世界の見本市ビジネストレンド

「急速に拡大する上海の展示会市場」~2015年にも世界最大の展示場が全面運用開始~

中国博覧会会展総合体建設現場 高さのある展示ホール内
建設進む中国博覧会総合会

~中国・上海の展示会関係者に聞く期待と課題~

上海市の虹橋エリアに世界最大級のコンベンション・センターが間もなく誕生する。上海市を筆頭に中国の展示会関連業界は活況を呈している。上海市は、2015年までに市内の展示総面積 を1500万平方メートル/年とし、見本市の開催件数と規模ともに世界トップの都市になることを目指している。

中国博覧会会展総合体の完成レイアウト 世界最大級のコンベンション・センターの誕生
上海市の虹橋エリアに建設中の世界最大級のコンベンション・センター「中国博覧会会展総合体(CHINA EXPO COMPLEX)」が2015年6月に全面運用を開始する。同総合体は四つ葉のクローバー型の展示施設で、展示場のほかホテルや商業施設を含め、延べ床面積が147万平方メートル(うち、地上建築面積127万平方メートル)、展示可能面積は合計50万平方メートル(室内:40万平方メートル、屋外10万平方メートル)を誇る。これは、日本最大の展示場である東京ビッグサイト(展示面積は約80,660平方メートル)の6倍以上の面積で、完成後は、ドイツ・ハノーバー国際見本市会場(Deutsche Messe AG,)を上回り、世界最大の展示場となる見込み。中国商務部と上海市政府の国家レベルのプロジェクトとして建設が進んでおり、単一建築としても中国最大級の建造物となる。

(※注1)ここでの「展示総面積」とは、実際に展示された面積のことをさす。ここには主催者などが展示スペースとして使用した面積(販売していないスペース)も含まれている。

内外からのアクセスなど利便性の高い施設の建設進む
ジェトロ上海事務所が、同総合体の建設現場を2014年1月中旬時点で視察したところ、躯体はほぼ完成していた。上海虹橋国際空港や虹橋鉄道駅まで車でおよそ10分の距離にあり、高速道路にも接続。3本の地下鉄が乗り入れる予定で、長江デルタの主要都市とも鉄道で2時間以内のアクセスとなる。クローバー形の4枚の葉が其々二つの展示場になっており、ホール内は最大約32mもの高さがあり、大型機械の展示も可能だ。中心には円形の商業施設エリア(6階建て)を配置し、飲食店や商業施設、映画館やジムといったエンターテイメント施設も誘致するという。このほか、ホテルやオフィス、常設展示エリアなども確保され、利便性が非常に高い施設になると感じられた。また、環境問題にも配慮し、太陽光発電やエコ素材なども採用しているという。

発展する中国の展示会市場でトップを目指す上海
商務部のサービス貿易商貿サービス業司が2013年7月12日に発表した「中国会展業発展報告」によると、2012年に中国全土で開催された5,000平方メートル以上の展示会は7,189回、展示総面積は8,980万平方メートルに達する。中でも、BtoBの展示会が全体の70%を占め、規模も年々拡大。10万平方メートル以上の大型展示会も90以上だという。5,000平方メートル以上の展示会場は全国で316カ所、展示面積の総合計は1,237万平方メートルに上る。
経済効果も大きく、2012年の中国の展示会市場は約3,500億人民元(前年比16.1%増)、国内GDPの0.68%、第三次産業の1.53%を占める。就業者数は延べ2,125万人(前年比7.3%増)、関連産業への波及収益も3兆1,500億元(前年比16.7%増)に達する。
特に、展示会が集中している地域は北京、上海、広州の三都市で、三都市で開始された展示会は1613(前年比16.9%増)、全国の22.4%を占め、展示面積合計は2,500万平方メートルで、全国の27.8%に達する。この中でも上海は、開催された展示会数で全国トップだ。

上海市の展示業界団体である上海市会展行業協会の龚維剛常務副会長 展示業界関係者の期待と上海が抱える課題
世界最大級のコンベンション・センター誕生に沸く上海の状況について、当地の展示業界関係者に話を伺った。

上海市の展示業界団体である上海市会展行業協会(※注2)の龚維剛常務副会長
(上海の国際性や、市場性・収益重視の姿勢と付帯サービスなどの充実が強み)

『上海市の展示業界は急速な成長を遂げており、ここ数年は毎年10~20%で成長している。現在、市内には11の展示場があり、展示可能面積は50万平方メートル(室内面積43万平方メートル)。2013年は798の展示会が開催され、展示総面積1,200.8万平方メートル/年を記録した。上海市は、その経済効果から、展示業界を非常に重視しており、市政府が「上海市会展業(展示・コンベンション業)発展十二次五カ年計画」を策定。2015年までに展示総面積を1,500万平方メートル/年とすることを目標としており、これが達成できれば、見本市数・開催規模ともに世界トップの都市となる。また、中国博覧会会展総合体を建設しても、展示会場が過剰になることはない。実際に、これだけ多くの展示場があっても上海の展示会場はまだスペースが不足しており、展示料金が高騰していることが建設の背景にある。まだ拡大する展示ニーズに応えきれていない状況だ。
上海市は、中国の他都市と比べ、政府支援の割合が低く98%の見本市は市場ニーズ・収益に基づき開催されている。また、国際化の度合いも他都市とは大きな差がある。見本市への海外企業の参加率は平均で25%に達す。また、他地域で数多く開催されているような政府主導の大規模総合見本市だけではなく、各業界・各専門分野に細分化された専門見本市が増えていることや、関連する法制度の整備も進んでいる。展示業界の関連産業チェーンや付帯サービスが整備されていることも強みだ。一方で、業界全体をレベルアップするための課題としては、企画・管理人材の確保や養成が挙げられる。また、エンターテインメント関連の展示会も不足しており、これは日本のノウハウも活かせる分野だと思う。』

