お知らせ・記者発表
第17回 ASEAN事務総長とASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)との対話を開催 ―「混迷深まる世界で反映するための未来共創」―
2025年08月01日
ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)は7月29日、ASEAN事務局(本部:インドネシア・ジャカルタ)において、カオ・キムホンASEAN事務総長と対話を行いました。米国の関税措置など主要国の政策介入や保護主義による先行き不透明感が高まる中、今後の日ASEANの連携強化について議論しました。対話には、ベトナム日本商工会議所はじめ、ASEANの10商工会議所の代表者が参加しました。
FJCCIAは、2025年5月にASEAN首脳により採択された、ASEAN経済共同体(AEC)ブループリント以降の方針を定めた「AEC戦略計画(2026~2030年)」に記載された目標の達成に向けて、ASEANと共に取り組むべき要素を中心に提言を行いました。具体的には、「強靭なサプライチェーン(柱1)」、「グリーン経済とサステナビリティ(柱2)」、「デジタル経済とイノベーション、新興技術(柱3)」、「包摂的なASEAN(柱4)」という4つの柱に沿う形で提言をしました。同計画が掲げる、ASEAN域内および域外パートナーとのコネクティビティの強化、人的資本の共同開発に向けたエコシステム構築、オープンイノベーションの推進、持続可能性の向上、デジタル上の課題への対応など、幅広い分野で連携することで、ASEANの競争力強化に貢献したいと考えています。
グローバル・バリューチェーンにおけるASEANの役割は、益々重要性を増しています。具体的には、グリーン投資拡大に向けた基準やガイドラインの策定、Eコマース取引における知的財産保護や適切なデータガバナンス、人的資本の開発や流動化などに関するルール整備などの取り組みをより一層進めていくことが求められています。米国、中国、EUをはじめ、あらゆる国・地域がASEANとの関係強化に取り組むなか、域内に強固なサプライチェーンを持つ日本は、共通の懸念や課題にASEANと連携して取り組んでいきます。
なお、対話には、ASEAN日本政府代表部の中條一夫公使(臨時代理大使)、経済産業省の羽田由美子アジア大洋州課長にもご出席いただきました。日本貿易振興機構(JETRO)は、ASEAN進出日系企業とASEAN事務局、各ステークホルダーの仲介役として、対話の場をコーディネートしました。
- FJCCIAの若林浩一議長(ベトナム日本商工会議所会頭)は対話の中で、最近の自由貿易体制に対する挑戦が地域経済への不透明感を高め、事業環境にマイナスのインパクトを与える懸念を表明しつつ、「ASEAN諸国が中所得国の罠に陥ることなく更なる発展をするには、投資プラス雇用、さらに技術とナレッジが必要だ」と強調しました。
- 参加した各日本商工会議所の代表からは、前述の柱に沿う形で以下の点について言及がありました。
- (強靭なサプライチェーン)
- ジャカルタ・ジャパン・クラブ(笠井信司理事長):貿易の制限的措置や非関税措置の最小化
- マレーシア日本人商工会議所(鳴釜宏充会頭):模倣品や密輸品など不正貿易への対策強化、 炭素排出削減に取り組む企業に対する支援のさらなる拡充カンボジア日本人商工会(福原弘次会長):ASEAN域内のコネクティビティの重要性
- (グリーン経済とサステナビリティ)
- 盤谷日本人商工会議所(佐藤弘康会頭):クロスボーダー電力購入契約、カーボンクレジットにおける測定・報告・検証(MRV)基準の構築および同クレジット輸出を行うための政策支援
- ラオス日本人商工会議所(松本知己会頭):RE、RE証明書の取引の円滑、 地域標準とガイドラインの策定
- (デジタル経済とイノベーション、新興技術)
- シンガポール日本商工会議所(橋本和俊会頭):ECサイトにおける模倣品対策の積極的な実施、労働者の域内移動と雇用のための施策を支援する包括的ASEAN
- ホーチミン日本商工会議所(久米邦英会頭):電子政府・電子サービスの推進、データガバナンス
- 包摂的なASEAN
- フィリピン日本商工会議所(野村一洋会頭):人材開発の促進
- ミャンマー日本商工会議所(黒川聖治副会頭):人材流動化のための支援、労働者の地域内移動・雇用支援策
- ジェトロは本対話の枠組みが開始して以来、運営を支援しています。片岡副理事長は、日ASEANの経済共創を真に実現するため、ASEAN各国政府や企業と、現地に進出している日本企業や日本政府を巻き込んで、双方にとってwin-winとなる協力を実現するために活動を強化していきたいと述べ、今後の具体的な協力の方向性とジェトロの取組として、「サプライチェーンの再構築と多様化」「デジタル分野での協力強化」「グリーン分野での協力強化」を紹介しました。
- 今次対話は昨年に引き続き各会議所の代表が集まり、対面で実施しました。FJCCIAはASEAN9カ国の日本人商工会議所会員により構成され、2025年6月現在の会員数は7,304社に達する、ASEAN域内最大の連合組織です。2008年から年に一度、ASEAN事務総長との対話を続けています。
ASEAN事務総長への要望・提案(英語 (557KB) 日本語
(1.1MB))

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ジェトロ・アジア大洋州課 (担当:尾﨑)
Tel:03-3582-5179ジェトロ・ジャカルタ事務所(担当:大滝)
Tel:+62-21-5200264