国際知的財産保護フォーラム(IIPPF) 平成29年度 国際知的財産保護フォーラム総会の開催(2018年3月16日)
国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)は2018年3月16日(金曜)、ホテルオークラ東京(東京都港区)にて、2017年度の年次総会第2回を開催した。総会には名が参加した。また、来賓として、以下7名の方に参加いただいた。
- 内閣府 知的財産戦略推進事務局 次長 永山 裕二 氏
- 経済産業省 大臣官房審議官 土田 浩史 氏
- 特許庁 総務部長 小山 智 氏
- 外務省 経済局知的財産室長 小山 隆史 氏
- 財務省 関税局業務課知的財産調査室長 加藤 誠 氏
- 文化庁 長官官房国際課長 北山 浩士 氏
- 農林水産省 食料産業局知的財産課長 杉中 淳 氏
会場の様子
議事次第
- 開会
- 来賓紹介(司会)
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来賓挨拶
- 内閣府 知的財産戦略推進事務局 次長 永山 裕二 氏
- 経済産業省 大臣官房審議官 土田 浩史 氏
- 特許庁 総務部長 小山 智 氏
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座長挨拶
座長 西川 廣人 氏 (日産自動車株式会社 社長兼最高経営責任者) -
2017年度活動報告および2018年度計画案の紹介
- 企画委員会及び全体活動について
企画委員長 別宮 智徳 氏(日産自動車株式会社 知的財産部長) - 中国プロジェクトチーム
幹事 小薗江 健一 氏 (日本知的財産協会 アジア戦略PJ リーダー) - アジア大洋州プロジェクトチーム
幹事 長澤 洋介 氏(カシオ計算機株式会社) - 中東プロジェクトチーム
幹事 足立 幹也 氏(本田技研工業株式会社) - インターネットプロジェクトチーム
幹事 大久保 淳氏(ヨネックス株式会社)
- 企画委員会及び全体活動について
- 新座長・副座長選出
- 新座長・副座長就任挨拶
- 2018年度企画委員について
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副座長挨拶
副座長 石毛 博行(ジェトロ 理事長)
来賓挨拶
内閣府 知的財産戦略推進事務局 次長 永山 裕二 氏
- 国内市場が縮小している中で、我が国が世界に誇る技術力やデザイン力、またクールジャパンに代表されるソフトパワーというものを最大限活用して、海外市場に継続的な積極的な事業展開を図っていくことが重要。
- ビジネス展開の基盤として、模倣品・海賊版撲滅による知的財産権の保護は必要不可欠。知財事務局では、こうした観点を念頭に知的財産推進計画2018の策定にむけた議論を進めている。
- 2025年から2030年という10年後を見据えて、世界経済の変化に対応する今後の知財システムの在り方に関する検討も進めている。引き続き、IIPPFと密接に連携しながら、知的財産権の保護の強化に向けて取り組んでいきたい。
- 我が国産業の国際競争力の向上のために、オールジャパン、政府をあげて知的財産権の保護の強化に取り組んでいきたい。今後ともIIPPFにはご指導ご鞭撻を頂くとともに、ご協力をお願いしたい。
経済産業省 大臣官房審議官 土田 浩史 氏
- 我が国の優れた製造技術や商品開発力に裏打ちされた企業ブランドの維持・向上は、グローバルで激化する競争に打ち勝っていくためには必要不可欠。他方で、こうした企業の努力の成果であるブランド力に「ただ乗り」する模倣品・海賊版行為の存在は、ブランドイメージやブランド力を損なうだけでなく、企業のイノベーションと知的財産の創造意欲を減退させることにも繋がる。
- 経済産業省はIIPPFの協力の下、中国には、2017年度において実務レベルの官民合同代表団を北京及び広州に派遣し、中央政府及び地方政府との意見交換を実施した。インターネット上の商標権侵害の取締りを担当しております中国国家工商行政管理総局との代表団を今年2月に2年ぶりに招聘した。また、ベトナムやミャンマーなど東南アジアをはじめ、また中東・南米等の国、地域についても、各国当局の担当官を対象とした真贋判定セミナーや日本への招聘事業を行い、これらの機会にも積極的にご参加頂いたところ。このような、模倣品・海賊版の拡散防止に向けたIIPPFの積極的な取組に対し、改めて敬意を表す。
