コートジボワールの貿易投資年報
要旨・ポイント
- 2024年の実質GDP成長率は、堅調な内需に牽引され6.0%の安定した伸びを維持。
- 輸出入額ともに過去最高を更新、カカオ豆の国際市況高騰で貿易収支は大幅な黒字。
- 2024年の対内投資は前年の大幅増の反動で大幅減。
- 日本の輸出が大幅減少、輸入は急増、貿易収支は日本の赤字に転じた。
公開日:2025年11月5日
マクロ経済
実質GDP成長率は6.0%、農業が回復、鉱業が好調
経済・計画・開発省(DGE)によると、民間消費や設備投資による堅調な内需が牽引し、2024年の実質GDP成長率は6.0%となった。政府はIMFとの間で、拡大クレジットファシリティ(Extended Credit Facility:ECF)と拡大信用供与措置(Extended Fund Facility:EFF)に加えて、強靭性・持続可能性ファシリティ(Resilience and Sustainability Facility:RSF)で構成される総額49億ドルの金融支援パッケージを締結した。これにより、2030年までに上位中所得国入りを目指す「国家開発計画2021~2025」の下で、マクロ経済の安定維持と気候変動対策や経済的ショックへの強靭性向上に向けて経済改革を加速している。政府には、持続可能で包摂的な経済成長と財政再建を両立させるため、バランスの取れた政策運営が求められている。中期的な経済・財政見通しは改善されており、それが2024年10月の大手格付け機関によるコートジボワール国債の長期信用格付けの引き上げにも反映され、サブサハラ・アフリカで3位の高格付けを維持している。
分野別の生産動向を数量ベースで見ると、底堅い内需を反映して第3次産業が拡大(前年比6.7%増)しているほか、輸出の伸びを受けて、石油精製や鉱業部門を中心とする第2次産業も堅調(5.8%増)に推移している。2023年にエルニーニョ現象など異常気象の頻発で不調だった第1次産業(2.6%増)は天候の回復によって好調に転じた。第1次産業では、食用作物(4.3%増)が引き続き好調であったほか、前年にカカオをはじめ生産が不振だった輸出用作物(1.4%増)もプラスに転じた。第2次・3次産業では、鉱業(13.9%増)、石油精製(14.7%増)、食品加工(1.2%増)、エネルギー(2.6%増)、その他製造業(8.9%増)、運輸(6.3%増)、電気通信(6.8%増)、小売流通(5.9%増)、その他サービス業(7.6%増)とも総じて好調に推移した。唯一、建設・公共事業(1.1%減)が、これまで建設需要を下支えしてきた大規模公共事業が一段落したことから、マイナスに転じた。
実質GDP成長率を需要項目別にみると、政府最終消費支出は教育、保健衛生、治安、農業開発など優先分野への重点配分による支出の効率化で前年比4.4%増となった。GDPの7割弱を占める民間最終消費支出は、雇用や所得環境の改善、インフレ率の鈍化が消費を下支えし、安定的に推移したことから4.0%増となった。民間投資は、インフラ整備やエネルギー、デジタル化推進関連政策が企業の投資マインドを刺激したことに加えて、製造業、サービス業での設備投資や建設投資のほか、資源、エネルギーを中心に海外からの直接投資の増加も相まって5.8%増となった。公共投資は、2024年に一段落したことから0.2%増にとどまったが、2025年には新規に複数の大型公共事業が着手される見込みだ。
インフレ率は物価対策、金融引き締めで3.5%に鈍化
2024年のインフレ率は前年の4.4%から3.5%に鈍化した。国際的なエネルギー価格の高止まりや、地政学リスクの高まりで食料品を中心に物価上昇圧力が高まったことから、西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)地域の収斂目標値である3%を上回ったが、一方で、特定の税金免除、消費財の価格上限設定、価格監視など政府の物価高騰対策や金融引き締め維持が奏功した。2025年には目標水準に収束する見込みだ。
政府は2025年の実質GDP成長率を6.5%と予測している。公共事業やインフラ投資の積み増しや個人消費の喚起を狙った内需刺激策の継続などによって2025年の国家予算を大幅に増額しており、これらを牽引役に今後も6~7%の成長を見込んでいる。2025年10月の大統領選挙が平和裏に実施されれば、国内情勢のさらなる安定化を背景に経済活動に弾みがつくと期待される。一方、近年の異常気象による農業の生産低迷、一次産品価格の大幅な変動、地政学上の緊張の高まり、さらには主要国・地域が規制強化に動く通商政策の影響など世界経済を取り巻く環境は厳しさを増しており、景気の先行き不透明感も懸念されている。
