インドの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年度のGDP成長率は6.5%と、前年度を下回るも堅調な伸び。
  • 貿易額は金額上位5品目で輸入が増加し、貿易赤字幅は17.1%拡大。
  • 直接投資は流入(前年度比12.6%増)、流出(同67.2%増)ともに増加。
  • 日本への輸出は前年度比で21.3%増加、輸送機器や電子通信機器の輸出が急拡大。

公開日:2025年10月9日

マクロ経済 
2024年度も堅調なインド経済

2024年度(2024年4月~2025年3月)のインドの実質GDP成長率は6.5%と、前年度の9.2%を下回ったものの、堅調な伸びをみせた。需要項目別に見ると、GDPの56.5%を占める民間最終消費支出は7.2%増となり、前年度(5.6%)を上回る成長を見せた。33.7%を占める国内総固定資本形成(企業による投資)は7.1%増だった。財・サービスの輸出入に関しては、輸出が6.3%増と伸長した一方で、輸入は3.7%減となり、輸出から輸入を差し引いた純輸出のマイナス幅が縮小した。

表1 インドの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年度 2023年度 2024年度
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 7.6 9.2 6.5 6.5 5.6 6.4 7.4
階層レベル2の項目民間最終消費支出 7.5 5.6 7.2 8.3 6.4 8.1 6.0
階層レベル2の項目政府最終消費支出 4.3 8.1 2.3 △ 0.3 4.3 9.3 △ 1.8
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 8.4 8.8 7.1 6.7 6.7 5.2 9.4
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 10.3 2.2 6.3 8.3 3.0 10.8 3.9
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 8.9 13.8 △ 3.7 △ 1.6 1.0 △ 2.1 △ 12.7

〔注〕年度は4月~翌年3月、2011年度基準。四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕統計・計画実施省資料からジェトロ作成。

産業部門別(粗付加価値ベース(GVA))でみると、前年度に続き全部門でプラス成長を維持した。特に、建設(前年比9.4%増)や公共・防衛・サービス(8.9%増)などが堅調に推移した。一方で、政府が注力する製造部門は4.5%増と控えめな成長率にとどまった。

消費者物価指数(CPI)の上昇率(インフレ率)は、2024年10月にインド準備銀行(RBI、中央銀行)が目標とする4%±2%を一時超過したものの、その後は低下し3~5%台で推移した。消費者物価の半分近くの比重を占める食品のインフレ率は、農作物の生育が順調であったことから2025年1月以降継続的に低下した。これを踏まえ、RBIは2025年2月におよそ5年ぶりとなる政策金利の引き下げを決定し、6.25%とした。なお、2025年度に入ってからも継続的に利下げは続き、8月時点では5.50%となっている。

インド政府は8月30日に、2025年度第1四半期(4月~6月)の実質経済成長率を7.8%と発表した。前年同期比では1.3ポイント上昇と好調な滑り出しを記録し、今後も高水準での推移を見込む。

貿易 
輸入増加で貿易赤字幅は拡大へ

2024年度の貿易(通関ベース)は、輸出が前年度比0.1%増の4,377億3,700万ドル、輸入は6.2%増の7,202億7,300万ドルとなった。貿易収支は2,825億3,600万ドルの赤字で、赤字幅は前年度から413億1,200万ドル拡大した。

輸入を品目別にみると、全体の約2割を占める原油は前年度比2.6%増とほぼ横ばい、品目別3位の石油製品は8.2%増だった。原油の輸入相手国を金額順に見ると、ロシア(構成比35.1%)、イラク(19.1%)、サウジアラビア(14.1%)、アラブ首長国連邦(以下、UAE)(9.7%)、米国(4.6%)と続く。2022年のウクライナ侵攻後、インド政府はロシアからの原油の輸入を継続して拡大させている。

