世界の見本市ビジネストレンド リアル展示会の開催に拘ったTOKYO PACK 2021

2度目の新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言のなか、アジア最大級の包装(パッケージ)総合展である東京国際包装展- TOKYO PACK 2021が2021年2月24日~2月26日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。開催中止や延期、オンライン見本市ではなく、リアル展示会の開催に拘った公益社団法人 日本包装技術協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 理事の小籠宣幸氏と事業本部 事業部長代理の小川貴弘氏に感染防止対策や今後の展望などについて伺った。

公益社団法人 日本包装技術協会

理事 小籠 宣幸 氏(右)
事業本部 事業部長代理 小川 貴弘 氏(左)

Q1:コロナ禍でのTOKYO PACK開催を振り返って
A1:一番困ったことは、東京2020オリンピック・パラリンピックのコロナ禍に伴う延期である。
TOKYO PACKは偶数年10月に開催しているが、オリパラが2020年東京開催となったため、2021年2月に会期を変更した。しかし、コロナ禍でオリパラの開催が1年延期となり、付帯設備として東京ビッグサイトが使われるため、急遽展示会場も変更要請されることになった。南ホールと西ホールに決まり、同じ面積を確保してもらったが、会場が1階と2階の分散型となり、今までの小間割が全くできなった。当初の出展案内では東の1~6ホールを使うということで多くの出展者から応募をいただいたので、会場変更による営業損失が発生した。さらに2021年1月に発出された緊急事態宣言が3月まで延長され、印刷物も校了に近い段階での出展キャンセルも出て、コロナ禍には大変振り回された。
Q2:新型コロナウィルスの感染防止にはどのように対応したか?
A2:「新型コロナウィルス感染拡大防止 チェックリスト」を作って感染対策を行った。チェックリストの要点は、(1)東京ビッグサイトから最大収容人数が設定されたこと、(2)出展者の情報を把握するために出展ブーススタッフリストの提出をお願いしたこと、(3)出展者や来場者に気を付けてほしいことを箇条書でまとめたことである。
チェックリストの基になったのは、東京ビッグサイトと日本展示会協会のガイドライン(※)で、2020年8月に収容人数制限が設定されたことを告知する意味で、表紙に2020年8月の情報と書かせていただいた。当然罹患者が減ればコロナ対策も緩くなり、増えれば厳しくなるということも説明させていただいた。出展ブーススタッフリストは、収容人数を超えないようなオペレーションが必要なためで、収容人数から出展者の人数を引いた数が来場者の人数ということになる。出展者には何日目は何人と細かい情報を3日間分登録いただいた。さらに入退館管理というで、出展者証・来場者証にあるバーコードを会場に入る時と出る時に読み取り、収容人数を超えないようなオペレーションを実施した。来場者は来場者事前登録で情報をとり、出展者も今回は細かい情報をいただくことで、万が一罹患者が出た場合にもしっかりフォローできると考えた。また、出展者に具体的に気を付けていただきたいこと、共用スペースでの手の消毒や、検温への協力といったことを箇条書でまとめさせていただいた。ホームページや来場者招待券にも来場者向けに気を付けていただきたいことを掲載するとともに、ホームページには会期中の来場者登録状況を可視化するシステムを構築して、安心して来場いただける環境、雰囲気作りをさせていただいた。
小間割りの工夫として、TOKYO PACKは従来、中央通路を隔てて東の1~3ホールが包装資材、東の4~6ホールが包装機械とゾーンニングしていたが、TOKYO PACK 2021は敢えてカテゴリ分けをせず、集客力のあるブースを南と西に分散させた。お客様からはゾーンニングしていないので見難いという意見もあったが、3蜜を防ぐためにそういった小間割りをさせていただいた。また、来場者の動線作りとして、来場登録券も西ホールは青色、南ホールは緑色に色分けして、入館ゲートを指定させていただいた。
マスクや消毒は、セミナーなどでも対応し、お蔭様で1名の罹患者も出ずに終えることができた。
(※)東京ビッグサイト『当施設における新型コロナウィルス感染防止対策とお客様へのお願いについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます』(2020年6月10日発表)並びに日本展示会協会『展示会業界におけるCOVID-19感染拡大予防ガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます』(2020年6月10日発表)
会場の様子1
会場の様子2
Q3:リアルに拘った理由は?
A3:包装の開け易い、質感、軽さ、薄さといった五感に訴求する特性は、まだ映像だと伝え難いところがある。バーチャルに対応しきれない出展者もいるので、業界団体として企業の営業機会を担保したかった。バーチャルに置き換えるには相当な金額が掛かることもある。あとは、この展示会を行う直前まで他の主催者から延期した、中止した、止めそうだ、といった話があって、この流れをどこかで止めなければいけない。感染症の拡大防止には非常に予算を掛けたし、苦労もしたけれども、対策を徹底的に講じることによって、何としてもリアルで開催し、負のドミノをここで止めたいという気持ちがあった。
