海外進出する企業を守る ‐こんなときに役立つ「投資協定」‐

2020年06月18日

事業の許認可が下りない、突然の制度変更、技術の開示要求、送金規制・・・。進出先の国で、こうした不当な扱いを受けることがある。そのようなリスクから企業を守ってくれる手段の一つに「投資協定」がある。海外に投資を行う企業と、その財産を保護するための国際協定で、日本が結んでいる協定はすでに78ヵ国・地域をカバー、アフリカなどにも広がっている。海外進出でトラブルに遭遇した際、損害を抑えるために、実は中小企業にも“使える”投資協定とはどのようなものか、活用方法とともに解説する。

(11分53秒)

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テキスト解説:視覚障害のある方のための文字おこしテキストです。

映像説明: 市街地。街路樹が植えられた道路の先に、中層の建物や建設中の高層ビルなどがある。 コンテナ置き場。大きな茶色いコンテナがクレーン車で運ばれている。 埠頭。積み上げられたコンテナのそばで、何台もの大型の黄色いガントリークレーンが動いている。 空撮映像(くうさつえいぞう)。そびえ立つ2棟の高層ビル。周りには中層の建物が建ち、木々(きぎ)のある広場や道路が広がっている。 交差点。大勢の人が信号待ちをしている。信号が青に変わり、車や自転車が走り始める。

ナレーション: 新型コロナウイルスの影響により、サプライチェーンの立て直しを迫られるなど、国際ビジネスにおいても変革が求められている。今後、投資先をどこにするのか、現地でのビジネス形態をどのようにするのか、企業にとって重要なテーマだ。

映像説明: ガラス張りの店の外観。ドアの上に「JAPANESE TEISHOKU RESTAURANT YAYOI」、「やよい軒(やよいけん)」と書かれた立体文字がある看板が掲げられている。 焦げ茶の店の外観。出入り口の上に、漢字の「牛」をモチーフにしたようなオレンジのロゴが描かれ、「Kobe」、「WAGYU(わぎゅう)」、「神戸焼肉」と書かれた立体文字が掲げられている。店の前のアーケードの下の歩道を人々が歩いている。 白い壁の店の中。壁に「DAISO JAPAN(ダイソー ジャパン)」と書かれたピンクに白い縁取り(ふちどり)のある立体文字が掲げられている。たくさんの人が行き来している。

ナレーション: しかし、十分なリサーチを行い、投資や進出をしたにもかかわらず、現地で思わぬトラブルを抱えることも…。

映像説明: 建物の外観。「JETRO(ジェトロ)」と書かれたロゴと、「JAPAN External Trade Organization」、「独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)」などと書かれた青い看板が立てられている。 オフィスの中。広いフロアに並べられたデスクで、大勢の人がパソコンに向かっている。

ナレーション: 日本企業(にほんきぎょう)の海外進出をサポートするジェトロの担当者は、海外進出におけるリスクについてこう話す。

映像説明: 会議室。黒いストライプのスーツを着た男性がインタビューに答える。

テロップ: ジェトロ 貿易投資相談課 課長代理 石川 雅啓(いしかわ まさひろ)

石川(ジェトロ 貿易投資相談課 課長代理): 一番多いのはやっぱり、その、事業の許認可がなかなか下りない。 あるいは、関係法令が、きちんと示されない中で、急な制度変更が行われたり。 ある国では、その、日本人、外国人1人に対して、現地の人を20人雇ってくださいということを言われた例があるんですけど。 従わないと許認可与えないぞ、というね。 当局の担当者から、法律に書いてないようなことを指摘されたり、 不透明な中で判断が下されてしまうってことがありうるかなと思います。

