第1回 日中第三国市場協力フォーラム:石毛理事長 挨拶

北京:人民大会堂 10月26日(金曜)

冒頭あいさつ

日中両国政府、経済界、ならびに関係者の皆様、本日は「第1回日中・第三国市場協力フォーラム」が、『日中平和友好条約締結40周年』ならびに『中国の改革開放40周年』という節目の年に、盛大に開催されますことを、フォーラムの事務局を担うジェトロといたしましても、心より嬉しく思います。

ジェトロは1982年6月、北京に中国本土では初めての事務所を開設しました。
改革開放がスタートした4年後のことでした。

当時は中国の経済・ビジネス情報が非常に不足していた時代です。
日本企業の私共への最大の期待は、正確で客観的な中国の経済・ビジネス情報の発信でした。

この40年、特に中国が2001年にWTO加盟を果たしてからは、市場開放が進み、両国の経済関係は、加速度的に強まってまいりました。

40年の友好を経て日中両国は、今、「グローバル化」が進む中で得られた『発展の経験』を、第三国の発展のために、ともに活かしていく段階に入っております。
このフォーラムは、「新たな日中協力の姿」を世界に向けて力強く発信する場であります。

このような貴重な場で、発言の機会をいただいたことに、まず、感謝を申し上げたいと思います。

そしてこの機会に、日中が第三国市場協力を進めるうえで、我々がどのような貢献ができるか、ご紹介したいと思います。

ジェトロの3つの機能

ジェトロは、ちょうど60年前に設立され、今年、還暦を迎えました。

私たちは設立以来、企業の皆さんが、海外でビジネスを行う上で、必要となる「情報」を、しっかりと集めてきました。

そして、その情報を多くの企業の皆さんにお伝えし、ビジネスを具体化していただくために、日本企業と海外企業とのビジネスマッチングに貢献してまいりました。

すなわち、(1)「調査」、(2)「発信」、(3)「ビジネスマッチング」が、我々の「機能」であります。
この「機能」を中国の「四文字熟語」で表してみたいと思います。

一つ目の、「調査」機能は、「事実をベースに本当のことを追求する」という意味で、『実事求是』(じつじ・きゅうぜ)です。
二つ目の「発信」機能は、情報を広く発信、普及させる『推而広之』(すいじ・こうし)と表現できます。
そして、三つ目の「マッチング」機能は、関係者を結び付けることを意味する『牽線搭橋』(けんせん・とうきょう)という言葉が最も当てはまると思います。

現場のニーズを正確に把握

まず「実事求是」(じつじ・きゅうぜ)についての、我々の活動の一端をご紹介します。

これは「中国経済と日本企業についての白書」ですが、日本企業が中国でビジネスを行う上で直面する課題を率直に示したものです。
中国・日本商会が、中国の投資環境を魅力あるものとするために、毎年、刊行している提言書です。

ちなみに、李克強・総理もこの9月に日本の経済団体の表敬を受けられた際、ご覧になったと伺っています。
私もこれまで地方政府の書記や省長にお会いする際には、必ずこの白書を渡してまいりました。
それは、中国で実際に事業を営む「日本企業の生の声」を、投資環境の改善に活かしていただくためであります。

リーダーの方々はすぐ、その場で目を通され、部下の方に質問し、改善の指示を出してゆきます。
率直に申し上げて、大変、効果的です。

私たちはこれからも、調査を通じて、真実を追求していきます。

情報発信力

2つ目は「推而広之」(すいじ・こうし)です。
これは、広く発信、普及させることを指しています。
我々は政府機関として、客観的で信頼できる情報を広く発信してゆきます。

私たちはこれまでも、フランスやインド等、さまざまなパートナーと一緒に、「第三国市場協力」について、広く情報発信して参りました。
日中においても、事業協力の可能性について「セミナー」や「ワークショップ」を通じて発信していきます。

来年早々には、タイのバンコクにおいて、現地日系企業と中国系企業、タイ政府をお招きし、「スマートシティ」や「産業高度化」等をテーマに、日・中・タイ3カ国協力のワークショップを開催します。

