インドネシアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年の実質GDP成長率は5.1%、政府目標を下回るも4年連続で5%成長。
  • 鉱物性燃料は輸出入ともに減少も、動植物性油脂など幅広い品目で輸出拡大。
  • 米国関税への対応やEPA拡大を通じ通商関係の多角化を加速。
  • 外国企業の最低払込資本金制度などを見直し、投資環境は改善。
  • 対内直接投資は減少も、日本は5位に上昇、飲食関連企業の進出が進展。

公開日:2026年8月18日

マクロ経済

2025年の経済成長率は5.1%、4年連続で5%超を達成

2025年の実質GDP成長率は5.1.%となり、政府目標の5.2%には届かなかったものの、4年連続で5%超の成長を維持した。2020年以降では、コロナ禍からの回復が進んだ2022年の5.3%に次ぐ水準だった。四半期別では、第1四半期(1~3月)は4.9%と5.0%を下回ったものの、第2四半期(4~6月)は5.1%と持ち直した。第3四半期(7~9月)は5.0%、第4四半期(10~12月)は5.4%となり、年末にかけて安定して推移した。

需要項目別の前年比伸び率を見ると、GDPの5割超を占める家計最終消費支出は、観光客の増加に伴う飲食店やホテル関連支出の増加などを背景に、5.0%増と堅調だった。国内総固定資本形成も、産業用機械生産の拡大などを背景に、5.1%増となった。石炭などを含む鉱物性燃料の国際価格は下落傾向にあったものの、パーム油の国際価格が底堅く推移したことに加え、需要の増加や半導体デバイスの輸出増などが寄与し、財・サービスの輸出が7.0%増となった。

産業別では、主要17業種のうち16業種がプラス成長となった。最も高い伸びを示したのはその他サービスの9.9%増で、企業サービス(9.1%増)、運輸・倉庫(8.8%増)、情報・通信(8.4%増)が続いた。実質GDPの約20%を占める製造業は5.3%増だった。地域別では、GDPの5割超を占めるジャワ島(ジャカルタ特別州を含む)が5.3%増、GDPの2割超を占めるスマトラ島が4.8%増となった。

2026年のインドネシアのGDP成長率について、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇などの不確実性が依然として残るものの、インドネシア中央銀行(以下、中銀)は4.9〜5.7%、世界銀行およびIMFは5.0%と予測しており、引き続き5%前後の成長が見込まれている。

消費者物価指数(CPI)の上昇率は、2025年1月から2月にかけては1%を下回った。これは、付加価値税(VAT)引き上げに伴う国民の購買力維持と経済的負担軽減を目的に、政府が2025年1月1日から2月28日まで家庭向け電気料金を50%割り引く措置を実施した影響が大きい。同措置は、国営電力会社PLNの契約容量が450ボルトアンペア(VA)、900VA、1,300VA、2,200VA以下の家庭用電力契約者約8,142万世帯を対象に、エネルギー鉱物資源省主導で実施された。同措置は3月以降延長されなかったため、CPI上昇率は3月以降に1%超、6月以降は2%超で推移した。年間を通して、概ね中銀が定めるインフレ目標圏内(1.5~3.5%)に収まった。価格変動の大きい食品やエネルギーを除いたコアインフレ率は、1年を通して2%前後で推移した。

中銀は、2026年のインフレ目標について、引き続き前年同月比1.5%~3.5%の範囲に設定している。

表1 インドネシアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 5.1 5.0 5.1 4.9 5.1 5.0 5.4
家計最終消費支出 4.8 4.9 5.0 5.0 5.0 4.9 5.1
民間非営利団体最終消費支出 10.0 12.5 5.1 3.1 7.8 3.8 5.9
政府最終消費支出 3.0 6.8 2.5 △ 1.4 △ 0.3 5.7 4.6
国内総固定資本形成 3.8 4.6 5.1 2.1 7.0 5.0 6.1
財・サービスの輸出 1.7 6.9 7.0 6.5 11.0 9.1 3.3
財・サービスの輸入 △ 1.2 8.2 4.8 4.2 11.5 0.9 4.0

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。

〔出所〕インドネシア中央統計庁(BPS)

貿易

鉱物性燃料が輸出入ともに減少、輸出の伸びが上回り貿易黒字は拡大

2025年の貿易額(通関ベース)は、輸出が前年比6.9%増の2,829億900万ドル、輸入が3.5%増の2,418億5,700万ドルとなり、ともに前年を上回った。輸出の伸びが輸入を上回ったことから、貿易黒字は前年比32.2%増の410億5,200万ドルに拡大した。

輸出額を品目別に見ると、鉱物性燃料が451億1,300万ドルで全体の15.9%を占め、最大の輸出品目となったものの、前年比では18.7%減だった。石炭価格の下落や中国・インド向け需要の減速などが影響した。一方、全体の12.1%を占める動植物性油脂は、パームオイルの国際市況が底堅く推移したことに加え、輸出量が伸びたこともあり、前年比28.1%増と大きく伸長した。その他、鉄鋼は8.4%増の279億7,100万ドル、電気機器は半導体デバイスが大きく伸長したこともあり27.5%増の191億9,300万ドル、輸送機器(鉄道除く)は10.6%増の121億7,700万ドルとなるなど、幅広い品目で輸出が拡大した。輸出先を国・地域別に見ると、最大の相手国である中国向けは670億3,800万ドルで前年比7.4%増となり、全体の23.7%を占めた。米国向けは17.7%増の309億5,800万ドルと好調だった。一方、インド向けおよび日本向けは、それぞれ9.9%減の183億2,500万ドル、14.9%減の176億1,100万ドルとなった。地域別では、ASEAN向けが8.3%増の582億7,000万ドルとなったほか、欧州向けは25.9%増の261億7,800万ドルと大きく伸びた。

