福岡発スタートアップが世界へ 「Singapore Challenge 2025」報告会を開催
福岡市発の企業が海外展開への手応えと成果を発表

福岡市、ジェトロ福岡、福岡地域戦略推進協議会(FDC)が主催するアクセラレーションプログラム「Singapore Challenge 2025」の参加企業による報告会を、12月2日に開催しました。本プログラムは、福岡市発の企業の海外市場進出、特に東南アジアを中心としたグローバル展開を支援する取り組みです。

今年はスタートアップ5社、事業会社1社の計6社がプログラムに参加。毎年10月末にシンガポールで開催される世界最大級の国際スタートアップイベント「SWITCH 2025」に出展し、「SWITCH 2025 DEBRIEFING」と題した報告会では、現地での商談や市場検証の成果を共有しました。

本記事では、本報告会の模様をお伝えします。また、未読の方は本記事とあわせて、11月17日公開の【福岡発スタートアップが世界へ「福岡Singapore Challenge プログラム2025」現地レポート】も是非ご一読ください。本プログラムを通じたシンガポール現地での活動の様子を、一層ご理解いただけます。

福岡市からの開会挨拶:アジアのリーダー都市を目指して

冒頭では、福岡市・ジェトロ福岡・福岡地域戦略推進協議会(FDC)をはじめとしたプログラム主催者および、プログラム運営パートナーのZero-Ten Park社、Meet Venture社、JSIP社より、スタートアップの海外展開をさらに後押しする各機関の取り組みの紹介が行われました。

開会の挨拶を行う福岡市役所経済観光文化局創業推進部グローバルスタートアップ推進担当課長 水野壮人氏

プログラム主催者らによるプログラム外の海外展開支援紹介の様子

ジェトロ福岡からは、本プログラムに限らず、ジェトロが提供する多様なスタートアップ支援プログラムを紹介。今後より積極的に活用してほしい旨を参加企業の皆様に向けてお伝えしました。

続いて、FDC(福岡地域戦略推進協議会)からは、福岡が擁するスタートアップエコシステムの現状と、同協議会が提供可能な支援内容について説明が行われました。

さらに福岡市からは、今年度の海外展開支援の実績や取り組み状況が共有され、行政による支援の活用が呼びかけられました。

Meet Ventures社からは、創業者であり共同代表を務めるFarhan Firdaus氏と今回のプログラムマネージャーを務めたShafiera氏がオンラインで参加し、プログラム参加企業へのエールとASEAN地域での手厚いサポートに関するメッセージが送られました。

JSIP社からは、同社の共同代表を務める中村貴樹氏からビデオメッセージが提供されました。大手日系企業のオープンイノベーションを支え、多くの自治体でのプログラム運営実績を誇る同社ならではの、強力なネットワーク形成支援等が紹介されました。

Zero-Ten Park社からは、同社が運営するアジアのコワーキングネットワークや、福岡と世界を繋ぐプロジェクトについても紹介があり、スタートアップ支援の具体的な取り組みが示されました。

参加6社による成果報告:リアルな手応えと課題

本年度の参加企業6社が、シンガポール現地での展示・商談・市場調査の成果や、今後の展望を発表しました。ここでは、各社ごとに発表の抜粋を簡単にご紹介いたします。

eatas(ヘルスケア / 食支援プラットフォーム)

発表者:eatas株式会社 CEO / 手嶋英津子氏

「日本の食や健康は、海外でブランドとして通用する可能性があると実感した。特に、現地のニーズに関する仮説が確信に変わったなど、大きな収穫を得られた。ローカライズ、海外展開を視野に入れた開発も検討していきたい」

Eletus(AI / EdTech)

発表者:Eletus株式会社 CEO / 園田雅敏氏

「LinkedInでの事前接触や、英語化されたUI/資料が成果につながったという実感があった。展示会中の商談でその場で契約まで至ったケース、プログラム中のピッチイベントが商談に繋がったケースもあった。ASEAN地域に特化したプロダクトのチューニングも考えられ、将来的な現地法人の設立も検討できると感じた」

Coastal Link(海洋通信 / マリンテック)

発表者:Coastal Link株式会社 CEO / 瀧本 朋樹 氏

「SWITCHでは、東南アジア中の海運関係者が参加しており、マリンテックの国際的なポテンシャルの高さを肌で感じることができた。東南アジア市場参入のメリットも大きいが、一方で参入障壁の高さも痛感した。現地企業との協業を目指すなどして、進出を目指していきたい」

Kyulux(大学発 / 次世代有機EL材料)

発表者:株式会社Kyulux 管理部部長 / 坂本二朗氏

「レイターステージへの投資家との接点獲得が目標だったが、一定の成果を持ち帰ることができた。展示会では資料を渡して終わりがちになるが、資料を渡してからの説明と深掘りが重要だった。また、相手の興味に合わせて資料を順次開示するのではなく、最初から開示可能な範囲で広く詳細な情報を提供することで、興味を持ってもらいやすいと感じた」

Teliha(ブロックチェーン / フィンテック)

発表者:株式会社Teliha 取締役 / 伊部紀昭氏

「現地でミーティングを行ったトレード企業と、具体的なシステム構築契約に向けた交渉を始められた。これまでスコープになかった国からの問い合わせ、興味がSWITCH期間中に多く寄せられたため、市場調査を開始した。また、他の支援を受けて出展した日系スタートアップと話したが、改めて福岡市のサポートが非常に手厚いと感じたので今後も継続してもらいたい」

Welzo(農園芸商社 / アグリテック)

発表者:株式会社Welzo BIZ PROMOTION Division RESEARCH & DEVELOPMENT Dept. 研究農場/研究開発室 課長 / 尾崎剛教氏

「現地での商談や視察が実施できたことで、PoC実施への動きが具体化した。ピッチの場で数社とコミュニケーションが始まり、帰国後の現在も継続している。今後、シンガポールでニーズがありそうな農産物の情報を把握し、テストマーケティングを行えるようにしていきたい」

Special Session:IPOS Internationalによる知財戦略講義

シンガポール知的財産庁(IPOS)の中核子会社 IPOS International が登壇。同社は、100名超の専門家を抱え、様々な企業のIP戦略から商業化まで一気通貫で支援しています。今回はスペシャルセッションとして、報告会参加者に向けて海外での知財戦略に関するミニレクチャーを行いました。

他にない独自の技術やノウハウを武器とするスタートアップにとって、知財戦略は近年その重要性が大きく増しています。具体的な事例を基にしたレクチャーは、海外展開を本格的に志向するプログラム参加企業にとって、重要なヒントを得る機会となりました。

昨年度参加企業からのミニレポート

昨年度プログラムに参加したスタートアップの中から、Surg storage社、aiESG社、Fusic社の3社が登壇し、プログラム後の海外事業の進展を共有しました。

3社からは、展示会前後の現実を直視することの大切さや、プログラム終了後の継続的なコミュニケーションで大きな取引に繋がった事例などが報告されました。特に、Fusic社からは、発表当日にシンガポール現地での本格的な活動をPRするプレスリリースが公開され、本報告会で発表された内容とリンクした成果が発表されました。

ネットワーキングと総括:福岡から世界へ

報告会後には記念撮影とCoffee Networkingが行われ、参加者同士の交流が活発に行われました。

福岡のスタートアップが世界市場で存在感を高める一年に

プログラム運営者が一体となった支援体制が、今後の海外展開をさらに後押ししていきます。福岡からアジア、そして世界へ。福岡発スタートアップの挑戦は、これからも続きます。