見本市レポート メゾン・エ・オブジェ・パリ 2017年1月展

世界最高峰のインテリア&デザイン関連見本市

ジェトロ参加報告

フランス・パリ
2017年1月20日(金曜)~24日(火曜)  

メゾン・エ・オブジェ会場入り口

「インテリアのパリコレ」とも称される欧州最大級のデザイン・インテリア関連見本市「メゾン・エ・オブジェ」2017年1月展がフランス・パリで開催された。今回は11万1,000平方メートルの展示会場に、世界各国から2,871社が出展し、8万5,825人が来場した。ジェトロは海外での販路開拓を目指す日本企業43社・団体の出展支援を行った。

メゾン・エ・オブジェとは?

「メゾン・エ・オブジェ」は2017年で23年目を迎える、欧州最大級のインテリア・デザイン関連見本市である。商品分野はインテリア製品のほか、キッチンウェア・テーブルウェア、ギフト雑貨、ファッション製品、照明、建材・内装材など多岐にわたる。「家」に関するあらゆるアイテムが、商品分野とターゲット層に応じたホールに配置されており、その多彩なホール構成が本見本市の特徴だ(参考:ホールレイアウト(主催者ウェブサイト)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。
主催者発表資料および出展企業へのアンケートによると、来場バイヤーは専門店やセレクトショップ、百貨店やミュージアムショップ等小売のバイヤーが多く、さらに、デザイナーや建築家、ホテル・商業施設向け事業者などの来場があった。「大手ブランド担当者が来訪し、コラボレーションのオファーがあった」という出展企業もあった。

ホールレイアウト

前年の1月展では、2015年11月のパリ市内でのテロ事件発生を受け、来場者数が減少した。しかし今回、来場者数は8万5,825人と前回・前々回の来場者数を上回り、特にフランス国外からの来場者数が前回比プラス17.4%と大きな伸びを見せた。この国際性の高さもまた、本見本市の特徴の一つとなっている。来場者の半数がフランス以外の国からであり、イタリア、ベルギー、ドイツ、英国などの周辺国にとどまらず、中東やアジアなど、世界中から来場者が訪れるため、幅広い国・地域での販路開拓が期待できる。出展企業からは、「世界各国からのバイヤーが日用品等を求めており、今後のビジネスの大きな一歩となりそうな商談ができた」「国内からでは接触困難な海外のバイヤーとのコンタクトが多数あり、海外で販売するにあたり必要な事を理解することができた」といったコメントが寄せられた。

トレンド発信の場であり、商談の場

一般に、欧州の見本市は日本の展示会と異なり、単純な展示・挨拶の場ではなく「商談の場」としての色合いが強い。フランスにおけるインテリア製品の流通の特徴として、メーカーから小売店に直卸する形態が多いことが挙げられる。スーパーやドラッグストアなどで販売されているような生活消耗品は卸会社を経由した流通がなされているものの、一般のインテリア製品(特に家具や嗜好性の強い製品)を取り扱う卸会社は比較的少ない。このため日本と比べると、現地小売店が見本市を通じて商品を探し、その場で発注する商品を決定する傾向が強い。出展企業からは、「商談から決定までのスピード感が早い」との声が多く聞かれた。仮に市場調査を目的とした出展であっても、商談準備は必須となる。海外バイヤーへのインタビューでは、「売る気のないブースでは、条件の擦り合わせ等ができず、『良い製品ですね』としか言えない」との声があった。最低限の情報として、価格、最低発注額、納期、支払い条件の4点を整理しておく必要があるだろう。

多種多様なブースが並ぶ会場の様子

また、「よりデザインやブランドの発信に重点を置いている点が他の見本市との違い」とする声もある。本見本市では主催者(SAFI)の出展審査が厳しいことは有名であるが、審査の際は、ビジュアル情報を伴うプレゼンテーション資料を求められ、商品情報だけでなく、ブランド性やそれを表現するブースプレゼンテーションが重要視される。
加えて、会場には企業のブースのほか、主催者がトレンドブースを設置。毎年のインテリア業界のトレンドを発表する。今回は「SILENCE」(静寂)をテーマに、シンプルで洗練された製品や空間演出が展示された。それぞれのブースプレゼンテーションを見て回るだけで、インテリア業界におけるトレンドや、その中での各社の戦略を掴むことができる。こうしたトレンド発信力を兼ね備えたイベントであることが、「インテリアのパリコレ」と称されるゆえんだ。