輸入額を品目別に見ると、鉱物性燃料が368億200万ドルで全体の15.2%を占め、最大の輸入品目となったものの、国際市況の影響もあり、輸出と同様に前年比では9.5%減となった。一方、同じく全体の15.2%を占める一般機器・原子炉・ボイラーは、自動データ処理機械(PC、サーバー、HDD等)が51.9%増となったことなどから、366億4,200万ドルとなり、9.3%増だった。自動データ処理機械の輸入額が増加した背景として、インドネシア国内で活発化するデータセンター投資による、サーバーなどの調達需要の高まりがあるとみられる。その他、電気機器・部品は17.9%増の318億7,800万ドル、輸送機器(鉄道除く)は13.9%増の109億9,900万ドルとなった。輸入元を国別に見ると、中国からの輸入が875億3,700万ドルで前年比20.4%増となり、全体の36.2%を占めた。米国からの輸入も128億4,600万ドルで7.3%増となった一方、日本およびインドからの輸入は、それぞれ3.3%減の144億6,900万ドル、14.6%減の48億3,600万ドルだった。地域別では、ASEANからの輸入が7.6%減の476億8,600万ドル、欧州からの輸入も1.4%減の147億4,100万ドルとなった。

表2-1インドネシアの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 55,520 45,113 15.9 △ 18.7
石炭 30,481 24,483 8.7 △ 19.7
石油・ガス 8,908 7,399 2.6 △ 16.9
動植物性油脂 26,822 34,361 12.1 28.1
パームオイル(化学的加工除く) 20,013 24,423 8.6 22.0
鉄鋼 25,810 27,971 9.9 8.4
フェロアロイ 14,073 16,492 5.8 17.2
電気機器 15,054 19,193 6.8 27.5
半導体デバイス 791 3,310 1.2 318.7
電話機、携帯電話 1,982 2,163 0.8 9.2
輸送機器(鉄道除く) 11,011 12,177 4.3 10.6
乗用車(公共交通機関除く) 6,000 6,452 2.3 7.5
輸送用機器の部分品 2,118 2,133 0.8 0.7
真珠・貴石・貴金属類 8,879 11,665 4.1 31.4
身辺用細貨類およびその部分品 5,294 7,840 2.8 48.1
1,062 2,183 0.8 105.5
ニッケルおよびその製品 7,996 9,732 3.4 21.7
各種の化学工業生産品 6,517 9,498 3.4 45.7
工業用の脂肪性モノカルボン酸 5,064 7,570 2.7 49.5
一般機器・原子炉・ボイラー 6,942 8,163 2.9 17.6
印刷機・プリンター 1,529 1,549 0.5 1.4
履物 7,084 7,976 2.8 12.6
合計(その他含む) 264,706 282,909 100.0 6.9

〔出所〕 Global Trade Atlas〔原データはインドネシア中央統計庁(BPS)〕

表2-2インドネシアの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 40,662 36,802 15.2 △ 9.5
石油・歴青油(原油除く) 21,556 19,194 7.9 △ 11.0
石油・歴青油(原油に限る) 10,353 9,310 3.8 △ 10.1
一般機器・原子炉・ボイラー 33,514 36,642 15.2 9.3
自動データ処理機械 3,712 5,639 2.3 51.9
ブルドーザー、アングルドーザー、地ならし機、スクレーパーなど 1,975 2,190 0.9 10.9
電気機器・部品 27,046 31,878 13.2 17.9
電話機、携帯電話 6,657 9,275 3.8 39.3
集積回路 4,056 4,495 1.9 10.8
輸送機器(鉄道除く) 9,659 10,999 4.5 13.9
乗用自動車 2,591 3,534 1.5 36.4
トラクターなど部分品および附属品 3,171 3,132 1.3 △ 1.2
プラスチックおよびその製品 10,593 10,427 4.3 △ 1.6
鉄鋼 10,664 9,528 3.9 △ 10.7
鉄・非合金鋼の半製品 1,892 2,120 0.9 12.1
有機化学品 7,110 6,252 2.6 △ 12.1
各種の化学工業生産品 3,706 5,192 2.1 40.1
元素を電子工業用にドープ処理したもの 299 1,646 0.7 450.9
真珠・貴石・貴金属類 4,779 5,161 2.1 8.0
4,583 4,883 2.0 6.5
光学・測定・精密・医療用機器 4,421 4,782 2.0 8.2
医療用又は獣医用の機器 728 739 0.3 1.5
合計(その他含む) 233,659 241,857 100.0 3.5

〔出所〕 Global Trade Atlas〔原データはインドネシア中央統計庁(BPS)〕

表3-1 インドネシアの主要国・地域別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 182,997 183,736 64.9 0.4
ASEAN 53,817 58,270 20.6 8.3
シンガポール 12,198 13,699 4.8 12.3
マレーシア 12,025 13,100 4.6 8.9
フィリピン 10,741 10,222 3.6 △ 4.8
タイ 7,704 8,766 3.1 13.8
ベトナム 9,473 10,616 3.8 12.1
中国 62,439 67,038 23.7 7.4
日本 20,706 17,611 6.2 △ 14.9
インド 20,336 18,325 6.5 △ 9.9
韓国 10,755 10,145 3.6 △ 5.7
台湾 6,683 5,542 2.0 △ 17.1
オーストラリア 4,959 3,734 1.3 △ 24.7
香港 2,621 2,292 0.8 △ 12.6
USMCA 29,992 35,107 12.4 17.1
米国 26,313 30,958 10.9 17.7
欧州 20,790 26,178 9.3 25.9
EU27 17,321 19,421 6.9 12.1
英国 1,786 1,605 0.6 △ 10.1
湾岸協力会議(GCC)諸国 7,038 8,332 2.9 18.4
アラブ首長国連邦 3,061 4,027 1.4 31.6
合計(その他含む) 264,706 282,909   100.00 6.9

