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「2019年度 中南米進出日系企業実態調査」の結果について

2020年02月06日

ブラジル、メキシコ、コロンビアで2020年の業況見通しが大幅改善

ジェトロは2019年10~11月まで、中南米7カ国(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ペルー、ベネズエラ)に進出している日系企業を対象に、経営実態に関する調査を実施しました。その結果を以下のとおり発表します。

調査概要

実施方法 アンケート調査
実施時期 2019年10月1日~11月15日
調査対象 在中南米進出日系企業757社(回答企業数546社、回答率72.1%)
質問項目
  1. 企業業績
  2. 今後の事業展開の方向性
  3. 経営上の課題とその対応等

調査結果のポイント

  1. 2019年に日系企業の業況感がよかった国はペルー、コロンビアの南米太平洋側2カ国。チリは10月中旬に発生したデモが懸念されたが、企業活動への影響は限定的だった。
    コロンビアの2020年の業況見通しはさらに向上。
  2. USMCA(新NAFTA)の影響を受けるメキシコでは、自動車部品分野において、生産地と調達先を「域外からメキシコ・米国に移管・変更する」とした企業が多かった。2020年の業況見通しは、これまで様子見モードであった企業活動がUSMCA発効で復活するであろうとの期待から、前年に比べ大幅に改善。
  3. ブラジルでは、景気回復に加え、ボルソナーロ政権が進める「ブラジルコスト」改善をはじめとした構造改革と、メルコスール・EU・FTA交渉妥結に代表される対外開放推進への期待から、2020年の業況感は前年に比べ大幅に改善。

調査結果概要

  • 2019年に日系企業の業況感がよかった国はペルー、コロンビアの南米太平洋側2カ国。
  • チリは10月中旬に発生したデモが懸念されたが、企業活動への影響は限定的。一方、悪化した国はベネズエラとアルゼンチン。
  • メキシコは、国内の景気低迷に加え、対米ビジネス環境の不確実性が継続したことを反映し業況感はやや悪化。営業赤字になるとの回答割合も前回調査に比べ増加。USMCA(新NAFTA)で自動車の原産地規則が大幅に変更されることを受け、部品メーカーでは、生産地の変更や調達先の変更を考える企業が多かった。生産・調達いずれも、域外からメキシコまたは米国に移管・変更するというもの。USMCAによる制度変更は、完成車より部品企業により多くの対応を迫り、かつ、貿易相手と生産地が域外から北米域内に移る、いわゆる「貿易と投資の転換効果」が一部生じていることをアンケート結果から確認。
  • ブラジルも業況感は前回調査に比べやや悪化したが、緩やかな景気回復とボルソナーロ政権による、ブラジル特有の問題点・留意点である、いわゆる「ブラジルコスト」を改善する構造改革の推進を背景に、営業黒字になるとの回答割合は前回に比べ増加。
  • 2020年の業況見通しは、コロンビアが引き続き良好であることに加え、ブラジル、メキシコで大幅な改善を見込む。ブラジルでは一層の構造改革の推進が期待されるほか、メルコスール・EU・FTA交渉妥結に代表されるように対外開放進展への期待も業況改善の背景にあるとみられる。メキシコではUSMCAの批准と発効が2020年には実現し、これまで様子見モードだった企業活動が復活するであろうとの期待がその背景にあるとみられる。

1.メキシコ:投資環境リスクでは「不安定な政治・社会情勢」が増加、USMCAでメキシコ拠点への移管が見込まれる。

  • メキシコ進出日系企業の19年の業況感は、国内の景気低迷に加え、対米ビジネス環境の不確実性が継続したことを反映し前回調査に比べやや悪化。19年は営業赤字になるとの回答割合も前年調査に比べ増加【報告書8~9ページ】。
  • 黒字と回答した企業でも、売り上げの増加ではなく、生産効率改善や人件費削減など企業内の合理化によって黒字を確保する事例が、ままみられた【報告書10ページ】。
  • 20年は国内市場と輸出市場での売り上げ増加を見込む企業が増加し、業況感は大幅に改善することが見込まれている【報告書16~17ページ】。
  • 投資環境面のリスクとしては、前回調査でトップだった「外国人・企業を対象とした犯罪」が順位を下げ、代わって「不安定な政治・社会情勢」がトップに。「現地政府の不透明な政策運営」を挙げた企業も増加しており、麻薬組織犯罪など治安悪化への不安と、現政権の経済政策に対する不満がともに増加した格好【報告書50ページ】。
  • USMCAの影響については、アンケート回答時点(10月1日~11月15日)では、USMCA法案が米議会で審議される見込みが全くたっていなかったこともあり、全体としては「分からない」、「影響はない」との回答が多かった【報告書67ページ】
  • しかし、自動車部品企業では影響ありとの回答が一定数に上り、USMCAによる原産地規則変更の影響を最も受けるセクターであることを裏付けた。影響の具体的内容として最も多く挙げられたものは「米国通商拡大法232条による自動車分野への適用除外」。適用除外の対象となる数量に制限が設けられたことへの懸念だとみられる。完成車にも数量制限が設けられているが、企業数が多く個社では全体数量の把握が難しい自動車部品の方がより懸念が強い【報告書68ページ】。
  • USMCAに伴う具体的対応策としては、生産地と調達先を、域外からメキシコおよび米国に移管・変更するというもの【報告書69ページ】。

※次の各図はいずれも、2019年10月1日~11月15日に中南米進出日系企業に対して行われたアンケート、および2018年の同様のアンケートを基にジェトロにて作成。