映像説明: 交通量の多い4車線の車道。たくさんの乗用車やトラックが走ってくる。

テロップ: 送金規制 法制度の突然の変更 許認可が下りない 技術の移転要求

ナレーション: 現地で直面するさまざまなリスク。

映像説明: 交通量の多い4車線の車道。たくさんの乗用車やトラックが走ってくる。

テロップ: 投資協定

ナレーション: その対処手段のひとつが投資協定だ。

映像説明: ダイソー・ジャパンの店舗。行列に並ぶたくさんの人が女性店員から買い物かごを受け取り、店の中に入っていく。 飲食店の外観。「最強濃厚とんこつ醤油(しょうゆ)」「らーめん」、「BARI‐UMA(ばりうま)」などと書かれた立体文字が掲げられている。店先には、メニューが書かれたちょうちんや、さまざまな料理の写真のパネルが立て掛けられている。 市街地。中国語で書かれた突き出し看板が並ぶ建物沿いの車道の路肩に、乗用車やバスが止められている。

ナレーション: 海外進出時の不当な扱いによる損害を防ぎ、事業を継続するために、企業にはどのような対応が求められるのか?

映像説明: ジェトログローバルアイオープニングタイトル。 薄い青を基調としたコンピューターグラフィックスの背景画。 世界地図の上で回転する、中が空洞になった地球儀から、もうひとつ地球儀が飛び出す。 拡大表示された地球儀の横にタイトルが現れる。 「世界は今 ジェトログローバルアイ」

映像説明: スタジオ。世界地図をバックに女性キャスターが座り、話をする。 ショートタイの付いたダークピンクのブラウスに白いジャケットを着ている。

テロップ: 八木 ひとみ(やぎ ひとみ)

八木(やぎ)キャスター: 世界は今、ジェトログローバルアイ。海外での事業展開では、進出先の国において、さまざまな問題に直面します。それらの問題を解決する手段の一つとして、投資協定というものがあります。今回は、日本企業(にほんきぎょう)の海外での事業を保護する投資協定について見ていきます。

テロップ: 海外進出する企業を守る ‐こんなときに役立つ「投資協定」‐

映像説明: スタジオ。世界地図をバックに座る八木(やぎ)キャスターの右に、グレーのストライプのジャケットを着た女性が映るグレーの四角い枠が現れる。 グレーの枠が拡大され、グレーのジャケットを着た女性が挨拶をしながらおじぎをする。

テロップ: 経済産業省 通商政策局 経済連携課 赤澤 祐美(あかざわ ゆみ) 係長

八木(やぎ)キャスター: 解説していただくのは、経済産業省の赤澤(あかざわ)さんです。赤澤(あかざわ)さん、よろしくお願いします。

赤澤(あかざわ)係長: よろしくお願いします。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターが、赤澤(あかざわ)係長に質問する。

八木(やぎ)キャスター: 今回のテーマである投資協定ですが、そもそも、どういったものなんでしょうか?

テロップ: 投資協定 投資の自由化・促進・保護を目的とした 国家間で合意した国際協定

赤澤(あかざわ)係長: はい。投資協定とは、海外に投資を行う企業や、投資した財産を保護するための国際協定です。

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

テロップ: 投資協定は企業の海外事業を守る!

赤澤(あかざわ)係長: 投資というと難しく聞こえるかもしれませんが、海外に現地法人を設立したり、工場や店舗をつくったり、また、外国企業の株式を取得したりといった、海外展開のさまざまな場面で企業を守る制度です。

映像説明: 「投資関連協定のパターン」と題された表が現れる。「投資協定」と書かれた左の枠の中に、紙と羽根ペンのイラストと「投資」の文字が表示される。「EPA(イーピーエー)とFTA」と書かれた右の枠には、紙と羽根ペンのイラストと「関税章(かんぜいしょう)」、「原産地章(げんさんちしょう)」、「投資章(とうししょう)」、「サービス貿易章(さーびすぼうえきしょう)」、「知財章(ちざいしょう)」、「など」の文字が現れる。オレンジで書かれた「投資協定」の枠の中の「投資」と、「EPA(イーピーエー)とFTA」の枠の中の「投資章(とうししょう)」の文字がオレンジの枠で囲まれる。

ナレーション: 国と国とのあいだで結ばれた投資に関する協定には2つのパターンがあり、一つは投資についてのみ約束を取り交わした投資協定。もう一つは、EPA(イーピーエー)やFTAの中で投資に関するルールを定めたもの。この2つはどちらも同じ役割を果たしている。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターと赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

八木(やぎ)キャスター: なるほど。EPA(イーピーエー)の中にも含まれてるんですね。日本はどれくらいの国と協定を結んでいるんでしょうか?

