2012年麗水(ヨス)国際博覧会(EXPO 2012 YEOSU KOREA)へのジェトロの取り組み

展示

「森・里・海、つながり紡ぐ 私たちの未来。」をテーマとする日本館は、入口のファサードと3つのゾーンを通じて、樹木の生い茂る森や人々の生活する里と連環して成り立つ海の恵みと、日本人の海との共生の営みを紹介しました。
2011年3月11日の東日本大震災から、日本が立ち上がり未来を向いて歩んでいる姿を、日本人の海との共生のあり方と併せて、日本館のメッセージとして、世界各国からの来場者に発信しました。
メイン展示であるゾーン2では、震災に遭い家族をなくした少年「海(カイ)」が、森や海、人々との触れ合いを通じて再び立ち上がっていく姿をファンタジックな物語として上映しました。また、ファサードの大型モニターでは、震災に際して、最初に救援隊を派遣した韓国をはじめ、世界中からの支援に対し感謝のメッセージを映像で伝えました。

ファサード森・里・海のとびら

森・里・海に因んだ日本の伝統文様を装飾として用いて、日本館のテーマである「森・里・海のつながり」を表現しました。
このファサードには55インチ×9面マルチの大型モニターが組み込まれ、東日本大震災の際に世界中から寄せられた支援への感謝の気持ちと、未曽有の災害から立ち上がり未来に向かって歩む日本の姿を映像化し、世界に向けての日本からのメッセージとして発信しました。また、メッセージ映像の合間に、森・里・海が育む日本の美しい風景なども上映しました。

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ゾーン1魚の木の「森」

ゾーン1では、日本人が大切にしてきた「森・里・海」の共生(連環)を紹介しました。 豊富な森林に育まれた栄養により日本の沿岸は世界でも有数の海洋生物が生息する「いのちの宝庫」となっています。日本人が沿岸域で海と共生する暮らしを繰り広げてきたことを伝えるとともに、その沿海で起こった東日本大震災の状況も映し出し、次のゾーン2へのストーリー展開の繋ぎの役割を持たせました。三方の壁面に配した木の形をした木製スクリーンに、江戸時代の絵師、伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう)の「群魚図」をモチーフにデザインした魚のレリーフを施しました。

ゾーン2「海(カイ)」の絵本シアター

日本館のメイン展示であるゾーン2では、ファンタジックな物語「白い自転車」を通して、東日本大震災から立ち上がる日本人の姿を力強く描きました。
アニメーションと実写、CGといった質の異なる映像を一体化させたものを、リアルな瓦礫風舞台セットと3層スクリーンを用いて立体的に上映しました。また、叙情的な音楽と心温まるナレーションを加えることで、物語に深みを与えました。

「白い自転車」あらすじ

プロローグ「カイの回想~大地震と津波発生~」

カイは、あの日のことが忘れられませんでした。
突然町を襲った大きな地震。カイの家族や家だけでなく町のすべてを飲み込んでしまった津波。それは、とても恐ろしい光景でした。

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「避難所で受けた人のやさしさ」

浸水をまぬがれた小学校の体育館では、カイと同じように家や家族を失った大勢の人たちが避難していました。ひとりぼっちで途方にくれるカイに、やさしく毛布を渡すおばさん。カイは、その日の夜、星が無数の蝶になって飛びかう不思議な夢を見ました。


「水仙の命のたくましさ、白い自転車との出会い」

久しぶりに外に出たカイは、自分の家の跡に向かいました。途中、がれきの中に花を咲かせる水仙を見つけ、生命の強さを知りました。カイは、家の跡でボロボロになった自分の自転車を見つけました。そこに一匹の蝶が現れて自転車にとまると、自転車は元どおりになったばかりか、不思議な羽が生えてカイを大空へ連れて行きました。


「森から里へ、里から海へ」

カイを乗せた自転車は大空に飛び立ちました。 カイは、震災から立ち上がろうとする人々のたくましい姿、大地一杯に咲き乱れるレンゲの花、森に木を植える漁師たちの姿を見ました。

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「海の中へ~森・里・海の繋がりへの気づき~」

海上に出たカイを、カモメの群れが海中に誘います。海に飛びこんだカイの自転車は、羽が魚のヒレに変わり海中を進んで行きました。
大津波が起きたことなど嘘のように穏やかな海の中を、たくさんの魚たちが泳ぎ回っていました。森から流れ込んだ水が、海の生き物を育て、海を豊かにしているのです。カイは、森と里と海がつながっていること、海の豊かさは森の豊かさがつくっていることを知ります。

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エピローグ「自然とともに生きていこうとするカイの決意」

森から川へ、里から海へ、カイは不思議な自転車に乗って素敵な旅をしました。自然の大きさと豊かさ、自然と人の深い関わり、災害を自然とともに乗り越えてゆこうとする人々の力強い営みを見て、カイは自分も海と生きていくことを決意します。

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ゾーン3智恵と技の「里」

ゾーン3では、日本人が古くから大切にしてきた「森・里・海」との共生、その海や森の環境を守る人々の活動と日本の先進の海洋技術を様々な視点から紹介しました。

「森・里・海」の連環による豊かな海づくり

レリーフジオラマ

季節ごとの自然の営みや川を通じて森と海が繋がる姿と、森に木を植えることで海を豊かにする人々の活動を、映像で表情を変えるレリーフジオラマを通して紹介しました。2台のプロジェクターによる映像を、デジタル技術により、直径約3mの大型円形ジオラマの複雑な地形に合わせ投影することで、ジオラマ全体の四季の移り変わりや川の流れなどを精緻に表現しました。


森と海を守る人の活動

森と海との繋がりをイメージした壁面に配されたモニターでは、企業による森や海を守る活動の様子と福島県、宮城県、岩手県の紹介映像を上映しました。また、モニターの上下に配置された10台のデジタルフォトフレームでは、「あなたの好きな森と海」をテーマに一般から募集した写真を展示し、日本の美しい自然を来館者に紹介しました。

海の未来、地球の未来

地球スクリーン

世界各地から集められた最先端の科学データに基づいた地球の表面温度の変化や地球環境の将来予測や、2011年に日本を襲った津波などのシミュレーションを直径約3mの半球型スクリーンに投射した映像で紹介しました。
2005年「愛・地球博」の公式マスコットキャラクターであるモリゾーとキッコロがナビゲーターとなって、人間をはじめ、すべての生物が関わり合い、未来に向かって、自然との共生に取り組むことの重要性を発信しました。


深海、海底への挑戦

水深6,500mまで潜ることができる有人潜水調査船「しんかい6500」をはじめ、科学掘削能力(海底下7,000m)を持つ地球深部探査船「ちきゅう」、内蔵したコンピュータによって自分の位置を計算しながら航走する自律型の深海巡航探査機「うらしま」の模型を展示しました。海底の地質や地形、深海生物の調査など、厳しい条件下で行われる世界最先端の深海・海底調査技術を紹介しました。


未来の環境配慮型輸送船

船体の軽量化や水との摩擦抵抗を減らす技術などによる消費エネルギーの低減と、風力や太陽光、LNG燃料電池を動力源として活用することで、CO2の排出量を現行比で69%減らすことを目指している、未来の輸送船の模型を映像と併せて展示しました。

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