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「2019年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ海外ビジネス調査)結果概要

2020年02月27日

ジェトロでは2019年11~12月にかけて、ジェトロのサービス利用企業(=海外ビジネスに関心の高い日本企業)9,975社を対象にアンケート調査を実施、3,563社から回答を得た(うち中小企業が2,990社、有効回答率35.7%)。アンケートでは、貴社の概要、貿易・海外進出への取り組み、各国のビジネス環境、保護貿易主義の影響、FTAの活用等について尋ねた。調査結果のポイントおよび概要は以下のとおり。

調査結果のポイント

  • 海外進出拡大を図る企業の割合は横ばい、事業拡大先は中国が後退、ベトナムが迫る
  • 保護貿易主義の負の影響が拡大、中国からベトナム、タイへのサプライチェーン再編進む
  • 輸出におけるFTA利用率は51.2%、FTA税率引き下げでさらなる利用拡大も

調査結果の概要

Ⅰ.貿易・海外進出への取り組み/各国のビジネス環境

海外進出拡大を図る企業の割合は横ばい、事業拡大先は中国が後退、ベトナムが迫る

今後3年程度の海外進出(新規投資、既存拠点の拡充)方針については、「海外進出の拡大を図る」企業が全体の56.4%と前年度(57.1%)からほぼ横ばいに推移した。内訳をみると、「海外に拠点はなく、今後新たに進出したい」企業は25.5%で前年度(24.2%)からやや増加した一方、「海外に拠点があり、今後さらに拡大を図る」企業が32.9%から30.9%に低下した。回答企業からは海外進出のハードルとして、足元の世界情勢変化の大きさや米中貿易摩擦など外部要因を指摘する声が寄せられており、人材など経営資源の不足に加え、先行きの読めない不確実性の高さが海外事業拡大を踏みとどまらせている状況が明らかになった(図1)。

図1 今後の海外進出に関するコメント(自由記述)

海外進出をはかる。その理由として、第三国向けの輸出拠点として活用。現地市場の要求に早急に対応するため。地産地消を推進。海外進出の拡大意欲は特になし。その理由として海外進出に対するハードルも。世界情勢の変化が大きく、見通しが困難。米中貿易摩擦の影響で市場に不透明感。費用対効果が見込めない。人材、資金、ノウハウ不足。海外需要には前向きに対応日本からの輸出で対応。インターネット(越境ECなど)を活用。自社製品・サービスは「日本製」が付加価値。

ジェトロ作成

今後、海外で事業拡大を図る国・地域(複数回答)については、「海外に拠点があり、今後さらに拡大を図る」企業のうち、中国を挙げた企業の比率が48.1%と前年度(55.4%)から大幅に後退、5割を下回った。一方、次点のベトナムは41.0%と初めて4割を超え、中国との差が前年度の19.9%ポイントから7.1%ポイントに縮小した(図2)。
ベトナム以外のASEAN主要国では、タイ、シンガポール、フィリピンなどの回答比率も前年度から拡大を遂げた。この結果、今後、ASEAN主要6カ国で事業拡大を図ると答えた企業の割合は71.1%にのぼり、2013年度以来6年ぶりに上昇に転じた。事業拡大先にASEANを回答した企業からは、今後の市場拡大への期待、輸出拠点としての役割強化のほか、リスク回避の観点から、中国に加えてASEANで拠点を検討など指摘する声が寄せられた。

図2 海外で事業拡大を図る国・地域(上位3カ国)

各年の集計対象企業数は、2011年1,602、2012年1,149、2013年1,119、2014年1,001、2015年895、2016年992、2017年938、2018年1,050、2019年1,028。中国 2011年67.9%、2012年59.2%、2013年56.9%、2014年56.5%、2015年53.7%、2016年52.3%、2017年49.4%、2018年55.4%、2019年48.1%。タイ 2011年27.9%、2012年41.2%、2013年47.0%、2014年44.0%、2015年41.7%、2016年38.6%、2017年36.7%、2018年34.8%、2019年36.3%。ベトナム 2011年20.3%、2012年25.9%、2013年29.6%、2014年28.7%、2015年32.4%、2016年34.1%、2017年37.5%、2018年35.5%、2019年41.0%。