赤澤(あかざわ)係長: 投資協定は、1978年にエジプトとのあいだで初めて締結されました。

映像説明: 「日本の投資関連協定の締結状況」と題された世界地図が表示される。EU(イーユー)やロシア、中国、オーストラリア、カナダなどが、協定が発効済みであることを意味する紫色で示されている。アメリカやアルゼンチンなどは、「署名済み・未発効」を示す水色で示されている。アフリカの一部の国は、「交渉中」を意味する黄緑で示されている。色が付けられていない国もある。(出所:経済産業省(2020年6月時点))

テロップ: 投資協定:エジプト 中国 ロシア ケニアなど(30本) EPA(イーピーエー):シンガポール メキシコ CPTTPなど(14本) 78ヵ国・地域をカバー

赤澤(あかざわ)係長: それ以降、多くの協定が結ばれ、2020年6月時点で、日本では投資協定が30本、投資章(とうししょう)を含むEPA(イーピーエー)が14本、発効しています。これにより、世界で78の国と地域がカバーされています。

映像説明: 世界地図の上で回転する、中が空洞になった地球儀を背景にテロップが表示される。

テロップ: 海外投資のリスクと投資協定

映像説明: スタジオ。世界地図をバックに座る八木(やぎ)キャスターが話をする。

八木(やぎ)キャスター: では、投資協定によって守られる側の企業は、どのように考えているのでしょうか? 投資協定が今年1月に署名されたモロッコで、ビジネスを展開する企業に話を伺いました。

映像説明: 2階建てほどの高さの工場の外観。壁に、緑の三角形で囲まれたアルファベットの「R」のロゴが描かれ、「(株)鳥取再資源化研究所(かぶしきがいしゃ とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)」と書かれた看板が掲げられている。

テロップ: 鳥取県 北栄町(ほくえいちょう)

テロップ: 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)

ナレーション: こちらは、鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)。

映像説明: 工場の中の写真。大型の機械のそばに、大きな白い袋が数十個ほど積まれている。天井のはりには緑の十文字が描かれ、「安全第一」と書かれている。 たくさんのグレーの固形物の写真。表面に筋やいびつな穴があり、一つ一つ、形が異なっている。

テロップ: ガラス発泡材 ポーラスα

ナレーション: この企業が開発したのが、ガラス発泡材ポーラスα。

映像説明: 「棒状のポーラスαを使った実験(早回し映像)」と題された映像。テーブルに、黄色い液体が少し入れられた透明な容器が置かれている。円筒形(えんとうけい)のグレーの固形物が容器に入れられると、黄色い液体が固形物に吸いあげられていく。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ))

テロップ: 棒状のポーラスαを使った実験(早回し映像)

映像説明: 左に「before」、右に「after」と題された2枚の容器の写真。「before(ビフォー)」の写真に写った透明の容器には黄色い液体が入っており、「after」のほうには、黄色い液体がほとんどない。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ))

テロップ: before after

ナレーション: 高い保水性が特徴で、土(つち)に混ぜるだけで、通常の半分の水量で農作物(のうさくぶつ)の栽培ができるという。

映像絵説明: 畑の写真。6人の人が黄色いバケツに入った薄茶の粉を地面にまいている。 畑の一角の写真。地面が隠れるほど大量の薄茶の粉が一面にまかれている。その上に黄色いバケツを持った人々が立っている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ))

