「2019年度 (第38回)米国進出日系企業実態調査」結果について

2020年02月06日

在米日系企業の景況感がマイナスに、黒字比率は6割台に低下

ジェトロは2019年10~11月、米国に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施しました。その結果を以下のとおり発表します。

調査概要

実施方法 アンケート調査
実施時期 2019年(令和元年) 10月23日~11月27日
アンケート送付先 米国に進出する日系企業(製造業のみ)1,258社(有効回答は670社、有効回答率は53.3%)。
設問項目
  1. 営業利益見通し
  2. 今後の事業展開
  3. 原材料の調達先、米国市場向け製品の生産体制および販売先
  4. 経営上の課題
  5. トランプ政権の政策
  6. 通商環境の変化の影響

調査結果のポイント

  1. 日系企業の黒字比率は8年ぶりに7割を切り、景況感を示すDIは10年ぶりにマイナスに。黒字比率はほぼ全業種で低下し、要因として現地市場での売上減少を挙げる企業が多い。中でも輸送用機器部品(自動車/二輪車)分野の売り上げ減少が大きく響いた。人件費などコスト上昇も要因に挙がった。
  2. コスト上昇につながる経営上の課題としては、労働者の確保や賃金が上位に挙がった。米国の失業率が50年ぶりの低水準を維持する中、日系企業にとっても人手不足は喫緊の課題であり、賃金引上げや福利厚生、研修プログラムの提供など様々な手立てで人材確保に取り組んでいる。
  3. 今回調査で初めて医療保険などの福利厚生や賃金について聞いた。医療保険は96%が、歯科保険は89%が、401kプランは80%の企業が従業員に提供している。基本給月額の中央値は工場のオペレーターで3,000ドルだった。
  4. 米中貿易摩擦など通商環境の変化には4割の企業がマイナスの影響を受けている。特に調達・仕入れコストへの影響が大きく、影響を受けている企業の4割が調達先を変更している。中国から米国、日本、タイ、ベトナム、メキシコへの変更が目立つ。

(注1)調査結果の構成比は、小数点第2位を四捨五入しているため、必ずしも合計は100とはならない。
(注2)回答比率は、各設問の回答者数を基数として算出した。
※添付資料:「2019年度 米国進出日系企業実態調査」

調査結果概要

ジェトロが2019年10~11月に在米日系企業(製造業のみ)約700社にアンケート調査を行ったところ、黒字比率は8年ぶりに7割を切った。主因は現地市場での売上減少で、人件費や調達コストも要因に挙がった。人手不足は引き続き日系企業の課題であり、賃金引き上げや福利厚生など様々な方法で人材確保に努めている。また、貿易摩擦など通商環境の変化は4割の企業にマイナスの影響をもたらしている。特に調達・仕入れコストへの影響が大きく、何らかの影響を受けた企業の4割が調達先の変更に取り組んでいる。

1.在米日系企業の黒字比率と景況感DI

日系企業の黒字比率は、2011年度調査以来8年ぶりに7割を切った。景況感を示すDIは△4.6となり、2009年度調査以来10年ぶりにマイナスに落ち込んだ。

  • 2019年の営業利益見込みを黒字と回答した企業の比率(黒字比率)は66.1%となり、前年調査(74.5%)より8.4ポイント減少した(p.9)。黒字比率が7割を切るのは、2011年度調査(67.5%)以来、8年ぶりとなる。景況感を示すDI(営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値)も大幅に悪化し、前年の17.2から△4.6へと20ポイント以上下がった(p.10)。
  • 業種別でも、黒字比率はほぼ全業種で前年調査時より低下した。中でも回答企業の2割弱を占める輸送用機器部品(自動車/二輪車)が52.3%となり、4年連続で低下(83.6→82.5→70.4→64.8→52.3%)したことが響いた。

    図1 在米日系企業の黒字比率と景況感DIの推移(2007~2020年)

    図1は、2007年から2020年までの在米国日系企業の黒字比率と景況感DIの推移を示しています。営業利益見込みについて、黒字比率は2011年度調査以降7割台を維持していましたが、2019年は66.1%と8年ぶりに7割を切りました。景況感を示すDI値も大幅に悪化し、前年の17.2からマイナス4.6へと20ポイント以上下がりました。