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはインドネシア中央統計庁(BPS)〕

表3-2 インドネシアの主要国・地域別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 173,018 180,504 74.6 4.3
ASEAN 51,603 47,686 19.7 △ 7.6
シンガポール 21,526 19,168 7.9 △ 11.0
マレーシア 10,919 11,125 4.6 1.9
タイ 9,708 8,906 3.7 △ 8.3
ベトナム 6,454 6,145 2.5 △ 4.8
中国 72,729 87,537 36.2 20.4
日本 14,965 14,469 6.0 △ 3.3
韓国 9,339 7,899 3.3 △ 15.4
オーストラリア 10,439 9,359 3.9 △ 10.3
インド 5,664 4,836 2.0 △ 14.6
台湾 3,937 4,414 1.8 12.1
香港 3,105 3,184 1.3 2.5
欧州 14,955 14,741 6.1 △ 1.4
EU27 12,834 12,442 5.1 △ 3.1
英国 973 1,075 0.4 10.4
USMCA 14,428 16,608 6.9 15.1
米国 11,968 12,846 5.3 7.3
湾岸協力会議(GCC)諸国 8,527 8,821 3.6 3.5
サウジアラビア 4,047 3,648 1.5 △ 9.9
アフリカ 9,390 8,716 3.6 △ 7.2
ナイジェリア 3,012 2,566 1.1 △ 14.8
合計(その他含む) 233,659 241,857 100.0 3.5

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはインドネシア中央統計庁(BPS)〕

通商政策

米国の相互関税導入を契機に市場多角化を加速

プラボウォ政権は2025年、米国の相互関税措置への対応を迫られる一方、EUやカナダ、ペルーとの経済連携協定(EPA)の交渉妥結・署名を進めるなど、通商関係の多角化を加速させた。

米国のトランプ大統領は2025年4月、インドネシア産品に32%の相互関税を課す方針を示した。これに対し、インドネシア政府は報復措置を取らず、外交交渉による解決を目指す方針を表明した。政府は、繊維製品、履物、電子機器、パーム油、ゴム、家具、水産品などの対米輸出への影響を注視し、労働集約型産業への支援策や代替市場の開拓を進める姿勢を示した。

その後、インドネシア政府は4月に米国通商代表部(USTR)との協議を開始し、エネルギーや農産物の対米輸入拡大、重要鉱物分野での協力、非関税障壁の見直しなどを交渉の焦点とした。7月には、米国がインドネシア産品への相互関税率を32%から19%に引き下げる一方、インドネシアが米国産工業品、食品、農産品などの約99%について関税障壁を撤廃する方向で枠組み合意に達した。共同声明では、国産化率要件、輸入許可、船積み前検査、知的財産、デジタル貿易、重要鉱物の輸出制限など、幅広い非関税措置も協議対象とされた。

米国関税への対応と並行して、インドネシアは主要市場とのEPA交渉を進展させた。EUとの包括的経済連携協定(IEU-CEPA)については、2025年7月の政治合意を経て、9月23日に交渉の実質合意が発表された。交渉開始(2016年)から約9年を経て実現したもので、米国関税措置を受けた貿易多角化の成果とも位置付けられる。同協定により、双方は関税品目ライン数ベースで98%超、輸入額ベースでは約99%の品目について関税を撤廃する。インドネシア産品のEU向け輸出については、関税品目の90.4%が発効時に即時撤廃され、その後の段階的削減により、5年以内に貿易額ベースで96%が自由化される見通しである。インドネシアにとっては、繊維、履物、アパレル、家具、パーム油などのEU市場アクセス改善が期待される。また、新たに設けられる「デジタル貿易章」には、越境データ流通、電子的送信に対する関税不賦課、個人データ保護、ソースコード開示要求の制限など、デジタル経済に対応した規定が盛り込まれる。同協定は法的精査や署名、批准手続きを経て、2027年初めの発効を目標としている。

二国間協定では、カナダおよびペルーとのCEPAが進展した。カナダとの包括的経済連携協定(ICA-CEPA)は2025年9月24日に署名され、カナダはインドネシア産品の約90%(関税品目ベース)、インドネシアはカナダ産品の約85%について関税自由化を約束した。同協定は、物品貿易に加え、原産地規則・手続き、税関手続き・貿易円滑化、電子商取引、投資、知的財産、競争政策、政府調達、貿易と持続可能な開発、透明性・腐敗対策、責任ある企業行動などを含む全26章で構成される。インドネシア政府は、2026年下半期のできるだけ早期の発効を目標に掲げる。ペルーとのCEPAは8月11日に署名された。交渉開始から14カ月での署名となり、まずは物品貿易を対象とし、サービスや投資は段階的に追加する方式が採られた。中南米諸国とのCEPAは、2019年に発効したチリとの協定に次いで2件目となる。

複数国・地域で構成される協定への参加に向けた動きも続いた。インドネシアは2024年9月に環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加入を申請している。2025年には、既存加盟国から加入に向けた政策基盤が整いつつあるとの前向きな評価が示されていたが、11月に開催された第9回TPP委員会(閣僚級会合)では、同じく加入申請エコノミーであるウルグアイについて加入手続き開始が決定した。インドネシア、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)については、2026年の適切な時期に交渉を開始するとされた。