石油関連以外では、金・銀(前年度比23.0%増)が大きく伸長した。特に、UAE(84.5%増)やペルー(56.8%増)、オーストラリア(83.2%増)、香港(158.9%増)などからの輸入が増加した。また、国内の旺盛なデータセンター需要を背景に電子通信機器(21.3%増)の輸入が増加し、中国からの輸入が42.4%増となったほか、アイルランド(17.5%増)やベトナム(39.1%増)からの輸入も拡大した。

輸出を品目別でみると、輸送機器(前年度比21.3%増)の伸びが目立ち、特にUAE(78.0%増)、サウジアラビア(30.0%増)に加えて、日本への輸出が92.5%増加した。また、電子通信機器(51.7%増)はスマートフォンを中心とした米国(88.3%増)、ヨーロッパ(49.3%増)向けの輸出が好調だった。

一方、原油を原料とする石油製品(24.8%減)や宝石・宝飾品(8.8%減)、鉄・非鉄金属(2.1%減)は輸出額が縮小した。

表2-1 インドの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
石油製品 84,171 63,266 14.5 △ 24.8
機械・器具 35,432 38,899 8.9 9.8
輸送機器 26,717 32,415 7.4 21.3
医薬品・精製化学品 27,857 30,513 7.0 9.5
宝石・宝飾品 32,720 29,850 6.8 △ 8.8
電子通信機器 17,267 26,201 6.0 51.7
鉄・非鉄金属 22,579 22,114 5.1 △ 2.1
織物用糸・布地 16,092 16,657 3.8 3.5
無機・有機・農業化学品 15,389 16,303 3.7 5.9
既製衣料 14,531 16,017 3.7 10.2
合計(その他含む) 437,124 437,737 100.0 0.1

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

表2-2 インドの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
原油 139,332 143,012 19.9 2.6
金・銀 51,023 62,765 8.7 23.0
石油製品 39,462 42,704 5.9 8.2
電子部品 34,379 36,841 5.1 7.2
一般機械 32,148 35,438 4.9 10.2
石炭・コークス・ブリケット 38,874 31,055 4.3 △ 20.1
鉄・非鉄金属 27,150 30,461 4.2 12.2
輸送機器 24,866 26,515 3.7 6.6
電子通信機器 18,465 22,395 3.1 21.3
人造樹脂・プラスチック材 20,685 20,817 2.9 0.6
合計(その他含む) 678,348 720,273 100.0 6.2

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

米国が再び中国を上回り最大の貿易相手国に

2024年度にインド最大の貿易相手国となったのは米国(構成比11.4%、前年度比10.3%増)で、輸出入の総額は1,320億ドルと、2位の中国の1,277億7,800万ドル(7.9%増)をわずかに上回った。

2024年度の輸入を国別に見ると、中国(構成比15.8%、前年度比11.6%増)が最大で21年連続の首位となった。前年度から主要輸入品目に大きな変化はなく、金額ベースでは一般機械(18.5%増)、電子部品(15.0%増)、電子通信機器(42.4%増)の順に多かった。2位の相手国ロシア(4.3%増)からの輸入は全体の約8割が原油(8.0%増)となっている。3位のUAEは、主要品目である原油(54.5%増)と金・銀(84.5%増)の輸入が増加したことで、輸入総額が32.2%増と拡大が目立った。

輸出においては、米国(構成比19.8%、前年度比11.8%増)が12年連続で最大の仕向け先となった。主要輸出品目は、米国市場におけるインド製iPhoneの割合増大などを背景に電子通信機器(88.3%増)のほか、バイオ医薬品等を中心とした医薬品・精製化学品(20.7%増)、宝石・宝飾品(0.4%増)などだった。

