都内で「日本サウジアラビア “ビジョン2030” ビジネスフォーラム」開催

2016年9月

ジェトロは9月1日、サウジアラビアの主要閣僚が来日した機会を捉え、都内で「日本サウジアラビア“ビジョン2030”ビジネスフォーラム」を開催しました。日本企業や関係機関などから532名が参加、サウジアラビアからアル・カサビー商業・投資大臣をはじめとする大臣3名と要人2名が登壇した本セミナーでは、石油依存から脱するためのサウジアラビアの国家成長戦略「ビジョン2030」の概要が紹介されました。

「ビジョン2030」達成に期待

今回のフォーラムのテーマである「サウジアラビア・ビジョン2030」は、フォーラム開催と同時期に来日したムハンマド副皇太子が2016年4月に発表したサウジアラビアの長期国家戦略で、同国が石油依存から脱却して持続可能な発展を行うための目標が示されています。
フォーラム冒頭の「オープニングセッション」で主催者挨拶を行ったジェトロ石毛理事長は、輸入原油の約3割をサウジアラビアに頼る日本は、昨年は国交樹立60周年を迎えるなど同国と深い関係を持ち、「ビジョン2030」の実現による同国の安定と繁栄を希望すること、日本企業の技術やジェトロの経験がそのために役立つだろうと述べました。
続いて来賓挨拶を行った世耕弘成経済産業大臣は、日本は石油化学だけでなく、自動車・水処理・職業訓練といった幅広い分野でサウジアラビアの良きパートナーとして貢献しており、最近では空手・アニメ・和食などの日本文化も同国内で普及していること、「ビジョン2030」については新分野やファイナンス面での貢献も可能であると述べました。


石毛理事長の開会挨拶


世耕経済産業大臣の来賓挨拶

「ライセンス授与」「MOU交換」などのセレモニーも

続く「セレモニーセッション」では、一般財団法人・中東協力センターの松永和夫理事長からアル・カサビー商業・投資大臣に対し、「ビジョン2030」の戦略的パートナーとなれる日本企業の貢献可能分野を記した「便覧」(Japanese Strategic Partners for Saudi Vision 2030)が贈呈され、掲載された日本企業各社のCEOとの記念撮影も行われました。
次に同商業・投資大臣からジェトロ石毛理事長に対し、サウジアラビア総合投資院(SAGIA)がジェトロ・リヤド事務所に新たに発行したライセンスが授与されました。またジェトロはこの機会に、SAGIAとの間で新たな協力覚書も締結しました。
さらに、日サ両国の企業・組織間で今般締結された、太陽光発電、エネルギー効率化、廃棄物発電、産業人材育成、合成樹脂製造、緊急災害時のLPガス支援、パイプ製造、ファイナンスなどを対象分野とする、11件に及ぶMOUの交換式が行われました。


セレモニーセッションの記念撮影


SAGIAライセンスをジェトロに授与

「ビジョン2030」のキーワードは「多様化」「民営化」

続くパネルセッションでは、一般財団法人・日本エネルギー経済研究所の豊田正和理事長をモデレーターとし、アル・カサビー商業・投資大臣、アル・ファーレフ・エネルギー・産業鉱物資源大臣、アル・ヒクバーニー労働・社会発展大臣、アル・ハティーブ娯楽庁長官、アル・ルマイヤーン公的投資基金(PIF)事務局長の5名に登壇いただき、「ビジョン2030」の内容紹介や会場との質問応答が行われました。
サウジ側登壇者からは、「ビジョン2030」のキーワードが「多様化」と「民営化」であり、発電や再生可能エネルギーなどの分野で民間企業を活用する方針であること、小売・流通業への外資100%での進出許可や内外投資家間での平等の原則など、ビジネス環境改善を通じて一層の外資誘致を進めること、国営石油会社サウジ・アラムコのIPO(新規株式公開)を17~18年に予定していることなどが紹介されました。また日本企業には、サウジアラビア向け投資に加え、中小企業育成策を含む多くの面で協力を仰ぎたいとし、「ビジョン」実現に向けても協力してほしいとの期待が寄せられました。サウジアラビアでは「現地化」をキーワードとし、失業率の低下や女性の社会参加・就労促進などが大きな目標とされていることから、日本企業にはサウジ人に対する「雇用」「教育」「職業訓練」などの面でも協力いただきたいとするとともに、「テレワーク(在宅勤務)」を推進する方針などについても明らかにしました。さらに非石油部門振興の一環として、サウジアラビアでは、スポーツ、美術館・博物館、日本が得意とするゲーム産業、テーマパークなどの娯楽分野も振興する方針であり、日本企業にはテーマパーク造成やゲームのアラビア語翻訳、美術館・博物館でのヴァーチャル・リアリティ技術の提供を期待するとともに、拡大しつつある同国の軍事産業部門への投資も希望する旨、表明しました。

パネルセッション(3大臣・2要人が登壇)

最後に閉会挨拶に立った中東協力センターの松永理事長は、サウジアラビアの戦略的パートナーである日本企業は、「ビジョン2030」の実現に向けて各種のソリューションを提供できること、そして日サ両国の協力関係は今後とも一層強化されるべきである、と述べました。ジェトロとしても、サウジアラビアを含む中東諸国のビジネス動向に関する情報発信、及びわが国と中東諸国との関係強化に向けた事業の推進を、引き続き行って参ります。

「日本サウジアラビア “ビジョン2030” ビジネスフォーラム」概要
日時 2016年9月1日(木曜)11時00分~12時50分
会場 ホテルオークラ東京 B2F アスコットホール
主催 ジェトロ、(一財)中東協力センター
後援 経済産業省、外務省
次第
11時00分 開会/オープニングセッション
主催者挨拶 ジェトロ 理事長 石毛博行
11時10分 来賓挨拶 経済産業大臣 世耕弘成氏
11時15分 セレモニーセッション
  • 第一部 便覧贈呈式
  • 第二部 ジェトロ・リヤド事務所ライセンス授与式
  • 第三部 MOU交換式
11時45分 パネルセッション「ビジョン2030概要・戦略分野」
モデレーター (一財)日本エネルギー経済研究所 理事長 豊田正和氏
サウジ側登壇者:5名
  1. アル・カサビー商業・投資大臣
  2. アル・ファーレフ・エネルギー・産業鉱物資源大臣
  3. アル・ヒクバーニー労働・社会発展大臣
  4. アル・ハティーブ娯楽庁長官
  5. アル・ルマイヤーン公的投資基金(PIF)事務局長
12時45分 閉会挨拶 (一財)中東協力センター 理事長 松永和夫氏
12時50分 閉会