経済協力開発機構(OECD)加盟に向けた手続きも進展した。OECDは2024年2月にインドネシアとの加盟協議開始を決定し、同年5月には加盟ロードマップを採択した。2025年6月には、インドネシア政府が初期覚書をOECD事務局長に提出し、国内法制や政策、制度運用とOECD基準との整合性を示す技術審査段階に入った。OECD加盟プロセスは、貿易・投資、腐敗防止、環境、競争政策など幅広い分野での国内改革を促すものであり、CPTPP加入やEUとのCEPA交渉とも補完関係にある。

2024年8月に署名された日インドネシア経済連携協定(JIEPA)改正議定書については、発効に向けた国内手続きが進められた。日本側では2025年4月23日に国会承認が完了した。一方、インドネシア側では2025年時点で国内手続きの完了が確認されておらず、発効には同国側での手続き完了が待たれる状況となった。なお、2026年3月の日インドネシア首脳会談では、プラボウォ大統領が批准手続の早期完了への期待を表明している。

2025年のインドネシアの通商政策は、米国の関税措置への対応を進める一方、EU、カナダ、ペルーとの経済連携協定を通じた市場多角化や、CPTPPおよびOECDへの加盟申請を通じた高水準ルールへの接近を同時に進展させた。外部環境の不確実性が高まる中で、インドネシアは保護主義的な国内産業政策を維持しつつも、対外的には経済連携の拡大を通じて輸出競争力と投資環境の改善を図る姿勢を強めている。

表4 インドネシアのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)〔注〕構成比については、輸出はインドネシア原産品(再輸出を除く)の輸出額を使用。
FTA 発効年月 インドネシアの貿易に占める構成比(2025年)
往復 輸出 輸入
発効済み アラブ首長国連邦・インドネシア包括的経済連携協定 2023年9月 1.2 1.4 1.0
韓国・インドネシア包括的経済連携協定 2023年1月 3.4 3.6 3.3
EFTA・インドネシア包括的経済連携協定 2021年11月 1.2 1.8 0.5
オーストラリア・インドネシア包括的経済連携協定 2020年7月 2.5 1.3 3.9
チリ・インドネシア包括的経済連携協定 2019年8月 0.1 0.2 0.0
日本・インドネシア経済連携協定 2008年7月 6.1 6.2 5.8
ASEAN物品貿易協定(ATIGA)
(旧:ASEAN自由貿易地域(AFTA)形成のための共通効果特恵関税(CEPT)協定)
1993年1月 20.3 20.6 19.9
署名 日本・インドネシア経済連携協定(改正議定書) 6.1 6.2 5.8
カナダ・インドネシア包括的経済連携協定 0.8 0.6 1.1
ペルー・インドネシア包括的経済連携協定 0.1 0.2 0.0
交渉中 EU・インドネシア包括的経済連携協定(IEU-CEPA) 6.1 6.9 5.1
インド・インドネシア包括的経済協力協定 4.4 6.5 2.0
メルコスール・インドネシア包括的経済連携協定(CEPA) 1.7 1.0 2.5
ユーラシア経済連合(EAEU)・インドネシア自由貿易協定 1.0 0.7 1.3
インドネシア・トルコ包括的経済連携協定 0.4 0.6 0.2
インドネシア・湾岸協力会議(GCC)自由貿易協定 3.3 2.9 3.7
加入申請 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP) 25.3 23.5 27.5

〔注〕構成比については、輸出はインドネシア原産品(再輸出を除く)の輸出額を使用。

〔出所〕Global Trade Atlas、世界のFTAデータベース、各種報道等

投資環境・外資誘致政策

外国企業の最低払込資本金・事業許認可・国産化率制度を見直し

2025年は、外国企業(PMA)に関する最低払込資本金規制や事業許認可制度、国産化率(TKDN)制度の見直しが進み、投資環境の改善が図られた。

(1)最低払込資本金・事業許認可

外国企業の最低払込資本金については、2025年投資・下流化省(BKPM)規則第5号(2025年10月施行)により要件が改正された。従来のBKPM規則2021年4号では、外国企業に対し、土地・建物を除く投資総額100億ルピア(約9,000万円、1ルピア=0.009円)超と同額の払込資本金が求められていた。新規則では、総投資額100億ルピア超という基準は維持しつつ、最低払込資本金を25億ルピアに引き下げ、設立時の負担を大幅に軽減した。今回の改正では、最低払込資本金が引き下げられた一方で、土地・建物を除く投資総額が、事業区分(5桁のKBLI番号、注)および事業ロケーション(場所)ごとに100億ルピアを超える必要があるという基準は維持された。また最低投資額の計算方法についていくつかの重要な緩和措置が導入され。例えば飲食業では、従来、1事業ロケーション(場所)ごとに100億ルピア超の投資が必要とされていたが、事業場所の定義が「県(Kabupaten)または市(Kota)」単位に変更された。これにより、同一県・市内に複数店舗を出店する場合でも、合計100億ルピア超の投資計画で足りることとなり、多店舗展開が容易になった。同様に、電気自動車(EV)充電ステーション事業では、投資額が「州(Provinsi)」単位で計算されることとなり、同一州内における広域的なインフラ整備が進めやすくなる。さらに、原則として投資額に含まれない土地・建物についても、不動産開発、宿泊施設、農業、プランテーション、畜産、水産養殖といった資本集約型産業では、例外的に投資額への算入が認められることとなった。