表3-1 インドの国・地域別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
米国 77,526 86,689 19.8 11.8
アラブ首長国連邦(UAE) 35,644 36,671 8.4 2.9
オランダ 22,379 22,722 5.2 1.5
英国 12,979 14,554 3.3 12.1
中国 16,672 14,266 3.3 △ 14.4
シンガポール 14,421 12,954 3.0 △ 10.2
サウジアラビア 11,561 11,769 2.7 1.8
バングラデシュ 11,071 11,392 2.6 2.9
ドイツ 9,841 10,546 2.4 7.2
オーストラリア 7,932 8,588 2.0 8.3
日本 5,160 6,258 1.4 21.3
合計(その他含む) 437,124 437,737 100.0 0.1

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

表3-2 インドの国・地域別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
中国 101,750 113,512 15.8 11.6
ロシア 61,165 63,772 8.9 4.3
アラブ首長国連邦(UAE) 48,052 63,514 8.8 32.2
米国 42,193 45,312 6.3 7.4
サウジアラビア 31,419 30,133 4.2 △ 4.1
イラク 29,979 28,881 4.0 △ 3.7
インドネシア 23,416 22,752 3.2 △ 2.8
スイス 21,260 21,700 3.0 2.1
シンガポール 21,204 21,300 3.0 0.5
韓国 21,143 21,071 2.9 △ 0.3
日本 17,694 18,919 2.6 6.9
合計(その他含む) 678,348 720,273 100.0 6.2

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

通商政策 
貿易協定を推進も、保護貿易主義の姿勢は継続

インド政府は、輸出促進を図る手段として、2021年以降、主に先進国との間で新たな自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の締結・交渉を積極的に進めている。2024年11月には、英国との間でFTA交渉再開を発表、3年超の交渉期間を経て2025年7月24日に包括的経済貿易協定(CETA)を締結した。EUとの間では、2025年2月にインドのナレンドラ・モディ首相が2025年内のFTA締結を目指すことを発表している。そのほか2025年3月には、インドのピユシュ・ゴヤル商工相とニュージーランドのトッド・マクレイ貿易投資担当相が会談し、2015年以降中断していた包括的経済連携協定(CECA)の交渉再開が発表されている。

FTA交渉などを通じて貿易の間口を広げる一方で、インド国内では輸入品に対する非関税障壁を設ける動きも進む。インドには、インド標準規格局(BIS、Bureau of Indian Standards)が定める独自の標準規格(IS)が存在し、特定品目の輸入や国内流通にあたっては、IS認証取得が義務付けられている。認証取得には、製品試験や評価の他、BIS検査官の派遣による工場検査などが必要となることから、特にインド以外の生産拠点から製品を輸入する場合には時間と費用がかかる状況となっている。また近年、対象品目が拡大しており、対応に苦慮する企業も少なくない。そのような状況下で2024年8月には、インド重工業省が「設備・電気機器安全規則(包括的技術規制)2024」を発表し、インド国内で流通する広範囲の設備・電気機器に対しても、BISからの認証取得を義務付けた。同規則は、2025年8月から施行開始される予定であったが、内容の不透明さから各業界は開始の延長を求めており、2025年6月の改正通達によっておよそ1年間の施行延期が発表されている。

対内・対外直接投資 
電子産業分野での対内直接投資が急拡大

インド商工省産業国内取引促進局(DPIIT)の発表によると、2024年度のインドの対内直接投資額(実行ベース)は前年度比12.6%増の500億1,800万ドルとなった。シンガポール(構成比29.9%、前年度比26.9%増)、モーリシャス(16.7%、4.7%増)、米国(10.9%、9.2%増)、UAE(8.7%、48.6%増)からの投資が拡大した一方、オランダ(9.2%、6.2%減)や日本(5.0%、22.0%減)からの投資は縮小した。なお、インド商工省傘下の投資促進機関インベストインディアは2024年9月に同機関初の国外事務所となるシンガポール事務所を開設した。これにより、シンガポールやASEAN地域との経済協力を強化していく意向とみられる。