    ジェトロ作成

  • 営業利益が悪化する要因を一つだけ挙げてもらったところ、1位は「現地市場での売上減少」(51.9%)で、2位の「(関税引き上げなどの)貿易制限的措置の影響」(8.5%)を大きく上回った。中でも輸送用機器部品(自動車/二輪車)では、「現地市場での売上減少」を主因に上げた企業が6割に上る。米国の自動車市場ではSUV人気の高まりを受けて乗用車(セダン)の売上・生産が減少しており、セダン向けを中心に日系部品メーカーの収益減少につながったものとみられる。
  • 他方、営業利益悪化の理由を複数挙げてもらったところ、「現地市場での売上減少」(71.5%)に続き、「人件費の上昇」(38.7%)、「調達コストの上昇」(30.6%)などコスト要因を挙げる企業も多かった。

2.コスト上昇要因

労働者の確保、賃金などが引き続き課題。

  • コスト上昇につながる経営上の課題を聞いたところ、「労働者の確保」が68.8%で前年(69.0%)に続き筆頭要因となり、「賃金(給与・賞与)」が64.6%(前年65.6%)、「労働者の定着率」が49.8%(前年46.3%)と続いた(p.24)。

    図2 経営上の課題:コスト上昇要因(複数回答)

    図2は、経営上の課題(コスト上昇要因)を示しています。「労働者の確保」が68.8%で筆頭要因となり、以下「賃金(給与・賞与)」64.6%、「労働者の定着率」49.8%、「医療保険(ヘルスケア)」49.8%、「関税の引き上げ(貿易制限的措置)」37.7%、「原材料・資源・コモディティ価格」31.9%、「輸送費(ガソリン含む)」23.8%、「日本駐在員コスト(日本人駐在員の生活立ち上げ等」20.6%、「円/ドル為替リスク」17.1%、「出張費(航空運賃含む)」10.0%、「資金調達コスト」7.6%、「関連規制」4.5%、「その他」3.3%と続いています。

    回答企業数:642社

    ジェトロ作成

  • 米国で失業率が約50年ぶりの低さ(2019年12月:3.5%)を維持する中、日系企業においても、人手不足が顕著となっている。ヒアリングでも「職種関係なく人が集まらない」(その他製造業)、「特にエンジニアの確保に苦労している」(化学品/石油製品)、「製造業全体に対するイメージが落ちており若者世代が魅力を感じにくいようだ」(電気・電子機器)などの声が聞かれ、業種に関わらず雇用が難しい状況が続いている。
  • こうした課題への対応策を聞いたところ、「人件費以外の経費削減」(49.0%)、「社内コミュニケーションの活発化」(42.5%)、「労働環境の改善(福利厚生の改善など)(38.7%)」、「賃金の引き上げ」(37.7%)などが上位に挙がった(p.25)。人件費以外のコストを削減 する一方で、福利厚生や賃金の引き上げ、社員との意思疎通の改善などにより人材の確保に努めている様子が浮き彫りになった。
  • 回答企業からは、「周辺地域の平均賃金を参考に賃金を上げた」「ヘルスケアなどのベネフィットを平均より高く設定した」「社内ポストの公募制を導入し、意欲ある人に昇給の機会を与える」など待遇面の改善に取り組む声が聞かれた。
  • 社内外での研修制度を取り入れる企業も多く、地元のコミュニティカレッジと連携して技術者訓練プログラムやジョブフェア(就職フェア)を実施するなど近隣コミュニティーと連携した取り組みも複数聞かれた。なお、ジェトロも地元大学や支援機関と日系企業とのネットワークづくり、日系企業と学生とのマッチングイベントなどを行い、日系企業の雇用環境改善に取り組んでいる。2019年度はイリノイ州とケンタッキー州で、大学・学生や地元政府支援機関などと日系企業とのマッチングイベントを実施した。

3.福利厚生、賃金

今回初めて、福利厚生の提供状況、賃金を調査。多くの企業が、医療保険、歯科保険、401k(確定拠出型年金)などをカバー。賃金(基本給・月額)の中央値は3,000~6,683ドル。