(※注2)上海市会展行業協会は中国の展示業界で最大の業界団体であり、中国企業のみならず日系を含む外資企業もメンバーとして登録されている。UFI(国際見本市連盟)のメンバーでもある。会員数は約500社、上海市社会団体管理局からも優良組織(5A)として認定されている。

村山(上海)展示服務有限公司 鈴木勇亮氏
(上海がMICEのハブとして、多様な展示会開催されることを期待)

『世界最大級の展示会場が上海に誕生することを、展示業界に携わる者としてとても嬉しく思う。展示会場が大きくなれば、規模拡大も期待できる。浦東エリアにある市内最大級の上海新国際博覧中心で開催されているオート上海(上海モーターショー)などの展示会は、出展者数が多くスペースが不足するという事態に陥っており、多くの企業がビジネスチャンスを逸している。
上海は、他の地方と比べ施工会社の施工レベルは高いが、展示手法がパターン化してきており出展企業同士での差別化が難しくなっている。ドイツなどヨーロッパ各国では常に新しいアイディアや斬新な手法を取り入れており、上海においてもこうした国のトレンドやブースデザインを参考にしている。
上海はMICEの「E」の Exhibition(展示会)がもっとも多いが、Meeting, Incentive, Conventionも増えてきており、今後はMICEのハブとして大きな期待をしている。特に、中国博覧会会展総合体は、空港、駅、市内からのアクセスが整っており、展示会成功の鍵である来場者誘致に強みを発揮すると思われる。上海は、ビジネスチャンスが他都市と比べ多く、地方都市では成立しづらい専門分野に特化した展示会も増えており、展示市場は今後も成長していくだろう。特に、B to Cの娯楽性溢れる展示会が増えれば、より多様な展示会市場が生まれると思う。展示会の特性・強み・特長をはっきりと打ち出した展示会が増えてきたのは望ましいことであり、市場成長のために来場者誘致と需要の拡大の場として、中国博覧会会展総合体には期待している。』

昭栄(上海)展覧服務有限公司 林良治総経理
(世界のMICEハブとしての上海に期待しつつ過当競争による質の低下を懸念)

『中国博覧会会展総合体の開業は、中国の展示市場の発展に大きく貢献すると思われ、上海の優位性がより高まると考えられる。展示サービスを提供する企業としても、新たな展示会場の開業により、多くのビジネスチャンスの創出に期待している。上海は、APECや上海万博等、大型の展示会やイベントが毎年開催され、世界中から多くの来場者を集めている。展示業界においては、上海のブランド価値が、世界のトップレベルになりつつとあると感じている。
上海は、今後も国際見本市の増加が見込まれ、アジアのみならず世界のMICEハブとしての存在感を増した国際都市になっていくと予想している。ただ、中国市場において、上海の優位性がより顕著になる一方、他地域との競争もより激化すると予想される。他地域でも同様の展示会が開催され、展示会の数が過多になると、展示会自体や、来場者・出展社の質の低下を招く恐れがあり、政府や主催者が連携し、同業同種の展示会の統合やその他業種の展示会との共同開催などを図り、費用対効果の向上を期待したい。』

中国の展示市場をけん引する上海への期待
上海市会展行業協会によると、2014年1月9日に中国内外の約60の展示関連企業の経営者が参加し開催した「2014国際会議展示会業CEO上海フォーラム」において、上海市会展業促進センターが行った業界調査の内容が発表された。同調査では、海外の展示企業経営者の75%が、上海を「将来的に業務拡大する都市」として挙げており、中国国内経営者の90%以上が上海を「重点マーケット」と認識しているという。上海市政府も、展示業界をより規範化するため「上海市展覧業管理弁法」の制定を準備しており、展示業界の環境整備に努めている。 UFIの統計によれば、2010年時点で中国の展示総面積は1,300万平方メートルを突破し、アメリカに次ぐ展示大国となっている。一方で、展示会の数だけが重視され、質を伴っていないものも多く、展示会の登録業務や展示会運営能力はまだまだ不足している。良質な展示会も多いとは言えず、北京商報の報道によれば、2012年末時点で、中国でUFI認証を受けた展示会企業は約80で世界トップ。しかし、UFI認証を受けた展示会の数はわずか58と、ドイツの半分にすぎない。
ここ数年で中国の展示業界は急速に発展しており、世界の展示市場でも一定のシェアを占めるようになってきているが、依然として基盤は弱く、業界標準や統計なども完全ではない。人材教育も進んでおらず、ハイレベルな専門人材の育成や公共インフラサービスの確立など、課題も多い。展示場の規模拡大とともに、上海が業界をリードし中国が名実ともに世界最大の展示会市場となるか、注目が集まっている。

(上海事務所 吉田悠吾、洪佳莎)

参考

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