見本市レポート Ambiente2016

欧州最大のインテリア・家庭用品関連国際見本市

ジェトロ参加報告

ドイツ・フランクフルト
2016年2月12日(金曜)~16日(火曜)

Ambiente2016会場風景

インテリア・家庭用品分野で欧州最大規模を誇る「Ambiente2016」が、2月12日~16日、ドイツ・フランクフルトで開催された。ジェトロは、インテリア分野のトレンドホール「Loft」への5年連続の参加に加え、今回初となるテーブルウェアのメインホールにも参加し、欧州での販路拡大に挑む日本の中小企業17社1団体を支援した。

欧州最大のインテリア・家庭用品関連国際見本市

Ambiente(アンビエンテ)は毎年2月にドイツ・フランクフルトで開催される欧州最大のインテリア・家庭用品関連見本市である。業界を代表する大手企業から新たに欧州市場への参入に挑む企業まで、あらゆる企業が一堂に会し活発な商談を繰り広げる、欧州の消費財市場においては欠かせないイベントだ。主催者によると、今回は96ヵ国・地域から4,387社が出展し、来場者は143カ国・地域から13万7,000人を数えた。今回、ホールの拡張工事に伴い出展者数は約500社減少したものの、来場者数は増加(約2,400人)した。2015年11月のパリでのテロ事件発生を受け、2016年1月の「メゾン・エ・オブジェ」(フランス・パリ)では出展者・来場者数ともに減少するなどの影響があったが、本見本市では特に目立った影響は感じられなかった。

会場風景

本見本市の特徴として、1)開催規模の大きさ、2)商品分野の幅広さ、3)国際性の高さの3点が挙げられる。本見本市は世界第2位の面積を誇るMesse Frankfurt国際見本市会場の全11ホールを使用して開催され、総展示面積は約31万平米(東京ビッグサイトの約4倍)に上る。会場内は消費財の分野に応じてLiving(インテリア、ホームアクセサリー等)、Giving(ギフト等)、Dining(キッチンウェア、テーブルウェア等)の3つのエリアから構成される。ホールないしは階層によって、トレンドやデザイン性を意識した商品を扱う展示エリアと、機能性重視の商品やベーシックな商品を扱う展示エリアが分かれており、本見本市において、別のエリア・ホールへ移動することは、別の見本市を訪れることに匹敵するほどの差異がある。(参考:Ambiente2016会場図外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)また、来場者の50%以上がドイツ国外からであり、来場国・地域は欧州周辺国のほか、北米やアジア、中東など140ヵ国・地域以上からと、非常にインターナショナルな商談の場だ。なお、今回のドイツ国外からの来場国・地域トップ10は、イタリア、フランス、スペイン、オランダ、英国、中国、米国、スイス、トルコ、韓国であった。
本見本市へ出展することで、一度に様々な業種・規模のバイヤーとの接触機会を得られるため、広範なマーケットリサーチを行うことができ、かつ想定外のニーズ発掘も期待できる。しかしその一方で、製品ラインナップが出展エリアやホールに合致しない場合、来場者との大きなミスマッチにつながってしまうため、出展にあたっては自社製品に合ったホール選びが肝要となる。 会場内は主催者による企画展示が豊富であることも本見本市の見どころだ。主催者が業界のトレンド・テーマに合った製品をキュレーションする「Trends」の他、キッチンツールや日用品のアイディア製品を紹介する「Solutions」、若手デザイナーの製品に特化した「Talents」、スタートアップ企業に特化した「Next」、コミュニケーションデザインに優れた製品に賞を与える「German Design Award」等があり、会場内各地の特設エリアは注目を集めていた。後述するジャパン・パビリオン出品者の中にも、こうした企画展示を積極的に活用し、商品PRや来場誘致に繋げる企業があった。

日本のデザインに注目

ジェトロは、ホール11.0(通称「Loft」)およびホール4.0(Table Contemporary Design)の2ホールにジャパン・パビリオンを設けて参加し、海外販路拡大を目指す日本の中小企業18社・団体の出展を支援した。LoftはLivingエリアのうちデザイン性の高い製品に特化したトレンドホールとして、人気のホールだ。ジェトロは2012年より5年連続で本ホールにジャパン・パビリオンを設けて参加しており、ホール中央の好立地に126平米の規模で出展し、好評を博した。本見本市におけるジャパン・パビリオンそのものの認知度も徐々に向上しており、過去来訪したリピートのバイヤーが日本製品の買付けに訪れる光景も見られた。現地バイヤーへのインタビューでは、日本製品の機能性や品質の高さを評価する声のほか、伝統的でありながらモダン・シンプルでもある日本のデザインスタイルが、ドイツのデザイン文化と共通するところがあり、ドイツ人にはとても魅力的で受け入れやすいというコメントも得られた。Loftホール内では各種インテリア製品のほか、Livingエリア内ながら一部ギフト製品やテーブルウェア製品の出品も見られた。他ホールと比べると、セレクトショップやミュージアムショップ等の小売店やデザイナーなどの来訪があり、客層に若干の違いが認められた。

