「TICAD VI」公式サイドイベントをナイロビで開催
–「日本・アフリカ ビジネスカンファレンス」と「ジャパンフェア」–

2016年8月

8月27日、28日の2日間、アフリカでは初の開催となる「第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)」がケニアの首都ナイロビで開催されました。ジェトロは同会議の公式サイドイベントとして現地で「日本・アフリカ ビジネスカンファレンス」および「ジャパンフェア」を開催し、日本、ケニア、アフリカ各国から、首脳をはじめとする政財界の有力者、企業関係者など多数の参加者がありました。

アフリカにおける民間セクターの重要性を強調

ジェトロとケニア投資庁(KenInvest)は8月26日、28日の2日間、「TICAD VI」の会場となったナイロビのケニヤッタ国際会議場(KICC)内アンフィシアターにおいて、「日本・アフリカ ビジネスカンファレンス」を開催しました(日本経済新聞社、日経BPが共催)。同カンファレンスには、日本企業や政府関係者、アフリカ各国の政財界関係者などの幅広い層から2日間で約1,400名に上った参加者がありました。
 28日に来賓挨拶に立った安倍晋三首相は、「アフリカのさらなる経済発展に向け、官民を挙げて協力したい。中でも民間セクターの果たす役割は大きいと考え、日本企業による対アフリカ投資促進に向け、『日アフリカ官民経済フォーラム』を設立することになった」と述べました。同日、やはり来賓として登壇したケニアのウフル・ケニヤッタ大統領も、「日本と協力しながら、アフリカの経済発展や貿易促進を進めたい。アフリカにとっては『産業化』『多様化』『雇用の創出』が重要であり、そのためにも日本と長期的なパートナーシップをもって協力したい」と述べました。なお、26日には同カンファレンス開会に当たり、松村祥史経済産業副大臣、ケニアのウィリアム・ルト副大統領、アダン・モハメド産業・貿易・協同組合長官が参加、来賓挨拶ではいずれも、民間部門の重要性、パートナーとしての日本への期待、日本政府のサポートなどに言及しました。

安倍総理、ケニヤッタ大統領を始め各国首脳が参加

2日間にわたる同カンファレンスのプログラムは、アフリカ開発銀行(AfDB)のアキンウミ・アデシナ総裁による基調講演で幕を開け、同総裁は「AfDBは民間セクターが成長の牽引力だと期待しており、引き続き民間セクターをサポートしたい。日本には援助のみならず、貿易や投資におけるパートナーシップの面でも期待している」と述べました。
基調講演に続き、日本からアフリカへのさらなる貿易・投資の拡大をテーマとする講演が行われ、日本・アフリカ双方から約60企業・団体が登壇しました。日本側からは、「製造業・サービス」「情報通信・IT」「医療・感染症対策」の各パートに分かれて登壇した講演者が、所属各社におけるソフトウェアのオフショア開発、医療機器開発や感染症対策等の取り組みなどについて、プレゼンテーションを行いました。その他、「鉄道」「エネルギー」「環境」「美容」「公衆衛生」「資源開発」等の各分野について、日本企業のアフリカでのビジネスが紹介されました。モデレーターからは、製造業が重要となるアフリカとしては、製造業における高付加価値化などについて日本企業から学ぶべき、とのコメントがありました。
 アフリカ側からも、ビジネスの深化に向けた様々なメッセージが日本側に発信されました。「アフリカのビジネス環境:絶望からアフリカ・ライジングへ」のパートでは、アフリカには市場拡大やイノベーション・ハブなどの可能性がある一方、インフラの未整備といったビジネス上の障壁や課題も多いという現状について、紹介されました。また成長途上の市場であるアフリカとしては、日本と長期的な協力関係を築くべき、との議論もなされました。「アフリカ経済成長に向けた地域経済共同体(RECs)の役割」のパートでは、貿易を活発化するためにも、国境を越えた道路・鉄道などのインフラ整備、非関税障壁の撤廃などが重要である、との指摘がなされました。さらに、交通回廊といった広域的インフラ重視の観点から、複数の共同体を統合して1つの自由貿易圏を作ろうという動きについては日本企業も関心があるのではないか、といった議論もありました。その他、アフリカで活躍する地場企業4社が登壇し、不動産開発・飲料製造・スポーツ事業・建設・食品ビジネスなどの分野におけるビジネス事例を紹介しました。

