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「2019年度 ロシア進出日系企業実態調査」結果について

2020年01月20日

マクロ経済の減速も、営業黒字見込みは7割を維持、「儲かる市場」に変わりなし

ジェトロは2019年10~11月、ロシアに進出している日系企業に対し、現地での経営実態に関するアンケート調査を実施しました。その結果を次のとおり発表します。

調査概要

実施方法 アンケート調査
実施時期 2019年(令和元年) 10月3日~11月8日
アンケート送付先 ロシアに進出する日系企業121社(回答企業数102社(うち製造業28社、非製造業74社))、有効回答率84.3%。
設問項目
  1. 経営状況
  2. 今後1~2年の事業展開
  3. 経営上の問題点
  4. 投資環境など

調査結果のポイント

  • ロシアでは世界経済の成長鈍化に伴う輸出減や、付加価値税増税と所得の減少による小売市場の不振などを背景にマクロ経済の減速がみられる中、2019年の営業利益見通しを「黒字」と回答した在ロシア日系企業の割合は全体の68.3%と、3年連続で約7割の水準(アジアや欧州など他地域と同程度)を維持した。前年(2018年)比での営業利益見込みの変化は「横ばい」と回答した企業が42.2%(前年比7.1ポイント増)で、ロシアは引き続き「利益の確保できる市場」と言える。
  • 経営上の問題点では、地場系企業との競合の激化、為替レートの変動、現地調達拡大の困難さなどが引き続き課題として挙げられ、投資環境面では、不安定な政治・社会情勢、不安定な為替、行政手続きの煩雑さがこれまでと同様に主要なリスク要因となっている。米国による対ロシア経済制裁については「影響あり」と回答した企業が過半となった。

調査結果概要

ジェトロが2019年10~11月にロシア進出日系企業調査を実施した結果、ロシアでは世界経済の成長鈍化に伴う輸出減、付加価値税の増税や実質可処分所得の減少に伴う小売市場の不振などを理由とする景気減速がみられる中でも、進出日系企業は約7割が営業黒字を維持していることが分かった。他方、米国による対ロ制裁強化とそれに伴う不安定な為替は依然、投資環境面の主要なリスクの1つとなっている。

1.営業利益見通し

調査を開始した2013年以降の営業利益見通しの推移をみると、2019年を「黒字」と回答した企業の割合は68.3%と、3年連続で約7割を維持した【図1、図表7頁】。マクロ経済の減速がみられる中でも、現地市場での売上増加、販売効率の改善などを背景に好調を維持している。

  • 前年(2018年)と比較した場合の2019年の営業利益見込みについては、「横ばい」が前年比7.1ポイント増の42.2%と過去最大となった。
  • 製造業では「悪化」と回答した企業が32.1%と「改善」(28.6%)を上回った。主な理由として、「現地市場での売上減少」(55.6%)、「人件費の上昇」(55.6%)、「調達コストの上昇」(44.4%)、「為替変動」(33.3%)などが指摘されている。
  • 2020年の営業利益見通しでも「横ばい」が52.0%(9.0ポイント増)となり、景気減速の中で、黒字は維持するものの、営業利益は「横ばい」とする企業が増加した。製造業では「悪化」と回答した企業が21.4%(6.2ポイント増)となり、上記の理由に加え「販売価格への不十分な転嫁」(33.3%)も挙がった。

図1.営業利益見通しの推移

営業利益見通しの推移。黒字、2013年度55.6%、2014年度53.2%、2015年度49.5%、2016年度62.7%、2017年度66.3%、2018年度72.8%、2019年度68.3%。均衡2013年度14.3%、2014年度22.3%、2015年度20.4%、2016年度13.3%、2017年度16.3%、2018年度14.9%、2019年度20.8%。赤字2013年度30.2%、2014年度24.5%、2015年度30.1%、2016年度24.1%、2017年度17.4%、2018年度12.3%、2019年度10.9%。

ジェトロ作成

2.今後1~2年の事業展開の方向性

「現状維持」が過半となり過去最大。近年の経済成長鈍化に伴い、様子見の感が強まっている【図2、図表12頁】。「拡大」と回答した企業のうち、非製造業では「販売機能」、製造業では「物流機能」の強化にそれぞれ注力。

  • 「拡大」と回答した企業が44.1%(9.4ポイント減)で、2年連続減少。「拡大」と回答する企業の割合の増減は、当該年の経済成長予測にリンクする傾向がみられている。「縮小」「第三国(地域)へ移転・撤退」はそれぞれ1%に過ぎず、「現状維持」が過去最大の53.9%に達し、様子見の感が強まっている。具体的に「経済・市場規模が大きく成長していないにも関わらず、競合ブランドが乱立している状況下、市場全体の成長見通しが緩やかで、積極的な投資が難しい」、「今後の欧米による対ロ制裁の行方(次第)」(ともに輸送機器部品製造)といったコメントがみられた。
  • 「拡大」する理由として、「現地市場での売上増加」(88.9%)と回答する企業が引き続き最多となった。昨年の調査に比べ「成長性・潜在力の高さ」(46.7%)、「輸出拡大による売上増加」(20.0%)、「生産・販売ネットワーク見直し」(20.0%)、「コスト低下」(13.3%)を挙げた企業の割合が増えた。「コスト削減」については、「日本から導入した設備の補修・メンテナンス用部品の調達」(輸送用機器部品製造)といった声があった。
  • 「拡大」する機能について、80.0%の企業が「販売機能」と回答。製造業では「物流機能」(66.7%)が6割を超え、「生産(汎用品)」(22.2%)も増加した。一方、「生産(高付加価値品)」、「研究開発」を挙げる企業の割合は減少した。

