国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)

平成25年度国際知的財産保護フォーラム総会の開催(2014年3月4日)

国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)は2014年3月4日(火)、ホテルオークラ東京(東京都港区)にて2013年度の年次総会を開催した。総会には96名が参加した。

来賓

来賓として、以下6名の方に参加いただいた。

  • 内閣官房 知的財産戦略推進事務局 次長 作花 文雄
  • 経済産業省 大臣官房審議官 谷 明人氏
  • 特許庁 特許技監 木原 美武氏
  • 外務省 経済局 知的財産室長 彦田 尚毅氏
  • 財務省 関税局 業務課 知的財産調査室長 茂木 勇氏
  • 文化庁 長官官房 都築 智氏

来賓挨拶

内閣官房 知的財産戦略推進事務局 作花 文雄 次長

  • 志賀座長におかれては、平成22年のご就任以来、長きにわたり、IIPPFの座長として業界をリードされ、模倣品、海賊版対策を推進すべく大変なご尽力をいただいた。特に、平成22年8月、平成23年4月、平成25年9月の官民合同訪中ミッションでは、自ら団長としてミッションを率いて、中国政府への働きかけを主導していただき、大変感謝している。
  • 昨今は、中国に加え、ASEANや中東諸国など、多数の国々での対策が必要となっており、海外での情報収集や中小企業への支援の観点からも、IIPPFが果たすべき役割は、ますます重要になるものと認識している。
    内閣官房の知財事務局としても、IIPPFと密接に連携し、知的財産保護の強化に向けて、取り組んでまいる所存。
  • 今後とも、アジア諸国を中心に、それぞれの国における、著作権制度整備とともに、権利の集中管理団体の育成に尽力していきたい。
  • 営業秘密分野でも、IIPPFと密接に連携し、ともに取り組んでまいりたい。引き続き、オールジャパンで知的財産戦略の推進に取り組むべく、今後ともご協力賜りたい。

経済産業省 谷 明人 大臣官房審議官(製造産業局担当)

  • まず、志賀座長、石毛副座長の強力なリーダーシップのもと、河本企画委員長をはじめ、各プロジェクトの幹事の皆様方、会員企業の皆様方、事務局を務めるジェトロの皆様方が一丸となって、模倣品、海賊版対策に取り組んでいただいていることに対し、経済産業省としても、大変感謝申し上げる。
  • 昨年は、日中関係が非常に厳しい中、実務レベルのミッションを中国に派遣いただき、中央政府、地方政府と、地道な交渉をしていただいた。例えば、税関で差し止められた侵害疑義貨物にかかる権利者の負担軽減や行政処罰の運用等の議論では、先方から前向きな答弁を引き出され、非常に実務的な成果を出されている。また、中国だけではなく、東南アジア、インド、ロシア、中東といったような、新しいフィールドでも非常に多くの活動をしていただき、評価が大変高いと伺っている。
  • 弊省としても、IIPPFの会員の皆様、各省の皆様、ジェトロの方々と連携をとりながら、今後とも模倣品、海賊版対策に取り組めれば幸い。

特許庁 木原 美武 特許技監

  • IIPPFが2002年4月に設立されてから、今年で12年目を迎えるが、フォーラム参加企業、団体の皆様が、志賀座長初め歴代座長のリーダーシップの下、海外での模倣品、海賊版問題の解決に向け、精力的に取り組んでこられたことに対して、深く敬意を表するとともに、改めて感謝申し上げる。
  • 知的財産を取り巻く環境、とりわけ、近年の中国の変化は目を見張るものがある。 例を挙げると、中国国家知識産権局(いわゆる特許庁)が2013年に受理した特許の出願件数は82万件にも上る。2012年は、65万件だったので、1年間で17万件も増えたことになる。
  • 中国のみならず、成長著しい新興国も存在感を増しつつあり、こうした国、地域との関係強化も重要。ASEANとの協力で、2012年から「日ASEAN特許庁長官会合」の開催等を通じて、関係を強化しており、本年7月には、第4回会合を、ベトナム・ホーチミンで開催する予定。日本国特許庁とASEAN加盟国特許庁との、知的財産に関する協力覚書に基づくアクションプランを、産業界の皆様のご意見を伺いながら、毎年見直しを行っている。引き続き、この枠組みを活用して、模倣品対策の推進を含む協力事業を着実に進めていく。
  • 官民合同の協力態勢の要となるIIPPFの活動は、極めて重要であり、今後とも連携をお願いしたい。