貿易
輸出入額とも過去最高、カカオ豆高騰で、貿易収支は大幅黒字に
2024年の貿易は、輸出額が前年比3.9%増の12兆7,714億CFAフラン(約211億ドル、1ドル=約606.4CFA フラン)、輸入額が1.8%増の11兆5,584億CFAフランで、ともに過去最高を更新した。カカオ豆の国際価格高騰が輸出額を押し上げ、輸出額の伸びが輸入額のそれを大幅に上回ったことから、貿易収支は1兆2,129億CFAフランの黒字となった。
主要輸出品目をみると、最大のカカオ豆は、生産低迷により数量は20.9%減少したが、国際価格高騰によって金額が19.8%増加し、輸出総額に占める割合が18.9%となった。カカオ調整品(構成比15.3%)は、原料のカカオ豆の供給不安が響き数量は5.4%減少したが、価格高騰によって金額は30.0%増加した。金(14.9%)は、開発の進展による生産増加と国際市況高騰が相まって、数量で13.5%増、金額で33.5%増となった。石油製品(10.7%)は、生産が好調だったことから数量は10.0%増加したが、油価下落により金額は43.7%減少した。原油(3.8%)は、油田開発の進展に伴う生産増加により数量は25.0%増加し、それによって油価下落を補い金額は23.5%増加した。ゴム(11.7%)は、生産減少により数量は7.0%減少したが、国際価格高騰により金額は19.7%増加した。カシューナッツ(3.7%)は、生産減少が響いて数量、金額ともそれぞれ24.8%減、23.9%減となった。
主要輸入品目をみると、原油は数量で9.9%減少し、油価下落と相まって金額で15.9%減となり、輸入総額に占める割合が12.7%となった。石油製品(構成比11.5%)は需要増により数量は23.7%増、金額が11.5%増だった。一般機械(6.8%)は数量で0.4%増、金額が1.7%増となった。船舶(6.7%)は近年の需要増を受けて、数量は63.7%増、金額が2.2倍と大幅に伸びた。乗用自動車を含む輸送機器(5.1%)は数量が15.1%減、金額が14.9%減となった。国内の需要増と輸入価格の上昇と相まって、コメ(5.3%)は数量が23.6%増、金額が39.3%増、魚介類(4.5%)は数量が0.8%増、金額が2.2%増だった。鉄鋼(4.5%)は数量が2.1%減となり、金額も10.3%減少した。プラスチック製品(3.4%)は数量が0.6%増加したが、輸入価格の下落によって金額は8.2%減少した。
スイス向け金輸出と中国からの船舶輸入が大幅増
輸出を国・地域別に見ると、 伸び率、構成比ともにスイスが最大だった。金額は前年比41.3%増、数量は93.1%増と大きく伸び、構成比は13.1%に拡大して前年の3位から1位に浮上した。増加や拡大の要因は金の急増で、スイスへの輸出総額の99.4%を金が占めた。オランダ(構成比12.2%)はカカオ豆およびその加工品、原油、カシューナッツが伸びて前年比21.8 %増加した。米国(4.4%)はカカオ調整品、ゴム、カシューナッツ、木材を中心に20.5%増、ドイツ(4.2%)は原油の急増に加え、カカオ豆およびその加工品、ゴム、カシューナッツが好調で35.3%増、ベルギー(3.9%)はカカオ豆、ゴム、コーヒーが急増したことで34.7%増、フランス(3.8%)はカカオ豆およびその加工品、ゴム、カシューナッツが伸びて19.0%増、スペイン(3.5%)はカカオ豆およびその加工品、ゴム、コーヒー、カシューナッツ、バナナ、パーム油が大幅に伸びて92.8%増となった。一方、マリ(7.7%)は最大品目の石油製品が半減し46.2%減、ベトナム(3.9%)はカシューナッツの不調で9.2%減、ブルキナファソ(3.6%)は最大品目の石油製品が急減したことから34.0%減、中国(3.4%)は原油が全減となり7.6%減、マレーシア(3.4%)は2023年のゴム急増の反動で21.6%減少した。