ジェトロ作成

(注)(1)括弧内の数字は各年の集計対象企業数。2011年度、2012年度は「新規投資または海外の既存事業の拡充」と回答した企業のうち、海外で拡大する機能について無回答の企業を除いた企業。2013年度以降は「現在、海外に拠点があり、今後さらに拡大を図る」企業のうち、海外で拡大する機能について無回答の企業を除いた企業。(2)各国・地域で一つ以上の機能を拡大する企業数の比率。

今年度に回答比率が大きく上昇したベトナムについては、同国でビジネスを行う魅力・長所として、「市場規模・成長性」を挙げる企業の割合が拡大を続けている(表1)。2019年度には86.1%と、データが遡れる2013年度(75.0%)から11.1%ポイント増加した。その他の魅力・長所としては、「納入先集積」「政治・社会安定」「土地・事務所が豊富・安価」「現地調達容易」などを挙げる企業が2013年度から増加した。こうしたビジネス環境の全般的な改善に、米中間追加関税回避のためのサプライチェーン再編の動き(後述)が重なり、同国の回答比率の大幅な上昇につながったと考えられる。業種別にみると、非製造業でベトナムを挙げた企業の比率が前年比微増(41.1%→42.3%)となった一方、追加関税の影響をより受けやすい製造業では同31.4%から39.9%に大きく上昇した。

表1 ベトナムでのビジネス上の魅力・長所(上位10項目)(複数回答、%、%ポイント)
順位 魅力・長所 2013年度(n=1,047) 2017年度(n=1,261) 2019年度(n=1,410) 2013年度→2019年度
1 市場規模・成長性 75.0 82.2 86.1 11.1
2 親日感情 42.8 41.5
3 人件費・労働力 44.0 41.9 40.9 △ 3.1
4 人材の質 19.7 20.2 19.6 △ 0.1
5 納入先集積 14.7 19.8 18.1 3.4
6 政治・社会安定 15.3 17.8 16.7 1.4
7 土地・事務所 8.3 12.3 11.4 3.1
8 現地調達容易 5.1 8.7 8.9 3.8
9 生活環境 4.0 6.9 6.7 2.7
10 従業員定着率 5.3 7.0 6.2 0.9

(注):(1)nは、魅力・長所を回答した企業の総数(現在ビジネスを行っている、または検討している場合のみ回答)。(2)各セルの値は、回答企業数(n)に占める魅力・長所ごとの回答比率 (魅力・長所ごとの回答数/n)。(3)太字はそれぞれ前回調査から回答比率 が上昇した項目。(4)「親日的な国民感情」は2017年度に新設。「顧客(納入先)企業の集積」の2013年度は「取引先(納入先)企業の集積」。「従業員の質の高さ、優秀な人材が豊富」の2013年度は「従業員の質の高さ」。(5)魅力・長所の正式名称については、結果概要参照。

他方、今年度に回答比率が大きく低下した中国については、ビジネスを行う上での課題として、最多の60.8%の企業が「米中間追加関税措置」を指摘した(表2)。今後、中国で事業拡大を図る企業の割合は、非製造業(前年度46.5%→43.2%)に比べ、製造業(同62.0%→51.8%)の落ち込みが大きくなっており、米中貿易摩擦の影響がうかがえる。「米中間追加関税措置」は、当事者である中国や米国だけでなく、台湾、韓国やメキシコでもビジネス上の課題として1割超の企業に認識されている。中国でビジネスを行う上でのその他の課題としては、「政情・社会情勢・治安」「知財保護」「人件費高・上昇」「代金回収」の指摘率が3割を超えて高かった。

