見本市レポート INNOPROM 2018

ロシア最大級の産業総合博覧会

ジェトロ参加報告

ロシア・エカテリンブルク
2018年7月9日(月曜)~12日(木曜)

INNOPROM 2018の様子

ロシア最大級の産業総合博覧会「INNOPROM 2018」が、2018年7月9日~12日、ロシア・エカテリンブルクで開催された。2018年のメインテーマ「工業のデジタル化」に沿ってIoTやロボットに関するセッションが行われ、20カ国から600社・機関以上が出展した。

「販路拡大に向け、具体的な商談ができた」

INNOPROM 2018はモスクワから東へ約1,500km、ロシア中部・ウラル山脈のふもとにある工業都市エカテリンブルクで2010年より毎年開催されているロシア最大級の産業総合博覧会だ。ジェトロは日本がパートナーカントリーを務めた昨年に引き続き、2年連続でジャパン・パビリオンを出展した。日本のほかには、韓国、中国、ドイツ、イタリアなど8カ国がナショナルパビリオンを設けた。今年のパートナーカントリーである韓国パビリオンには機械、ロボット、自動車関連企業など約100社が出展し、メインテーマであるデジタル分野に強みを持つドイツのブースにはソフトウェアや自動制御システムを製品に持つ企業などが出展した。

展示物を見学する様子

ジャパン・パビリオンには、製造業を中心とする全26社・機関(カタログ出展を含む)が参加。工作機械、精密加工機器、工具などのほか、廃物石材粉砕機や流体粉末乾燥機など幅広い出展が特徴となった。ブース出展した14社のうち約半数にあたる6社は2年連続での出展である。これらの企業は「昨年の商談以降コンタクトをとり続けていた企業とさらに進んだ商談をすることができた」として、継続出展の意義を強調する。一方、初出展の企業は、ロシアにおける自製品の需要把握を目的としていたが、「初日から思いもよらず具体的な商談を行うことができて驚いている」と、手応えを感じるところもあった。また、事前に取引先候補となりそうな企業に製品の紹介および出展の予定をメールで送るなどのアプローチをすることで、より効率的に中身の濃い商談を行うことが可能となった企業もあった。同社の担当者は、「来年もINNOPROMに出展したい」と語った。
今年のテーマであるデジタル分野からは、川崎重工業、マゼランシステムズジャパン(以下マゼラン)、三菱電機が出展。マゼランは、GPSなどの衛星の信号を受信し、高精度測位する受信機を開発している。同社製品はロシアの衛星GLONASSにも対応していること、ロシアに子会社の研究機関があることなどから出展を決めた。ロシアにおける衛星測位システムに関する知名度は未だ低いが、農機や建機を扱う企業などから引き合いがあり、需要はあると感じたようだ。
除雪機メーカーの和同産業は除雪機の実物を展示。来場者が体験できるようにすることで、訪れる人の興味を誘っていた。同社の担当者は、「自宅で使いたいのだが、どこの販売店で買えるかと尋ねられた」と述べ、降雪地域であるロシア市場での可能性を一層強く実感していた。同社が今回INNOPROMに参加した主な理由はロシアでの自社製品の需要把握やイメージ浸透を狙ったマーケティングだった。その点では、所期の目的は十分に果たせたようだ。
今回ジャパン・パビリオンに参加した14社のうち4社が、2016年12月にジェトロが開始したロシア・ビジネス支援専門家による継続一貫支援事業の対象企業である。いずれの企業にも専門家が同行し、具体的な商談を行う際の橋渡し役を担った。

デジタル化推進はまだ走り出したばかり

INNOPROMでは、展示会以外にも例年数多くのビジネスイベントが開催される。今年のテーマである「工業のデジタル化」に関する様々なビジネスセッションが行われた。日ロセッション「デジタル時代の日ロ協業のポテンシャル」では、具体的な日ロ間のデジタル協力の可能性が議論された。この背景には、経済産業省が2017年9月にロシア経済発展省との間で「デジタル経済に関する協力にかかる共同声明」に署名し、2018年5月にはデジタル分野での協力の共同行動計画が作成されていることがある。
セッションではファナックの原田宏之執行役員がスマートマニュファクチュアリング実現に向けたロボット・IoT・AIの活用について、またカルーガ州のドミトリー・デニソフ第1副知事が地域レベルでのデジタル化の取り組みについて発表した。

日ロセッション「デジタル時代の日ロ協業のポテンシャル」の様子

日ロセッション以外では、パートナーカントリーの韓国とロシアの2国間セッション「第4次産業革命におけるロ韓間協力」で、デニス・マントゥロフ産業商務相が両国間の協力強化の一例として、造船分野でのICT活用に向けた海洋技術開発センターの設立が計画されていることを公表した。
産業用ロボットに関するセッションでは、産業商務省工作機械製造・投資材局のミハイル・イワノフ局長が、製造企業向けに機械設備の近代化向けに資金を供与する工業発展基金が開始した「国家産業デジタル化」プログラムについて解説した。同プログラムは、生産ラインの自動化を行う企業に対して国が融資を行う制度が含まれているが、融資を受けるにはロシア製の技術を導入することが条件となる。 ロシアでは、工業のデジタル化に向け様々な取り組みがなされている。しかし、その道は決して平たんではない。マントゥロフ産業商務相は、「人、機械、ソフトウェアの効果的な連携」をテーマとしたセッションにおいて、ロシアにおける労働者1万人あたりの産業用ロボットの台数が、デジタル化を推進する国のおよそ30分の1と指摘。取り組みを一層加速しなければならないとした。
デジタル化を進めるロシアの生産現場。INNOPROMはまさに、そこで求められる日本の製品や技術を披露するショウケースとなる場なのだ。
次回INNOPROMは2019年7月8日~11日に催される。

欧州ロシアCIS課 加峯 あゆみ

見本市データ
見本市名 INNOPROM 2018
開催期間 2018年7月9日(月曜)~12日(木曜)
10時00分~18時00分
初回開催年/開催頻度 2010年/年1回
開催場所 エカテリンブルク・エキスポ
出展商品内容 機械設備、ロボット、部品、IT、エネルギー、都市開発等
出展者数 600社以上(20カ国・地域)
来場者数 4万6,000人(国数は発表なし)
入場料 9日~10日:300ルーブル(≒600円)
11日~12日: 無料(オンラインでの事前登録無しの場合:300ルーブル)
主催者 ロシア連邦産業商務省、スヴェルドロフスク州政府
事務局連絡先 FORMIKA Group
Tel:+7-495-660-75-89
E-mail:info@innoprom.com