輸入を国・地域別にみると、構成比15.3%を占める中国が最大で、船舶の大幅増に加え、機械機器、鉄鋼、冷凍魚が伸びて4.1%増加した。ナイジェリア(構成比12.1%)は9割強を占める原油の油価下落が響いて12.5%減、バハマ(6.0%)は海上油田開発向け浮遊式堀削用・生産用プラットホームの需要増で2.7倍となった。フランス(5.7%)は医薬品・医療用品、小麦、タバコ、精油・調整香料が増え3.3%増、ベルギー(4.5%)は石油製品、医薬品・医療用品、酪農品が大幅に伸びて33.6%増、米国(4.5%)は石油製品、輸送・電気・測定・医療用機器、船舶が好調で9.6%の増加となった。また、インド(4.2%)はコメ、輸送機器、鉄鋼製品などが振るわず17.7%減、韓国(3.1%)は船舶の需要増で2.7倍、ベトナム(2.7%)はコメと船舶が急増したことから37.0%増、さらにイタリア(2.4%)は石油製品の急増に加え、鉄鋼製品、紙・製紙用パルプ、電気機器が伸びて33.7%増、ロシア(2.3%)は肥料を除く石油製品、冷凍魚などが不振で11.4%減少した。
EUはコートジボワールにとって、貿易総額の約3割を占める最大の貿易相手であることから、コートジボワールは、EUおよび英国と暫定経済連携協定(EPA)を締結し、これら国・地域の製品に対する段階的な自由化を進めている。2029年までに対EU輸入、対英国輸入のそれぞれ約88%に相当する5,615品目の関税が撤廃される予定だ。これによりEUおよび英国とコートジボワールの間では貿易の円滑化が進み、双方の市場アクセスが改善されることで貿易、投資の拡大が期待される。一方、EUでは2025年12月30日(当初の2024年12月30日から後倒し)からカカオ、コーヒー、パーム油など特定の商品作物などを対象とする森林破壊防止のデューディリジェンス義務化規則の適用が開始される予定で、コートジボワール最大の輸出産品であるカカオ豆の対EU輸出への影響が懸念される。
| 品目 | 2023年 | 2024年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 一次産品 | 6,268,742 | 7,310,542 | 57.2 | 16.6 |
農畜水産物
|
147,242 | 43,551 | 0.3 | △ 70.4 |
輸出用農産物
|
4,204,901 | 4,790,129 | 37.5 | 13.9 |
カカオ豆
|
2,018,738 | 2,419,453 | 18.9 | 19.8 |
カシューナッツ
|
629,034 | 478,469 | 3.7 | △ 23.9 |
綿
|
123,488 | 166,325 | 1.3 | 34.7 |
ゴム
|
1,244,014 | 1,489,406 | 11.7 | 19.7 |
その他
|
189,627 | 236,476 | 1.9 | 24.7 |
鉱物製品
|
1,916,599 | 2,476,862 | 19.4 | 29.2 |
原油
|
392,539 | 484,850 | 3.8 | 23.5 |
金
|
1,427,153 | 1,905,920 | 14.9 | 33.5 |
その他
|
96,908 | 86,092 | 0.7 | △ 11.2 |
| 加工品 | 5,838,631 | 5,460,824 | 42.8 | △ 6.5 |
一次加工品
|
2,182,339 | 2,750,583 | 21.5 | 26.0 |
カカオ調整品
|
1,503,712 | 1,955,454 | 15.3 | 30.0 |
パーム油
|
184,340 | 190,406 | 1.5 | 3.3 |
精油
|
192,499 | 174,686 | 1.4 | △ 9.3 |
その他
|
301,788 | 430,037 | 3.4 | 42.5 |
加工食品
|
113,752 | 128,285 | 1.0 | 12.8 |
製造品
|
3,542,540 | 2,581,956 | 20.2 | △ 27.1 |
石油製品
|
2,429,150 | 1,367,384 | 10.7 | △ 43.7 |
その他
|
1,113,390 | 1,214,572 | 9.5 | 9.1 |
| 合計(その他含む) | 12,291,041 | 12,771,366 | 100.0 | 3.9 |
〔注〕2024年の数値は暫定値
〔出所〕コートジボワール税関総局
| 品目 | 2023年 | 2024年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 食料品 | 1,963,015 | 2,159,730 | 18.7 | 10.0 |