〔注〕
KBLIはインドネシアの標準産業分類コードで、事業許認可、外資規制や投資要件の確認などに用いられる。

次に、2021年政令第5号に代わる2025年政令第28号(2025年6月施行)により、事業許認可発行プロセスの改善が図られた。申請登録、書類審査、確認、許認可発行の各段階に処理期限が設定されたほか、所定の期間内に審査が処理されない場合には、自動的に承認が発行される「みなし承認制度」が導入された。

(2) 国産化率(TKDN)制度の見直し

国産化率(TKDN)制度については、2025年工業大臣規則第35号(2025年12月施行)により、大幅な見直しが行われた。TKDN値の算定方式が簡素化され、従来は製造コスト全体を精緻に計算する必要があったのに対し、新制度では、原則として一次部材のみを対象とし、当該部材にTKDN認証がない場合には、原産地情報に基づいて算定する方式に改められた。認証審査も迅速化され、通常認証の処理期間は従来の22営業日から10営業日に、中小企業向け申請については5営業日から3営業日に短縮される。また、TKDN認証の有効期間は従来の3年間から5年間に延長され、企業はより長期的な事業計画を立てやすくなる見込みである。

新たに導入されたインセンティブ制度も注目される。国内製造業への新規投資を行う企業には、TKDN値に一律25%相当の加点が自動的に付与される。さらに、インドネシア国内で研究開発(R&D)活動を行った企業には、最大20%のTKDN加点が与えられる。また、インドネシアで投資・生産を行い、国内経済に利益をもたらした企業の評価値である企業貢献比重(BMP)の算定方法も見直され、最大15%のBMP値を得るための要件が緩和された。例えば、複数の評価項目から有利な条件を選択できる仕組みとすることで、企業がBMPポイントを獲得しやすくなっている。

今回の新規則は、手続きの簡素化・迅速化とインセンティブの導入により、産業競争力の強化を図るものといえる。従来制度で指摘されてきた高い認証コストや有効期間の短さといった課題を踏まえ、透明性と実効性の向上が期待される。

(3)EV優遇措置

EVへの優遇策については、2024年財務大臣規則第10号(2024年2月施行)により、一部EVの輸入関税が2025年12月31日まで引き続き0%とされた。加えて、2025年財務大臣規則第12号(2025年2月施行)により、バッテリー式電気自動車(BEV)やハイブリッド自動車(HEV)などの新車販売促進を目的とする優遇措置が講じられた。国内で販売されるBEVのうち、一定の条件を満たす車両については、通常12%の付加価値税(VAT)のうち5~10ポイントを政府が負担する措置が講じられた。具体的には、TKDNが40%以上の特定四輪車および特定電動バス(運転者を含め10人以上を輸送するバス)は10ポイントの減税対象となる。一方、TKDNが20%以上40%未満の特定電動バスは5ポイントの減税対象となる。また、2024年には税制優遇策の導入が見送られていたHEVについても、一定の条件を満たす場合、奢侈(しゃし)税の3%を政府が負担することとなった。こうした取り組みにより、自動車卸売販売台数全体が2024年の86万6,000台から80万4,000台に減少する中でも、EV販売は拡大した。特に、BEVで優位性を有する中国系企業の販売台数は2024年の5万5,000万台から11万3,000台へと倍増し、卸売販売台数に占めるシェアも6.4%から14.1%へと大きく上昇した。

対内直接投資

対内直接投資は減少、シンガポール・香港・中国が上位を維持

インドネシア投資・下流化省(以下、BKPM)によると、2025年の対内直接投資額(実行ベース)は前年比6.2%減の563億300万ドルとなり、過去最高を記録した2024年から減少した。

国・地域別では、シンガポールが13.3%減となったものの、174億700万ドルで全体の30.9%を占め、引き続き首位を維持した。大手複合企業のジャーディンC&C(Jardine C&C)によるスラウェシ州の金鉱山に権益を有するアラフラ・スルヤ・アラム(Arafura Surya Alam、ASA)社の買収や、BWデジタル社によるバタム島ノングサ経済特区でのデータセンター開発に向けたフランス電機大手のシュナイダー・エレクトリック(Schneider Electric)との戦略的提携が締結された。また、インドネシア・シンガポール間では、グリーン経済分野での協力に向け、越境電力取引に関するMOU(覚書)や炭素回収・貯留(CCS)に関する覚書などが締結された。

シンガポールに次いで、香港が106億4,600万ドル(前年比29.6%増)、中国が75億700万ドル(7.4%減)となった。両国・地域とも、基礎金属・金属製品等向け投資の割合が高く、それぞれ48.0%、53.3%を占めた。中国の車載電池大手CATL傘下の寧波普勤時代(CBL)が、インドネシア国営企業コンソーシアムとともに、ニッケル精錬所やEV向けバッテリー工場の建設に着手したほか、中国の電池リサイクル大手GEMは、インドネシア政府系投資ファンドのダヤ・アナガタ・ヌサンタラ(ダナンタラ)との間で、ニッケル資源開発に向けた合意書を締結した。

日本は31億2,900万ドル(前年比9.7%減)で、マレーシアの44億6,600万ドル(5.2%増)に次ぐ5位となり、前年の6位から順位を上げた。

産業別では、第一次産業が59億6,700万ドル(前年比18.5%減)、第二次産業が338億2,500万ドル(3.7%減)、第三次産業が165億1,100万ドル(6.0%減)となった。

