国際知的財産保護フォーラム(IIPPF) 令和6年度(2024年度)国際知的財産保護フォーラム(IIPPF) 総会の開催(2025年3月6日)

国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)は2025年3月6日(木曜)に、2024年度の年次総会を開催した。総会には90名が参加した(オンライン含む)。また、来賓として、以下の2名の方にご参加いただいた。

  • 内閣府 知的財産戦略推進事務局 次長 守山 宏道 氏
  • 特許庁 総務部長 滝澤 豪 氏

議事次第

  1. 開会
  2. 来賓紹介(司会)
  3. 来賓挨拶
    • 内閣府 知的財産戦略推進事務局 次長 守山 宏道 氏
    • 特許庁 総務部長 滝澤 豪 氏
  4. 座長挨拶
    座長 小林 利彦 氏(セイコーエプソン株式会社執行役員 知的財産本部長)
  5. 審議
  6. 2024年度活動報告、2025年度活動方針について
    1. 企画委員会
      企画委員長 吉井 亮(セイコーエプソン株式会社)
    2. 中国プロジェクト
      幹事:大久保 淳 氏(ヨネックス株式会社)
    3. アジア大洋州プロジェクト
      幹事 清水 寛子 氏(セイコーエプソン株式会社)
    4. 中東・アフリカプロジェクト
      幹事 村上 厚史 氏(日産自動車株式会社)
    5. インターネットプロジェクトおよびAmazonワーキンググループ
      幹事:岡崎 高之 氏(株式会社バンダイ)
    6. 啓発プロジェクト
      幹事:青木 久枝 氏(パナソニックホールディングス株式会社)
  7. 2025年度企画委員について
  8. 表彰式
  9. 閉会挨拶
    • IIPPF副座長 独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)理事 高島 大浩

座長挨拶

座長 小林 利彦 氏(セイコーエプソン株式会社 執行役員知的財産本部長)

  • IIPPFの運営が、以前と同じ顔触れで行われていることに少し危機感を覚え、プロジェクトの幹事や副幹事が定期的に交代し、人材の新陳代謝が行われ、結果的にIIPPFが持続的に存続できる仕組みが必要であると感じた。そこで、運営要領の改正案を座長会社が取りまとめ、企画委員会に諮り検討していただいた。本日の総会では、その検討結果をご審議いただく。
  • また、この一年注力してきたことにIIPPFとして各国政府機関や他団体との連携強化を行った。今年度は、特許庁の支援を受け、ベトナム市場管理総局とのMOUを締結することに成功した。関係者にはお礼申し上げる。
  • 本日出席の政府機関関係者、産業界の皆様におかれては、IIPPFの発展のため、今後ともご支援、ご協力をお願いしたい。

審議

審議事項の「IIPPF運営要領改訂」と「新規事業」について企画委員長 吉井 亮 氏より説明があり、質問・意見はなく、拍手により承認された。

「IIPPF運営要領改訂」
  • 座長途中退任時の副座長の座長代行を新設。
  • プロジェクトチームの名称が統一。
  • 総会の成立規定の明記。
  • 総会欠席者の議決権行使方法について新設。
  • 総会の審議事項を明確化。
  • 企画委員会構成とメンバーの任期について新設。
  • 企画委員会の成立要件を明確化して、議決条件を明記。
  • 企画委員長途中退任時の代行者の指名方法を新設。
  • 企画委員会の審議事項を明確化。
  • 幹事の任期を新設。
  • 副幹事選定方法、役割、任期を明確化。
「新規事業」
  • 模倣品対策塾という模倣品対策の基本を学ぶ勉強会を行う。
  • 目的、背景は、勉強会を通じて、模倣品被害を受けている企業の模倣品対策基盤構築及び強化を支援する。また、模倣品対策初心者が解決したい課題を勉強会を通じて、対策立案できるよう支援する。IIPPFの裾野を広げる活動にもなる。
  • 勉強会の概要は、制度、概要の説明や企業による具体例、IIPPFの紹介などで年3回程度、開催方法はハイブリッド、応募はジェトロのイベントのサービス申し込み画面から申し込みをする。
  • 全体で2時間程度、前半40分の授業形式、休憩を挟んで企業の事例紹介と、意見交換を行っていく。最後にIIPPFの説明や海外支援策の説明を行う。

2024年度活動報告及び2025年度活動方針の紹介

1. 企画委員会
企画委員長:吉井 亮 氏(セイコーエプソン株式会社)