コメ
|
437,893 | 610,088 | 5.3 | 39.3 |
魚介類
|
507,491 | 518,499 | 4.5 | 2.2 |
その他
|
1,017,631 | 1,031,143 | 8.9 | 1.3 |
| 食料品以外の消費財 | 3,006,142 | 3,018,680 | 26.1 | 0.4 |
プラスチック製品
|
424,049 | 389,185 | 3.4 | △ 8.2 |
医薬品
|
277,989 | 284,960 | 2.5 | 2.5 |
石油製品
|
1,190,648 | 1,327,514 | 11.5 | 11.5 |
乗用自動車
|
260,486 | 254,093 | 2.2 | △ 2.5 |
その他
|
852,970 | 762,928 | 6.6 | △ 10.6 |
| 中間財 | 3,603,839 | 3,162,419 | 27.4 | △ 12.2 |
原油
|
1,749,842 | 1,471,762 | 12.7 | △ 15.9 |
鉄鋼
|
575,003 | 515,528 | 4.5 | △ 10.3 |
その他
|
1,278,994 | 1,175,129 | 10.2 | △ 8.1 |
| 資本財 | 2,242,048 | 2,529,322 | 21.9 | 12.8 |
一般機械
|
772,340 | 785,087 | 6.8 | 1.7 |
輸送機器(乗用自動車を除く)
|
425,978 | 329,804 | 2.9 | △ 22.6 |
電気機器
|
386,902 | 335,720 | 2.9 | △ 13.2 |
船舶
|
352,114 | 777,518 | 6.7 | 120.8 |
その他
|
304,714 | 301,193 | 2.6 | △ 1.2 |
| 合計(その他含む) | 11,354,999 | 11,558,441 | 100.0 | 1.8 |
〔注〕2024年の数値は暫定値
〔出所〕コートジボワール税関総局
| 国 | 2023年 | 2024年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| スイス | 1,180,745 | 1,668,099 | 13.1 | 41.3 |
| オランダ | 1,281,254 | 1,560,370 | 12.2 | 21.8 |
| マリ | 1,817,765 | 978,813 | 7.7 | △ 46.2 |
| 米国 | 465,581 | 560,898 | 4.4 | 20.5 |
| ドイツ | 394,173 | 533,153 | 4.2 | 35.3 |
| ベトナム | 553,650 | 502,901 | 3.9 | △ 9.2 |
| ベルギー | 368,750 | 496,631 | 3.9 | 34.7 |
| フランス | 405,217 | 482,343 | 3.8 | 19.0 |
| ブルキナファソ | 695,765 | 459,356 | 3.6 | △ 34.0 |
| スペイン | 229,839 | 443,108 | 3.5 | 92.8 |
| 中国 | 470,984 | 435,353 | 3.4 | △ 7.6 |
| マレーシア | 554,357 | 434,525 | 3.4 | △ 21.6 |
| 合計(その他含む) | 12,291,041 | 12,771,366 | 100.0 | 3.9 |
〔出所〕コートジボワール税関総局
| 国 | 2023年 | 2024年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 中国 | 1,695,114 | 1,764,761 | 15.3 | 4.1 |
| ナイジェリア | 1,602,161 | 1,401,332 | 12.1 | △ 12.5 |
| バハマ | 253,176 | 688,095 | 6.0 | 171.8 |
| フランス | 640,303 | 661,402 | 5.7 | 3.3 |
| ベルギー | 392,651 | 524,736 | 4.5 | 33.6 |
| 米国 | 474,195 | 519,597 | 4.5 | 9.6 |