表5 インドネシアの国・地域別対内直接投資〔実行ベース〕(単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 2024年 2025年
金額 件数 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 48,868 47,254 83.9 △ 3.3
日本 3,464 26,801 3,129 5.6 △ 9.7
中国 8,107 74,833 7,507 13.3 △ 7.4
香港 8,216 22,146 10,646 18.9 29.6
韓国 2,988 23,786 1,984 3.5 △ 33.6
ASEAN 24,810 22,697 40.3 △ 8.5
シンガポール 20,075 70,668 17,407 30.9 △ 13.3
マレーシア 4,244 4,466 7.9 5.2
タイ 390 526 0.9 34.9
インド 173 8,769 238 0.4 37.3
オーストラリア 739 15,242 719 1.3 △ 2.7
欧州 4,959 89,277 3,337 5.9 △ 32.7
EU27 3,555 2,371 4.2 △ 33.3
英国 745 8,612 488 0.9 △ 34.5
中東 96 408 0.7 324.1
湾岸諸国会議(GCC) 45 275 0.5 506.1
北米 4,190 3,591 6.4 △ 14.3
米国 3,697 10,408 2,974 5.3 △ 19.5
アフリカ 279 4,462 389 0.7 39.1
中南米 1,334 961 1.7 △ 28.0
ブラジル 10 8 0.0 △ 19.5
合計(その他含む) 60,014 392,191 56,303 100.0 △ 6.2

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

〔出所〕インドネシア投資・下流化省(BKPM)、インドネシア中央統計庁(BPS)

表6 インドネシアの業種別対内直接投資〔実行ベース〕(単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕 産業分類は国際標準産業規格(ISIC)改訂第3版に基づくもの。金融、石油・ガスを除く。「農業」はプランテーションなどを含む。
業種 2024年 2025年
金額 件数 金額 構成比 伸び率
第一次産業 7,319 12,331 5,967 10.6 △ 18.5
農業・牧畜業 1,827 5,154 1,083 1.9 △ 40.7
林業 85 609 112 0.2 30.9
水産業 218 1,610 29 0.1 △ 86.5
鉱業 5,188 4,958 4,743 8.4 △ 8.6
第二次産業 35,131 63,636 33,825 60.1 △ 3.7
食品 3,463 11,015 2,274 4.0 △ 34.3
繊維 948 5,497 689 1.2 △ 27.3
皮革製品・製靴 904 3,121 1,512 2.7 67.3
木材加工 144 3,019 174 0.3 21.5
紙・製紙 4,777 4,252 3,112 5.5 △ 34.9
化学・医薬品 4,126 7,167 3,849 6.8 △ 6.7
ゴム・プラスティック 927 3,843 1,290 2.3 39.1
非金属鉱物 1,142 1,746 998 1.8 △ 12.6
基礎金属 ・金属製品・非機械および器具 13,557 7,744 14,650 26.0 8.1
機械・電機・医療・光学機器・時計等 2,089 6,107 2,279 4.0 9.1
自動車・輸送機器 2,503 4,040 2,258 4.0 △ 9.8
その他 552 6,085 741 1.3 34.1
第三次産業 17,564 316,196 16,511 29.3 △ 6.0
電気・ガス・水道 2,469 3,611 2,778 4.9 12.5
建設 767 10,499 454 0.8 △ 40.8
商業・修理業 2,007 137,937 1,981 3.5 △ 1.3
ホテル・レストラン 944 38,289 978 1.7 3.5
運輸・通信・倉庫業 4,654 15,145 3,277 5.8 △ 29.6
不動産・工業団地・オフィス関連 3,089 37,131 2,547 4.5 △ 17.6
その他 3,632 73,584 4,496 8.0 23.8
合計 60,014 392,163 56,303 100.0 △ 6.2

〔注〕 産業分類は国際標準産業規格(ISIC)改訂第3版に基づくもの。金融、石油・ガスを除く。「農業」はプランテーションなどを含む。

〔出所〕インドネシア投資・下流化省(BKPM)、インドネシア中央統計庁(BPS)

政府系投資ファンド「ダナンタラ」を設立

インドネシア政府は2025年2月24日、政府系投資ファンド「ダヤ・アナガタ・ヌサンタラ(Daya Anagata Nusantara、略称:ダナンタラDanantara)」を発足させた。ダナンタラは、シンガポールの政府系投資会社「テマセク・ホールディングス(Temasek Holdings)」をモデルにしていると報じられており、国営石油会社プルタミナ(Pertamina)、国営電力公社PLN、国営通信テルコム・インドネシア(Telkom Indonesia)などの国営企業(BUMN)を傘下に置く。これら国営企業からの配当などを原資として、国内産業の下流化、食糧安全保障、エネルギー安全保障、医療などの分野へ投資する見込みだ。最高経営責任者(CEO)には、ロサン・プルカサ・ルスラニ投資・下流化相が任命された。なお、ダナンタラの投資配分額は、2025年が約80億ドル、2026年が140億ドルとなる見込みである。

具体的な投資・融資案件としては、ガルーダ・インドネシア航空(Garuda Indonesia)の経営再建に向けた約4億ドルの融資、チャンドラ・アスリ・グループ(Chandra Asri Group)およびインドネシア投資公社(INA)と共同で進める総額8億ドル相当の化学品製造工場建設プログラムへの出資などが公表された。後者の計画では、ダナンタラとINAが共同で2億ドルを出資する予定である。

他国・機関との連携も進んでいる。2025年4月には、カタール投資庁と共同投資ファンド設立に関する合意書を締結した。続いて5月には、オーストラリアの政府系ファンド「Future Fund」と戦略的パートナーシップを締結し、中国の政府系ファンド「CIC」とも共同投資に向けた覚書を締結した。日本との関係では、7月に国際協力銀行(JBIC)との間で、脱炭素、通信・デジタルインフラなどの分野における業務協力に関する覚書を締結している。