業種別では、全体の約2割を占めるサービス(金融・BPOなど)が前年度比で40.8%増加したほか、電子産業が2.9倍の20億4,300万ドルと急拡大した。

表4-1 インドの国・地域別対内直接投資[実行ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
シンガポール 11,774 14,942 29.9 26.9
モーリシャス 7,970 8,344 16.7 4.7
米国 4,998 5,457 10.9 9.2
オランダ 4,924 4,620 9.2 △ 6.2
アラブ首長国連邦(UAE) 2,924 4,345 8.7 48.6
日本 3,177 2,478 5.0 △ 22.0
キプロス 806 1,203 2.4 49.3
ベルギー 109 1,129 2.3 932.6
スイス 188 865 1.7 359.7
韓国 386 832 1.7 115.5
合計(その他含む) 44,423 50,018 100.0 12.6

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省"FDI Newsletter"から作成

表4-2 インドの国・地域別対外直接投資[届け出ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
シンガポール 4,877 8,961 21.5 83.7
米国 3,379 4,889 11.7 44.7
オランダ 3,092 4,769 11.5 54.3
モーリシャス 992 4,552 10.9 359.1
アラブ首長国連邦(UAE) 3,444 4,159 10.0 20.8
英国 1,967 3,237 7.8 64.5
スイス 581 1,277 3.1 120.0
モルディブ 28 1,079 2.6 3,819.3
ケニア 11 845 2.0 7,604.0
タンザニア 16 783 1.9 4,796.4
日本 5 749 1.8 14,543.5
合計(その他含む) 24,887 41,622 100.0 67.2

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕インド準備銀行(RBI)"Overseas Direct Investment" から作成

表5-1 インドの業種別対内直接投資[実行ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
サービス(金融、BPO等など) 6,640 9,347 18.7 40.8
コンピュータのソフトウエア・ハードウエア 7,973 7,814 15.6 △ 2.0
貿易・卸売 3,865 4,176 8.3 8.0
非従来型エネルギー 3,764 4,012 8.0 6.6
建設(インフラ開発) 4,232 2,245 4.5 △ 47.0
電子産業 696 2,043 4.1 193.6
セメント・石膏製品 613 1,813 3.6 195.5
自動車産業 1,524 1,586 3.2 4.1
病院・診断センター 1,530 1,559 3.1 1.9
電力 1,702 1,429 2.9 △ 16.0
合計(その他含む) 44,423 50,018 100.0 12.6

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省"FDI Newsletter"から作成

表5-2 インドの業種別対外直接投資[届け出ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
金融・保険・ビジネスサービス 8,779 16,464 39.6 87.6
製造業 5,246 10,058 24.2 91.7
卸売・小売・貿易・レストラン・ホテル 3,550 7,947 19.1 123.9
農業・鉱業 1,161 2,874 6.9 147.7
輸送機器・倉庫・通信サービス 1,430 2,263 5.4 58.3
社会サービス 623 919 2.2 47.5
建設 3,869 764 1.8 △ 80.3
電気・ガス・水 191 245 0.6 28.3
合計(その他含む) 24,887 41,622 100.0 67.2

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕インド準備銀行"Overseas Direct Investment"から作成

対外直接投資も前年度の落ち込みから回復

RBIの発表によると、2024年度のインドの対外直接投資額(届け出ベース)は、前年度比67.2%増の416億2,200万ドルとなった。投資先を国別に見ると、投資金額で1位のシンガポール(構成比21.5%、前年度比83.7%増)と2位の米国(11.7%、44.7%増)で、ともに投資額が大幅に増加した。

業種別では、金融・保険・ビジネスサービス(構成比39.6%、前年度比87.6%増)や製造業(24.2%、91.7%増)の投資額が前年度比でほぼ倍増となったほか、卸売・小売・貿易・レストラン・ホテル(19.1%、123.9%増)、農業・鉱業(6.9%、147.7%増)でも伸び率が2倍超となり、2023年度に縮小したインドの対外投資は復調した。