図2.今後1~2年の事業展開の方向性

今後1~2年の事業展開の方向性。拡大、2013年度77.8%、2014年度66.0%、2015年度44.6%, 2016年度拡大51.8%、2017年度60.9%、2018年度53.5%、2019年度44.1%。現状維持、2013年度20.6%、2014年度29.8%、2015年度50.0%。2016年度47.0%、2017年度37.0%、2018年度45.6%、2019年度53.9%。縮小、2013年度1.6%、2014年度4.3%、2015年度4.3%、2016年度1.2%、2017年度2.2%、2018年度0.9%、2019年度1.0% 。第三国(地域)へ移転・撤退は、2015年度1.1%、2019年度1.0%。

ジェトロ作成

3.経営上の問題点

地場系企業との競合の激化、為替レートの変動、現地調達拡大の困難さなどが引き続き課題【図表15~17頁】。

  • 販売・営業面では、引き続き「競合相手の台頭(コスト面で競合)」が53.5%で最多(2.6ポイント増)で、「国産メーカー優遇の自動車業界で価格面の不利な状況を強いられている」(輸送用機器製造)というコメントがみられた。特に製造業では「主要販売市場の低迷(消費低迷)」、「新規顧客の開拓が進まない」、「主要取引先からの発注量の減少」、「主要取引先からの値下げ要請」、「現地市場への安価な輸入品の流入」が昨年に比べ軒並み増加した。
  • 財務・金融・為替面では「現地通貨の対ドル/ユーロ為替レートの変動」が前年比13.7ポイント減の45.1%となったが、「為替変動による輸入原材料価格の上昇」(ゴム製品製造)を問題とするコメントがみられるなど、引き続き主要な問題点として指摘されている。加えて、「税務の負担」が9.1ポイント増の28.4%に拡大。2019年1月に実施された付加価値税増税(18%→20%)の影響とみられる。
  • 貿易制度面では、「通関などの諸手続きが煩雑」(40.0%)の割合が減少(12.6ポイント減)したが、ロシア当局の通関制度改善に関する取り組みの過去1年の変化に関しては、多くの項目で「変化なし」が過半を超えた。
  • 雇用・労働面では、「従業員の賃金上昇」と「従業員の質」が依然として課題。「賃金上昇」に悩みを抱える企業が増えている。「従業員の質」について「英語のできる現地社員採用が困難」(輸送用機器部品製造)という指摘があった。
  • 生産面では、「現地調達の難しさ」が過去最大となる56.5%に達し、初めて過半になった。「限界に近付きつつあるコスト削減」が10.9ポイント増となり、「コスト削減」に向け現地調達の拡大などを図るもそれが容易でない状況が浮き彫りとなった。

4.投資環境

不安定な政治・社会情勢、不安定な為替、行政手続きの煩雑さがこれまでと同様、主要なリスク要因【図3、図表18頁】。対ロシア経済制裁について「影響あり」と回答した企業が過半となった【図表21頁】。

  • メリットは「市場規模/成長性」が67.0%(前年比11.1ポイント減)で7年連続トップ。リスクは「不安定な政治・社会情勢」(61.8%)、「不安定な為替」(60.8%)、「行政手続きの煩雑さ(許認可など)」(57.8%)が引き続きトップ3として指摘されている。「行政手続きの煩雑さ」については「現地パートナー、工場建設におけるインフラ整備、許認可取得、地方政府との交渉が煩雑」(輸送用機器)といったコメントがあった。
  • 対ロシア経済制裁について「影響あり」と回答した企業が55.4%(7.2ポイント増)となり、「現地市場での売上減少」や「日本本社でのロシアビジネスのプライオリティ低下」、「取引先変更」などの影響が生じている。「継続的なロシア経済制裁の発動が、活動範囲を狭める要因となるだけでなく、マクロ金融環境の悪化にもつながる可能性が高く懸念している」(金融/保険)といった声がみられた。
  • ロシア政府が推進する輸入代替政策について「影響がある」と回答した企業は37.3%と前年比7.4ポイント減となった。具体的な影響として「顧客の国産品転換による売上減少」が最多(62.2%)だった。製造業では「輸出から現地展開への切り替えによる売上拡大」が36.4%(8.6ポイント増)、「事業計画の見直し(縮小)」も同じく36.4%(30.8ポイント増)となり、プラス・マイナス両方の影響が生じている。

図3.投資環境面でのリスク

投資環境面でのリスク。不安定な政治・社会情勢61.8%、不安定な為替60.8%、行政手続きの煩雑さ(許認可など)57.8%、税制・税務手続きの煩雑さ43.1%、法制度の未整備・不透明な運用40.2%、現地政府の不透明な政策運営33.3%、取引リスク(代金回収リスクなど)23.5%、人件費の高騰22.5%、インフラ(電力、物流、通信など)の未整備17.6%、労働力の不足・人材採用難15.7%、関連産業集積の未成熟・未発展13.7%、知的財産権保護の欠如9.8%、出資比率制限など外資規制4.9%、労働争議・訴訟4.9%、土地/事務所スペースの不足、地価/賃料の上昇3.9%、不十分な投資奨励制度2.9%、消費者運動・排斥運動(不買運動、市民の抗議など)0%、その他2.0%、投資環境面でのリスクはない2.9%

ジェトロ作成

海外調査部 欧州ロシアCIS課(担当:下社、齋藤、加峯)
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