表2-1 中国のビジネス上の課題(上位10項目)(n=2,123)
順位 項目 回答率
1 米中間追加関税措置 60.8
2 政情・社会情勢・治安 42.9※
3 知財保護 40.7#
4 人件費高・上昇 37.8
5 代金回収 35.0
6 行政手続き 28.7
7 法制度・運用 18.5
8 税制・税務手続き 18.5
9 為替リスク 14.9
10 自然災害・環境汚染 12.8
表2-2 米国のビジネス上の課題(上位10項目)(n=1,015)
順位 項目 回答率
1 米中間追加関税措置 50.2
2 特段問題なし 25.8#
3 人件費高・上昇 20.0#
4 為替リスク 16.4
5 行政手続き 9.0#
6 労働力不足・採用難 7.5#
7 政情・社会情勢・治安 6.5#
8 税制・税務手続き 4.3#
9 英EU離脱リスク 3.4#
10 代金回収 3.3#

(注)(中国と米国共通):(1)nは、国ごとの課題を回答した企業の総数(現在ビジネスを行っている、または検討している場合のみ回答)。(2)各値は、回答企業数(n)に占める課題ごとの回答比率 (課題ごとの回答数/n)。(3)太字に「#」は前回調査(2017年度)から回答比率 が上昇した項目。赤太字かつ※印は5%ポイント以上上昇した項目。太字は同様に5%ポイント以上回答比率 が低下した項目。ただし、「米中間追加関税措置」は、前回調査の対象外のため、時系列比較はできない。(4)課題は国ごとに回答比率 の高い順に並べているが、回答比率 が同率の項目は同順位。(5)課題の正式名称については、結果概要参照。

Ⅱ.保護貿易主義の影響

負の影響が2割に拡大、中国からベトナム、タイへのサプライチェーン再編進む

米中貿易摩擦など2017年以降の「保護主義的な動き」(保護貿易主義)が自社のビジネスに与えた影響について、調査時点で「影響はない」と回答した企業の割合は、前年度調査の43.1%から37.2%へ低下した。他方で、「全体としてマイナスの影響がある」と回答した割合は15.2%から20.1%へ4.9%ポイント増加した(図3)。なお、今後(2-3年程度)については、23.2%が「全体としてマイナスの影響がある」と回答したほか、「わからない」の割合が41.9%にのぼった。

図3 保護貿易主義の影響(調査時点、全回答企業)

2018年度、回答企業数は3385社。全体としてプラスの影響がある1.9%。全体としてマイナスの影響がある15.2%。プラスとマイナスの影響が同程度5.2%。影響はない43.1%。わからない28.0%。無回答6.7%。2019年度、回答企業数は3563社。全体としてプラスの影響がある1.7%。全体としてマイナスの影響がある20.1%。プラスとマイナスの影響が同程度6.1%。影響はない37.2%。わからない27.1%。無回答7.8%。

(注)nは本調査の回答企業総数

ジェトロ作成

本調査の全回答企業による「保護主義的な動き」に対応した生産移管件数(一部移管や予定含む)は計159件であった。移管元には中国を挙げるケースが多く、69.2%(110件)にのぼった。移管先はASEANが中心となっており、61.0%(97件)を占めた。主な再編パターンを見ると、中国からベトナムへの移管が全体の24.5%(39件)で、中国からタイへの移管が14.5%(23件)と続く(表3)。生産移管の時期は、2020年以降を予定している件数が全体(159件)の37.7%となった。また、調達先や販売先の再編においても、中国からベトナム、タイへの変更が多い傾向が共通してみられた。

表3 生産地に関する主な再編パターン(件数ベース、一部移管や予定含む)(複数回答、%)
順位 移管元 移管先 件数(n) 比率
再編件数 全体 159 100.0
1 中国 ベトナム 39 24.5
2 中国 タイ 23 14.5
3 中国 日本 11 6.9
4 日本 中国 8 5.0
5 中国 フィリピン 6 3.8
5 中国 インドネシア 6 3.8
5 日本 タイ 6 3.8