投資環境・外資誘致政策 
エレクトロニクス分野の一大生産地目指すインド

インド政府は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)拡大を受けて、2020年以降、他国に頼らない産業構造「自立したインド」の実現を目標に掲げている。政府は以前から、モディ政権1期目の2014年に始動した「メーク・イン・インディア」のスローガンの下、貿易赤字の削減や新規雇用の創出を目的として国内製造業の振興を図ってきた。製造業投資誘致のための各種インセンティブを発表しており、代表的なものとしては2020年から導入された生産連動型優遇策(PLI)がある。PLIは、政府が指定する14分野に係る新規投資について、所定の要件を満たしていれば、新たに製造された製品の売り上げの増加額などに応じて、複数年にわたり一定割合の補助金が製造者に支払われるというものだ。

直近では、半導体をはじめとするエレクトロニクス関連の投資誘致も本格化し始めている。2021年12月にはインド電子情報技術省(MeitY)が国内での半導体やディスプレー製造のエコシステム開発のため、7,600億ルピー規模の予算を投入し「セミコン・インディア・プログラム」を立ち上げている。2023年6月以降は修正版プログラムの下で投資案件の募集が行われており、2024年度末時点では計5件の投資案件が承認されている。また、2024年9月には米国の国際半導体製造装置材料協会(SEMI)主催のSEMICONが初めてインドで開催された。

そのほかMeitYは、2025年3月にエレクトロニクス分野に特化した電子部品製造優遇スキームを発表した。同スキームは売上高増加分や投資額などに応じて補助金を支給する仕組みで、エレクトロニクス完成品のバリューチェーン全体の投資を国内に呼び込み、電子部品の輸入削減や雇用増などを目指すとしている。

対日関係 
輸送機器やエレクトロニクス関連製品の対日輸出が急増

2024年度の日本向け輸出は、前年度比21.3%増の62億5,800万ドル、日本からの輸入は6.9%増の189億1,900万ドルとなった。インドの対日貿易収支は126億6,100万ドルのマイナスとなり、赤字幅は前年度から1.0%増とほぼ横ばいであった。

日本向け輸出を品目別にみると、輸送機器(構成比16.4%、前年度比92.5%増)や有機・無機農業化学品(11.9%、38.1%増)、電子通信機器(8.7%、5.7倍)の伸びが大きかったのに対し、鉄・非鉄金属(7.3%、10.4%減)などで減少した。

輸入では、化学材料・製品(構成比14.9%、前年度比41.0%増)、鉄・鋼鉄(10.3%、30.8%増)、電子部品(5.1%、15.5%増)をはじめとして多くの品目で拡大した一方、鉄・非鉄金属(14.1%、14.5%減)、一般機械(11.5%、9.9%減)などが減少に転じた。

表6-1 インドの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
輸送機器 532 1,023 16.4 92.5
有機・無機農業化学品 539 745 11.9 38.1
機械・器具 580 610 9.7 5.0
電子通信機器 97 547 8.7 465.5
鉄・非鉄金属 513 460 7.3 △ 10.4
水産物 412 408 6.5 △ 0.9
化学残留物 268 264 4.2 △ 1.6
宝石・宝飾品 261 240 3.8 △ 8.2
医薬品・精製化学品 242 232 3.7 △ 4.3
鉄・鉄鋼 189 207 3.3 9.5
合計(その他含む) 5,160 6,258 100.0 21.3

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

表6-2 インドの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年度 2024年度
金額 金額 構成比 伸び率
化学材料・製品 2,005 2,826 14.9 41.0
鉄・非鉄金属 3,112 2,661 14.1 △ 14.5
一般機械 2,420 2,181 11.5 △ 9.9
鉄・鋼鉄 1,488 1,947 10.3 30.8
輸送機器 960 1,130 6.0 17.7
人造樹脂・プラスチック材 1,143 1,119 5.9 △ 2.2
電子部品 840 970 5.1 15.5
有機化学品 861 923 4.9 7.3
電気機器 733 833 4.4 13.6
機械工具類 713 732 3.9 2.7
合計(その他含む) 17,694 18,919 100.0 6.9

