国際深海港であるシアヌークビル港へのアクセスも容易となり、同港の活用拡大を期待する声もある。

2023年に首相と政権の若返りが図られて以降、投資環境整備に向け、在カンボジア企業が抱える課題やリスクの解決に向けた取り組みも進んでいる。カンボジア政府、日本政府、在カンボジア日本人商工会(JBAC)による日本カンボジア官民合同会議が年2回の頻度で定期開催され、2025年2月には29回目の会議が開催された。予見が難しかったみなし課税の運用など税務関連の問題が解決に向かうなど、具体的な成果が得られている。このようなカンボジア政府と外国政府および商工会議所との対話は、もともと日本との間だけで行われていたが、2024年にはEUおよび欧州商工会議所や米国政府および米国商工会議所などとの間でも初めて会合が開催された。このようにカンボジア政府は投資国・地域の多角化を図る意欲と投資環境改善に向けた積極的な姿勢を示している。

対日関係 
日本との輸出入は約2割増加、日本企業の進出は低迷続く

GDCEによると、2024年の日本とカンボジアの貿易総額は前年比20.1%増の21億6,100万ドルだった。カンボジア側から見た対日貿易収支は6億5,600万ドルの黒字だった。カンボジアから日本への輸出は前年比19.8%増の14億900万ドルとなり、上位品目である衣類・付属品は23.6%増と大幅に回復した。日本の財務省貿易統計によると、日本の繊維製品の輸入に占めるカンボジアのシェアは4.1%であり、過去10年間でシェアを伸ばし、中国、ベトナム、バングラデシュに次ぐ輸入国となった。また、電気機器・部品(10.0%増)では、日系企業が製造している自動車用ワイヤーハーネスが伸びたものとみられる。一方、カンボジアの日本からの輸入は、前年比20.7%増の7億5,300万ドルだった。最大の輸入品目である車両・部品は前年比33.2%増の3億4,300万ドルとなった。経済成長に伴い、日本からの高額な完成車両の輸入とそれに伴う部品輸入が増加したものとみられる。

表4-1 カンボジアの対日本主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
衣類・付属品(ニット製品)(61) 364 468 33.2 28.4
衣類・付属品(布帛製品)(62) 367 436 31.0 18.8
電気機器・部品(85) 177 194 13.8 10.0
履物(64) 111 129 9.1 16.5
革製品・かばん類(42) 61 62 4.4 2.7
玩具・運動用具(95) 6 33 2.3 476.2
傘、杖・部品(66) 21 19 1.3 △ 13.3
紡織用繊維・製品(63) 16 15 1.0 △ 9.7
機械・部品(84) 13 11 0.8 △ 9.9
果実(8) 2 8 0.6 372.7
合計(その他含む) 1,176 1,409 100.0 19.8

〔注〕品目欄の( )内数値はHSコード。
〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2025年4月1日時点)からジェトロ作成

表4-2 カンボジアの対日本主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
車両・部品(87) 258 343 45.6 33.2
電気機器・部品(85) 78 83 11.0 6.4
機械・部品(84) 44 72 9.6 64.4
プラスチック製品(39) 43 47 6.2 9.7
陶磁製品(69) 32 44 5.8 37.5
人造短繊維・織物(55) 9 16 2.2 87.8
光学機器(90) 21 15 2.0 △ 29.7
家具類(94) 9 13 1.7 42.8
紡織用繊維・製品(63) 11 12 1.6 10.4
ゴム製品(40) 4 8 1.0 96.7
合計(その他含む) 624 753 100.0 20.7

〔注〕品目欄の( )内数値はHSコード。
〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2025年4月1日時点)からジェトロ作成

2024年の日本企業に対するQIP認可件数は、前述のとおり2件であった。具体的には、在カンボジア日系企業の第2工場設立案件とタイプラスワン戦略の一環として自動車用樹脂部品サプライヤーによる新規製造工場の設立案件だった。2023年は追加設備投資案件1件のみであり、依然として大型投資案件の低迷状態が続いている。

その他 
LDC卒業に向け、国内産業の高付加価値化が課題

カンボジアは、2024年3月の国連開発政策委員会(CDP)の勧告を受け、2029年に国連の国家開発ステージ基準に基づく後発開発途上国(LDC)から卒業する見通しとなった。これに伴い、従来、先進国向け輸出の縫製品などに適用されていた特別特恵関税の優遇措置は、移行期間後の2033年以降に適用対象外となり、縫製業などにとって大きな転換期を迎える。そのため、今後は経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)など、特別特恵関税に代わる枠組みの活用を検討していく必要が生じる。同時に、産業の中心であった縫製業などの労働集約的産業から、より生産性や付加価値の高い技術・知識集約型産業への移行が求められる。

現在、カンボジアの成長エンジンは海外直接投資と縫製業を中心とする輸出部門であるが、中国と米国への依存度が極めて高い。そのため、米国の関税政策や、それに関連する米中対立の深刻化がカンボジア経済に甚大な影響を及ぼすことが懸念されている。カンボジアは長期国家成長戦略において2050年の高所得国入りを目指しており、投資と貿易のパートナー国の多様化と経済的自立の確立が喫緊の課題となる。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 3.1 5.1 5.0
1人当たりGDP (米ドル) 2,188 2,319 2,460
消費者物価上昇率 (%) 2.9 5.3 2.1
失業率 (%) 0.4 0.2 0.2
貿易収支 (100万米ドル) △ 11,199 △ 8,820 △ 2,986
経常収支 (100万米ドル) △ 11,971 △ 6,456 △ 667
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 20,338 17,875 19,874
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 20,146 22,468 22,484
為替レート (1米ドルにつき、カンボジア・リエル、期中平均) 4,099 4,102 4,111


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率:IMF
失業率:世界銀行
貿易収支、経常収支、外貨準備高(グロス)、対外債務残高(グロス)、為替レート:カンボジア国立銀行