「日本-シンガポール国交50周年記念シンポジウム」開催

2016年9月

ジェトロは2016年9月28日、都内において「日本-シンガポール国交50周年記念シンポジウム」を開催しました。「日本-シンガポールの経済連携が拓く、ASEANの持続可能な成長と社会イノベーション」をテーマとし、IEシンガポール、日経BP社、ストレーツ・タイムズ紙とともに開催した本シンポジウムには、約280名の参加者がありました。

開会の挨拶に立った石毛博行ジェトロ理事長は、「少子高齢化や都市問題をはじめ、日本とシンガポールの両国が共通して抱える課題に、人工知能(AI)やIoTといった高度な技術と人材を投入して取り組めば、新たなビジネス機会を創出するだろう」と述べました。また、「米国大統領選挙を契機として『アンチ・トレード』や『保護主義』の風潮が高まっているが、そうした中であるからこそ、新たな通商ルールであるTPPを早急に批准して流れを変えることが重要」であるし、「今、われわれに期待されているのは、21世紀の新しい貿易・投資ルールを世界に広く普及させ、『持続可能な成長とイノベーション』を後押しすることである」と強調しました。続いて挨拶に立ったリー・アーク・ブーンIEシンガポール長官は、シンガポール航空が100%出資するLCCスクートが北海道新千歳に定期便を就航させたことを紹介し、「これは日本政府が進める農水産品輸出の促進にも貢献するだろう」と述べました。

基調講演する石毛理事長

来賓挨拶を行った中川俊直経済産業大臣政務官は、「TPPやRCEPのような多国間の経済連携協定についても、志を同じくするシンガポールとともに取り組んでいきたい」と表明しました。またシンガポールのシム・アン上級国務相(貿易産業省/文化・コミュニティー・青年省担当)は、成長を続けるアセアンのハブであるシンガポールの重要性を強調した上で、「日星両国の企業が協力し、アセアン地域の、ひいては世界の次世代ビジネスを牽引してほしい」と述べました。

続く「MOC/MOU署名式」では、シンガポール通商産業省(MTI)傘下にあってシンガポール企業の国際展開と国際貿易を推進するIEシンガポールとジェトロとの間で、協力覚書(MOC)が締結されました。本MOCの交換式は、同日夕刻に行われた両国首脳会談の後、安倍首相およびリー・シェンロン首相立会いの下、迎賓館にて行われました。ジェトロでは今後、本MOCに基づき、日星両国におけるビジネス機会創出に向け、双方向の投資促進、第三国協力、貿易促進、中小企業を含めた民間企業の国際化、パートナーシップの支援などを行って参ります。なお同日、日本・シンガポール両国の機関・企業によって、都市開発とインフラプロジェクトに関するMOU、および両国の大学による共同研究のMOUも締結されました。


日シンガポール首相立会いのもと、ジェトロとIEシンガポールの協力覚書(MOC)を交換(内閣広報室提供)

続いて行われた、赤星康ジェトロ副理事長とチュア・テックヒムIEシンガポール副長官による「日本-シンガポール、次の50年に向けた連携強化について」をテーマとしたダイアログでは、日本側からみたシンガポール企業の競争力や、日本企業がシンガポール企業と組むことによるメリット、両国で組むべき有望分野などについて、意見が交換されました。さらに、長谷部雅也ジェトロ前シンガポール所長をモデレーターとした「ジェトロ-IEシンガポールセッション」では、「TPPやAECなど新しい広域FTAが動き出そうとするなか、ビジネス環境の変化にも対応できる統括機能のあり方」をテーマに、アジア大洋州住友商事会社・取締役COO(シンガポール日本商工会議所 会頭)の岡田卓也、KPMG Global Japanese Practice ASEAN 地域統括パートナーの藤井康秀、IHI アジアパシフィック社取締役社長の菅泰三、IEシンガポール副長官のチュア・テックヒムの各氏が活発に議論しました。