| インド | 595,668 | 490,149 | 4.2 | △ 17.7 |
| 韓国 | 136,390 | 363,081 | 3.1 | 166.2 |
| ベトナム | 228,734 | 313,391 | 2.7 | 37.0 |
| イタリア | 206,215 | 275,675 | 2.4 | 33.7 |
| ロシア | 302,435 | 267,871 | 2.3 | △ 11.4 |
| 英国 | 221,471 | 250,776 | 2.2 | 13.2 |
| 合計(その他含む) | 11,354,999 | 11,558,441 | 100.0 | 1.8 |
〔出所〕コートジボワール税関総局
対内直接投資
投資認可額は前年の大幅増の反動で減少
コートジボワール投資促進センター(CEPICI)の投資認可額統計(注)によると、2024年の投資認可件数は前年比43件減の146件、認可額は25.9%減の7,414億6,000万CFAフランで件数、投資額とも大幅に減少した。2023年は新型コロナ禍で認可の申請が先送りされた投資案件に加えて、新規大型案件の認可が相次ぎ、件数・金額ともに大幅に増加したが、その反動によるところが大きい。また、2025年10月の大統領選挙に向けて、先行きの不透明感が払拭されず、企業が設備投資を控え始めたことも一因とみられる。
業種別では、食品加工(構成比22.5%)、その他サービス(15.3%)、電気通信(12.5%)、化学品製造(11.2%)、道路輸送(8.7%)、電気・ガス(7.8%)、ゴム・プラスチック加工(6.0%)、対人保健サービス(5.0%)、土木エンジニアリング(4.1%)、農業・牧畜(0.3%)が上位を占めた。国別では、国内資本が投資認可額の41.2%を占めた。外国資本はモーリシャス(構成比17.9%)が最大で、次いでフランス(7.2%)、シンガポール(7.1%)、英国(4.4%)、モロッコ(4.4%)となった。2024年の主な投資案件として、南アフリカ共和国(南ア)の電気通信事業者 MTNによる通信インフラ近代化、中国の復星医薬による抗マラリヤ薬製造、米国・フランスの RAXIOによるデータセンター、チュニジアのSAIPHによる無菌医薬品製造、シンガポールのロイヤル・ナッツ(Royal Nuts)やバレンシー・インターナショナル・トレーディング(Valency International Trading)によるカシューナッツ加工などがみられた。このうち、バレンシー・インターナショナル・トレーディングは総工費1,580万ドルをかけて建設した年間生産能力4万5,000トンの加工工場の操業を開始した。
- (注)
- 鉱物資源・石油・ガス探査と開発、不動産、金融・保険サービス部門を除く。商業、輸送は5億CFAフラン以上の案件のみが対象
資源、電力、食料向けなどの投資が盛況
このほか外国企業の動向(各社プレスリリース、報道ベース)をみると、資源開発ではカナダのトール・エクスプロレーションズ(Thor Explorations)がギトリー金鉱山の100%権益を取得したほか、オーストラリアのリゾリュート・マイニング(Resolute Mining)が北東部のドロポ金鉱山と北西部のABCプロジェクトを南アの金採掘会社アングロゴールド・アシャンティ(AngloGold Ashanti) から1億5,000万ドルで買収した。カナダのアワレ・リソーシズ(Awale Resources)は、新たに金の探鉱権を取得した。ノルウェーのアルテラ・インフラストラクチャー(Altera Infrastructure)は、イタリアの石油大手ENIがコートジボワール沖で開発する大規模なバレン油田の第2フェーズプロジェクトで、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備の調達・運営オペレーションを受注した。
エネルギーでは、アラブ首長国連邦(UAE)の再生エネルギー開発企業アメア・パワー(Amea Power)が北東部ボンドゥク地方で、コートジボワール初の太陽光IPP事業となる設置容量50メガワット(MW)の発電所建設に着工した。フランスのエネルギー企業トタルエナジーズ(Total Energies)は、西アフリカ有数の石油精製会社ラ・シール(La SIR、Societe Ivoirienne de Raffinage) から撤退し、同社が保有するラ・シール社発行株式の 20.35%全てをナイジェリアのサハラ・エナジー(Sahara Energy)に約2億ユーロで売却した。
