吉澤指物店

伝統と現代の間にある、オンリーワンのモノづくりで海外へ

もみ殻や麻、竹、砂など地元の天然素材と漆を組み合わせ、食器の製作から空間デザイン、メンテナンスに至るまでクライアントの要望に応じた柔軟なモノづくりを提案している吉澤指物店。2021年度にTAKUMI NEXTに参加し、今では海外の主なターゲットである料理人やデザイナーとのネットワークを着実に築いている。2023年度に改めて採択され、2度目の参加となる。

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展開国・地域:
米国、英国、イタリア、フランス
取扱製品:
指物技術と漆塗りを使ったテーブルウェア・家具等の製造・販売

吉澤指物店3代目 吉澤 良一 氏(左)、4代目 吉澤 真 氏(右)

TAKUMI NEXTをきっかけにブランディングを再考

もともと海外展開はハードルが高いものと思っていましたが、沼田市の事業で成都を訪れた際に、バイヤーが実際の製品を見て会話してくれたことで思いのほか商談が進み、海外を視野に入れ始めました。言葉の問題もあって海外は難しいと思っていたのですが、商品を見てもらうことを通じて、言葉の壁を越えて「モノが勝手に(バイヤーに)しゃべりかけてくれる」体験をしたのです。そこで出会った当時のジェトロ群馬の所長から紹介されたグローバルビジネス実践塾に参加し、TAKUMI NEXTのことを知りました。参加してみると初めて聞く言葉ばかりで覚えることが多かったですが、メンタリングなどに参加する中でブランドを「誰に、どうやって伝えるか」ということを意識して考えるようになりました。特に海外では、自らのブランドを能動的に発信していくということが大事だとTAKUMI NEXTに参加して改めて認識しましたが、自分の強みを磨き、ブランドを伝えていくいう意識は、国内外に通じるスキルだと思います。それからは、闇雲に取引先を増やすのではなく、ターゲットをしっかりと定め、お互いのクリエイティビティを高め合っていける相手と関係性をつくっていくことで、自らのブランドを確立する、とブランドの方針を固めることができました。

竹マグ
石粉や錫、吹き漆などで仕上げた吉澤良一のオリジナル作品シリーズ。一つ完成するまで概ね50~60行程を要する。

パートナーとの関係性の中でブランド価値を見出していく

特に海外に展開していくうえでは、ものをそのまま提示するのではなく、つくっている本人が相手の求めていることを相手とのコミュニケーションの中で捉え、「自分にしかできないこと」を提案していくことが大事だと思っています。例えば、海外では食洗器を多用するというパリのシェフからの声に応え、今まで漆仕上げのみだったお皿や竹マグにガラス塗料を塗り、食洗器に耐えうる強度に改良しました。こうした相手からの要望は基本的に断らず、むしろその要望の中に自分たちを進化させるヒントがあると思っています。
TAKUMI NEXTでオンライン商談を初めて経験し、30分という短い時間の中で何を相手に伝えるべきか、いかに自らの価値を伝えるのかを学ぶことができました。今ではネットで検索すれば代替品はいくらでもあるため、つくっているモノにもエッジを立てていくことを大切にしています。こうしたブランドとしての世界観を伝えるため、ウェブサイトやSNSでのみせ方については、日英の言語対応や発信内容に応じた公私のアカウントでの切り替え含め、一層力を入れていきたいと思っています。手作りで大量生産ができない個人だからこそ、安売りせずとも理解してくれる人と、リアル含めてコミュニケーションをしていく方法が自分には合っていると感じています。

もみ殻塗り箸
漆を塗り重ねて固めた後に、炭化させたお米のもみ殻を蒔き、更に漆を染み込ませながら固めて色漆を塗って仕上げる。

横のつながりを深めることでお互いの魅力を高め合っていく

TAKUMI NEXTは反省と学びと気づきの場所だと思っています。初めて参加した2021年はコロナ禍でメンタリングもすべてオンラインの開催でしたが、今年は7月の対面キックオフミーティングに参加することができ改めて初心にかえりました。同じ世界を目指している日本のモノづくりに携わる方々とお互いに魅力を高め合っていけるので、こうした横のつながりを深める機会は重要だと思っています。お互いを知っていくことでコラボなどの形で新たな商品が生まれ、掛け算で海外に仕掛けていくチャンスもあります。TAKUMI NEXTをきっかけにブランドを考え直し、ターゲットをより具体的に特定しようと輸出大国コンソーシアム事業に申し込んだ経験があるので、こうした自分たちの変化や学びを他社にも共有していきたいです。

工房に併設されたショウルームの様子

ジェトロ担当者からの一言コメント

同社の製品は異素材をクリエイティブに組み合わせ高い芸術性がありつつも、決して独りよがりなアートピースではなく、使い手の創造力も掻き立てられる逸品に感じます。それは吉澤さんの、他者とのコミュニケーションや自然との対話の中で生まれるものを大切にする姿勢が投影されているためだと思います。伝統的な趣を残しつつも様々な学びを吸収し革新していく同社の挑戦を、今後もサポートしていきたいと思います。

吉澤指物店

群馬県沼田市
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代表:吉澤 良一
設立年:大正1年
事業内容:指物技術と漆塗りを使ったテーブルウェア・家具等の製造・販売

2023年11月

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