FTAの潮流と日本

FTA/EPA:世界の現状

FTA(自由貿易協定)とは

FTA(自由貿易協定)は、2カ国以上の国や地域が相互に関税や輸入割当などその他の貿易制限的な措置を一定の期間内に撤廃あるいは削減することを定めた協定です。関税や非関税障壁をなくすことで締結国・地域の間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すものです。FTA相手国と取引のある企業にとっては、無税で輸出入ができるようになる、消費者にとっても相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになるなどのメリットが得られます。近年締結されるFTAは多くの場合、関税やサービス貿易の自由化だけでなく、投資、知的財産権、貿易の技術的障害(TBT)など幅広い分野をカバーしています。

FTAの現状

現在、世界には300近くのFTAが存在しています。日本・タイEPA(経済連携協定)や米国・シンガポールFTAといった二国間によるFTA、AFTA(ASEAN自由貿易地域)やNAFTA(北米自由貿易協定)など数カ国による地域FTAなど様々なかたちがありますが、これらが重なり合って、重層的な貿易システムを形成しています。

FTAブームが訪れたのはそれ程古いことではありません。1990年以前は、世界にはわずか21件のFTAしかありませんでした。しかし、WTO交渉が停滞したことや、それまで閉鎖的であった途上国の多くが経済開放路線にシフトするなどの要因があって、FTAは90年代の10年間に56件増加しました。そして、2000年代に入ると貿易自由化の手段としてFTA締結が加速し、2000年以降200件を超えるFTAが新たに発効しました。現在も多くのFTAが交渉中あるいは発効を待っている状況であり、今後FTAはさらに増えていくことが予想されています。

一般にFTAは、交渉を経てまず大筋合意の形で妥結し、その後署名、双方議会での批准を経て発効するというのが一般的なプロセスです。発効しないことには優遇された税率を利用することもできません。従って、交渉がプロセスのどの段階にあるのかを見定める必要があります。

日本のEPA(経済連携協定)

世界のFTAネットワークが拡大する中、長い間GATT/WTOの多国間貿易体制に軸を置いてきた日本でもFTAを求める声が高まっていきました。そして、2001年1月に開始されたシンガポールとのEPA交渉の開始により日本のFTAの歴史が幕を開けることになります。シンガポールとの交渉を経て、2002年11月に日本にとって初めてのEPAが発効しました。

日本が締結するEPAは、投資や政府調達、ビジネス環境整備など、現在WTOが規定する以上の内容(WTOプラス)を含んでいます。

日本は、シンガポールとのEPAを弾みとして、一気にEPA戦略を推し進めることになります。2005年4月にメキシコ、2006年7月にマレーシア、2007年9月にチリ、同年11月にタイ、2008年7月にインドネシアとブルネイ、2008年12月にはフィリピンとの間で次々とEPAを発効させていきます。2008年12月にはASEAN全体との間でAJCEP(ASEAN・日本包括的経済連携協定)が発効しました。ASEAN諸国には80年代から多くの日本企業が進出し、現地で生産ネットワークを築いてきました。AJCEPの発効により、在ASEAN日系企業が日本から高付加価値部品を無税ないしは低税率で輸入し、そこで製造したものを他のASEAN諸国へ輸出するなどビジネスオペレーションの選択肢が増えたと言えます。その後も、日本はスイス(2009年9月)、ベトナム(2009年10月)、インド(2011年8月)、ペルー(2012年3月)、オーストラリア(2015年1月)、モンゴル(2016年6月)との間でEPAを発効させています。日本の発効済みEPAは2017年3月現在、15件(14カ国とASEAN全体)となりました。

2013年には日本は、日本・中国・韓国の三カ国FTA交渉(同3月)、日本とEUのEPA交渉(同4月)、日本とASEAN10カ国および中国・韓国・インド・オーストラリア・ニュージーランドの計16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉(同5月)という大型FTA交渉をそれぞれ開始しました。さらに日本は2013年8月、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉にも参加しました。大型FTAの締結・発効により、日本のFTAカバー率(貿易総額に占めるFTA締結相手国との貿易額、2015年の往復貿易額ベースで22.7%)を引き上げ、企業の貿易コストを低下させることが期待されています。しかし、2016年2月に交渉12カ国での署名に至ったTPPは、2017年1月に米国トランプ大統領が「離脱」を宣言するメモランダムを発出したことで、早期の発効が難しい状況に陥っています。

アジア大洋州地域のFTA

経済成長著しいアジア大洋州地域では、2010年にASEAN+1のFTA(ASEAN と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド間のFTA)が全てそろい、FTAの本格活用時代を迎えています。日本企業にとっては、日本が結んでいるEPAのみならず、こうした第三国間のFTAを進出先のASEANにおいて利用するといった観点から、FTAの利用価値が高まりました。たとえば日本企業がインド市場開拓を目指す際、自社が生産拠点を置くASEAN加盟国とインド間のFTAを利用する余地があります。日本のASEANに対する直接投資残高は、韓国や中国の対ASEAN残高をはるかに上回り、域内の生産拠点は広がっています。今後は、RCEPの締結・発効により、日本企業のアジア大洋州地域における生産ネットワークの最適化が進むことが期待されています。

アジア大洋州地域におけるFTAでは、韓国がEU(2011年7月暫定発効、2015年12月全面発効)、米国(2012年3月発効)、中国(2015年12月発効)という主要な貿易相手国・地域とのFTA網を完成させていることが目に付きます。韓国のFTAカバー率は2015年の貿易額ベース(往復)で67.3%に達しています。

今後、世界のFTAの動きを念頭において、それらのメリットをうまく活用しながらビジネスを展開していくことがますます重要になっていくと考えられます。

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