座長挨拶 志賀 俊之 座長(日産自動車(株)最高執行責任者

  • 日頃より積極的にIIPPFの活動にご指導、ご支援をいただいている政府、産業界並びに関係機関の皆様に、改めてお礼を申し上げる。
  • 2012年の尖閣諸島問題以降、日中の政府間交流は、大変厳しい情勢が続いている一方、知財分野における実務レベルでの日中間交流は、これまでIIPPFが築き上げた中国との関係と経験の蓄積をベースに、日中政治外交情勢の影響が、比較的限定的であった、と感じている。例えば、北京、広東を対象とする実務レベル訪中代表団の派遣では、中央政府及び関係機関に、真摯にご対応をいただき、日本企業が直面する知財問題の改善に向けた対応が実現できた。
    広東省政府公安部門幹部の訪日招聘では、日本企業との意見交換のほか、日本の警察機関との対話が実現し、当局間の理解を深めるよい機会であった。
  • 新興国のめざましい経済発展と、市場の成長力に期待したビジネスを展開するに際し、各国の知的財産法制度と運用の動向を押さえておく必要性が、一層高まっている。また、日本企業の知的財産保護をめぐる問題は複雑化しており、グローバル視点からの対応が求められている。
  • このような実態に対応するために、今年度は、5年ぶりに中東ミッションを派遣し、サウジアラビア及びアラブ首長国連邦との実務的な関係強化を図った。
    またイラク政府からの要請を受けて、エルビルで、初めて真贋判定セミナーを開催した。官民一体で知財保護に取り組む日本の姿勢が高く評価された証と言える。

プロジェクト活動報告

企画委員会及び全体活動について
第2プロジェクト【中国以外の国・地域への対応】(河本 健二 企画委員長 日本知的財産協会 参与)

  • 過去にハイレベルミッションの途中で中国政府機関の訪問がキャンセルになるなど、かなりの犠牲のもとに現在の活動がある。政府間の窓口が閉じても、この官民の窓口を通して日中関係を繋げていくことが重要。
  • IIPPFは、1.座長の強い思い、2.政府の強力なサポート、3.プロジェクトを率いているリーダーの強い思い、4.ジェトロの人脈、このようなメンバーで構成されているからこそ、会費が無料であっても非常に大きな成果を生んでいる。
  • 第2プロジェクトは、基本的には国内でのセミナーと、海外における真贋判定セミナーを開催するのが主な活動。5年ぶりに中東にミッションを派遣したが、中国のように毎年実施せず、相手国への建議事項がまとまった段階で、数年に一度派遣する形を取っている。また、イラク政府の要請を受けて、非常に政治・治安の不安定な国において、日本企業の方々にご参加いただき、真贋判定セミナーを開催すると、相手国政府の方もこれによって非常に前向きに対応していただくことが期待できる。
  • ASEANに関しては、量よりも質に重点を置く方針に転換している。今までは、数多く、真贋判定セミナーや国内セミナーを開催していたが、こういった活動後に、政府機関の方々、税関の方々と意見交換し、今後どのように次に繋げたらよいかという議論を重ねた。
  • ロシアについては、法律の情報を集めたり、法律の整備をしたりと、第2プロジェクトの中では、一番初期の活動を行っている。
  • 第2プロジェクトでは、対象となる国・地域や活動の範囲が広がっている。今後は、どの国・地域を対象に、どのような活動を実施していくのか、対象と活動内容を絞って活動を進める必要があるのではないか。

第1プロジェクト【中国への協力・要請、国際連携】(小薗江 健一 幹事 日本知的財産協会 副理事長)