MOU締結やジャパンデスク設置が日本企業のアフリカ進出を後押し

28日、同カンファレンス内では、日本とアフリカの企業・団体間におけるMOU署名式が開催され、安倍首相、ケニヤッタ大統領をはじめ、ルワンダのカガメ大統領、マダガスカルのラジャオナリマンピアニナ大統領も立ち会いました。その場で署名された計73本のMOUにより、日本とアフリカの官民が一体となってアフリカビジネスに取り組む方向性が確認されました。またAfDB、国際連合工業開発機関(UNIDO)、南部アフリカ開発銀行(DBSA)、アフリカ6カ国の投資誘致機関とのMOUに個別に署名したジェトロは、ビジネス促進を通じてアフリカ各国の貿易投資を振興するべく、相互協力することで両機関と合意しました。
ジェトロの石毛理事長は挨拶の中で、「ケニアはM-PESA(携帯電話による送金サービス)など、今では最先端のモバイルマネー大国となった。アフリカのイノベーションに注目すべき。約50年前にジェトロはアフリカキャラバンを開催したが、今回はいわば第2のキャラバン。今後は貿易のみならず投資でも更なる関係強化が重要だ。日本企業はその実力から見て、もっとアフリカでプレゼンスがあってしかるべき。日本には1000年を超える長い歴史を持つ会社が7社あり、長期的な経営姿勢を持っている。そのような日本企業がアフリカで第2のグローバリゼーションを果たそうとしている。日本企業にはこの機会にアフリカのダイナミズムを感じてほしい。」と述べました。
カンファレンス終了後には、ジェトロが2014年から運営する「アフリカ投資誘致機関フォーラム(AIPF)」が参加者に紹介されました。その中で、AIPFを構成する9カ国(ケニア、コートジボワール、エチオピア、エジプト、モザンビーク、南アフリカ、ナイジェリア、タンザニア、モロッコ)における各投資誘致機関に「ジャパンデスク」が設置され、ジェトロには「アフリカデスク」が設置されると発表、日本企業のアフリカ進出を支援する体制が日本とアフリカ双方において強化されることが明らかにされました。

約100社・機関が参加した過去最大規模の「ジャパンフェア」

8月26~28日には、TICAD VIが開催されたのと同じKICC内において、「ジャパンフェア」が開催されました。日本から96社・機関が参加するなど、アフリカで開催されたこの種フェアとしては最大規模となった本フェアでは、インフラ整備、フードバリューチェーン構築、環境・省エネ、保健衛生改善など、日本の貢献が期待される様々な業種からの出展があり、うち3割弱が中小企業でした。アフリカにとっての重要課題、保健衛生改善に関連する企業の出展が多かったことも、本フェアの特色でした。横浜市と神戸市の両市も本フェアに出展し、横浜市の林文子市長は自らブースに立って、各国関係者に横浜における「TICAD」開催の実績、その後のアフリカ各国との交流、都市開発モデルなどについてアピールしました。
 フェア開幕に先立ってKICC内のアンフィシアターで行われた8月26日の開会式は、松村祥史経済産業副大臣、ケニアのアダン・モハメド産業・貿易・協同組合省長官が来賓挨拶を行ったほか、金子恵美総務大臣政務官、日本・アフリカ連合友好議員連盟の田中和徳副会長、経団連の野路國夫サブサハラ委員会委員長、経済同友会の関山護アフリカ委員長をはじめとする多くの来賓を迎え、盛大に行われました。

ジャパンフェアの開会式で鏡開き

開会挨拶を行った松村副大臣は、「本フェアが日本のアフリカビジネスの源流となった、というエピソードが生まれることを期待する」と述べました。またモハメド長官は、「本フェアを通して日本とアフリカの双方が学び合い、人口増加が続いて投資機会も増えるアフリカへの日本からの投資を呼び込みたい」と述べました。開会初日の27日に来訪した安倍首相とケニヤッタ大統領は、各ブースを視察して出展者の説明に耳を傾けました。同フェア会期中には、その他、岸田文雄外相、塩崎恭久厚生労働相、逢沢一郎日本・アフリカ連合友好議員連盟会長、ズマ・南アフリカ大統領、サル・セネガル大統領、マジャリワ・タンザニア首相など、日本とアフリカの双方から多くの要人が訪れました。

約7,000人(※参考値)の来場者が訪れた「ジャパンフェア」では、会期中に1,500件を超える商談が行われ、うち約130件は成約が見込まれています。KICC内で「ジャパンフェア」に隣接して開催されたアフリカ側主催による「アフリカ展」と「ケニア展」も、「TICAD VI Japan-Africa EXPO」として「ジャパンフェア」と一体的に運営されました。「アフリカ展」では、参加各国政府が自国におけるビジネス環境や輸出産品を紹介したほか、国際機関や各国企業による出展もあり、日本企業にアフリカのビジネス情報を提供しました。また「ケニア展」では、ケニアの投資環境・観光情報・輸出産品等が紹介され、安倍昭恵首相夫人、マーガレット・ケニア大統領夫人など、多くの来場者がありました。「ジャパンフェア」では手応えを感じた日本企業の出展者も多かったようであり、今後のアフリカビジネスの進展が期待されます。

会場を視察する安倍首相とケニヤッタ大統領
出典:首相官邸ホームページ

TICAD VI ジャパンフェア概要

会期 2016年8月27日(土曜)、28日(日曜)*26日(金曜)ソフトオープン
開催地 ケニア・ナイロビ
会場 Kenyatta International Convention Center (KICC)
出品対象 クオリティインフラ(水資源・水処理、電力、情報通信、交通、住宅等)、農業開発(農業資機材等)、健康生活(医療機器、医薬品、健康機器等)、生活密着型の先端技術(ロボット、環境・省エネ・新エネ等)、生活用品(ファッション・衣料等)、サービス(食品、Cool Japan等)、BOPビジネス等
主催 ジェトロ
後援 経済産業省、外務省、総務省、農林水産省、国土交通省
規模 約2,400平方メートル(うち、屋外テント内2,000平方メートル、屋外約400平方メートル)
出展者数 96社・団体
来場者数 約7,000名(参考値)