  • IIPPFの組織を2点変更した。一つ目は啓発ワーキンググループを啓発プロジェクトチームに、二つ目はIIPPF推進会議を設置した。
  • 2024年度の活動概要としては、IIPPFの体制や運営課題について対応方法の審議を行った。企画委員会は、全3回行った。その他の活動として、ホームページの改訂や特許庁や外部団体と共同したIIPPFの情報発信活動、情報共有体系やアーカイブ情報の閲覧範囲の明確化、新規事業の検討及びベトナム市場管理総局とのMOU締結の活動を行った。
  • 2025年度の活動方針として、参加メンバー間の連携、企業、団体、事務局、あるいは海外行政機関との連携を強化していく。活動内容としては、IIPPF参加メンバー間の連携強化として、企画委員会メンバーに副幹事も含めた合同プロジェクト、ワーキンググループで意見交換などを行う。また、ジェトロの海外アタッシェから最新情報の共有、団体活動の紹介といったことも実施する。IIPPFの情報発信活動も継続しながら、体制基盤を強化していく。

2. 中国プロジェクトチーム
幹事:大久保 淳 氏(ヨネックス株式会社)

  • 2024年度の主な活動方針として、情報収集と対策機会の提供がある。具体的には、情報交換のための定例会合を年5回行い、小規模の分科会に分けて、特定のテーマごとに1年間検討してきた。摘発分科会は摘発のエンフォースメントに関するテーマを研究している。EC分科会はアリババやECに対する課題など抽出して検討してきた。B to B分科会は、メンバー同士の情報共有をしている。民事訴訟分科会は、民事訴訟で結審するのか和解が良いのか、対策を検討した。初心者分科会は、初心者をいかにメンバーに取り込んでいくかという課題のために設置したもので、セミナーなどを行った。初心者分科会を卒業して、他の分科会に出る方も増えているので、成果があったのではないかと思っている。日中知財ワーキンググループにも参加した。
  • 2025年度活動は引き続き、情報交換と対策の機会の提供を行っていく。活動としては、分科会活動を行って、課題の抽出をする。出てきた課題については、執行機関やECプラットフォーマーとの交流による連携強化も行う。また、真贋判定セミナーも実施する予定になっている。来年度もメンバーフレンドリーの活動を行っていきたい。

3. アジア大洋州プロジェクトチーム
幹事:清水 寛子 氏(セイコーエプソン株式会社)

  • 定例会合を年5回実施した。今年度より各企業と話せるようショートディスカッションの時間を設けるなど完全対面によるフェーストゥフェースの会議を基本とした。
  • 2025年2月、3月にタイとフィリピンのエンフォースメント機関を訪問してきた。バンコク2日、マニラ2日で1日目がセミナー、2日目を意見交換とした。セミナーは、それぞれ100名~120名参加して盛況に終わった。意見交換は、タイでは、知的財産庁(DIP)、経済警察(ECD)、関税局(BOC)、フィリピンでは知的財産庁(IPOPHL)、国家捜査局(NBI)、関税局(BOC)といったところと意見交換してきた。
  • ベトナム市場管理総局を招聘して、MOUを締結した。また、ASEANインドにおけるECサイトの模倣品対策調査も行った。
  • 2025年度の活動方針としては、インド、インドネシアのエンフォースメント機関との連携やベトナム市場管理総局とのMOUに基づくエンフォースメント連携の強化を方針としている。

4. 中東・アフリカプロジェクトチーム
幹事:村上 厚史 氏(日産自動車株式会社)

  • 中東・アフリカは、中国から輸出された模倣品が、中東を中継地として、東ヨーロッパやロシア、北アフリカ等に流れているという実態があるので、中東及びアフリカの模倣品対策を行うことによって、そういった拡散も防ぐということもある。
  • 2024年度は4つの活動を行った。(1)オンラインで真贋判定セミナーを実施した。各国の取締当局に対して、オンラインで各社の識別ポイントを説明するという場を提供した。(2)GCC IP Advisory Councilに来日してもらい、午前中はセミナー、午後には意見交換を行った。(3)2025年2月にトルコ検察/警察とのオンライン意見交換を行うことを計画。意見交換に備え、2024年12月にトルコにおける模倣品流通及び生産実体、税関での差止め手続等に関する勉強会を現地弁護士事務所と行った(意見交換については現地の情勢等を鑑みて見合わせ)。(4)啓発動画のSNS拡散を行った。動画をアラビア語で翻訳し、現地のインフルエンサーに拡散を依頼した。
  • 2025年度は、オンライン真贋判定セミナーを優先にしつつ、トルコについては、現地で真贋判定セミナーや意見交換の開催も想定している。それからアフリカにおける模倣品対策に係る整備、手続について調査を考えている。