  • 今年度調査で、初めて、在米日系企業がどのような福利厚生を従業員に提供しているかを聞いた。その結果、「医療保険」(96.2%)、「歯科保健」(88.6%)、「401kプラン(確定拠出型年金)」(79.8%)、「眼科保険」(74.5%)が上位に挙がり、多くの企業で提供していることが分かった(p.26)。

    図3 現地従業員に対する福利厚生/具体的事項(複数回答)

    図3は、現地従業員に対する福利厚生(給与以外)の具体的事項を示しています。「医療保険」(96.2%)、「歯科保健」(88.6%)、「401kプラン(確定拠出型年金)」(79.8%)、「眼科保険」(74.5%)が上位に挙がりました。

    回答企業数:639社

    ジェトロ作成

  • 賃金額についても、今年度調査で初めて聞いた。2019年の職種別の基本給(月額)の中央値は下図のとおり(p.27)。

    図4 賃金(基本給月額)中央値

    図4は、在米国日系企業の基本給月額中央値を職種別で示しています。プロダクション・マネージャーの基本給月額の中央値は6,683ドル、ジェネラル・アドミニストレーション・セクション・チーフは6,275ドル、メカニカル・エンジニアは5,100ドル、ジェネラル・クラークは3,750ドル、オペレーターは3,000ドルとなっています。

    (注)事業活動が「生産あり」(「生産」または「生産・販売」)の企業はオペレーター(製造工程における機械の操作に従事する職種) 、メカニカル・エンジニア(機械および設備の設計・製作・管理などを行う技術職)、プロダクション・マネージャー(生産管理部門の課長クラス)、ジェネラル・クラーク(一般事務職)、ジェネラル・アドミニストレーション・セクション・チーフ(総務部門の課長クラス)の職種で回答、「販売」の企業はジェネラル・クラーク、ジェネラル・アドミニストレーション・セクション・チーフの職種で回答。

    ジェトロ作成

4.米中貿易摩擦など通商環境の変化の影響

  1. 通商環境の変化によりマイナスの影響を受けている企業は4割に達した。特に、調達・輸入コストへの影響が大きい。具体的に影響を受ける政策は、「通商法301条に基づく対中追加関税」(52.3%)と「通商拡大法232条に基づく米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税」(42.4%)だった。
  2. 対策としては、影響を受ける企業の4割が調達先の変更を行っている。とはいえ、その半数近くが変更する調達の規模を10%未満としており、すべての調達先を変更するわけではない。一方で、調達先の変更期間は「一時的」は1割以下で、「中長期的」が7割を占める。調達先変更には一定の時間と手間を要することから、「いったん調達先を変更したら、追加関税が撤廃されても元には戻さない」との声が複数聞かれた。
  3. 調達先の変化をみると、変更前の主な調達先は中国、日本、米国。変更後は米国、日本のほか、タイやベトナムなどの東南アジア、メキシコが上位に並んだ。一方で、変更後の調達先については課題も指摘され、米国についてはサプライヤーやエンジニアの不足などから中国と同じ部品を調達するのが難しい、東南アジアについては、いざ移管したら港湾などのインフラ未整備でかえってコストがかさんだ、などの声が聞かれた。
  • 通商環境の変化が与える現時点の影響について、「マイナスの影響がある」が40.8%(252社)と4割に達した(p.40)。マイナスの影響が及ぶ主な対象としては、「調達・輸入コスト」との回答が8割に上った。

    図5 通商環境の変化が与える現時点の影響

    図5は、通商環境の変化が在米国日系企業に与える現時点の影響を業種別に示しています。全業種では、「マイナスの影響がある」と回答した企業が40.8%と4割に上り、「プラスとマイナスの影響がある」が9.7%、「プラスの影響がある」が2.1%、「影響はない」が21.0%、「わからない」が26.4%でとなっています。

    (注1)有効回答10社以上の業種のみ掲載。
    (注2)( )内数値は回答企業数を示す。

    ジェトロ作成

  • 具体的にどの政策にマイナスの影響を受けているかについては、「米国の通商法301条に基づく追加関税」(対中追加関税)52.3%(127社)と「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課」(鉄・アルミ追加関税)42.4%(103社)が上位に挙がった(p.41)。さらにこれを業種別にみると、対中追加関税を挙げた企業は、電気・電子機器(28社)、輸送用機器部品(自動車/二輪車)(25社)、化学品/石油製品(8社)で多く、鉄・アルミ追加関税については、輸送用機器部品(自動車/二輪車)(34社)、鉄鋼(8社)、電気・電子機器(7社)などが多かった。
  • 対応策として、「調達先の変更あり」と回答した企業は38.6%(129社)で約4割に上った(p.42)。このうち55.2%(69社)が既に調達先の変更を開始した。調達先の変更の規模としては、「1%以上10%未満」が47.9%(58社)を占めた。