こういった日中と第三国での事業活動についても、「国際スタンダード」を重視し、「第三国の利益」にも配慮して、サポートしていく考えです。

ネットワーク力で「つなぐ」

3つ目は「牽線搭橋」(けんせん・とうきょう)」です。

これは男女を運命の赤い糸で結びつけることを指しています。
私たちは、来月、上海での国際輸入博の機会にも、日中企業のビジネスマッチングを行いますが、第三国においても、商談会の開催を通じ、より多くの日中の企業が運命の糸で結ばれるよう、努めて参りたいと思います。

以上、これから「第三国市場協力」を進めるにあたり、我々が貢献できる3つの機能をお話ししました。

現場力「人財・宝のネットワーク」

私たちは、中国に8つの事務所を持っており、中国出身の所員は、総勢約90名います。
中には、私が地方政府の要人と会談する時に、通訳のできるレベルの者が何人もいます。

その他にも、(1)日本の専門誌に論文を発表した大連事務所の呉冬梅(ご・とうばい)さん、中国の介護事情のエキスパートです。

(2)中国政府や企業幹部4,000名以上の人脈を持つ北京事務所の金京浩(きん・きょうこう)さん、スタートアップ事業に大活躍です。

(3)北京事務所の宋紅玫(そう・こうばい)さんは大学卒業直後からずっとジェトロで活躍してくれています。

この様に、一人一人が責任を持ち、意欲的に働く、こうした同僚が中国の事務所には沢山います。

私は、まさに彼ら、彼女らこそが、我々の現場を支えてくれているのであり、私どものかけがえのない宝、ひいては日中両国の宝なのだと思っております。

私たちはこのような、「人財のネットワーク」を、ASEAN、南西アジア、中央アジア、中東、アフリカを含め、全世界に74カ所持っています。

このネットワークを通じて、第三国における日中の企業ニーズを把握し、協力案件の発掘に力を尽してまいります。

しかし、我々を取り巻く環境は大きく変化し続けています。
我々は更なる高みに向けて、政府と一緒になって努力しなくてはならないと思っています。

中国経済の更なる高度化のために

企業がビジネスを安心して行うために、『自由で公正なビジネス環境』が不可欠であり、かつ(1)それを実現し・維持するための『ルール作り』と、(2)確りとした『ルールの執行』が必要となります。
世界はこの1年、貿易投資の環境が激変しています。
潜在的であった「根強い保護主義」が表に出てきています。
その意味で「自由で公正な貿易投資環境」は今、大きな危機に直面しています。WTOの設立以来の危機です。

他方、アジアでは現在、TPP11、RCEP、日EU・FTAなど、メガFTAを通じた新たなルール形成が着実に進んでいます。
日本の80年代、90年代の保護主義、あるいは貿易摩擦に直面した経験を振り返っても、「国際的なルール」が非常に重要であったことが分かります。
その時、日本はGATT/WTOの多角的貿易体制に従って、大胆な自由化を行い、国内改革を行い、新たなルール作りに取り組みました。
世界第2位の経済大国である中国も、改革を進め、国際ルール作りをリードし、「自由で公正なビジネス環境」の改善に貢献していただきたいと思います。

中国には、その責任と大きな期待があります。

私は、そのことが、中国経済の更なる高度化、国民生活の更なる質の向上に、大いに役立つと信じています。

終わりに

このほど私達はCCPITと「第三国市場における業務協力に関する覚書」を締結しました。
お話した3つの「機能」をフルに発揮し、CCPITをはじめ、両国関係者の皆様と手を携え、「日中が築いてきた発展」を世界に広めて参りたいと思います。

新たな日中関係がスタートします。
本日、ここにいらっしゃる1,000名を超える日中の政財界の皆様とともに、私どもジェトロとして引き続き努力をしていく決意を申し上げつつ、私の発言を終えたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。

謝謝(シェシェ)!