食品では、UAEのアル・サイエグ・グループ(ASG、Al Sayegh Group)のシンガポール子会社、パン・アフリカン・アグロ・コモディティーズ(Pan African Agro Commodities) がブンディアリ地方で2,290万ユーロを投じてカシューナッツ加工工場を設置した。また、英国のトルク・コモディティーズ(Torq Commodities)、UAEのアグリカス・グローバル(Agricas Global)およびインドのザンティ・アグロ・インダストリー(Zantye Agro Industrie)とオーストラリアのミュンザー・バイオインダストリー (Münzer Bioindustrie)の企業コンソーシアムが相次いで、カシューナッツ加工にそれぞれ2,500万ドル、1,000万ドル、750万ドル、1,120万ドルの投資計画を発表した。マレーシア のGCB(グアン・チョン)は、コーヒー・カカオ評議会(CCC)が所有するトランスカオ・コートジボワール(Transcao Cote d’Ivoire)に25%出資することを発表した。同社は、アビジャンとサンペドロに併せて10万トンのカカオ豆磨砕工場と16万トンのカカオ豆貯蔵設備を完備する。
その他製造業では、フランスの大手医療ガスメーカーのノヴェール(Novair)が初のアフリカ地域拠点となるノヴェール・ウェストアフリカをアビジャンに設立した。ナイジェリアのユナイテッド・キャピタル・アセット・マネージメント・ウェスト・アフリカ(UCAMWAL)はアビジャンに子会社を設立し、ここを拠点に西アフリカ地域に金融サービスを展開する。フランスのアコールグループ傘下で欧州最大手アパートホテルチェーンを展開するアダージョ(Adagio)は、家具など住宅設備を完備した、サブサハラ地域で同グループ初となる110室のアパートホテルをアビジャンのマルコリー地区に開業した。
西アフリカ地域においてインフラが整備され、優位性が高いコートジボワールに、経済統合の進展やEU、英国との経済連携協定を見据えて地域拠点を構える企業が増えている。一方、原材料調達コストの高騰に加えて、物流・輸送費や電気代の上昇などコスト面の課題を訴える製造業も多い。また、ライセンス・許認可手続きで問題を抱える企業もある。2022年から相次ぐ賃金引き上げや財政健全化を目的とした増税、補助金や税優遇措置の見直しによるコスト増が見込まれることから、先行きの不透明感も増している。
対日関係
日本の輸出は減少、輸入はカカオとゴム急増、日本の貿易赤字に
日本の財務省貿易統計によると、2024年の日本の対コートジボワール輸出は前年比35.9%減の5,157万3,000ドルと大幅に減少した一方、輸入は3.7倍の5,516万5,000ドルとなった。この結果、貿易収支は、長らく日本側の黒字が続いていたが、359万2,000ドルの赤字に転じた。
輸入を品目別にみると、コートジボワールからの輸入総額の39.5%を占めるカカオ豆は、数量が96.2%増加し、金額は4.9倍の2,176万8,000ドルとなった。次に天然ゴムが1,997万9,000ドルと166.5倍となり、構成比が36.2%に拡大した。また、カカオ加工品(構成比8.8%)は、国際価格の上昇で数量は減少(33.9%減)したが、金額は33.6%増の484万5,000ドルとなった。前年は実績がなかった非鉄金属は378万1,000ドルとなり、構成比6.9%を占めた。これら4品目で輸入額の9割を超える。
輸出を品目別にみると、8割強を占める工業製品のうち主力の輸送用機器では、前年に急増したバス・トラックが964万1,000ドル(前年比71.3%減)、二輪自動車が41万4,000ドル(77.5%減)と不振だったが、乗用車は669万8,000ドル(21.8%増)と増加に転じた。一般機械では、前年に急増した建設・鉱山用機械が301万3,000ドル(71.0%減)、原動機が81万6,000ドル(34.5%減)と大幅に減少した。化学製品では、有機化合物が354万1,000ドル(8.3%減)、医薬品が7万5,000ドル(91.1%減)と振るわず、唯一プラスチックが25万3,000ドル(94.6%増)と増加した。