(注)再編件数(n)は、生産移管をすでに実施または実施予定の案件数の合計。1社につき最大2件までの回答とする。

Ⅲ.自由貿易協定(FTA)の活用

輸出におけるFTA利用率は51.2%、FTA税率引き下げでさらなる利用拡大も

日本のFTA締結国へ輸出を行う企業のうち、1カ国・地域以上でFTAを利用している企業の比率は51.2%(※)となった(図4)。特に大企業の利用率は70.5%と高く、利用検討中も合わせると83.5%に上る。中小企業の利用率は大企業より低いものの、46.4%と5割に近い。業種別では、化学、自動車・同部品/その他輸送機器、石油・石炭・プラスチック・ゴム製品などでFTAがよく利用されている。

(※)FTA利用率の計算にあたっては従来、日本のFTA締結国へ輸出を行う企業を分母としてきた。ただ、これら企業のなかには一般関税が無税またはFTA以外の関税減免制度(保税区・加工区など)を利用しており、そもそも輸出でFTAを使う必要のない企業も存在する。そこで、FTA利用率の計算にあたっては今年度以降、同企業を分母から除いた数値の算出を行う。

図4 日本の発効済みFTAの利用率

全体の企業数は1435社。利用している企業比率は51.2%。利用検討中の企業は21.4%。大企業の企業数は285社。利用している企業比率は70.5%。利用検討中の企業比率は13.0%。中小企業の企業数は1,150社。利用している企業比率は46.4%。利用検討中の企業比率は23.5%。

ジェトロ作成

(注)nは、FTA相手国・地域(調査時点でFTAが発効済みのタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、その他ASEAN、インド、メキシコ、チリ、ペルー、スイス、オーストラリア、モンゴル、カナダ、ニュージーランド、EU)のいずれか一つ以上に輸出を行っている社数から、「一般関税が無税またはFTA以外の関税減免制度を利用している」企業を除いた社数。

FTAを利用中、および利用検討中の企業のうち48.6%が、5%未満の関税差(=一般関税率-FTA特恵税率)が生じればFTA利用を決断・検討すると回答した。企業規模別では、中小企業に比べ大企業の方が、より小さい関税差でFTA利用に踏み切るとの結果となった。今後、日本が締結したFTAの特恵関税率引き下げが進展するのに伴い、さらなる利用の拡大も見込まれる。

(参考)ジェトロでは、解説書(日EU・EPA、TPP11)やパンフレットの作成、全国各地でのセミナー開催(日EU・EPAとTPP11:年間60回、日米貿易協定:1~3月で12回)など、FTA/EPAの利用促進に向けた普及啓蒙活動を行っている。また、日EU・EPAやTPP11を含め、世界の主要なFTA/EPA、WTOなどの通商分野の動向等に関する情報収集・発信も行っている。

調査結果から見えるそのほかの目立った動き

Ⅳ.訪日外国人向けビジネス

東京オリンピック・パラリンピックを機に2020年度の販売増に期待

訪日外国人を対象としたビジネスについて尋ねたところ、「現在ビジネスを実施」(22.9%)と「今後、新たに取り組む」(7.9%)を合わせた、訪日外国人ビジネスに取り組む企業の比率は30.8%であった。また、訪日外国人を対象とした国内販売の見通し(前年度比)については、2020年度に「増加」すると回答した企業の比率が60.7%と、2019年度(47.3%)から拡大した。地域別では関東・甲信越で2020年度に「増加」と回答した割合が64.5%と全国で最大であった。最近では、訪日外国人で賑わう飲食店・宿泊先への業務用食材販売など新たなビジネス展開の広がりがみられる。

Ⅴ.海外ビジネス拡大のための人材

ITなど専門職では外国人材を最重視、日本企業の即戦力志向強まる

海外ビジネス拡大のための人材確保の方針を尋ねたところ、多くの業種で「現在の日本人社員のグローバル人材育成」の回答比率が最も大きい一方、通信・情報・ソフトウェア、専門サービスなどでは「外国人の採用、登用」の回答比率が最大となった。国内で人材が不足するITや法務など専門職を中心に、外国人材活用を重視する傾向がみられる。また、過去調査からの経年変化をみると、「外国人の採用、登用」を重視する企業が増加傾向にある。中小企業では、「海外ビジネスに精通した日本人の中途採用」も今回増加するなど、外国人材とあわせ即戦力に期待する傾向がみられる。