赤星副理事長とチュア・テックヒムIEシンガポール副長官のダイアログ

パネルディスカッション(ジェトロ-IEシンガポールセッション)

その他、「アカデミアのパートナーシップによるASEAN地域のグローバル人材開発と産業高度化–イノベーションを生み出す共同研究–」「成長のためのオープン・イノベーション・パートナーシップ」「ASEANの持続可能な都市化」をテーマにしたパネルディスカッションも行われました。本シンポジウムの参加者からは、「アジアの牽引役としてシンガポールと日本の協力が不可欠であることが分かった」「今後のシンガポールおよびグローバル地域のビジネス環境について、様々なパネリストの見解を知ることができた」といった声が寄せられました。

日本シンガポール国交50周年記念シンポジウムプログラム
–日本-シンガポールの経済連携が拓く、ASEANの持続可能な成長と社会イノベーション–
開会の挨拶 ジェトロ理事長 石毛 博行
IEシンガポール長官 リー・アーク・ブーン氏
来賓の挨拶 シンガポール上級国務大臣(貿易産業省/文化・コミュニティー・青年省担当)シム・アン氏
経済産業大臣政務官 中川 俊直氏
MOU/MOC署名式
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)-IEシンガポール
  • 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)-サバナ・ジュロン グループ
  • 東京工業大学(TIT)-南洋工科大学(NTU)
JETRO-IEシンガポールダイアログ 「日本-シンガポール、次の50年に向けた連携強化について」
  • ジェトロ副理事長 赤星 康
  • IEシンガポール副長官 チュア・テックヒム氏
基調講演 「深化する日星関係 –高まるJCCIの役割–」
シンガポール日本商工会議所 会頭 岡田 卓也氏
「ASEANにおける持続可能な経済成長と社会イノベーションに向けたパートナーシップ」
アセンダス・シンブリッジ社 副グループCEO  マノハ・キアタニ氏
パネルディスカッション 「アカデミアのパートナーシップによるASEAN地域のグローバル人材開発と産業高度化 –イノベーションを生み出す共同研究–」
パネリスト:
  1. 東京工業大学 学長 三島 良直氏
  2. 南洋工業大学 副学長 ラム・キンヨン氏
モデレーター: 日経BPビジョナリー経営研究所 プロデューサー 渡辺 博則氏
パネルディスカッション
“JETRO・IEシンガポールセッション”
「シンガポール地域統括本社の展望~グローバルビジネスを生き抜く日本企業の戦略」
パネリスト:
  1. アジア大洋州住友商事会社 取締役COO(シンガポール日本商工会議所 会頭) 岡田 卓也氏
  2. KPMG Global Japanese Practice ASEAN 地域統括パートナー 藤井 康秀氏
  3. IHI アジアパシフィック社取締役社長 菅 泰三氏
  4. IEシンガポール副長官 チュア・テックヒム氏
モデレーター :ジェトロ 前シンガポール所長 長谷部 雅也
パネルディスカッション 「成長のためのオープン・イノベーション・パートナーシップ」
パネリスト:
  1. シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)長官 リム・チュアンポー氏
  2. BeMyGuest CEO クレメント・ウォン氏
  3. ヤマトホールディングス 執行役員/ヤマトアジア 社長 リチャード・チュア氏
  4. Touché CEO サーバ・サンクレール氏
モデレーター:ストレーツ・タイムズ マネージング・エディター フィオーナ・チャン氏
「ASEANにおける持続可能な都市化」
パネリスト:
  1. チャンギ空港グループ社/サバナ・ジュロン会長 リュー・ムンロン氏
  2. 国土交通省 大臣官房審議官(総合政策・国際担当)麦島 健志氏
  3. Y-PORTセンター アドバイザー/Fundación Metrópoli 社長 アルフォンソ・ベガラ氏
  4. 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)代表取締役社長 波多野 琢磨氏
モデレーター: 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)北東アジア事務所長 キラパルティ・ラクリシャナ氏
閉会の挨拶 閉会の挨拶
日経BP社 取締役 浅見 直樹氏