FTAの潮流と日本

FTA/EPA:世界の現状

FTA(自由貿易協定)とは

FTA(自由貿易協定)は、2カ国以上の国や地域が相互に関税や輸入割当などその他の貿易制限的な措置を一定の期間内に撤廃あるいは削減することを定めた協定です。関税や非関税障壁をなくすことで締結国・地域の間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すものです。FTA相手国と取引のある企業にとっては、無税で輸出入ができるようになる、消費者にとっても相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになるなどのメリットが得られます。

FTAの現状

2011年5月現在、世界には200以上のFTAが存在しています。日本・タイEPA(経済連携協定)や米国・シンガポールFTAといった二国間によるFTA、AFTA(ASEAN自由貿易地域)やNAFTA(北米自由貿易協定)など数カ国による地域FTAなど様々なかたちがありますが、これらが重なり合って、重層的な貿易システムを形成しています。

FTAブームが訪れたのはそれ程古いことではありません。1990年以前は、世界にはわずか16件のFTAしかありませんでした。しかし、WTOウルグアイ・ラウンドが停滞したことや、それまで閉鎖的であった途上国の多くが経済開放路線にシフトするなどの要因があって、FTAは90年代の10年間に50件増加しました。そして、2000年代に入るとドーハ・ラウンドの停滞を主な要因として2000年以降150件を超えるFTAが新たに発効しました。現在も多くのFTAが交渉中あるいは発効を待っている状況であり、今後FTAはさらに増えていくことが予想されています。

一般にFTAは、交渉を経てまず大筋合意の形で妥結し、その後署名、双方議会での批准を経て発効するというのが一般的なプロセスです。発効しないことには優遇された税率を利用することもできません。従って、交渉がプロセスのどの段階にあるのかを見定める必要があります。

日本のEPA(経済連携協定)

世界のFTAネットワークが拡大する中、長い間GATT/WTOの多国間貿易体制を支持してきた日本でもFTAを求める声が高まっていきました。そして、2001年1月に開始されたシンガポールとのEPA交渉の開始により日本のFTAの歴史が幕を開けることになります。シンガポールとの交渉を経て、2002年11月に日本にとって初めてのEPAが発効しました。

日本が締結するEPAは、関税やサービス貿易の自由化に加え、投資、政府調達、知的財産権、人の移動、ビジネス環境整備など、幅広い分野をカバーするものです。相手国と「連携」して貿易や投資の拡大を目指す協定です。包括的なEPAは、現在WTOが規定する以上の内容(WTOプラス)を含んでいます。

日本は、シンガポールとのEPAを弾みとして、一気にEPA戦略を推し進めることになります。2005年4月にメキシコ、2006年7月にマレーシア、2007年9月にチリ、同年11月にタイ、2008年7月にインドネシアとブルネイ、2008年12月にはフィリピンとの間で次々とEPAを発効させていきます。そして2008年12月にはASEAN全体との間でAJCEP(ASEAN・日本包括的経済連携協定)が発効しました。ASEAN諸国には80年代から多くの日本企業が進出し、現地で生産ネットワークを築いてきました。AJCEPの発効に伴い、在ASEAN日系企業が日本から高付加価値部品を無税ないしは低税率で輸入し、そこで製造したものを他のASEAN諸国へ輸出することも可能となり、貿易と投資に一層のダイナミズムが生まれると期待されています。その後も、日本はスイス(2009年9月)、ベトナム(2009年10月)との間でEPAを発効させています。2011年には、既に交渉が妥結したペルー(5月)、インド(2月)との協定が署名に至り、今年中の発効が期待されます。現在は、オーストラリア、湾岸協力会議(GCC)などの国・地域とEPA交渉を進めています。大型のFTAとしては、EUとの経済統合協定(EIA)の交渉入りが見えてきました。研究会や「合同ハイレベルグループ(HLG)」におけるコンサルテーションを経て、日・EUの両政府は5月の定期首脳協議で、協定の対象範囲を検討する予備交渉、いわゆるスコーピング作業を開始することに合意しました。半年ほどの期間を経て作業が成功裏に完了すれば、交渉が始まる見込みとなっています。後述するとおり、EU韓国のFTAは7月に暫定発効する予定であり、EU市場での韓国製品との競合を意識すると日本がEUとFTAを結ぶことには意味があると考えられます。

FTA/EPA説明図。FTA(自由貿易協定)とは、2カ国以上の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃する協定。EPA(経済連携協定)とは、FTAを柱に、ヒト、モノ、カネの自由化、円滑化を図り、幅広い経済関係の強化を図る協定。

アジア大洋州地域のFTA

経済成長著しいアジア大洋州地域では、2010年1月にASEAN+1のFTA(ASEAN と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド間のFTA)が全てそろい、FTAの本格活用時代を迎えています。日本企業にとっては、日本が結んでいるEPAのみならず、こうした第3国間のFTAを進出先のASEANにおいて利用するといった観点から、FTAの利用価値が高まりました。たとえば日本企業がインド市場開拓を目指す際、自社が生産拠点を置くASEAN加盟国とインド間のFTAを利用する余地があります。日本のASEANに対する直接投資残高は、韓国や中国の対ASEAN残高をはるかに上回り、域内の生産拠点は広がっています。

2011年のアジア大洋州地域におけるFTAの注目点としては、韓国が大国とのFTA2つを発効に向けて大きく進めることが見込まれています。7月にはEU韓国のFTAが暫定発効する予定です。また、米韓FTAは交渉妥結から既に4年が経っていますが、2011年6月中に米国議会での批准が見込まれており、今年発効に向けて大きく進む予定です。アジア大洋州地域において、比較的小国同士のFTAは既に発効が済みつつあり、今後は大口貿易相手国同士のFTAや、多国間によるFTAがトレンドとなります。

長期の目標として、アジア太平洋経済協力会議(APEC)はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構想を共有しています。そこへ至る広域経済連携のプロセスとして、日本はいわゆるASEAN+6、日本、中国、韓国、ASEAN10カ国にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えた「CEPEA(東アジア包括的経済連携)」構想を提案し、実現に向けて民間研究を進めてきました。これに対し中国は、日本、中国、韓国、ASEAN10カ国のASEAN+3を提唱しています。

また、米国やEUも従来の近隣地域とのFTAのみならず、アジアなどとの地域横断型のFTAも積極的に推し進めつつあります。中で、米国が主導する環太平洋戦略経済連携協定(TPP)は、アジア大洋州地域で交渉が進む多国間FTAであり、日本が交渉参加に向けて各国との協議を進めたことから大きな関心を集めるようになりました。同協定は2010年3月から交渉が始まっており、米国が目指す、アジア大洋州地域の貿易ルール形成といった観点からも注目を集めています。今後、世界のFTAの動きを念頭において、それらのメリットをうまく活用しながらビジネスを展開していくことがますます重要になっていくと考えられます。

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