    図6 調達先変更の有無

    図6は、通商環境の変化への対応した調達先変更の有無を業種別に示しています。全業種で、対応策として「調達先の変更あり」と回答した企業は38.6%、「なし」が41.9%、「わからない」が19.5%となっています。

    (注1)有効回答10社以上の業種のみ掲載。
    (注2)( )内数値は回答企業数を示す。

    ジェトロ作成

  • 調達先変更の期間は、「中長期的」と回答した企業が68.5%(85社)に達した。調達先を変更するには、顧客からの承認や各種規制や許認可の取り付けなども含め、決定までに一定の時間を要するとの声が複数聞かれた。また、中国での人件費高騰もあり、いったん調達先を変更したら、追加関税が撤廃されても元には戻さないとのコメントも複数あった。
  • 具体的な調達変更先をみると、変更前の主な調達先は、中国108社(84.4%)、日本37社(28.8%)、米国28社(21.9%)だったが、変更後は、中国が12社(9.4%)に減少した一方で、米国53社(41.7%)、日本45社(35.4%)、タイ31社(24.4%)、ベトナム27社(21.3%)、メキシコ22社(17.3%)などが増えた(p.43)。
  • 一方で、変更先の課題を指摘する声もある。米国に調達先を切り替え始めた企業からは、「米国では手作業系の製造業が弱くなり、エンジニアも不足している。中国と同様の部品を調達するのは難しい」(ゴム製品)、「米国で対応可能なサプライヤーが見つからない。米中関係の先行き不透明からサプライヤーが生産能力拡大に躊躇している」(輸送用機器部品(自動車/二輪車))などの声が聞かれた。また、東南アジアに変更した企業からは、「中国製品の価格は圧倒的に安く、調達先変更によるコスト削減効果は限定的」(その他製造業)、「いざ東南アジアに移管してみるとインフラ・港湾が整備されておらず輸送費が想定以上にかかっている」(電気・電子機器)との指摘があった。
  • なお、通商環境の変化が営業利益見込みに与える影響については、2019年は「変化はない」が43.7%(269社)、「わからない」は31.0%(191社)で、「減少する」は20.6%(127社)だった(p.46)。

調査結果から見えるそのほかの目立った動き

  1. 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)では輸送用機器(自動車/二輪車)の24%にマイナスの影響
    • 北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の総合的な 影響について、「影響はない」と回答した企業は57.4%、「わからない」が30.7%で「マイナスの影響」があると回答した割合は3.9%(25社)にとどまった(p.35)。しかし、業種別にみると、輸送用機器(自動車/二輪車)では23.5%となり、他業種と比べてマイナスの影響を受けるとの回答が高かった。
    • 企業の経営に影響を与える事項としては、「米国通商拡大法232条が発動された場合の自動車及び自動車部品の適用除外措置」が46.8%(65社)で、「鉄鋼・アルミニウムの域内調達比率(70%)達成義務」が38.1%(53社)、「品目別原産地規則(PSR)の見直し」が37.4%(52社)だった。
    • USMCAへの対応策では、「何も変更しない」が42.4%だったが、対応策を講じる中では「調達先の一部または全部変更」が12.2%で最も高く、「販売価格調整」(11.2%)、「生産地の一部または全部を他拠点から米国に移管」(8.3%)、「生産地の一部または全部を米国から他拠点に移管」(6.8%)が続いた(p.36)。調達先の変更先については、メキシコへの変更を検討している企業が7社、米国への変更が5社だった。また、生産地の変更先については、日本やメキシコなどから米国に移管を検討する企業は11社、逆に米国からメキシコへの移管を検討する企業は5社だった。
  2. 【3カ国調査比較】米国、メキシコ、カナダで異なるUSMCAの日系企業への影響
    • USMCAの影響について、別途行った在メキシコ、在カナダの日系企業への調査結果と比較すると、製造業全体でマイナスの影響を受ける企業の割合はメキシコが24.5%となり、カナダ4.6%、米国4.3%に比べ高い(p.37)。一方で、輸送用機器(自動車/二輪車)では、米国が23.1%と他の2カ国よりも高く、輸送用機器部品(自動車/二輪車)では、メキシコが36.8%と他の2カ国より高くなる。