原料別製品では、非金属鉱物製品が402万2,000ドル(2.8倍)と急増し、タイヤなどのゴム製品も220万4,000ドル(4.4%増)と好調だった一方で、織物用糸・繊維製品が56万3,000ドル(28.2%減)、金属製品が19万ドル(42.1%減)、鉄鋼がほぼ全減となるなど数年来不振が続いている。前年は不振だった電気機器は66万ドル(85.9%増)と大幅に増加した。一方、科学光学機器は31万1,000ドル(44.2%減)にとどまった。食料品では、数年来減少傾向にあったサバやブリ、ニシンなどの冷凍魚が数量(31.6%増)の増加で149万4,250ドル(30.9%増)と増加に転じた。原料品では、合成繊維が数量(12.1%増)の増加で967万9, 000ドル(2.4%増)となった。セメント用原料となるスラグサンドは数量は伸びたものの価格下落が響いて金額は121万7,000ドル(13.1%減)と減少したが、同じくセメント用原料のクリンカーは401万9,000ドル(2.8倍)と急増した。
日本企業22社が現地で活動
2024年から2025年にかけて日本企業4社がコートジボワールに拠点を設置し、現在、商社5社、機械機器5社、海運2社、食料・農産物2社、建設4社など計22社の日本企業が活動しているほか、日本人が現地で起業した企業数社が事業を展開している。進出企業以外でも日本企業によるエネルギー、ICT、農水産・食品加工での案件開拓や原料品、農業・建設資機材、輸送・医療・機械・電気機器などの販路開拓、既存の代理店との関係強化や、新規パートナーの発掘などの動きが活発化している。2024年12月には、ジェトロと日本政府、コートジボワール政府の共催で「第3回日アフリカ官民経済フォーラム」がアビジャンで開催された。アフリカ各国の閣僚級約40人、企業・団体約100社など、日本とアフリカの経済交流促進に関心を持つ官民の参加者が1,200人以上集まり、コートジボワールで日本企業の存在感を示す絶好の機会となった。コートジボワールのビジネスを取り巻く環境は、政治の安定と高い経済成長に加えて、2021年3月に二国間投資協定が発効したことで、自由で安定した投資環境が約束され、日本企業の活動が促進されることが期待される。
現地日系企業の6割以上が今後1~2年の事業展開を拡大と回答
2024年12月に公表したジェトロの海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)によると、アンケートに回答した在コートジボワール日系企業の63.6%が、「今後1~2年の事業展開を拡大する」と回答した。現地市場ニーズの拡大や輸出の増加、競合他社と比べて優位性が高いこと、高付加価値製品・サービスの受容性が高いことなどを背景にコートジボワールでの事業展開を積極化しようとする日系企業の傾向が浮かび上がっている。また、アンケートに回答した日系企業の7割以上がコートジボワールを選んだ理由として市場の将来性を挙げ、市場規模・成長性(64%)、駐在員の生活環境(36%)、安定した財政・金融・為替(36%)などが投資環境の魅力としている。一方で、投資環境面での課題として、回答企業の8割強が規制・法令の整備・運用、6割弱が雇用・労働問題と回答している。今後の有望分野としてはインフラ、資源・エネルギーの割合が高く、コートジボワール政府が近年注力する分野に可能性を感じる傾向が表れている。今後のアフリカの注目国としてコートジボワールは5位となっており、注目点として市場拡大、経済成長、資源開発、インフラ開発、農業、西アフリカのハブ機能、投資格付けの上昇、現地で幅広くビジネスを展開しているフランス企業とのネットワークなどが挙げられている。
| 品目 | 2023年 | 2024年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 輸送用機器 | 41,607 | 17,442 | 33.8 | △ 58.1 |
自動車
|
39,493 | 16,825 | 32.6 | △ 57.4 |
乗用車
|
5,500 | 6,698 | 13.0 | 21.8 |
バス・トラック
|
33,596 | 9,641 | 18.7 | △ 71.3 |
二輪自動車
|
1,844 | 414 | 0.8 | △ 77.5 |
| 原料品 | 10,970 | 11,039 | 21.4 | 0.6 |
合成繊維(長繊維のトウ)
|
9,457 | 9,679 | 18.8 | 2.4 |
クリンカー
|
1,417 | 4,019 | 7.8 | 183.6 |
スラグサンド
|
