見本市レポート CeBIT 2017

世界最大級の国際情報通信技術見本市

ジェトロ参加報告

ドイツ・ハノーバー
2017年3月20日(月曜)〜24日(金曜)

出展者でにぎわう各社ブース

世界最大級の国際情報通信技術見本市「CeBIT2017」が2017年3月20日~24日、ハノーバーの国際見本市会場ドイツメッセで開催され、世界から3,000を超える出展者が参加した。日本はパートナーカントリーを務め、安倍首相とメルケル独首相も来場し、ジャパン・パビリオンに出展した118の日本の企業・団体がデジタル技術を活用した多様な製品やサービスを展示した。

経済・社会における最新デジタル技術を披露、スタートアップも注目

3月20~24日にドイツ・ハノーバーで開催された「CeBIT2017」は、IoT(モノのインターネット)をはじめとする先端技術を活用したBtoB(企業間取引)ソリューションの世界最大級の見本市である。3,000を超える出展者のうち約1,600社は地元ドイツが占めた。本見本市のキャッチフレーズは「D!conomy-no limits」(デジタル化経済、無限の可能性)で主要分野は、第5世代移動通信(5G)、人工知能(AI)、クラウド、サイバーセキュリティー、スタートアップ、仮想現実(VR)など。今回特に注目が集まったのは、AIを搭載し、乗客の質問に答えることが可能なミニバス、工場や産業機器の検査などで利用可能なドローン、居住者に対してインフラや新たなサービスを提供するスマートシティなどの技術だ。

商談が行われる各社ブース(出所:ドイツメッセ)

世界を代表する大手企業では、ボーダフォンが、アウディとファーウェイと共に自動車が互いに事故を防止するためにコミュニケーションを取ることを可能とする通信技術LTE-V2Xが実際にどのように機能するのかを紹介した。ドイツテレコムは、機械と実際の製品の間のデータ交換のために2020年から導入予定の5G技術や、住居用と商用ビルを繋げるために利用される省エネの「ナローバンドIoT技術」などを披露。また、「eモビリティ」で知られるテスラは、電気自動車が家庭において「Powerwall」というエネルギー貯蔵システムを利用して、どのように充電できるのかを実演した。
「CeBIT2017」ではスタートアップの交流も盛んに行われた。斬新で革新的なアイデアにより産業のデジタル化の担い手として期待されるスタートアップ企業を集めたホールが用意され、セミナーやネットワーキングが行われた。フォルクスワーゲンは、優秀なスタートアップ企業にドイツ・ドレスデン工場のインキュベーション施設への入居と資金援助を提供する「Be Part of Future Mobility」と題したコンペを開催。ドイツをはじめイタリア、ポルトガルなど10のスタートアップ企業が参加した。また、IoTやデジタル関連スキルを持つ人材の雇用を求める企業と職探しをする人のマッチングやセミナーも開催されるなど、CeBITはデジタル化に関する総合プラットフォームとして機能している。

日本がパートナー国としてジャパン・パビリオンを形成

パートナーカントリーとして参加した日本は、安倍首相の来場、前年の10倍超となる118社が出展した大規模パビリオン、シンポジウムでの日本の取り組み紹介などを通じて注目を集めた。ジェトロの石毛博行理事長が日独両首相を迎え、開幕したジャパン・パビリオンは、7,200平方メートルの大規模なスペースを「ライフ/オフィス/ソサエティー」「インフラ/ファクトリー」「エレメント」の3ゾーンに分けて構成された。

118社の出展者の9割は本見本市に初めて出展した企業だ。うち中小企業は50社で、今回初めて輸出に取り組む企業、あるいは地方から世界市場に挑む中小企業なども出展者として名を連ねた。118社・団体の展示内容は、インフラや工場といった製造現場から、身近な生活や暮らし、働き方に至るまで幅広い領域にわたる。医療、介護、福祉、農業、建設から音楽、ゲーム、スポーツに至るまで、各分野で活躍する企業によるユニークな技術や製品、サービス、最先端のソリューションやアイデアが集結した。徳島県などの地方自治体も参加し、ITの活用による新たな地域活性化の提案を行った。ドイツ国内外から要人も多数来訪し、接客ロボットやリアルタイム3D技術等の展示内容に注目が集まった。会期の5日間で8,000を超える商談がジャパン・パビリオンで行われ、650件の成約が見込まれた。そのほか、ジャパンサミット(シンポジウム)、ビジネスネットワーキング、ジャパンナイト(交流行事)、ジャパン・パビリオン内に設置された共用ブースでの出品者プレゼンテーションを併催した。

ジャパン・パビリオン内の共用ブースで各社が出品者プレゼンテーション

「CeBIT2017」を機に日独連携をより推進

「CeBIT」をはじめドイツの各メッセは、国際政治の場としても活用されている。2015年3月以来、安倍首相とメルケル首相により、日独の中小企業とモノのインターネット(IoT)分野などでの連携強化が合意されているが、「CeBIT2017」は日独連携をさらに推進する機会となった。「CeBIT2017」の開会式で登壇した安倍首相は「AIをまとった機械やロボットは従来の任務のみならず健康やエネルギー供給など社会的課題を解決する使命を負っている。この実現のためには企業や国を越えた協力と協調、また新時代の教育と共通の規格が必要」と述べた。さらに、モノづくりに誇りを持ち、資源に乏しく国土が狭いながらもイノベーションと自由貿易により成長してきたという共通点を持つドイツに対して、モノがつながり技術が融合することでイノベーションが生まれ、社会的課題を解決し持続可能な社会が実現するという「ソサエティー5.0」の物語を一緒に書いていこうと提唱した。

安倍首相・メルケル首相によるジャパン・パビリオン視察

ドイツのメルケル首相は、ドイツ政府は個人の能力を開花させ、企業の規模を問わず多数のプレーヤーが活躍できるデジタル化社会に向けた取り組みを行っていくこと、ドイツは新技術へのオープンさを日本から見習うべきであること、共通の価値観を有する日本とともに新技術の規制策定などで協力していくことを表明した。

ベルリン事務所 小菅 宏幸

見本市データ
見本市名 国際情報通信技術見本市「CeBIT 2017」
開催期間 2017年3月20日(月曜)〜24日(金曜)
9時00分~18時00分
初回開催年/開催頻度 1970年/年1回
開催場所 ドイツメッセ
出展商品内容 IoT、ビッグデータ、電子部品・デバイス、ビジネスソリューション、ERP、コマースソリューション、ECM、ウェブ/モバイルソリューション、ITサービス、ITインフラ、データセンター、ビジネスセキュリティ、コミュニケーション&ネットワーク、研究開発、他
出展者数 3,000社
来場者数 20万人
入場料 公式ウェブサイトからの事前登録
当日会場で登録もしくはチケット入手
ドイツメッセ日本代表部 公式ホームページからチケット購入
主催者 ドイツメッセ
事務局連絡先 一般社団法人日本能率協会 産業振興センター ドイツメッセ日本代表部
住所:〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-2-2 住友商事竹橋ビル14階
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