〔注〕年度は4月~翌年3月
〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

日本からの対印投資は減少もインドの対日投資は拡大

2024年度の日本からの直接投資(実行ベース)は前年度比22.0%減の24億7,800万ドルとなり、構成比5.0%で国別では6位(前年度5位)となった。

製造業では、2024年4月にJERAがインド現地法人のJERA エナジーインディアを設立した。同社は2017年以降、インドの再生可能エネルギー大手リニュー(ReNew Power Private Limited)へ出資参画し、グリーンアンモニア製造開発などに取り組んでいる。5月には本田技研工業がベンガルールに二輪車とパワープロダクツ(汎用エンジンや電動などの動力源)の研究開発(R&D)拠点を開設したほか、11月にはニデックが南部アンドラ・プラデシュ州のスリ・シティ工業団地にグループ全体で8カ所目となるエアコン向けモーターの工場を開設した。また同月、住友重機械工業の新しいインド現地法人であるスミトモヘビーインダストリーズインディアがベンガルールに設立された。12月には日立建機がカルナータカ州フブリに建設機械の開発・設計を行う日立建機開発センターインドを設立した。また2025年1月には、島津製作所がベンガルールに測定機器の製造子会社を設立した。

非製造業においては、2024年7月に三井住友銀行、9月にはみずほ銀行がグジャラート州の国際金融特区GIFTシティーにそれぞれ支店を開設した。これで日本の三大メガバンクのすべてがGIFTシティーに支店を開設したことになる。2025年1月にはクラウド会計ソフト・家計簿アプリなどを提供するマネーフォワードがタミル・ナドゥ州チェンナイに日本国内向け商品の開発強化のための拠点を開設すると発表した。2025年3月にはデジタルトランスフォーメーション(DX)コンサルティングを手掛けるグロースエクスパートナーズがケララ州での合弁会社設立を発表している。

インドから日本への直接投資(届け出ベース)は、前年度比146.4倍の7億4,900万ドルとなった。2024年7月にはインド発のコーヒーブランドであるブルートーカイ(Blue Tokai)が日本国内初の直営店をオープンした。また12月には航空券流通データの最新通信規格であるNDC(New Distribution Capability)の流通プラットフォームを運営するバーテイル・テクノロジーズ(Verteil Technologies)がANAホールディングス傘下のエアジャパンと戦略的パートナーシップを発表した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年度 2023年度 2024年度
実質GDP成長率 (%) 7.6 9.2 6.5
1人当たりGDP (米ドル) 2,347 2,530 2,697
消費者物価上昇率 (%) 6.7 5.4 4.6
失業率 (%) 7.6 8.1 8.1
貿易収支 (100万米ドル) △ 265,291 △ 241,224 △ 282,536
経常収支 (100万米ドル) △ 66,984 △ 23,209 △ 23,256
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 564,740 626,264 638,548
対外債務残高(グロス) (億ドル) 6,239 6,688 7,363
為替レート (1米ドルにつき、インド・ルピー、期中平均) 78.6 82.6 83.6


年度は4月~翌3月。
外貨準備高(グロス)、 為替レート:暦年
実質GDP成長率、経常収支、対外債務残高(グロス):2024年度は暫定値。
貿易収支:国際収支ベース(財のみ、BPM6フォーマット)、BPM6はIMF国際収支マニュアル第6版を指す。
経常収支:国際収支ベース(BPM6フォーマット)
出所
外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
実質GDP成長率、消費者物価上昇率:インド統計・計画実施省、インド準備銀行(RBI)
1人当たりGDP:世界銀行
失業率:インド経済監視センター(CMIE)
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):インド準備銀行(RBI)