ダナンタラは現在、保有する約9,000億ドルの資産を2030年までに3倍にすることを目標としている。その一環として、国有企業の再編にも着手しており、インドネシア政府は1,000社超に上る企業を 200社程度に統合する方針を示している。

一方で、ダナンタラの運営を巡っては懸念も示されている。最高執行責任者(COO)や監督役会のトップといった重要な役職に同じ省庁の出身者が就いていることから、一部有識者からは、運営が偏る恐れがあるほか、投資判断や業績に関する情報開示の透明性について懸念する声が上がっている。

対日関係

対内直接投資額で日本は5位に上昇、ジャワ島への投資が中心

2025年の日本の対インドネシア向け輸出は、前年比2.8%減の126億2,000万ドルとなった。主要品目では、最大品目の一般機器・原子炉・ボイラーが29億1,000万ドルで2.5%増となった一方、輸送用機器(鉄道除く)は19億9,000万ドルと15.5%減だった。中でも、乗用自動車は50.0%減と大幅に落ち込んだ。これは、インドネシアにおける自動車卸売販売台数の減少に加え、EV優遇政策などが影響したとみられる。日本のインドネシアからの輸入も、13.0%減の201億7,000万ドルだった。輸入全体の28.1%を占める鉱物性燃料は、国際石炭価格の下落などを背景に13.4%減となった。一方、電気機器やニッケル製品は、ともに9%前後増加した。

BKPMによると、日本からの直接投資額(実行ベース)は前年比9.7%減の31億2,900万ドルだったものの、国・地域別順位では前年の6位から5位へ上昇した。業種別に見ると、自動車・輸送機器向け投資が5.7%減の11億8,200万ドルで全体の37.8%を占めた。一方、化学・医薬品は16.6%増の2億9,200万ドル、ゴム・プラスチックは26.0%増の2億2,500万ドルとなった。地域別では、西ジャワ州が16億3,500万ドルで全体の52.2%を占め、以下、ジャカルタ首都特別州(5億3,100万ドル)、バンテン州(3億7,000万ドル)が続いた。日本の投資は過半がジャワ島内に集中しており、スラウェシ島やマルク諸島などジャワ島外への投資比率が高い中国や香港とは対照的な構造となっている。

日本からインドネシアへの直接投資額は近年伸び悩みをみせているものの、約2億8,000万人の人口を抱える巨大市場と今後の成長性への期待から、進出や事業拡大を図る日系企業は少なくない。特にインドネシアでは、日本食レストランの増加が顕著であり、それに伴い飲食関連企業の進出も目立っている。農林水産省の調査によると、インドネシアの日本食レストラン数は、2023年の4,000店から、2025年には6,580店に急増している(2025年11月28日付「海外における日本食レストラン数の調査結果(令和7年)の公表について」)。飲食分野では、ロイヤルホールディングスが「天丼てんや」を出店したほか、回転ずしチェーンのカッパ・クリエイトがジャカルタに子会社を設立した。また、トリドールホールディングス傘下のZUNDが「ラー麺ずんどう屋」を開業するなど、日本食関連企業の進出が相次いだ。このほか、ハウス食品グループが子会社を設立し、阪急阪神不動産はバリ島の商業・ホテルの複合施設の一部を取得、不動産事業に参画した。さらに、自動車部品製造のアイシン高丘は、新首都ヌサンタラが位置するカリマンタン島において、アブラヤシからパーム油を精製する過程で生じるヤシ殻を原料としたバイオ燃料製造工場を稼働させた。

表7-1 日本の対インドネシア主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機器・原子炉・ボイラー 2,841 2,910 23.1 2.5
ブルドーザー、アングルドーザーなど 293 352 2.8 20.4
エンジン部品 330 289 2.3 △ 12.3
輸送用機器(鉄道除く) 2,355 1,990 15.8 △ 15.5
自動車の部分品 1,198 1,176 9.3 △ 1.9
乗用自動車 738 369 2.9 △ 50.0
鉄鋼 1,810 1,722 13.6 △ 4.8
電気機器 1,142 1,120 8.9 △ 1.9
電気回路の開閉用、保護用または接続用の機器 173 176 1.4 1.9
ゴム製品 624 536 4.2 △ 14.2
ゴム製の空気タイヤ 348 250 2.0 △ 28.3
銅およびその製品 460 469 3.7 1.9
精製銅又は銅合金の塊 405 417 3.3 2.8
プラスチック 480 466 3.7 △ 3.0
鉄鋼製品 386 390 3.1 1.0
ねじ、ボルト、ナットなど 150 131 1.0 △ 12.2
光学・測定・精密・医療用機器 361 370 2.9 2.3
自動調整機器 155 173 1.4 11.4
無機化学品および貴金属など 297 344 2.7 15.8
貴金属の無機又は有機の化合物 106 128 1.0 20.2
合計(その他含む) 12,980 12,620 100.0 △ 2.8

〔出所〕Global Trade Atlas (原データは 財務省「貿易統計(通関ベース)」)

表7-2 日本の対インドネシア主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 6,536 5,660 28.1 △ 13.4
石炭 4,339 3,357 16.6 △ 22.6
石油・ガス 2,069 2,278 11.3 10.1
電気機器 1,801 1,959 9.7 8.8
電気絶縁をした線、ケーブル、その他の電気導体 907 930 4.6 2.5
ニッケルおよび同製品 1,064 1,163 5.8 9.3
ニッケルのマットなど 1,041 1,119 5.5 7.5
ゴム製品 820 875 4.3 6.7
天然ゴム、バラタ、グタペルカなど 668 718 3.6 7.4
木製品等(除家具) 824 821 4.1 △ 0.4
合板、ベニヤドパネルなど 439 432 2.1 △ 1.5
鉱石、スラグおよび灰 2,338 754 3.7 △ 67.7
銅鉱 2,322 740 3.7 △ 68.2
一般機器・原子炉・ボイラー 644 704 3.5 9.4
印刷機・プリンター 185 183 0.9 △ 1.2
たばこおよび製造たばこ代用品 531 681 3.4 28.4
輸送用機器(鉄道除く) 450 654 3.2 45.4
輸送用機器の部分品 322 400 2.0 24.0
貨物自動車 80 163 0.8 104.8
履物およびゲートルその他 440 578 2.9 31.5
合計(その他含む) 23,171 20,170 100.0 △ 13.0

