汚泥処理対策シンポジウム ‐ 日本の汚泥処理技術に対して高い関心

2010年11月12日

ジェトロは2010年11月12日、上海で「汚泥処理対策」をテーマとしたシンポジウムを開催した(上海世博(集団)有限公司と共催)。中国では下水道の普及に伴い汚泥処理対策が急務になっており、シンポジウムでは上海市側の専門家2名が上海市の汚泥処理の現状等について紹介するとともに、日本側専門家2名が日本の経験や取組み状況を紹介した。シンポジウム終了後には技術交流会として日本の汚泥処理関連企業14社がそれぞれ事業紹介を行った。活発な質疑応答や技術交流は、下水汚泥の約8割を再利用している日本の汚泥処理技術に対する中国側の関心の高さを裏付けるものであった。要旨は以下のとおり。

汚泥の無害化処理率は10%未満であり、処理能力の向上が急務

上海環境工程設計科学研究員有限公司 楊新梅 高級工程師

「上海市の汚泥処理の現状と発展の趨勢」
2008年末の上海市の汚水処理量は481.18万立方メートル/日(処理率75.5%)、汚水処理後に残る汚泥量は2,575立方メートル/日(うち水分約80%)となっているが、汚泥の無害化処理率は10%未満であり、処理能力が著しく遅れている。2012年までに上海市全体の汚水総量は810万立方メートル/日に達する見込みであり、処理する必要のある汚泥発生量は3,193立方メートル/日となる。これまで中国では汚水処理後に残る汚泥はそのまま埋め立てられることが多かったが、汚染の恐れもあることから汚泥処理を義務付けていく方向にある。上海では焼却処理後の汚泥について、市内中心部では主に建材(セメント・煉瓦等)として利用を行うと同時に土地での活用と埋め立てを並行して行い、郊外地区では主に土地での利用を行い、建材としての活用と埋め立てを並行して行う。

上海市石洞口汚水処理場 汪 喜生総工程師

「上海市石洞口都市汚水処理場 汚泥乾燥・焼却システムについて」
石洞口汚水処理場は中国で最も早く汚泥の乾燥、焼却装置を導入した汚水処理場であり、2004年11月に正式に運行開始した。脱水した汚泥を乾燥機内に輸送して水分10%以下に乾燥処理を行い、乾燥後汚泥は850℃以上の高温で焼却される。焼却による熱エネルギーは乾燥システムにて循環利用され、脱水汚泥の乾燥と焼却により汚泥の減量化、無害化を行う。

同汚水処理場の汚水処理能力は40万立方メートル/日、汚泥は乾燥処理量213トン/日(水分70%)、乾燥後焼却量64トン/日である。

中国の汚泥処理の現状は日本の約20年前の状況に相当、日中ビジネス協力は双方にプラス

荏原エンジニアリングサービス(株)三浦永次 執行役員

「汚泥処理技術の紹介と提案」
中国の各地方の状況やニーズに合わせて最適な汚泥処理技術を提供する。例えば、大都市の大規模下水処理場や地域に集約して設置した中小規模の下水処理場向けには、汚泥焼却炉による燃焼処理等、基本的には既存の日本式の技術が合理的である。中小規模都市や農村地域の下水処理場向けには、安価な設備費で下水汚泥とバイオマス等を同時に処理するメタン発酵技術等が現実的である。

こうした技術を備えた機器の単体販売だけではなく、中国のパートナーと共同開発・技術移転・知的財産権の共有を図りながら、中国において継続的な事業展開を目指す。

月島機械(株)企画開発本部経営企画部 松田圭祐 副主事

「実績のある下水汚泥の最適処理技術と最新技術のご紹介」
汚泥処理に関する同社の実績と技術を紹介する。乾燥設備としては汚泥の機械への付着を防ぐための傾斜式ディスクを採用した間接加熱式乾燥機、焼却施設としては砂を入れた炉内に下部から空気を均一に送り、砂を激しくかき混ぜて燃焼効率を高める流動床焼却炉がある。また、下水汚泥を有価物として石炭代替燃料にする、下水処理場の汚泥消化により発生するメタンガスを貯蔵・発電等へ利用するなど、資源の有効利用技術がある。

中国の汚泥処理の現状は日本の約20年前の状況に相当し、日本の試行錯誤の経験を踏まえて中国各地の状況やニーズに合った最適な技術を導入することはお互いにとって大きなプラスになる。

質疑応答では中国と日本の汚泥性状の違いとその要因、汚泥の焼却処理による大気汚染の可能性、資源の有効利用技術に対する経済性評価など、多くの質問が寄せられた。シンポジウム後の技術交流会では、前述の日本企業2社のほか、12社が参加して中国企業・団体に対して自社の会社概要及び技術の紹介を行った。リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3Rに基づく日本の汚泥処理技術への関心は高く、活発なビジネス交流が行われた。

シンポジウム

技術交流会