- 当省としても、2017年12月には関係省庁も協力の下、「日中知的財産権ワーキンググループ」の第6回会合を北京で開催した。同時に、協力活動の一環として、両国の裁判官・権利者を対象にエンフォースメントに関する共同セミナーも開催した。今後も、中国をはじめ各国との知財問題の改善に向けて、関係緊密化に努めていきたい。
- 昨今、模倣品の多くは国境を越えてECサイト上で多くで販売されている。知的財産権侵害が複雑かつ広範囲に渡る中で引き続きIIPPFとも密接に連携し、各企業・各団体の活動を側面から支援しつつ、効果的な模倣品・海賊版対策を実施していきたい。
- IIPPFには、模倣品・海賊版対策における中心的な役割を担う団体として、今後とも積極的な活動を継続していただくことを改めてお願いしたい。
特許庁 総務部長 小山 智 氏
- 歴代座長のリーダーシップのもと、参加企業・団体の皆さまが模倣品・海賊版問題の改善に向け、精力的に取り組んでこられたことに対し、まず深く謝礼を申し上げるとともに、特許庁としましても改めて感謝申し上げたい。
- この場をお借りして、最近の特許庁の取り組みを紹介したい。特許制度・運用の国際調和に関して、グレースピリオド制度(新規性喪失の例外期間)の12カ月への延長を盛り込んだ特許法改正案を提出した。これは米国と同一の運用となる。また、標準必須特許に関して、国際シンポジウム「Licensing 5G SEPs」を東京で開催し、300人以上が来場した。
- 各国の知財制度整備支援にも取り組んでおり、2月にアジア・アフリカ54か国の知財庁長官などが参加したWIPO、ジャパンファンド30周年記念フォーラムを東京で開催した。また、その際に世耕経産大臣の立ち合いのもと、WIPO、ジェトロ、特許庁との間で知財と貿易投資の連携枠組みの構築を目的とした文書に署名をした。
- 海外における日本の企業の皆さまの知財活動の実施、そして模倣品対策について支援したいと考えている。
座長挨拶
座長 西川 廣人 氏(日産自動車株式会社 代表取締役、共同最高経営責任者)
- IIPPFは本年4月で設立から16年を迎える。この間、官民、各国政府の協力のもと、諸外国政府に対する「協力と要請」というアプローチにより、着実に成果を収めてきた。
- 我々を取り巻く環境の動き、変化は大変激しく、インターネット化、企業活動のグローバル化が加速する等、模倣品・海賊版被害は当初の問題意識となっていた中国国内に止まらず、より広いグローバルでの問題・課題となっている。
- このような背景から今年度はプロジェクトを再編成して、より効果的な活動を目指し、新しい活動をスタートさせた。第一に企画委員会を強化し、PDCAを効率的に回したプロジェクトの支援を行った。そしてグローバルな課題対応のため、地域横断的なテーマも設定した。
- IIPPFの活動にあたっては、我々産業界と、内閣府や経済産業省、特許庁をはじめとした日本政府、そして事務局として国内外で支えるジェトロの3者の協力と連携があって、ここまで推進をしてくることができた。関係者の皆様のご協力に改めて感謝を申し上げるとともに、今後もさらなる支援、協力をお願いしたい。
2017年度活動報告および2018年度計画案の紹介
1. 企画委員会及び全体活動について
企画委員長 別宮 智徳 氏(日産自動車株式会社 知的財産部長)
- 今年度は、計4回の会合を開催。今年度はIIPPFのあり方を見直し、組織の再構築を行った。企画委員会については、情報共有、普及啓発、プロジェクト横断テーマの挑戦・実施、そしてPDCAの管理という4つの機能を追加した。
- 中国プロジェクトチームは2つのグループに分けた。1つは中国政府当局に建議を行う建議グループ、もう一つは中国で本格的な模倣品対策を取り組もうという会員の方々のための情報収集グループとした。
- アジア大洋州プロジェクトは従来のアセアンワーキンググループとインドワーキンググループを統合した。中東プロジェクトは中東ワーキングにアフリカを追加して、再編した。インターネットについては、従来はワーキンググループであったが、昨今のEコマースを中心とした模倣品の流通に鑑みて、プロジェクトチームに格上げした。