ウェブの活用が進む

会場では、従来の模倣対策のための撮影禁止表示の代わりに、Instagram(インスタグラム)などSNSのハッシュタグ(※)と撮影許可表示を掲示するブースも多く見受けられた。見本市への出展をウェブでの拡散を通じて全世界へのPRに繋げる狙いだ。商品を写真映えのする装飾と組み合わせて展示したブースや、ブランド名のハッシュタグを付けてSNSに投稿してもらうことと引換えに、商品サンプルを一つ提供するといった工夫をしたブースが人気を集めた。
また、今回からの主催者の新しい取組みとして、「MOM (Maison & Objet and More)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」というウェブ上のオンラインプラットフォームが提供された。出展企業の商品写真や情報が「MOM」サイト上に集積され、それらをウェブ上で自由に閲覧できるほか、コンタクト依頼を入れることもできる。会場での展示・商談だけでなく、会期後も継続して、バイヤーやデザイナーが商品情報のチェックやコンタクトを行なうことが可能な仕組みだ。
こうしたウェブを組み合わせた活用も出展効果を高める重要なツールとなっている。

来場者でにぎわうブースの様子

出展に向けて―「見せ方」はまず戦略ありき

メゾン・エ・オブジェに出展するためには、主催者(SAFI)の審査を受ける必要があり、ブースの配置も主催者が決定する。前述のようなホール編成と対象バイヤーの人の流れを把握したうえで、「どのホールで」「何の商品を」「誰に向けて」「どのように」アピールしたいか、自社の出展戦略を再考することが望ましい。
ジェトロが出展を支援する場合でも、本見本市では集合ブース形式ではなく、各企業がそれぞれのホールに個別にブースを構える形式となる。審査にあたっては、前述のとおりビジュアル情報を伴うブランド/商品情報およびブースイメージを求められる。主催者がプレゼンテーション資料からうまく情報を読み取れないと、審査を通過しても、希望と異なるエリアにブースを配置されてしまう可能性があるため、狙いを明確にし、伝える必要がある。ある出展企業は「同じ分野の商品が集まるエリアに配置されたが、価格帯が異なり、目指すターゲット層との商談に繋がらなかった」と振り返っている。

ブースを訪れるバイヤー

見本市出展はゴールではなく、あくまで販路拡大の手段であるが、そこで成果を上げ、次に繋げてゆくためにはしっかりとした準備が必要だ。日本製品の場合、商品原価に関税・輸送費等の諸経費を含むと欧州での価格が高額となるケースが多い。フランスの小売価格は日本のFOB価格の3~4倍程度に設定されることが多いが、これは欧州の同分野の製品の価格帯と比べてもハイクラスな部類に入るだろう。よりハイエンドのバイヤーをターゲットとする場合には、相応の品質や機能性、デザインおよびそれを伝えるプレゼンテーションが必要になる。それでも、競合し得る他の製品と比べた場合の自社製品独自の魅力を見つめ直し、入念な事前準備を経て、メゾン・エ・オブジェ出展をきっかけに海外販路開拓に成功した日本企業の例もある(参考:動画レポート「町工場が“インテリアのパリコレ”をゆく」)。ジェトロは出展の支援だけでなく、事前の市場調査や商談資料の準備についてもサポートを行なっている(参考:デザイン製品・日用品・生活雑貨の輸出)。

※ハッシュ(#):記号と特定のワードを組み合わせた文字列のこと。ハッシュタグを記入して投稿すると、そのタグ付きの投稿が検索画面などで一覧できるようになり、同じイベントの参加者や、同じ関心を持つ人の投稿が一覧で表示され、閲覧しやすくなる。

生活関連産業課 酒井 惇史

見本市データ
見本市名 メゾン・エ・オブジェ・パリ 2017年1月展
Maison & Objet Paris
開催期間 2017年1月20日(金曜)~24日(火曜)  
9時30分~19時00分(最終日は18時00分まで)
初回開催年/開催頻度 1995年/年2回(1月展と9月展)
開催場所 パリ ノール・ヴィルパント見本市会場
(PARIS-NORD Villepinte)
出展商品内容 インテリア全般、家具、キッチン・テーブルウェア、テキスタイル、ギフト、雑貨、文具、内装材等
出展者数 2,871社(内数は未発表)
来場者数 8万5,825人(うち、50%が仏国外からの来場)
入場料 45~60ユーロ(事前購入時期により異なる)、70ユーロ(当日券)
主催者 SAFI(サフィ)
住所:8, rue Chaptal  CS 50028 75442 Paris cedex 09 France
Tel:+33(0)1-44-29-02-00
Fax:+33(0)1-44-29-02-01
E-mail:info@safisalons.fr
事務局連絡先 【メゾン・エ・オブジェ日本オフィス】株式会社デアイ
住所:東京都港区南青山5-4-6 パレロワイヤル南青山308
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