  • 11月に行った北京実務ミッションについて、IIPPF創設以来の課題がいくつか解決されつつある。1つは、海関総署において申し立て期限の延長が見直された。また、権利者負担だった廃棄費用、保管費用を軽減するという方向で、条例が改正される予定。 また、AQSIQについては、国務院の決定が11月中旬にあり、行政処罰情報の結果を公開いただけることになった。最高人民法院については、裁判の結果を履行しない者に対して、金融機関に情報提供して、政府調達や資金借入の際の制裁を課すなど、執行強化ということで動き出している。
  • 12月初めには、広東省の実務ミッションで、広東省3機関、知識産権局、AIC、TSBとの合同交流会を初めて実施した。本形式により、各機関から最新情報を入手することができ、いい取り組みであった。
  • 日中関係が必ずしも良好ではない中で、先方との対話の機会さえ得られれば有益な情報を入手できる、ということは分かっているので、訪問団の規模、実施のタイミング等を研究し、Win-Winの関係が醸成されるような取り組みを広げていきたい。

第3プロジェクト【情報交換】(黒瀬 雅志 副幹事 日本弁理士会 産業競争力委員会委員)

  • 今年度は、全員参加型の情報交換会を4回、模倣品対策共通データベース研究会を同じく4回実施した。
  • 情報交換会の第1回は中国における模倣品対策、第2回は最近の中国の模倣品取締りの現場の報告、第3回は新興国の模倣品対策について、第4回はインドの模倣品・海賊版の対策について実施した。
  • 来年度は今年と同様に、参加者の実体験に基づく情報提供、並びに、参加型の情報交換会を引き続き実施し、テーマについては、中国以外の新興国にも広げていきたい。

第4プロジェクト【人材育成・普及啓発】(腰原 正秀 幹事 公益社団法人 発明協会発明奨励グループ課長)

  • 民間レベルの情報提供や人材育成協力等が重要であるとの観点から、一般市民等に対する知的財産普及啓発活動を実施。
  • 日本国内大学での講義等による人材育成を通じた知的財産保護意識の向上や、「出張!IPカルチャー教室」を開催し、参加者自らがオリジナル創作体験を通じて、ものづくりの楽しさを体得しながらアイデア尊重意識の醸成を図る取組みを実施。
  • 来年度も、今年度と同様の活動方針に基づき、大学における知的財産に関する講義、青少年に対する知財保護教育活動及び真正品等の展示を通じた普及啓蒙活動を展開する予定。

非プロジェクト【インターネットWG】(山岡 寛和 部長 独立行政法人 日本貿易振興機構 進出企業支援・知的財産部)

  • 今年度の活動では、中国のISPである淘宝網(タオバオ)を初めて訪問した、というのが大変な成果であった。具体的な真贋判定のための調査手法に関する意見交換、悪徳業者の取締強化について深い議論を実施。アリババ訪問後の成果は罰則の強化、再犯対策の強化。
  • 上海IPGのインターネットWGの企業の皆様とも協力をし、タオバオ職員向けの真贋判定セミナーを実施し、そのときの活動について日経新聞で大きく取り上げられた。
  • 今後の課題は、悪質業者の取り締まりの強化、再犯に対する対策をさらに確実に実施して、これを強化すること、ISPが行う自主パトロールの精度向上に向け、日本側としても一定の協力を得ること。
  • 今後の計画としては、タオバオ以外のISPの対策事例を収集すること、決済会社との連携を模索し、これについて検討する。

第5プロジェクト【営業秘密保護】(河本 健二 企画委員長 日本知的財産協会 参与)

  • わが国企業のイノベーション促進に向け、技術情報を営業秘密としてしっかり保護していく必要性が高まっている状況。しかしながら、営業秘密の管理について企業間の意識に差があり、管理の水準についてもばらつきがある。漏洩の早期発見や対応、民事・刑事での問題解決が十分図られていないのが現状である。
  • 営業秘密保護をテーマにした新プロジェクトを立ち上げ、漏洩事例やグッドプラクティス等の情報の蓄積や産業界の営業秘密保護に対する注意喚起を目標とする。

【前座長退任挨拶】(志賀 俊之 前座長 日産自動車(株)最高執行責任者)