- 地域横断団プロジェクトでは、貿易統計データを活用した模倣品の流通ルートの分析に成功した。2018年度の活動方針としては、各業界団体や専門家の知見を広く取り入れながら、流通ルート分析手法のさらなる強化、そして、税関やインターネット対策等、流通上、歯止めが必要な課題の抽出を進めたいと考えている。
- 縦割りになっている各プロジェクトの活動を共有する場を設けることを目的として、情報共有セミナーを4回開催した。セミナーでは各プロジェクトから活動計画をご紹介いただき、具体的な進捗報告をご紹介頂くとともに、特別講演と題し、個別企業の具体的な模倣品対策の取組をご紹介いただき、有識者等を招いてパネルディスカッション等を行った。IIPPFの非会員向けにPRを行い、模倣品対策の意識の底上げ、国内消費者への普及啓発も行った。
- PDCA管理を目的として、統一の報告フォームを作成し、活動状況の見える化を行った。それを基に、四半期ごとの委員会で報告、議論を行い、結果をさらに次の活動に反映させるというサイクルを回した。
- 2012年以降、中断していた中国ハイレベルミッションの派遣に関する検討も行った。具体的にはIIPPFの主要会員20社の方々にヒアリングを行ったところ、(1)これまでのミッション等を通じた働きかけ及び中国政府の自主的な取り組みによって、一定の改善は図られているのではないか、(2)これまでの建議・要請事項の視点だけではなく、日中両国が知財保護の分野においてウィンウィンの関係を構築し、それを発展させていくための事業展開が必要ではないか、といった声があった。それらを踏まえて検討した結果、現状においてはハイレベルミッションの派遣を要する喫緊の課題はないと結論づけた。ただし、今後も未解決の課題、あるいは新たな課題、産業界の要望を精査して、ハイレベルミッションの実施を検討していく。
- 最後に、2018年度活動への期待として、(1)中国当局との連携については日本から中国への一方向の建議から、ウィンウィンの活動を模索する段階にきているのではないか、(2)中国以外の地域については、模倣品のグローバルな拡散に対応し、模倣品の製造国のみならず、経由国、流通国への対応を強化する、(3)インターネットについてはインターネット上の模倣品増加に対応し、ECサイトとの連携、ルール整備等の取組が必要ではないかとか考えている。
2. 中国プロジェクト
幹事 小薗江 健一 氏(日本知的財産協会)
- 建議グループは中国政府に対する建議・協力を実行することを目的として活動している。具体的にはメンバー企業・団体に対し、関心の高い課題を把握し、その解決に取り組んでいる。また、2016年度からの継続課題である、「行政機関の連携によるワンストップで網羅的な侵害排除の可能性」の定着に向けた活動を行っている。
- 2017年11月に実施した北京実務レベルミッションでは最高人院法院をはじめとする5つの政府機関、ならびに1つの知財保護団体との交流を実施した。
- 2018年1月に実施した広東実務レベルミッションを派遣し、広州市開発局知的財産権局を訪問し、専利権及び著作権両方の侵害が発生した場合、両部門が出動するワンストップの知財保護をまさに実践しているということが分かった。広東省での行政機関の連携については着実な歩みを確認したため、今後の広東ミッション派遣については、来年度以降は一旦休止する予定。
- 他にも、工商行政管理総局の訪日団との交流、日中知財エンフォースメント共同セミナーでの講演を実施した。IIPPFの会員企業の事例を実際に紹介しながら、取締機関の連携強化の状況を報告した。
- 情報収集グループはこれから知財保護をやっていきたい、模倣品対策をしたい、海賊版対策をしたいという企業を対象とした活動である。2017年度は勉強会を3回実施した。IIPPFの発足から16年が経過したが、これから模倣品対策、海賊版対策を進めたいという企業が依然多数あるということを実感した。
- 2017年11月には広東真贋判定セミナーを実施し、中国の政府機関と初めて交流した。非常に良かったという声を聞いており、来年度以降も継続していきたい。