ナレーション: この強みを生かし、乾燥地帯などでの農業に役立てようと考えた。

映像説明: 木目調の壁の部屋。紺のジャケットを着た女性がインタビューに答える。(Skypeのビデオ通話) 薄茶の粉がまかれた畑の写真。水色のタンクトップを着た男性が、耕うん機で土(つち)を耕している。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ))

テロップ: 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ) 国際事業部 澤田 茉季 (さわだ まき)さん

澤田さん: サハラ砂漠などを中心に乾燥地が多くて、干ばつなどの水不足の課題が非常にたくさんありますので、 アフリカを中心に、海外でのビジネス展開を始めました。

映像説明: 薄茶の粉がまかれた畑の写真。シートで覆われた畝から小さな苗が出ている。白いワイシャツを着た男性とグレーのワイシャツを着た男性が、しゃがんで苗に手を伸ばしている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 白いワイシャツの男性とグレーのワイシャツの男性が、屋内の畑で笑顔で握手をしている写真。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 屋内の畑。青いポロシャツを着た男性が、畝に薄茶の粉をまいている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 青いキャップをかぶった男性が、くわで土(つち)と粉を混ぜている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 畝の写真。鉄パイプが渡され、シートが掛けられた畝で苗が育っている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(けんきゅうしょ))

ナレーション: 2008年、モーリタニアでの実証試験を皮切りに、海外での事業を拡大。しかし、開発途上国でのビジネスは予定どおりに進まないことが多いという。さらにこんなリスクも…。

映像説明: 木目調の壁の部屋。澤田さんがインタビューに答える。(Skypeのビデオ通話) 屋内。数十本のポールが等間隔に立てられた畑が奥へ続いている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 木目調の壁の部屋で澤田さんが話を続ける。(Skypeのビデオ通話)

澤田さん: 国によっては、相手が政府であっても 不払いなど、あと、技術的な(知的財産)保護の分野で、のちのちトラブルになることが多いということを聞くので、 日本国内(にほんこくない)のビジネスよりも、より慎重に話を進めなければならない。

映像説明: 屋内の畑の写真。青いシャツを着た7人の人が腰をかがめて作業をしている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 畝の写真。苗が葉を大きく伸ばしている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ))

ナレーション: だが、こうしたリスクに対処する手段として投資協定を想定していたかというと…。

映像説明: 木目調の壁の部屋。澤田さんがインタビューに答える。(Skypeのビデオ通話)

澤田さん: 投資協定の枠組み自体、存在は知っていたんですけれども、 われわれのような中小企業が利用できるシーンは、非常に少ないのではないかと考えていました。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターが赤澤(あかざわ)係長に質問する。

八木(やぎ)キャスター: 取材した企業では、海外展開を行いながらも、投資協定は自社とはあまり関係ないものと考えていたようですね。こういったケースは多いのでしょうか?

赤澤(あかざわ)係長: そうなんです。実は、投資協定の存在もあまり知られていないのが現状です。投資協定には、海外に進出する企業にとって、身近な内容がたくさん含まれていますので、進出先でのトラブルに備えて、投資協定にどのような内容が規定されているか、知っておくことが重要です。

映像説明: 世界地図の上で回転する、中が空洞になった地球儀を背景にテロップが表示される。

テロップ: 投資協定の規定内容

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターと赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

八木(やぎ)キャスター: では、投資協定の規定内容について見ていきます。どんなことが決められているんでしょうか?