  • これまで私に寄せていただいた日本国政府関係機関の皆様のご指導とIIPPFメンバーのご尽力に心より御礼申し上げる。
  • 2010年より、2期4年に亘り、IIPPF座長を務めた。2003年に日産自動車が中国に本格的に進出して以来、自社にとっても中国が長期的なビジネスパートナーとなった。中国において最新技術を導入していくうえで、知的財産保護は非常に重要な課題となった。このため、社内体制を強化し、会社としてこの課題に取り組んできたが、一企業としての取り組みでは限界があるため、2010年にIIPPF座長を務めさせていただいた。
  • 4年間で合計3回のIIPPF合同訪中代表団に参加する機会に恵まれた。第1回は2010年の北京訪問代表団で、商務部との協議の結果、中国最大の展示会である広州交易会の場で、展示会への侵害品出品を抑制することを目的とした、シンポジウムの日中共同開催に合意をした。
  • 2回目の訪中ハイレベルミッションでは、中国共産党広東委員会の書記である汪洋氏との会談の結果、広東省政府と協力関係を構築していくことが合意された。汪洋氏と私がお会いできたこと自体が、広東省がいかに知的財産保護を重要視しているか、ということの証明になったと報道され、それがその後のいい動きに繋がった。
  • 3回目の訪中が、2012年9月の北京のハイレベルミッション。日本政府による尖閣諸島国有化が決定された日に、ミッションは現地で活動中であった。
  • ハイレベルミッションは、中国との関係強化や、個別問題の改善を図るため、IIPPF設立以来の代表的な事業であるが、近年、IIPPF活動は、対象地域を拡大し、今も多様化をしている。このような情勢変化に的確に対応していくための活動は、ますます重要になっている。
  • IIPPFのような官民の活動が、政治的には停滞している現在の日中関係を、さらにいい形で進展させる、ひとつの活動になるのでは、と期待をしている。

【新座長就任挨拶】(佐々木則夫 新座長 (株)東芝 副会長)

  • 前座長におかれては、在任中に、3度の訪中ミッションを団長として主導していただいた。特に、従来は北京中心だった訪問先を7年ぶりに広東省にもミッションを派遣し、中央のみならず地方政府との信頼関係構築にも非常にご尽力いただき、感謝申し上げる。
  • IIPPFは官民が一体となって活動することに大きな意義があると感じており、IIPPFの基本理念である「協力と要請」の姿勢もこれまで同様に大切にしていきたい。
  • IIPPFの活動も中国だけでなく、その他の新興国にも拡大を図っているが、相手がどの国であっても、お互いにWin-Win の関係構築を心掛けることが大切ではないかと思っている。

【副座長就任挨拶】(石毛博行副座長)

  • ご指名をいただき、引き続きIIPPF副座長を務めさせていただく。
  • ジェトロは安倍内閣の成長戦略の下で、対内直接投資の拡大、輸出の拡大、あるいは新興市場ビジネスの開拓を最重点事業として取り組んでいるが、相手国の知的財産法制度、その運用、実態の把握など、IIPPFが取り組む活動と密接な関係がある。
  • IIPPFの役割は今後さらに重要性を増し、「協力と要請」がまさにキーワードになるだろう。
  • 佐々木新座長のもとで、ジェトロの国内外のネットワークを最大限活用し、日本企業の皆様の知的財産の保護に、全力で取り組みたい。

志賀俊之座長挨拶

佐々木則夫新座長挨拶

石毛博行副座長挨拶

来賓

会場の様子

会場の様子

2013年度活動報告の様子

議事次第

  1. 開会
  2. 来賓紹介
  3. 来賓挨拶
  4. 座長挨拶
  5. 平成25年度活動報告および平成26年度主要事業の紹介
    1. 第2プロジェクト
    2. 第1プロジェクト
    3. 第3プロジェクト
    4. 第4プロジェクト
    5. 非プロジェクト
  6. 第5プロジェクト
  7. 前座長退任挨拶
  8. 新座長就任挨拶
  9. 副座長就任挨拶
  10. 閉会

(資料)平成25年度活動報告

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