「関税引き上げ等の保護主義的な動きの進出日系企業への影響」 ―2018年度 進出日系企業実態調査・追加質問

2019年02月22日

ジェトロは、世界各国・地域(北米、中南米、アジア・オセアニア、欧州等)に進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を毎年、地域別に実施しています。今年度のアンケート調査では、「関税引き上げ等の(世界的な)保護主義的な動きの影響」について追加質問を設け、調査を実施しました。概要は次の通りです。


調査方法/ 実施時期
:アンケート調査/ 2018年9~12月(※各地域の実施時期は29頁参照)
アンケート対象(本調査)
:世界各地の進出日系企業1万7,317社(うち、回答企業数7,593社、有効回答率43.8%)
質問項目(追加設問)
:1.関税引き上げ等の保護主義的な動きの事業への影響、2.貿易制限措置によるマイナスの影響、3.各国・地域の貿易制限措置別の影響、4.(関税引き上げ等に対する)日系企業の対応策。

調査結果の概要

保護主義的な動きによる事業への影響について、国・地域により違いはあれど、世界のいずれの地域においても一定程度の企業が「マイナスの影響がある」と回答。「マイナスの影響あり」とした日系企業の割合は、米国(75.0%)、カナダ(61.0%)、中南米(45.5%)、中国(37.3%)等となった(添付図1)。

  1. 米国進出企業 ―米国進出日系企業を中心に拡がる保護主義への懸念:

    非鉄金属・金属製品・輸送用機器を中心に、米国進出日系企業の75.0%が関税引上げ等による調達・輸入・生産コストの上昇といった保護主義的な動きが事業にもたらすマイナスの影響を懸念※(添付図2)。この75.0%のうち、営業利益見込みが「減少する」とした割合は26.7%。
    また、事業に影響があると回答した米国進出日系企業の44.9%が「販売価格の引上げ」により対応すると回答しており、「調達先の変更」を検討する割合(24.3%)よりも高い(「生産拠点の変更」は(8.3%))(添付図5)。

    ※現状生じている影響だけでなく、今後被り得る影響への「懸念」も含まれる。

  2. 中国進出企業 ―中国国内では経済減速やサプライチェーンなどの影響を懸念:

    中国国内では、広州(51.4%)・青島(41.5%)・上海(39.0%)といった輸出企業が多い沿海地域で「マイナスの影響あり」との回答が比較的高くなった(添付図14)。ただし、輸出減による「海外売上」の減少(48.1%)よりも「国内売上」(55.3%)への影響を懸念する企業が多く、直接的な影響(輸出)よりも中国経済自体の減速や中国国内のサプライチェーンなどを通じた影響への懸念の方が大きいことが見て取れる (添付図15)。

  3. その他地域への進出企業 ―影響は限定的:
    • 欧州進出日系企業全体では25.2%であるが、生産拠点の集積する中・東欧の方が、西欧よりも相対的に懸念する声が高かった(添付図21)。
    • この他、ASEAN・南西アジア・オセアニアでは、シンガポール(25.1%)、インドネシア(22.8%)、インド(20.7%)で2割を超えた(添付図18)。

ジェトロ海外調査計画課(担当:秋山、島田)
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