Q4:コロナ禍で会場の収容率50%以下が求められる状況になって、規模的にはどのくらい影響したのか?
A4:TOKYO PACK 2021の出展実績は267社1,353小間、前回2018が700社2,609小間なので、社数は前回の38%、小間数は同52%であった。来場登録者数と入場者数は会期を通算してそれぞれ40%台と非常に厳しい結果となった。
ただ、同じ時期に開催された他の展示会が通常期の20%~25%くらいであったのと比べると、健闘した数字ではないか。
Q5:2021年半ばになってもコロナ禍で海外から来場者が来られない状態だが、海外についての展望は?
A5:例えば毎年6月に開催されるFOOD TAIPEIの併設展であるTAIPEI PACK外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにはバーターブースを持っているが、2020年は12月に延期となり、2021年も10月に延期され、2020年2021年ともに出展していない。訪日客についても恐らく2022年まではこのままではないか。国際包装展という冠は今後も捨てることはない。大切にしていくが、訪日客の数を以って国際展だというのは難しくなると思う。訪日客が減った分は、バーチャルでカバーできたらと考えている。
Q6:従来持ち回りで行っていた大型国際展から日本が外されるなど、今までの秩序やバランスが崩れることを危惧する声もあるが、包装業界の世界的な流れはどうか?
A6:我々もWPO(World Packaging Organisation:世界包装機構)、APF(Asian Packaging Federation:アジア包装連盟)といった世界的な展示会の事務局と連携を取っている。ドイツやアメリカの展示会が非常に大きく、東南アジアなど新興国の展示会も規模が拡大している。国を跨いでの出展、出張ができない状態で、世界最大の国際包装展であるinterpack 2021を含めて中止や延期になった。この状況は暫く続くだろう。ただ、バランスが崩れるとは思わない。コロナが終息した時に、良いスタートが切れるように、ヨーロッパやアメリカに遅れを取らないように、事前の準備をこの時にして体力をつけておくことが肝要だと思っている。
Q7:五感に頼る包装業界の中で、オンライン見本市についてはどう考えているか?
A7:出展者の本音は、新製品を是非皆さんに見に来てほしいが、商売に繋がらない方には見ていただきたくないのではと考えている。だから会場に足を運んでいただいて、出展者も情報を差し上げるから、来場者の情報もいただきたいと考えている。オンラインは不特定多数の方に見てもらえるが、一方的な情報提供になるので、特許や商売上大きな問題がない部分から見せることになるのではないか。オンラインに舵を切った時には出展者も最新の情報は見せ難くなる。また、リアルの展示会に拘る方には、実際に見ていただいて、触れていただいて、感触を得て、この話をどう持って行こうか、市場調査を含めての出展もある。現状では、オンラインは五感に訴えられるところまでは進んでいないし、直ぐにオンライン見本市を展開する考えはない。一番良いのは、各団体が資金を出し合って、一つのプラットホームを作って、それぞれの団体が共有して行く形ではないか。これに対する公的な支援があればありがたい。
Q8:海外企業の日本への関心度は落ちているか?
A8:日本に対する関心度は落ちていない。ただ、2021年2月当時はコロナ禍で渡航の禁止や制限があり、会期僅か3~4日のために1カ月以上どこかに隔離滞在しなければいけないことに躊躇したのではないか。
世界最高水準にあるといわれる日本の包装技術に対する海外の関心は非常に高いと思う。人の往来、国と国の移動は制限されているなか、リアルとバーチャルの融合は当面必要不可欠だと思っている。但し、オンライン見本市で成功している事例をあまり聞いたことがないというのも事実。日本の商習慣であるボトムアップ、展示会に行って、サンプルをいっぱい貰って、その中で比較検討して、上申して、採用されていく流れは、TOKYO PACKでもよく見かける光景である。今回は感染防止対策の一環でサンプルが非常に少なかった。最後は現地現物という世界になるので、2022年10月に開催するTOKYO PACK 2022に向けて、お客様と消費者を如何に橋渡しするか、ここに拘っていきたい。
バーチャルが伸びるためには、出展者、来場者の意識が変わることが必要だと思う。出展者が一番拘るのは、会場に人が多いか、少ないか。セミナーなどをオンラインで配信すると展示会場に人が来なくなる。出展者も来場者も、如何に濃密な商売ができて、濃密な情報が取れたかで満足する形にしていかないと、主催者は頭数を集めるという呪縛から解かれず、なかなか進んで行かないと思う。
(市場開拓・展示事業部 主査 皆川 幸夫)

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