フンドーキン醬油株式会社

現地パートナーと二人三脚で取り組むマレーシア市場開拓

フンドーキン醬油株式会社は大分の大手調味料メーカー。国内での製造に加え、海外にも積極的に販路を拡大している。特にムスリム(イスラム教徒)市場を重視しており、海外戦略子会社となる株式会社AFCを通じてマレーシアにてHalal(ハラール)製品の開発・製造にも取り組んでいる。小売り販路に加えデジタルマーケティングツールを活用したWEB直販も積極的に活用している。

大分県臼杵市 ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

展開国・地域:
マレーシア他
取扱製品:
醤油・味噌・ドレッシング・白だし・醸造酢・もろみ・カボスぽん酢・焼肉のたれ・めんつゆ・柚子こしょう・その他


海外輸出の検討からマレーシア進出に至る過程

当社は、創業164年を迎える大分県の調味料メーカーです。これまで国内市場を中心に事業を展開してまいりましたが、国内人口の減少や市場の成熟化を背景に、海外展開の可能性を模索してきました。 これまでにも日本国内の輸出商社を通じて海外に弊社製品を供給してきた実績はありますが、実際にどの国でどのように販売されているか把握できないケースも多く、自ら主導して市場を開拓する輸出はありませんでした。また、情報収集を重ね輸出の検討をするなかで、物流コストや現地ニーズとのギャップなど様々な課題に直面し、「日本で製造した製品をそのまま輸出するだけでは、持続的な海外展開は難しい」という結論に至りました。
一方で、現在、東南アジアにおけるハラール食品市場は、ムスリム人口の増加、所得向上、健康意識の高まり、ハラール認証制度の普及、観光業の発展などを背景に急速に拡大しており、特にマレーシア、シンガポール、インドネシア、タイなど主要市場として成長しています。実際に現地に足を運び、活気ある市場の成長性や、ハラール製品への高い関心を目の当たりにしました。
そうした経験を踏まえ、当社は海外市場向けの商品を、現地で製造・販売することが必要であると判断し、進出先として選んだのがハラール食品市場のリーダーであるマレーシアです。

弊社では、マレーシア市場への展開を模索する中で、信頼できる現地パートナーとの提携が成功の鍵になると考え、手探りながらも候補先を探してまいりました。その中で、マッチングしたのが、マレーシアの調味料メーカーYakin Sedap Sdn. Bhd.でした。
Yakin Sedap社は、長年にわたりマレーシア国内で、弊社同様液体調味料事業を展開し、高いブランド力とネットワークを持つメーカーです。ハラール認証やBRC認証(英国発祥の食品安全規格)など国際認証を取得し国内外メーカー向けOEMで培ってきた品質管理ノウハウに長けており、日式(日本風)調味料領域への展開にも高い関心を持っていたこと、またオーナーの価値観や人柄含め当社と非常にフィットしたことが決め手となりました。双方ともに「息の長いビジネス」を志向しており、現在では5年以上にわたる良好な関係を築いています。
このご縁をもとに、2019年に国内にて当社の海外戦略子会社となる株式会社AFC、またマレーシアにてAFCとYakin Sedap社による合弁会社「Fundokin Yakin Sdn. Bhd.」を設立し、胡麻ドレッシングや照り焼きソースといった日式調味料の現地製造・販売を開始いたしました。海外展開におけるパートナー探しは、戦略的な視点と同時に「ご縁」や「タイミング」も大切だと改めて実感しております。