5. インターネットプロジェクトチーム
幹事:岡崎 高之 氏(株式会社バンダイ)

  • 定例会合の対面を推進しており、年4回実施し、メンバーのコミュニケーションを重視している。新しい企画として、各社からの事例共有会、失敗談を共有することによって、皆で侵害対策に取り組んでいこうということで実施している。また、国内EC事業者との意見交換会もニーズがあり、行っている。
  • 侵害対策に関する参加者のディスカッションや新規加入企業によるプレゼンも定例会合で実施している。インターネットPJには、Amazonワーキンググループという下部組織があり、毎年1回、Amazonと会合を行い、前半がオープンセミナー、後半がクローズドの意見交換会という2部構成で実施している。
  • 調査事業として、今年度はSNS等の誘導型詐欺広告を利用した模倣品流通に関する調査を実施している。また、越境EC等により、模倣品が海外から日本に流入する対策に関心を持っており、今年度は門司税関と水際差し止めの実態について意見交換を行った。
  • 2025年度活動として、SNS等の誘導型詐欺広告の対策を取り扱うワーキンググループを立ち上げ、専門的な研究を行っていく。最近は、海外EC事業との意見交換をオンラインで実施することが増えてきた。他に定例会合4回、Amazonワーキンググループ1回、調査事業、主要税関訪問、主要EC事業者との意見交換を予定している。
  • 来年度もさらに実りあるプロジェクトに出来ればと思っている。

6. 啓発プロジェクトグループ
幹事:青木 久枝 氏(パナソニックホールディングス株式会社)

  • 2024年度の活動実績として、定例会合を3回ハイブリッドで開催した。活動内容としてカワンゾちゃんを用いて、啓発PJメンバーと特許庁とのコラボを行った。また、各国知財庁の啓発事例という調査も行った。各地域で何が重要なのかということを理解した上で、今後、啓発を行って行く予定。
  • 特筆すべき点は、Z世代が重要との認識をメンバーでもっており、共同啓発として、継続的に大学生向けのセミナーを実施している。また、ホームページ等で分かりやすく啓発の情報を発信できるようにしている。
  • 2025年度の活動は、共同啓発として、若者向け活動(例:セミナー)を継続していく。新しい点として、2点あり、一つ目は、啓発動画の作成、もう一つはSROI(Social Return on Investment:社会的投資収益率)を用いて各社の経営層向けの啓発を研究していくことがある。

2025年度企画委員について

企画委員長 吉井 亮 氏より、2025年度IIPPF企画委員名簿を報告。拍手により承認された。

表彰式

2024年度まで複数年にわたって幹事を務めていただき、IIPPFの発展向上に貢献いただいた中国プロジェクト幹事のヨネックス株式会社の大久保淳氏とインターネットプロジェクトの株式会社バンダイの岡崎高之氏に小林座長より表彰状を授与した。

閉会挨拶

独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)理事 高島 大浩

  • IIPPFは、2002年の設立以来、20年以上に渡って国際的な知的財産保護の促進に関する活動を行ってきた。その間、取り巻く社会や経済の状況は大きく変化しており、企業のグローバル化の進展、デジタル化、オンライン化の進展、生成AIが急速に発展するなど知的財産を取り巻く環境というのは、非常に高度かつ複雑なものになってきている。
  • このような変化の中で、IIPPFは小林座長の指導の下、柔軟に新たな取り組みをしているのは大変有難く思っている。今日の報告を聞いて、非常に時代にあった新しいことにチャレンジされており、有難いと思った。また、他の領域でもIIPPFとして取り組めるものがあるのではないかと感じた。
  • 本日審議いただいた運営要領の改訂や来年度に向けての新規事業の提案など時代の変化に即応してやってもらっていると思った。模倣品対策塾の取り組みもまさにそう思った。IIPPFの活動推進には、各プロジェクトチームの積極的なお力添えがあってこそ成り立つものと思っている。本日、表彰された大久保幹事、岡崎幹事には、長年のご貢献に深く敬意を表させていただくとともに改めてお礼申し上げたい。
  • 最後に事務局のジェトロとして小林座長の引き続きのご指導のもと取り組んでいく。IIPPFのさらなる発展と皆様のご健勝を祈念して、閉会の挨拶とさせていただく。

小林座長の挨拶

総会の様子

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