(図1)USMCAの影響

全業種

メキシコに進出している日系企業に対してUSMCA(新NAFTA)による原産地規則変更が与えている影響を示した図。回答のあった276社のうちプラスの影響があると答えた企業が8.7%、マイナスの影響があると答えた企業が18.1%、プラスとマイナスの影響が同程度と答えた企業が5.4%、影響はないと答えた企業が26.4%、影響の度合いがわからないと答えた企業が40.9%、その他が0.4%となっている。

ジェトロ作成

輸送用機器部品

メキシコに進出している日系企業のうち輸送用機器部品(自動車/二輪車)を扱う企業に対してUSMCA(新NAFTA)による原産地規則変更が与えている影響を示した図。回答のあった57社のうちマイナスの影響があると答えた企業が36.8%、プラスとマイナスの影響が同程度と答えた企業が8.8%、影響はないと答えた企業が21.1%、影響の度合いはわからないと答えた企業が33.3%となっている。

ジェトロ作成

2.ブラジル:国内景気の緩やかな回復と新政権における制度改革により、進出日系企業のビジネスに改善の兆し

  • ブラジルの2019年の営業利益見込みをみると、 「改善」の理由として、国内景気の緩やかな回復により「現地市場での売り上げ増加」(77.8%→83.3%)を挙げる企業が多い【報告書12ページ】。
  • 今後1~2年の事業展開の方向性では「拡大」との回答割合が前回調査と比較して増加している(55.7%→56.6%)【報告書23ページ】。
  • 2017年に改正された労働法の影響により、「直面している経営上の問題点:雇用・労働面の問題点」の中で「労働訴訟問題」が9.9ポイント減少(45.6%→35.7%)した【報告書43ページ】。
  • 2020年の営業利益見込みでは、回答企業の約半数が「改善する」と回答しており、引き続き「現地市場での売り上げ増加」の回答率が最も高い【報告書16 ~17ページ】。
  • また、2020年は、営業利益見込みが「改善」と答えた比率から「悪化」と答えた比率を引いた数値(DI値)は、コロンビアに次いで二番目に高い値(43.0%)となり、進出日系企業の期待値の高さがうかがえる【報告書16ページ】。

(図2)2019年と比べた2020年の営業利益見通し

中南米に進出している日系企業の2020年の営業利益見込みの、「改善」と答えた比率から「悪化」と答えた比率を引いた数値であるDI値を示した図。中南米全体では31.2%、メキシコは35.1%、ベネズエラはマイナス28.6%、コロンビアは48.0%、ペルーは19.5%、チリは33.3%、ブラジルは43.0%、アルゼンチンはマイナス4.9%。

国別DI値(2020年)

ジェトロ作成

3.アルゼンチン:マクロ経済の悪化と国内市場低迷により進出日系企業の懸念は悪化

  • アルゼンチン進出日系企業の業況感は引き続き悪化している。2019年のDI値はマイナス9.7%で中南米全体でベネズエラと並んでDI値がマイナスだった。前年と比べた2019年の営業利益見込みは、「悪化」と回答した企業の割合が最も高かった(39.0%)【報告書9ページ】。
  • 2019年の営業利益見込みが悪化する要因として「現地市場での売上減少」が68.8%と最も高い。不安定な金融情勢およびインフレの高止まりによる国内市場の縮小が影響を与えている 【報告書15ページ】 。
  • 2020年の営業利益見込みも引き続き厳しい状況が続いている。DI値はマイナス4.9%で左派政権誕生や債務問題の行方による不安感が増しているとみられる【報告書16ページ】。

4.チリ:反政府デモの日系企業への影響は限定的

  • 本調査実施中の19年10月にチリでは大規模な反政府デモが勃発し長期化しているが、約半数がデモ勃発後にアンケートに回答したものの、日系企業のビジネスへのマイナスの影響は現状それほど大きくない。
  • 2019年のDI値は減少したが(17.2%→12.1%)、営業利益見込みの「悪化」を選択した割合は前回調査時から急増しているということではなく、「横ばい」が増加している【報告書9ページ】。
  • 「今後1~2年の事業展開の方向性」でも前回調査時より「縮小」や「第三国(地域)へ移転、撤退」が増加しているわけではない【報告書23ページ】。
  • ビジネスへの影響についてはまだ様子を見ている状態の企業が多く、すでにマイナスの影響が出ている企業はそれほど多くないと言える。一方、「不安定な政治・社会情勢」をリスクと考える割合は前回調査時より増加したものの(11.4%→42.4%)、「安定した政治・社会情勢」をメリットとして考える割合は、前年比減も依然として他国よりも高く、中南米の調査対象国の中では唯一5割以上がメリットとして選択しており、デモ勃発後にアンケート回答した企業も引き続きメリットとしてとらえている【報告書54ページ】。

(図3)「安定した政治・社会情勢」を投資環境面のメリットとして考える企業の割合

中南米に進出している日系企業のうち「安定した政治・社会情勢」を投資環境面のメリットとして考える企業の割合を2018年のデータと比較して示した図。中南米全体では2018年20.2%、2019年12.5%、メキシコは2018年11.7%、2019年9.7%、ブラジルは2018年7.2%、2019年7.8%、アルゼンチンは2018年2.5%、2019年0%、チリは2018年85.4%、2019年54.5%、コロンビアは2018年36.8%、2019年36.0%、ペルーは2018年20.0%、2019年13.9%、ベネズエラは2018年も2019年も0%。

ジェトロ作成

海外調査部 米州課 (担当:峯村、辻本)
Tel:03-3582-4690