      図7 USMCAの影響(3カ国比較)

      図7は、USMCAの影響を米国、メキシコ、カナダで比較した図表です。製造業全体でマイナスの影響を受ける企業の割合は、メキシコが24.5%となり、カナダ4.6%、米国4.3%に比べ高くなっています。

      (注)対象は製造業。なお、米国は製造業のうち、「生産あり」の企業を抽出。

      ジェトロ作成

    • 企業経営に影響を与える項目を3カ国で比較すると、「米国通商拡大法232条が発動された場合の自動車及び自動車部品の適用除外措置」を挙げた比率が大きいのは米国(49.5%)で、「賃金条項への対応」が大きいのはメキシコ(37.9%)だった。
    • USMCAへの対応策を3カ国で比較すると、いずれも「何も変更しない」が4~5割を占める(p.38)。対応策別にみると、「調達先の一部または全部変更」は、米国で14.4%、メキシコで14.2%となった。メキシコで特徴的なのが、「生産地の一部または全部を他の拠点から所在地へ移転する」の比率が14.8%と米国(10.5%)、カナダ(8.7%)より高いことである。業種別でみると、輸送用機器部品(自動車/二輪車)では、「生産の一部または全部を他の拠点から所在地へ移転する」企業の比率がメキシコは29.8%と他の2カ国に比べ高い。他方、輸送用機器(自動車/二輪車)では、米国の同比率が42.9%と高い。
  3. 対米投資・輸出管理規制については、「影響はない」、「わからない」が大半
    • 2018年8月に成立した外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)については、新規投資が対象となることから、「影響はない」と回答した企業が6割だった(p.39)。「わからない」も4割に上った。
    • 2018年輸出管理改革法(ECRA)による各社の輸出管理体制への影響については、「輸出管理対応は特段必要ない」が29.5%、「これまでの輸出管理対応と特段変わらないと見込んでいる」が17.9%となり、半数近くが既存の体制で対応する見込みだ。他方、「わからない」も5割を超えた。
    • いずれも「わからない」が4割、5割を占めたが、投資審査、輸出管理の新たな対象とされる「新興技術・基盤技術」が未発表であり、具体的な対象が不明確なことが一因とみられる。
  4. 外国人就労ビザ審査の厳格化により、35%が「難しくなっている」と回答

    外国人就労ビザ審査の厳格化については、トランプ政権発足の2016年以前と比べて「変化はない」(64.8%)との声が最も多かったが、「やや難しくなっている」は26.0%、「非常に難しくなっている」は9.1%となり、3割以上の企業が難しくなったと感じている(p.31)。最も取得が難しくなっているビザは「L-1ビザ(企業内転勤者用ビザ)」(41.4%)で、「E-2ビザ(投資駐在員用ビザ)」(35.0%)が続いた。対応策としては、「現地移民法弁護士への相談」(43.7%)、「人員体制の見直し(米国人の採用強化含む)」(37.6%)、「情報収集体制の強化」(21.6%)が上位に挙がった。

    図8 取得が困難になっているビザの種類(複数回答)

    図8は、米国で取得が困難になっているビザの種類を示しています。 「L-1ビザ(企業内転勤者用ビザ) 」が41.4%、「E-2ビザ(投資駐在員用ビザ)」が35.0%、「H-1Bビザ(特殊技能職用ビザ)」が19.5%、「E-1ビザ(貿易駐在員用ビザ」が15.9%、「移民ビザ(グリーンカード)」が9.5%、「J-1ビザ(交流訪問者用ビザ)」が7.7%、「B-1ビザ(短期商用ビザ)」が5.5%、「その他 」が0.5%となっています。

    回答企業数:220社

    ジェトロ作成

ジェトロ海外調査部 米州課 (担当:藤井、中溝、野口、甲斐野)
Tel:03-3582-5545