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が質問に答える。 「投資協定の主な規定」と題された表が現れる。表の右下に、「協定によって規定内容は異なります」と書かれている。「投資先国での待遇」と書かれた左の枠の中に、「内国民待遇(ないこくみんたいぐう)」、「資金の移転」、「最恵国待遇」、「公正衡平待遇」、「収用と補償」、「法令の透明性」、「特定措置の履行要求の禁止」、「など」と表示される。「紛争解決」と書かれた右の枠には、「投資家 vs 国」、「国 vs 国」と表示されている。「投資先国での待遇」の枠が赤く変わり、「投資先国の政府が「やらなくてはいけないこと」「やってはいけないこと」」と書かれた吹き出しが現れる。

赤澤(あかざわ)係長: はい。投資協定には大きく分けて2つの内容があります。一つは、どのような保護を受けられるかを定めた「投資先の国内での待遇」です。もう一つは、どうすれば保護を受けられるか定めた「紛争解決」です。まず、「投資先の国内での待遇」の部分では、投資する企業や投資した財産を保護するために、投資先の国の政府がやらなくてはいけないこととやってはいけないことを定めています。

映像説明: 八木(やぎ)キャスターと赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

八木(やぎ)キャスター: では、進出した企業は、どんな場合に保護されるんでしょうか?

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が質問に答える。 「トラブル例 営業に必要な許認可の申請」と題された図が表示される。中央に描かれた「投資先国の政府」と書かれた議事堂のイラストの左に「A社(日本企業)」と書かれたビルのイラスト、右斜め上に「B社(投資先国の企業)」と書かれたビルのイラスト、右斜め下(みぎななめした)に「C社(他国の企業)」と書かれたビルのイラストが描かれている。「申請」と書かれた矢印が、「A社(日本企業)」、「B社(投資先国の企業)」、「C社(他国の企業)」、それぞれから投資先国の政府に向かって伸びる。「許認可」と書かれた矢印が、「B社(投資先国の企業)」と「C社(他国の企業)」に向けて伸びる。日本企業と投資先国の政府のあいだに、「許認可が下りない」と書かれた吹き出しが現れる。

赤澤(あかざわ)係長: 例えば、投資先の国で営業に必要な許認可が下りるまでに長い時間がかかることがあります。もし、進出先の国の企業や、日本以外(にほんいがい)のほかの国の企業に対してはとっくに許認可が下りているのに、日本企業(にほんきぎょう)には下りていないような場合、その国は投資協定に違反している可能性があります。

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

テロップ: 内国民待遇(ないこくみんたいぐう) 最恵国待遇 →自国・他国の企業と同じ待遇を与えること

赤澤(あかざわ)係長: 投資協定では、どこの国の企業かによって差別をしてはいけないという、内国民待遇(ないこくみんたいぐう)、最恵国待遇の規定があります。日本企業(にほんきぎょう)だけに対して許認可を出さないという不利な扱いをすることは、この規定に違反することになります。

映像説明: 八木(やぎ)キャスターと赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

八木(やぎ)キャスター: 不当な差別が認められてしまうと、その国への投資や進出は大きなリスクになりますからね。ほかにはどんな規定がありますか?

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が質問に答える。 「トラブル例 土地の収用」と題された図が表示される。「土地」と書かれた黄緑のだ円の周りに3つの枠が現れる。それぞれの枠には、「土地の所有者」と書かれた人のイラスト、「A社(日本企業)」と書かれたビルのイラスト、「投資先国の政府」と書かれた議事堂のイラストが描かれている。「土地」のだ円と土地の所有者」の枠はくっついている。「A社(日本企業)」が「土地」に近づき、「土地の所有者」が「土地」から離れる。「A社(日本企業)」から「土地の所有者」に向けて矢印が伸び、「相場の金額を払い土地を購入」と書かれた積み重ねられた金貨のイラストが現れる。「投資先国の政府」が「土地」に近づき、「A社(日本企業)」が「土地」から離れる。「A社(日本企業)」と「土地」のあいだに「立ち退き」と書かれた吹き出しが現れる。「投資先国の政府」から「A社(日本企業)」に向けて矢印が伸び、「相場の半分の金額しか補償金を支払わない」と書かれた積み重ねられた金貨のイラストが表示される。

赤澤(あかざわ)係長: はい。例えば、日本企業(にほんきぎょう)が外国で土地を購入したとします。ところが、その国の政府が新しく道路や施設を造るために、その土地を引き渡すよう一方的に要求することがあります。このような行為を収用といいますが、もし、この土地の引き渡しに対して十分な金額の補償が支払われなければ、投資協定違反の可能性があります。

