見本市レポート EPHJ- EPMT- SMT

スイス最大の精密機械・金属加工見本市

スイス・ジュネーブ
2016年6月14日(火曜)~17日(金曜)

EPHJ- EPMT- SMT 会場風景

スイス最大の精密機械・金属加工分野の国際見本市「EPHJ-EPMT-SMT」が、2016年6月14~17日の4日間、スイス・ジュネーブで開催された。腕時計・宝飾品分野の「EPHJ」、マイクロテクノロジー分野の「EPMT」、医療機器分野の「SMT」という3見本市が同時開催され、13カ国・地域から合計881社・団体が参加、2万人以上が来場した。

欧州最大級の精密機械・金属加工見本市

「EPHJ-EPMT-SMT」は、精密加工技術分野の見本市として欧州で最大級の規模を誇る。15回目を迎える今年は、13カ国・地域から合計881社・団体が参加(2015年実績は867社・団体)。出展者の所在地は、60%がスイス仏語圏、20%がスイス独語圏、残り20%がフランス、イタリア、ドイツなど国外企業である。主催者によれば、出展者は年々増えており、間もなく現在のホールの収容上限に達する勢いということだ。同見本市の特徴は、腕時計・宝飾品分野の「EPHJ」、マイクロテクノロジー分野の「EPMT」、医療機器分野の「SMT」という3つの見本市を併催することにより、3分野の供給側と需要側が一堂に会する点である。

会場風景

スイスの精密加工機械産業の発展と出展者の顔ぶれ

スイスの精密加工機械産業のルーツを辿れば時計に行き着く。16世紀の宗教改革の際、フランスから逃れてきたカルバン派の時計職人と、スイスの金細工師の技術が融合し、ジュネーブで時計産業が興った。やがてそれはジュラ山脈一帯へと広がり、サプライヤーと下請業者がムーブメントや外装部品を組立工に納入するという高度に専門化した水平構造が確立していった。1970~1980年代には、クオーツ時計の登場により一時壊滅的な打撃を受けたものの、業界再編と機械式時計への資源の集中でこれを克服。今では国内約600社6万人が時計産業に関わると言われており、今回の見本市でも約280社と出展企業の多くを時計関連企業が占めた。本見本市には、時計の製造に使われる原料、部品、機械、工具、精密機械、包装、設計デザインツール、サービス(管理、マーケティング、宣伝、コンサルテーション)等、多様な出展者が参加する。

会場風景

マイクロテクノロジー分野からは、携帯用から据え付け型まで様々な形態の機器が出展し、関連産業も食品、ヘルスケア、セキュリティまで多岐にわたる。同分野の出展者は、航空機・乗用車、オートメーション・ロボティクス、時計製造機械、測定機器、光学機器、レーザー加工、ロジスティックなどが想定される。
医療機器産業はスイスで今後の成長が最も期待される分野であり、企業は技術開発や輸出機会を窺っている。同分野の想定される出展者は、研究開発、原料生産、生産装置、インプラント・補綴(ほてつ)、特殊医療機器およびサービスなどである。
これらを合わせた時計・宝飾品・精密機械産業は、2015年時点で金額にしてスイスからの輸出の23%を占めており、化学品、機械および電気・電子機器に次いで3番目に大きな輸出産業として重要な位置を占める。

多角化を目指す出展者から好評

しかし、昨年から業界関係者の間では危機感が高まっている。2015年1月のスイス国立銀行による対ユーロ為替レート上限撤廃以降、通貨スイスフラン高が輸出に深刻な影を落としている。さらに、特に高級機械式腕時計に関しては中国人の消費鈍化の影響を受けており、2015年には最大の輸出先である香港向け輸出額が23%も落ち込んだ。5月に主催者が行った記者会見に出席したスイス時計協会ジャンダニエル・パーシュ会長は、「時計需要が低迷して真っ先に影響を受けるのは下請け業者だ。過去5年の力強い成長の後だけに、生産能力には余力がある。企業は市場と向き合い顧客を多様化する必要性に迫られている」と語った。
本見本市が出展者数を伸ばしている理由もここにある。3分野の見本市をワンフロアに集約し、出展者どうしの交流を促すことで、新しい製品開発のヒントや新しい分野の顧客獲得に繋がると好評だ。「マーケットの先行きが不透明なのにも関わらず、昨年以上に多くの出展者と来場者を得た。このことは、この業界に耐久力と、イノベーションと多様化に向けた適応力があることを証明している」。本見本市プロジェクトマネージャーのマルタン・バーテレミー氏は閉会の辞で述べた。
会期中は、ジュネーブ州防衛・経済大臣のピエール・モデ氏、ジュラ州経済協力大臣のジャック・ゲルベール氏、ヌーシャテル州経済社会活動大臣のジャン・ナタナエル氏も来場し、州政府として産業振興への積極的な姿勢を示した。その他、ラウンドテーブルでは、3Dプリンターの限界、新しいレーザー加工技術の応用、医療機器への応用可能性、時計産業の未来といったテーマについて、専門家による熱い議論が交わされた。
次回は2017年6月20日から23日まで、同じくパレクスポで開催される。

ジュネーブ事務所 杉山百々子

見本市データ
見本市名 EPHJ-EPMT-SMT
(Salon International leader de la haute precision)
開催期間 2016年6月14日(火曜)~17日(金曜)
14日(9:15~18:00)、15、16日(9:30~18:00)、17日(9:30~16:00)
初回開催年/開催頻度 2002年/年1回
開催場所 パレクスポ
出展商品内容 高精度時計、ジュエリー、マイクロテクノロジー、医療機器
出展者数 881社・団体(13カ国・地域)
来場者数 約20,000人
入場料 無料、要事前登録
事務局連絡先

EPHJ-EPMT-SMT Project Leader
Palexpo SA
CP 112
CH-1218 Le Grand-Saconnex

Tel:+41-22-761-14-16

主催者 Palexpo SA