日本らしさを押し出しつつ、現地パートナーと取り組むローカライズ

マレーシアは、国民の約6割がムスリム(イスラム教徒)であり、ハラール認証の有無が購買において非常に重要な判断基準となっています。特に、JAKIM(マレーシア・イスラム開発局)によるハラール認証は、国際的にも信頼性が高く、インドネシアやブルネイ、さらには中東諸国など他のムスリム国家への輸出においても有効な認証とされています。
しかしこのJAKIM認証の取得は、ハラール性を担保するための厳格な要求事項をクリアする必要があります。使用原材料の厳格な管理、製造工程の整備、工場運営や衛生管理に至るまで多岐にわたる要件を満たす必要があり、弊社単独で取得・運用するのは非常に難しいのが現実でした。
こうした状況の中で、合弁会社Fundokin Yakin Sdn. Bhd.を設立し、マレーシアにおける製造・販売を開始したのですが、Yakin Sedap社の現地での経験と知見、認証取得プロセスに関するサポートがあってこそ、JAKIMハラール認証商品の上市に至ることができたと考えております。
現在販売中の商品は、胡麻ドレッシングや照り焼きソースなど、弊社の技術を生かした日式調味料が中心で、すべてJAKIMハラール認証を取得しています。味付けは現地の嗜好に合わせて辛味を強調したものもあります。日本から輸出したフンドーキン製造のハラール醤油や、日本で焙煎された香ばしい胡麻と胡麻油を使用することで、風味や品質にも妥協しない”Made in Malaysia, Made by Japan”設計を行っています。
さらに、パッケージには英語・マレー語・日本語の3言語で商品名を表示し、日本ブランドの商品であることを明確に伝えるなど、安心感とブランド価値の訴求にも取り組んでいます。
「マレーシア国内のムスリム市場での信頼獲得」、「他のASEAN・中東諸国への輸出拡大の足掛かり」、「原価・物流コストの削減、供給スピードの向上」といった多くメリットがあり、マレーシアでのハラール商品製造は、今後のグローバル展開を支える重要な基盤と考えております。

英語・マレー語・日本語の3言語のパッケージ

キービジュアルでムスリムの消費者にハラール食品であることをアピール

マレーシアでの販路開拓では、スーパーやコンビニエンスストア等の小売店での販売に加え、大手ECサイトのShopeeやFundokin Yakinが自社で運用するインスタグラム、TikTokなどのオンラインプラットフォームを通じたWEB直販を積極的に活用しています。予想以上にWEB直販の売上が伸びており、小売りでの販売が不調な場合でも安定した収益源があるのはありがたいですね。
先日はTikTokのライブコマースに当社社員が出演し、現地の司会者の方との掛け合いで日本ブランドであることをアピールしてきました。2~3時間の配信に視聴者が入れ代わり立ち代わり閲覧します。トライアルでしたがある程度の量が売れ、手ごたえを感じました。ターゲットは日本に興味関心がある20~30代の女性で、実際に当社SNSのフォロワーもその層が多いです。今後はフォロワーを増やしつつ、より面白い配信を届けることで安定した販売につなげたいと思っています。SNSやライブコマースについても、現地の文化や習慣を踏まえ、Yakin Sedap社より適宜アドバイスをもらい、またコラボレーションも行っています。

今後は、マレーシアを起点に中東やアフリカ北部など、ハラール市場の拡大が見込まれる地域への輸出を強化していきたいと考えています。インターネットを活用した時間・場所にとらわれない販売戦略と、現地ニーズに応じた商品開発を通じて、当社の商品を世界に届ける挑戦を続けていきます。

県やジェトロの支援も利用し販路開拓

更なる販路開拓に向けては、県やジェトロの支援を活用しています。昨年度、大分県貿易協会のテストマーケティング支援を受け、香港市場での試食販売で味噌の反応を確認しました。現在日本から香港に多く輸出されている味噌は信州系の辛口味噌。対して九州で当社が製造する味噌は麹を多く使った甘口の味噌であり、中華系の消費者からはマイルドさが好評だったことから、差別化が図れるのではと期待しています。
当社の商品だけではなく、一緒に出展した他大分企業の商品の反応も参考になります。都市部ではゆず風味、ファミリー層が多い郊外ではだしを使った商品が人気を集めるなど、地域ごとの嗜好の違いも把握できました。 ジェトロの支援ではBtoBマッチングのJapan Streetやサンプルショールームを活用し、バイヤーとの商談機会を得ています。価格面の課題から取引には至っていないものの、味噌への関心は高く、今後の展開に期待を寄せています。Japan Streetは自社の登録状況がすぐ確認できないのが不便だと思っていたところ、最近サプライヤーマイページにログインして内容確認ができることを知りました。更に情報のブラッシュアップを進めていく予定です。

フンドーキン醬油株式会社

大分県臼杵市大字臼杵501
https://www.fundokin.co.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表取締役社長:小手川 強二
設立年:文久元年(1861年)
従業員:700名(フンドーキングループ)
事業内容:醤油・味噌・ドレッシング・白だし・醸造酢・もろみ・カボスぽん酢・焼肉のたれ・めんつゆ・柚子こしょう等の製造販売

2025年7月

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