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

テロップ: 収用と補償 中国の事例 工場の立ち退き要求 不十分な補償額 →日本の総領事館から働きかけ 十分な補償を得る

赤澤(あかざわ)係長: 実際に、中国に進出した日本企業(にほんきぎょう)が地元政府から工場に立ち退きを求められた際、中国の法令で認められた補償額が非常に安かったという事例がありました。この際には、日本(にほん)と中国とのあいだの投資協定に基づいて日本(にほん)の総領事館が働きかけを行いました。結果として、投資協定で定められた適切な補償額である、市場価格に近い条件で補償を受けることができました。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターと赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

八木(やぎ)キャスター: 進出先の国の法律に従っていても投資協定違反になることがあるんですね。投資協定があるから泣き寝入りにならずに済む。企業にとって大きな後ろ盾(うしろだて)といえそうですね。

映像説明: 「投資協定の主な規定」と題された表が再び現れる。表の右下に、「協定によって規定内容は異なります」と書かれている。左側に書かれた「投資先国での待遇」の枠の中に「内国民待遇(ないこくみんたいぐう)」、「資金の移転」、「最恵国待遇」、「公正衡平待遇」、「収用と補償」、「法令の透明性」、「特定措置の履行要求の禁止」、「など」と書かれている。

赤澤(あかざわ)係長: はい。投資先の国内での待遇には、ほかにも資金移転の自由や、公正衡平待遇義務といった重要な規定がありますので、ご確認ください。

映像説明: 屋内の畑の写真。5人の人が畝でしゃがんだり、シートを手にしたりしている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 畑の一角の写真。苗が植えられた畝が奥へ続いている。それぞれの苗に誘引紐が張られている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ))

ナレーション: 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)のケースでは、こうした規定がどのように関わってくるのか?

映像説明: 工場の中の写真。積み重ねられた大きな白い袋のそばに、グレーの固形物がうずたかく積まれている。スマートフォンや書類を手にした10人の人が周りに立っている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 室内で撮影された記念写真。11人の人が壁際で笑顔を見せている。(写真提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ))

ナレーション: 進出先の政府や企業と連携し、現地で製造、開発を行うこともあるため、独自の技術を守ることは、重要だという。

映像説明: 工場の中。ガラスの瓶や破片がベルトコンベヤーで運ばれている。ゴム手袋を付けてハンマーを持った従業員がそばに立っている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) ベルトと接するように設置された装置からグレーの粉が出てくる。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 高温の溶融炉の中を、うっすら赤くなった粉が運ばれていく。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 袋詰めされたグレーの固形物。パッケージには「Porous α」、「ポーラスα」、「ポーラスシステム」、「特許製法によるガラス発泡」、「欠陥であった重金属の溶出問題を解決」、「世界唯一のクリーンな廃ガラス・リサイクルプロセスを確立」などと書かれている。(映像提供 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ)) 木目調の壁の部屋で澤田さんがインタビューに答える。(Skypeのビデオ通話)

テロップ: 鳥取再資源化研究所(とっとりさいしげんかけんきゅうしょ) 国際事業部 澤田 茉季 (さわだ まき)さん

澤田さん: 現地のパートナー企業と締結しているパートナーシップ協定ですとか、 現地で新しく開発できた知的財産に値するような技術に対しても、 (投資協定の)保護の対象になるということを知ったので、 われわれも、海外のビジネス展開を進めながら、実際に活用できるよう勉強していきたいと思います。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターが赤澤(あかざわ)係長に質問する。

八木(やぎ)キャスター: 最後に、紛争解決についてはいかがでしょうか?

