見本市レポート MTAベトナム 2015

外資系製造業者とベトナム企業の商談の場 -ASEANを代表する総合機械展示会-

ジェトロ参加報告

ベトナム・ホーチミン
2015年7月7日(火曜)〜10日(金曜)

MTAベトナム

ベトナム最大級の製造業展示会「MTAベトナム2015」が2015年7月7日から10日まで、ベトナム・ホーチミンで開催された。外国からの出展が8割を占める同展示会では、外資系製造業者とベトナム企業の商談の場として活用されている。

外資系製造業者がベトナム市場を攻略する最適な展示会

「MTAベトナム」は2005年から毎年開催され、ベトナムで最も有名な製造業関連の展示会の一つとなっている。工作機械や測定機器等の生産設備を対象とした同展示会は、「JIMTOF(日本国際工作機械見本市)」と同じカテゴリーに属する展示会だ。しかしながら、その展示会の性質は大きく異なる。「JIMTOF」と並び世界的な工作機械見本市と呼ばれる展示会(米国「IMTS」、ドイツ「EMO」)では、有名メーカーがオートメーションなど最新技術を競い合い、世界を代表する製造業者の購買部門が商談に訪れる。一方、「MTAベトナム」はあくまでベトナム市場をターゲットとした展示会で、「METALEX」(タイ・バンコク)、「Manufacturing Indonesia」(インドネシア・ジャカルタ)と同じく、外資系製造業者のASEAN攻略の場として活用されているようだ。事実、「MTAベトナム」の展示会場は、ドイツ、シンガポール、台湾、韓国などの国別パビリオンで埋め尽くされ、外国からの出展が約8割を占める。

会場風景

そのような状況の中、「MTAベトナム2015」で最も高い存在感を示していたのは日本だ。工作機械のヤマザキマザック、ソディックや板金加工機械のアマダなど、日本を代表する大企業が名を連ねる他、日本の中小企業22社もジェトロが構成するジャパン・パビリオンに出展した。熱処理炉、プレス機械、治工具など、自慢の生産設備や加工技術を紹介し、ジェトロの事前ビジネス・マッチングサービスもあって、多くのベトナム人経営者が商談に訪れた。また、プレスカンファレンスでも日本のみが招かれるなど、ベトナム企業側の日本商品・技術への関心は高く、ジャパン・パビリオンの様子が30以上の地元紙に紹介された。

ベトナム販売店(ディストリビューター)発掘には出展が欠かせない

「METALEX」(タイ・バンコク)や「Manufacturing Indonesia」(インドネシア・ジャカルタ)と趣を同じくする「MTAベトナム」であるが、ベトナム市場の特徴からタイ・インドネシアの展示会と異なる点が二つ存在する。1)来場者(エンドユーザー)の業種が多岐にわたること、2)ベトナム系販売店(ローカルディストリビューター)の出展が少ないこと、である。来場者の属性は一般機械・器具(来場者の24.6%)、電気・電子部品(同9.7%)、自動車・鉄道(8.7%)、ビル・建設(4.6%)など多岐にわたり、様々な潜在顧客にアプローチできる一方でターゲットを絞りにくい。タイやインドネシアとは異なり自動車産業の集積が少なく、裾野産業が未発達なのが原因だ。販売店の出展に関しては、T.A.T社やTHIN HA社など一部の大手販売店の出展はみられるものの、ベトナム系販売店(ディストリビューター)の出展は少ない。一方で、展示会場への来場者の約1割は、在ベトナムの販売店(ディストリビューター)や代理店(エージェント)である。外国企業が販売代理店などのパートナーを発掘するには、展示会に来場するだけでは足りず、自社でブースを構える必要がある。またホーチミンに拠点を置く販売店/代理店は未だ機械・設備に関する商品知識が乏しいため、自社技術をしっかりと伝えられるよう展示内容を工夫するのが良いだろう。

会場風景

ベトナムローカル企業も先端設備購入の動き、拡張する「MTAベトナム」に高まる期待

販売店の発掘、エンドユーザーの開拓と目的が異なっていても、外国企業は一般的に、「MTAベトナム」でベトナム市場向けに仕様変更した製品や自社製品の中でも汎用性の高いものを展示する例が多い。ジャパン・パビリオン出展企業も、ベトナムでのセミノックダウン生産により大幅にコストダウンを行った製品や現地パートナーとの協業によりベトナム市場向けに改良した製品などを展示していた。昨今の円安の状況下において、現地で部分的な生産や調達を行うことで、日本からの輸出でも価格競争力を持ちつつあり、引き合い時にベトナム企業が高価格に驚くことは少なくなってきている。加えて、ベトナム大手企業は徐々に資金力や技術力を高めつつある。ある日系大手機械メーカーは、日本でも最新の機種に入る先端加工機械を展示し、「ここ数年は、ベトナムローカル企業が購入していく」と驚きを示していた。最新機械や技術を対象に「MTAベトナム2015」では技術者向けの2日間セミナーも開催されるなど技術者レベルの底上げも行っている。

会場風景

外国企業とベトナム企業との商談の場として成熟しつつある「MTAベトナム」だが、来場者数は1万人に満たず、ホーチミンからの来場が来場者全体の9割を占めるなど地域色が強い。「MTAベトナム」の発展には、魅力的な外国企業の出展を増加させることで、ベトナム全土からの来場者を確保することが欠かせない。 主催者のシンガポール・エキシビジョン・サービスのジェフリー・オー氏は、「MTAベトナム2016ではホールを拡張し、新たにホールBを設置することが決まった。日本企業のベトナム投資は年々高まっており、MTAベトナムでは更に多くの日本企業が参加することを期待している」と2016年度の来場者増に自信をのぞかせている。日本企業をはじめとする外国企業の出展増加とともに、「MTAベトナム」の更なる発展を期待したい。

(ものづくり産業課 樽谷範哉)

見本市データ
見本市名 MTAベトナム 2015
開催期間 2015年7月7日(火曜)〜10日(金曜)
9:00~17:00
初回開催年/開催頻度 2005年/年1回
開催場所 Saigon Exhibition and Convention Center (SECC)
出展商品内容 工作機械、金属加工機械、工業用精密測定機器、切削工具、ロボット・オートメーション、溶接、金型・治工具、各種製造技術・サービス
出展者数 346社
来場者数 9,587人(27ヶ国・地域)
※出展者 2,310人、プレス関係者90人を除く
入場料 無料 (ビジネスパーソンのみの来場)
主催者 Singapore Exhibition Services PTE LTD
住所:10 Kallang Avenue, #09-16 Aperia Tower 2, Singapore 339510
TEL:+65 6233 6638
FAX:+65 6233 6633
E-mail:mta@seaallworld.com