〔出所〕Global Trade Atlas (原データは 財務省「貿易統計(通関ベース)」)

成長市場としての期待が高い一方で、中国企業の台頭が進む

ジェトロの「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、2025年に営業利益で黒字を見込むインドネシア進出日系企業の割合は69.1%で、前年の72.1%から3.0ポイント低下したものの、ASEANではフィリピンに次いで高い水準となった。黒字企業の割合は、製造業で68.7%、非製造業で69.7%となった。業種別では、製造業のうちゴム・窯業・土石が91.7%、プラスチック製品が80.0%と高いほか、非製造業では建設業も78.6%が黒字と回答した。

最も競合する競争相手(国・地域別)については、「地場企業」と回答した企業の割合が34.8%で最多となり、次いで「日系企業」(26.4%)、「中国企業」(25.8%)と続いた。2024年との比較では、「地場企業」および「日系企業」の割合がそれぞれ3.9ポイント減、5.1ポイント減となった一方、「中国企業」の割合は8.4ポイント増加した。BEV関連で中国企業の台頭が著しい輸送機器業では前年比11.1ポイント増加するなど、全体として中国企業の存在感の高まりがうかがえる結果となった。

インドネシアの投資環境上のメリットについては、「市場規模・成長性」と回答した企業の割合が74.6%で最多となり、調査対象であるASEAN 9カ国の中でも最も高かった。2位以下の「人件費の安さ」(45.7%)、「ワーカー等の雇いやすさ」(34.8%)と比べて大きな差がみられ、人口増加や所得向上に伴う経済拡大への強い期待感の表れと考えられる。一方、投資環境上のリスクとしては、「不安定な政治・社会情勢」(70.9%)が最多で、「現地政府の不透明な政策運営」(68.2%)、「税制・税務手続きの煩雑さ」(64.1%)が続いた。人件費の高騰については、在インドネシア日系企業の2025年の平均昇給率(前年比)は5.4%で、ベトナム(5.5%)をやや下回った。なお、2025年の昇給率見通しを業種別に見ると、製造業が5.8%、非製造業が5.0%となり、製造業での伸びが相対的に高い結果となった。「不安定な政治・社会情勢」が最多となった背景には、本調査のアンケート実施期間中(2025年8月19日~9月17日)に発生した、国会議員の高額住宅手当への反発を契機とした大規模な抗議デモ(2025年9月5日付ジェトロ記事参照)の影響があったと考えられる。また、投資環境上のメリットとして「人件費の安さ」が2位(45.7%)、リスクとして「人件費の高騰」が4位(61.5%)となっており、いずれも人件費に関する項目が上位に位置した。これは、例えば、2026年の全38州平均の最低賃金が月額350.9万ルピア(約3.2万円、1ルピア=約0.009円)と、人件費が比較的安価である一方、毎年約5%前後で昇給率が推移していることに対するリスク意識の表れと考えられる。

なお、今後1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」と回答した企業の割合は、前年の47.3%から45.9%へとやや低下した。業種別に「拡大」と回答した割合を見ると、製造業では食料品が80.0%、非製造業では販売会社業が70.8%と高かった。

表8-1 インドネシアにおける投資環境上のメリット(上位5項目、複数回答)(単位:%)〔注〕カッコ内は有効回答数。
投資環境上のメリット(339)
1 市場規模/成長性 74.6
2 人件費の安さ 45.7
3 ワーカー等の雇いやすさ 34.8
4 取引先(納入先)企業の集積 21.8
5 駐在員の生活環境が優れている 19.2

〔注〕カッコ内は有効回答数。

〔出所〕2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)

表8-2 インドネシアにおける投資環境上のリスク(上位5項目、複数回答)(単位:%)〔注1〕カッコ内は有効回答数。 〔注2〕政策運営とは産業政策、エネルギー政策、外資規制などを指す。
投資環境上のリスク(340)
1 不安定な政治・社会情勢 70.9
2 現地政府の不透明な政策運営(注2) 68.2
3 税制・税務手続きの煩雑さ 64.1
4 人件費の高騰 61.5
5 法制度の未整備・不透明な運用 60.0

〔注1〕カッコ内は有効回答数。
〔注2〕政策運営とは産業政策、エネルギー政策、外資規制などを指す。

〔出所〕2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 5.1 5.0 5.1
1人当たりGDP (米ドル) 4,920 4,960 5,083
消費者物価上昇率 (%) 2.6 1.6 2.9
失業率 (%) 5.3 4.9 4.7
貿易収支 (100万米ドル) 46,269 39,839 49,853
経常収支 (100万米ドル) △ 2,042 △ 8,583 △ 1,454
外貨準備高 (100万米ドル) 146,384 155,719 156,471
対外債務残高 (100万米ドル) 406,722 425,118 433,185
為替レート (1米ドルにつき、ルピア、期末平均) 15,416 16,162 16,782

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
1人当たりGDP、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:インドネシア中央統計庁(BPS)
貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高、為替レート:インドネシア中央銀行