3. アジア大洋州プロジェクト
幹事 長澤 洋介(カシオ計算機株式会社)
- 2017年はプロジェクト会合を7回実施した。権利者による模倣品対策事例の紹介や、現地事業を実施するにあたって、事前に専門家等を招聘し、実施国の問題点、制度等を事前に勉強した。
- 現地事業としては、ベトナム、タイ、ミャンマー、インドネシア、ラオス、マレーシア等で現地での真贋判定セミナー及び政府との意見交換等を実施した。また、10月にインド税関職員を招聘した。
- 今後も、専門家による講演、意見交換、メンバー企業による事例紹介を継続的に行い、知見の集積や情報共有を図っていきたいと考えている。
- 2017年12月にアジア大洋州PJ内で関心国を調査するアンケートを実施した。結果、特にベトナム、インドネシア、マレーシアについて関心が高いことが分かり、今後はこれらの国を中心に活動を集約化させていくことにする。特に情報把握や現地活動に重点化していきたい。
4. 中東プロジェクト
幹事 足立 幹也 氏(本田技研工業株式会社)
- 2017年11月26日にUAE・ドバイにて日本UAE知財司法ワークショップを開催し、裁判官との意見交換会を実施いたしました。また、翌27日には真贋判定セミナーを開催した。また、11月28日から30日にかけてサウジアラビアを訪問し、真贋判定セミナーを開催した。日本サウジビジョン2030に基づき、特に模倣品対策の要である商業投資省、税関との連携を一層強化した
- エジプト、トルコの知財関係者を招聘して、セミナー、情報交換会を開催した。また、サブワーキング活動として、イラン、クウェート、イスラエルの研究を進めて、発表会を行った。
- ドバイをベースとしている中東IPGとも定期的にテレビ会議を開催し、情報交換に努めた。今後も定期的にテレビ会議を開催し、連携を強化していく。
- 来年の活動はサウジ、エジプト、トルコといった重点国は継続しつつ、アフリカ、スタン国、パキスタン、アフガニスタン、キルギスタン、カザフスタン等々のいわゆるスタン国の情報収集にも取り組みたいと考えている。
5. インターネットプロジェクト
幹事 大久保 淳 氏(ヨネックス株式会社)
- これまで重点的に取り組んできた中国を除く日本を含めた世界各国のECサイトにおける対策を目的として、アマゾンや日本国内の新興ECサイトとの情報交換、意見交換、そして各サイトにおける侵害実態等を調査した。
- 2017年12月には、インターネットWGとしてかねてより協力関係を構築しているアリババ集団の模倣品対策担当者を日本に招聘し、意見交換を実施した。年々巧妙化する模倣品対策にアリババ集団は非常によく対応しているが、依然として日本企業を悩ませる課題に対して改善要望を行った。
- 近年、新興のスマホサイトにおける模倣品が非常に増えているため、侵害実態を把握するための調査を実施し、結果に基づいて各ECサイトと意見交換を実施した。
- 従来の商標法侵害に当てはまらない事例が増えており(「非典型侵害」)、来年度以降の調査に向けた検討のため、会員企業から多く事例を収集した。
- 今後も国内外のECサイト、特にアリババやアマゾンとの協力関係を維持し、適切な市場の形成に取り組みたいと考えている。最近、増加する中国でのスマホアプリでの模倣品対策についても、対策を考えていきたい。
副座長挨拶
副座長 石毛 博行(ジェトロ 理事長)
- 報告の通り、IIPPFは設立16年目を迎える。会員の皆様のニーズにより機動的に、より効果的に対応できるよう体制、機能を改善している。
- 今さら申し上げるまでもないが、IIPPFの強みは官民連携により、産業界の要請を海外政府に直接伝達できる点にある。
- 中国においては、巧妙化する模倣・違法業者をより効果的・効率的に処すための制度改革や準備を政府が急ピッチで進めている。
- 近年のEコマースの急速な拡大を背景として、国境を越えたグローバルな知的財産権保護の重要性は日々、高まっている。IIPPFは模倣品の被害対策にとどまらず、デジタル貿易時代の枠組み作りにつながるような、世界各国・地域とのウィン・ウィン(Win-Win)の関係に資する取り組みを、日本の官民で連携しながら、実施し、創造的な知的財産環境を生みだすことを期待する。