会場風景

また、今回初の取り組みとして、Diningエリアのメインホールであるホール4.0にもジャパン・パビリオンを設置した。ホール4.0はALESSI、iittala、Georg Jensenといった著名な大手ブランドが大規模なブースを構え、業界専門のバイヤーが多く訪れるテーブルウェアの専門ホールである。今回ホール4.0に出品したある企業は、前回までホール11.0に継続出展して着実にブランド発信を続けつつ、海外営業体制を強化して今回の会期に臨み、大手ブランドからコラボレーションのオファーを受けるなどの高い商談成果を上げた。
なお、ジェトロで海外取引経験の浅い企業の支援に注力しており、ジャパン・パビリオン出展にあたっては海外展開支援コーディネーターを配置し、事前のブリーフィング、価格表や商談資料作成等の事前準備、会期中の相談対応などの重点支援を行なった。結果、パビリオン出品者のうち2社が初の海外見本市参加ながら会期中の受注に成功するといった成果を達成した。一方で、継続して出展している企業は、過去の出展時に把握した課題に取り組みつつ、手ごたえを感じている様子が見られた。会期中のジャパン・パビリオン全体の商談件数は790件、成約金額(見込含む)は約1.1億円を計上した。

なぜ、Ambienteか?―出展効果と準備のポイント

欧州の同分野の代表的な見本市として、メゾン・エ・オブジェ(フランス・パリ)が挙げられるが、出展企業へのヒアリングによると、Ambienteではメゾン・エ・オブジェに比べ、通常の小売店だけでなく百貨店や大手チェーン、卸売業者やディストリビューターのバイヤーの来訪が多いとの声が多く聞かれた。また、Ambienteでは前述のLoftのようなデザイン性が高くハイエンド寄りの製品に特化したホールもあるが、全体として見ると、ミドルレンジの価格帯の商品が多く、中には大口取引やコントラクトビジネスを扱うようなホールもある。一方メゾン・エ・オブジェは、全体の開催規模はAmbienteより小さい(2016年1月展:総展示面積約12万平米)ものの、全ホールがデザイン重視である。中にはメゾン・エ・オブジェとAmbienteの専門ホールの両方に出展し、前者はブランド発信を主目的とし、後者を商談メインの場として使い分けているという企業もあった

会場風景

こうした大手を含むバイヤーが多く集まり、「ビジネスの場」という特色が強い本見本市では、商品の魅力を効果的に伝えることはもちろん、取引に向けた体制の整備など、事前の準備を進めてゆくことが、成功のための必須条件となる。 まず、出展計画にあたっては、前述のとおり、自社の製品に合ったホールを選ぶことが決定的に重要となる。欧州のライフスタイルの中で自社製品がどのように受け入れられるのか、目指すターゲットや価格を再度検討するとともに、可能であれば、出展前に本見本市を視察し、トレンドや他の出展者のブース、競合となる製品の価格や戦略などについて情報収集されることを強くおすすめする。なお、欧州の商習慣について、出展企業からは「欧州の方が北米よりも信頼関係構築までに掛かる時間が長い」「最低3年間程は出展しないと本腰を入れた取引に至りにくい」「大手になるほど、現地に拠点がないと取引に消極的になる傾向がある」というコメントも得られた。出展にあたっては、継続した出展計画および、長期的には現地拠点の整備を視野に入れつつ戦略を立てる必要があるだろう。
また、有力なバイヤーは忙しく、広大な会場を移動する中で、ブースに立ち寄ってもらえないことが多い。商品の魅力を伝えるため、まずは数多くの出展者の中でも目に留まることから考える必要がある。概して、商品やブランドについての認知があまりない状況では、「あれもこれも」展示してはその価値が伝わりにくいことが多い。ブース装飾にあたっては、展示する商品は厳選する、文字での説明は最小限に抑えてビジュアルを重視するなど、何をアピールしたいのかを明確にするのも一手である。その他、「日本と比べ、決定権を持ったバイヤーが多く、商談から注文決定に至るまでのスピードが速い」とのコメントがあった。こうしたバイヤーには、商品やブランドを「シンプルに」「分かりやすく」伝えるプレゼンテーション、スムーズな受注体制が必要であり、商談用資料、社内体制の確認などそのための準備を予め整えておく必要がある。
ジェトロでは、見本市出展時のサポートはもちろんのこと、事前の市場調査や、商談資料作成・準備に係る相談など、各段階に応じた支援を行なっているので、参照されたい。(参考:デザイン製品・日用品・生活雑貨の輸出

ものづくり産業部生活関連産業課 酒井 惇史

見本市データ
見本市名 Ambiente(アンビエンテ)2016
開催期間 2016年2月12日(金曜)~16日(火曜)
9時00分~18時00分(最終日は17時00分まで)
開催場所 Messe Frankfurt
(ドイツ・フランクフルト国際見本市会場)
出展商品内容 日用品・生活雑貨全般
出展者数 4,387社(96カ国・地域)(うち、日本から88社)
(2015年:95カ国、4,814社)
来場者数 13万7,000人(143カ国・地域)
(2015年:152カ国、13万4,600人)
入場料 【1日券】前売り: 26ユーロ(オンライン販売) / 当日売り: 35ユーロ
【通し券】前売り: 50ユーロ(オンライン販売) / 当日売り: 68ユーロ
(いずれもVAT含む)
事務局連絡先 Messe Frankfurt Exhibition GmbH
※日本窓口 メサゴ・メッセフランクフルト株式会社 海外見本市チーム
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Fax:03-3262-8442
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