1,400 | 1,217 | 2.4 | △ 13.1 |
| 原料別製品 | 5,156 | 6,988 | 13.5 | 35.5 |
ゴム製品
|
2,111 | 2,204 | 4.3 | 4.4 |
鉄鋼
|
501 | 2 | 0.0 | △ 99.6 |
非金属鉱物製品
|
1,431 | 4,022 | 7.8 | 181.1 |
金属製品
|
328 | 190 | 0.4 | △ 42.1 |
織物用糸・繊維製品
|
784 | 563 | 1.1 | △ 28.2 |
| 一般機械 | 13,807 | 5,324 | 10.3 | △ 61.4 |
原動機
|
1,245 | 816 | 1.6 | △ 34.5 |
荷役機械
|
953 | 440 | 0.9 | △ 53.8 |
建設用・鉱山用機械
|
10,372 | 3,013 | 5.8 | △ 71.0 |
ポンプ・遠心分離機
|
574 | 559 | 1.1 | △ 2.6 |
| 化学製品 | 5,410 | 7,409 | 14.4 | 37.0 |
医薬品
|
844 | 75 | 0.1 | △ 91.1 |
有機化合物
|
3,860 | 3,541 | 6.9 | △ 8.3 |
プラスチック
|
130 | 253 | 0.5 | 94.6 |
| 食料品 | 1,141 | 1,494 | 2.9 | 30.9 |
魚介類
|
1,141 | 1,494 | 2.9 | 30.9 |
| 電気機器 | 355 | 660 | 1.3 | 85.9 |
| 合計(その他含む) | 80,458 | 51,573 | 100.0 | △ 35.9 |
〔出所〕 財務省貿易統計
| 品目 | 2023年 | 2024年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 食料品 | 8,148 | 27,108 | 49.1 | 232.7 |
カカオ豆
|
4,414 | 21,768 | 39.5 | 393.2 |
カカオ加工品
|
3,627 | 4,845 | 8.8 | 33.6 |
魚介類
|
0 | 490 | 0.9 | 全増 |
| 原料品 | 5,480 | 22,581 | 40.9 | 312.1 |
金属鉱およびくず
|
5,226 | 2,524 | 4.6 | △ 51.7 |
天然ゴム
|
120 | 19,979 | 36.2 | 16,549.2 |
| 原料別製品 | 28 | 3,798 | 6.9 | 13,464.3 |
非鉄金属
|
0 | 3,781 | 6.9 | 全増 |
| 合計(その他含む) | 14,738 | 55,165 | 100.0 | 274.3 |
〔出所〕 財務省貿易統計
基礎的経済指標
| 項目 | 単位 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
|---|---|---|---|---|
| 実質GDP成長率 | (%) | 6.4 | 6.5 | 6.0 |
| 1人当たりGDP | (米ドル) | 2,351 | 2,561 | 2,723 |
| 消費者物価上昇率 | (%) | 5.2 | 4.4 | 3.5 |
| 失業率 | (%) | n.a. | n.a. | n.a. |
| 貿易収支 | (10億CFAフラン) | 670 | 1,062 | n.a. |
| 経常収支 | (10億CFAフラン) | △3,365 | △3,944 | n.a. |
| 外貨準備高(グロス) | (10億CFAフラン) | 3,886 | 2,634 | 2,263 |
| 対外債務残高(グロス) | (1億米ドル) | 243 | 285 | 319 |
| 為替レート | (1米ドルにつき、CFAフラン、期中平均) | 623.8 | 606.6 | 606.4 |
注
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、外貨準備高(グロス):経済・計画・開発省、1人当たりGDP、為替レート:IMF、貿易収支、経常収支:西アフリカ諸国中央銀行/財務・予算省、対外債務残高(グロス):財務・予算省




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