復興の想いを込めた“ミガキイチゴ”をインドへ

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代表取締役社長 岩佐 大輝 氏

農業生産法人株式会社GRA

日本語ができ信用できる人材を獲得でき、第三者ならではの意見をビジネスプラン作成に活かせました。

宮城県亘理郡山元町 <海外進出> 対象国・地域:インド

世界と戦える第一次産業の会社を目指して

「こんなに甘くておいしい生のイチゴは食べたことがない」 ‐ 2013年3月、インドで当社が生産したミガキイチゴを試食した、ムンバイの高級ホテルのシェフの第一声です。生産施設やサプライチェーンが未発達なため、インドのイチゴは品質が良くなく、固くてカリカリと音がするのが当たり前でした。

情報通信技術(ICT)を活用した当社の栽培システムは、ビニールハウス内で一定の気温を保ち、土壌の代わりにヤシ殻を利用した養液栽培であるため、気候や土壌による影響を受けずに農作物を生産できるのが特徴です。東日本大震災の津波による塩害に苦しむこの地でも、翌年には多くのイチゴを収穫でき、「これなら海外でも」と手応えを得ました。日本がTPP参加の是非で揺れる中、今後は農業も国際競争の中で勝ち抜いていく必要があり、第一次産業で世界と戦える会社を作りたいという思いもありました。

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ヤシ殻を利用した養液栽培によるイチゴの生産現場

世界と戦える第一次産業の会社を目指して

現地調査を経て、日照時間や温度などのデータから「インドでも栽培可能」という仮説が立ちました。2012年6月にはジェトロの情報提供を踏まえて農場建設予定地を決め、10月には栽培用ビニールハウスを建設して栽培を開始しました。順風満帆なようですが、インドならではの難しさも感じました。たとえば、「建設資材のミリ単位の違いは誤差のうち」と言われたり、年長者を敬う風土から、若い栽培員の指示に従ってもらえなかったりする困難に直面しました。

こうした課題に中根専門家からは様々な助言をもらいました。たとえば会計事務所選びでは、日本語が通じ、日本的な考え方を理解した上で実務ができる会社を紹介してもらい、2013年12月に現地法人の立ち上げを実現できました。

また、プネ市内で店舗開設を検討する際は、ジェトロと関わりのある日本語に精通したインド人の協力を得て、場所や建設業者を選定しました。第三者的な視点で、具体的なビジョンを示してもらえるので非常に助かっています。現地では毎日水質が変わるといった苦労も多いですが、だからこそ粘り強く取り組む意味があります。最近では、現地で生産したイチゴをプネ市内の外資系ホテルに出荷するなど、大きな進展がありました。このビジネスを成功させ、海外での農作物生産販売のロールモデルを作っていきたいと思っています。

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専門家 中根 源彦

大手自動車メーカー出身。欧州販売会社副社長などを歴任し、海外販売担当幹部として企業経営に携わる。2008年からの4年間はジェトロの対日投資アドバイザーとして外国企業の日本誘致に尽力。温厚かつ謙虚な人柄で、支援企業からの信頼も厚い。

<ジェトロ専門家インタビュー>

経営者の意思決定は常に“孤独” 慎重なアドバイスで先導役に

私は現役時代に世界の大手自動車メーカー等と、60カ国以上の国々で仕事をしてきました。現在は、インド、タイ、ベトナムに進出する複数の企業を支援しています。東南アジアは日本的な価値観が通じる部分もありますが、インドはやや毛色が違います。北部と南部では人々の価値観が大きく異なり、貧富の差やカースト制度など社会構造も複雑です。また、欧米留学経験を持つマネージメントクラスの人々とのコミュニケーションでも、難しい局面では早口のインドなまりの英語とのやりとりとなり、日本人には対応が難しくなることもあります。従って、パートナー企業や会計事務所を選定するときは、解決に尽力してくれる日本人、または日本語に精通したスタッフが在籍していることを重視するようにしました。
経営者の多くは意思決定をする際、常に孤独な状況に置かれます。この会社と組めばどのようなメリットが得られるか、大企業とどこまでの関係を構築するかなど、自身の経験を踏まえ、なるべく客観的な視点からアドバイスするよう心掛けています。競合他社の参入対策も含め、今後も幅広い選択肢を提示し、現地でスムーズに事業を運営するための先導役でありたいと思っています。

進出段階と支援内容

投資検討段階 意思決定段階 拠点立ち上げ段階 拠点操業・開業拡張段階

  • 現地法人設立時の会計事務所の選定
  • 日本語が堪能で、優秀な現地スタッフの紹介

農業生産法人 株式会社GRA

宮城県亘理郡山元町
東日本大震災からの復興を目標に掲げて2012年1月に設立。上位品質のイチゴは“ミガキイチゴ”としてブランド化、高級販路を築いた。最先端の情報通信技術(ICT)を応用した生産管理システムを導入し、2013年インドでの栽培実験に成功。現地高級品市場での生産販売により、農村の雇用機会創出や所得向上も目指す。
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2014年3月

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