映像説明: 「投資協定の主な規定」と題された表が再び現れる。表の右下に、「協定によって規定内容は異なります」と書かれている。右側の「紛争解決」と書かれた枠に、「投資家 vs 国」、「国 vs 国」と表示されている。「紛争解決」の枠が赤く変わり、「投資先国が投資協定違反」、「救済手続き」と書かれた吹き出しが現れる。 

赤澤(あかざわ)係長: はい。紛争解決の部分では、投資先の国が投資協定に違反している場合の救済手続きを定めています。

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

テロップ: 紛争解決 企業は 投資先国の裁判所ではなく 中立的な国際仲裁制度を利用可能

赤澤(あかざわ)係長: このような場合、投資を行う企業は、投資先の国の裁判所ではなく、中立的な国際仲裁の制度を利用できます。

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。

テロップ: 国際仲裁は有効な交渉材料

赤澤(あかざわ)係長: 実際に国際仲裁まで至らなくても、その前の話し合いの際に、この紛争解決の規定を伝家の宝刀として、交渉材料にすることもできます。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターが話をする。

八木(やぎ)キャスター: では、海外進出した企業が現地でトラブルがあった際に、投資協定をどのように活用できるのでしょうか? 海外事業のトラブル解決を扱う弁護士の方(かた)に話を聞きました。

映像説明: 白い壁の部屋。紺のスーツを着た男性がインタビューに答える。(Skypeのビデオ通話) クリーム色(いろ)のロビーの写真。壁に「NISHIMURA&ASAHI」、「西村あさひ法律事務所」と書かれた立体文字が掲げられている。通路を挟んで、分厚い本が何十冊もしまわれた本棚がずらりと並べられている。 白い壁の部屋で、紺のスーツを着た男性が話を続ける。(Skypeのビデオ通話)

テロップ: 西村あさひ法律事務所 石戸 信平 弁護士

石戸弁護士: 「問題が解決しない場合には、投資協定仲裁にいくよ」と、そういうプレッシャーを相手国、政府にかけつつ、交渉を行うことで、 企業側に納得いくかたちで解決された事例というのも実際にございます。 投資先国の政府としても、ただ、「これをなんとかしてくれ」と言いに行くよりも、 「投資協定違反の可能性、高いですよ」というふうにしてクレームをしたほうがですね、 向こうも真剣に取り合ってくれる可能性が高いです。 投資判断のときからですね、投資協定の有無について、一要素として、考慮していただくことを、ぜひお勧めいたします。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターが赤澤(あかざわ)係長と話をする。

八木(やぎ)キャスター: 海外進出のさまざまな場面で、投資協定は有効に活用できそうですね。海外への進出や投資を行う企業の皆さんへメッセージはありますか?

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が話をする。

赤澤(あかざわ)係長: 海外進出ではさまざまなトラブルが発生しますが、投資協定で解決できることがあります。ぜひ日々の事業の中で、投資協定をご参照ください。

映像説明: 赤澤(あかざわ)係長が話を続ける。画面の下の部分に、「経済産業省 経済連携課ウェブサイト」の文字と、「投資協定」と書かれ、虫眼鏡のイラストが描かれた枠、QRコードが表示される。

テロップ: 経済産業省 経済連携課ウェブサイト 投資協定

赤澤(あかざわ)係長: また、私たち経済産業省も、ジェトロや国際ビジネスに詳しい弁護士などの専門家、大使館と緊密に連携しておりますし、投資協定に関するご質問があれば、お問い合せください。

映像説明: スタジオ。八木(やぎ)キャスターが話をする。

八木キャスター: 海外進出をする企業にとって、投資協定を知っておくことは必要不可欠ですね。

映像説明: 八木(やぎ)キャスターと赤澤(あかざわ)係長が挨拶をしながらおじぎをする。

八木(やぎ)キャスター: 赤澤(あかざわ)さん、今日はありがとうございました。

赤澤(あかざわ)係長: ありがとうございました。

映像説明: 薄い青を基調としたコンピューターグラフィックスの背景画。 中が空洞になった地球儀が回転している。

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