協業・連携事例アジアゲートウェイ株式会社

ICE(米国)×アジアゲートウェイ

ーカーボンニュートラルに挑むパートナーシップー
クロスボーダー協業はアジア企業のネットゼロを実現するか

所在地
東京都千代田区
事業内容
スマートシティ、ビッグデータ、ゼロエミッション車、再生可能エネルギーを推進するコンサルティング企業
協業・連携内容
業務提携
分野
カーボンニュートラル

インターコンチネンタル取引所(ICE) サステナブルファイナンス事業開発責任者 イアン・スタナード氏(左)
アジアゲートウェイ株式会社 創業者兼代表取締役社長 木村 友則氏(右)

2015年、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で、世界192カ国と欧州連合(EU)は、今世紀半ばまでに地球の気温上昇を抑え、温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロを達成することで合意した。脱炭素化の取り組みはEU諸国がリードしてきたが、日本を含むアジア勢も追いついてきており、各国で環境規制が強化されつつある。G20の要請を受けて設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、気候変動関連のリスクと機会に対して、金融機関や民間企業がとるべき対応や情報開示の指針を示しており、2022年12月の時点で、世界全体では4,075、日本では1,158もの企業や機関が賛同を表明している。
2021年1月、英国のUrgentemと環境コンサルティング事業を手掛ける日本のアジアゲートウェイが、新規事業創出に向けて業務提携した。気候リスク分析プロバイダーのUrgentemは、2022年7月に米金融取引所大手のインターコンチネンタル取引所(ICE)による買収を発表し、その傘下に入った企業だ。そんな両社に、提携の経緯、協業事業の内容、今後の展望などを伺った。

今回の協業を決めた経緯と、外国企業と組む狙いを教えてください

木村:私たちは脱炭素化を推進する企業として、TCFDで気候変動の影響が大きい事業領域を明確にしたうえで、GHG排出量削減のための日本の国際協力制度である二国間クレジット制度(JCM)でどのように脱炭素化を図るか、顧客企業に提案しています。2017年以降、企業の脱炭素化への動きが盛り上がりを見せ、これは日本の製造業にとっては死活問題になると考えました。カーボンクレジット、カーボンアカウンティング事業に取り組むなかで連携できるパートナーを探していたところ、ジェトロのオープンイノベーションのためのプラットフォーム、J-BridgeでUrgentemの存在を知り、すぐに面談のアレンジを依頼した次第です。

スタナード:気候変動に関する情報開示と報告は、数年のうちに急務になると見込まれることから、私たちの持つデータやサービス、専門知識を日本企業に提供する機会も増えるだろうと考えていました。気候変動対策については、アジアゲートウェイが日本やアジア地域で強力なビジネスモデルを築いており、今後の事業展開を考えたときに、提携することは理にかなっていると思いました。アジアゲートウェイという日本のパートナーを通してアジアに拠点を設けたことで、アジアでの事業のポテンシャルを実感しています。

木村:気候変動対策に関するさまざまな活動において、英国は日本の先を行く存在です。ICEの持つ、気候変動や科学に関するグローバルなネットワークとつながることで、日本企業にはない力が発揮できると思っています。また、上場企業の環境対策に関する情報を正確に把握し、投資家に提供するというICEの取り組みは、時代の最先端を行くものであり、その点でも素晴らしいと思っています。

協業事業の内容と展望を教えてください

スタナード:脱炭素化に取り組む企業を対象に、コンサルティング事業を展開してくための準備を進めています。ICEが専門知識やデータ、気候変動関連組織とのネットワークを、アジアゲートウェイがクライアントへのリーチやコンサルティング事業のノウハウを、それぞれ提供しています。アジアで関連データを取得し、データ解析やリスク分析の高度化などに活用するという狙いもあります。

木村:TCFDの観点から、日本、東南アジア、モンゴルの企業に、気候変動による機会とリスクに関する戦略立案コンサルティングを提供し、JCMを活用した具体的な脱炭素化プロジェクトを立ち上げる際に支援することを計画しています。例えばモンゴルでは、風力発電や太陽光発電のプロジェクトを進めており、先日も、モンゴル貿易開発銀行およびゴロムト銀行と、脱炭素化推進とJCM案件化に関する基本合意書を交わしたところです。日本企業の例としては、全日空と提携契約を結んでおり、省エネやエネルギー効率化に向けた取り組みを支援しています。

スタナード:具体的なプロジェクトをベースに、自分たちのブランディングやビジネススタイルを確立していきたいと考えています。とにかく、これまでやってきたことを積み重ねていくことが大事。新しい取引先と一緒に仕事をするのを楽しみにしています。

モンゴルにおけるゴロムト銀行とのプロジェクト。建設中の太陽光発電設備

モンゴルにおけるゴロムト銀行とのプロジェクト。建設中の太陽光発電設備

モンゴルにおけるゴロムト銀行とのプロジェクト。変電所の模型

モンゴルにおけるゴロムト銀行とのプロジェクト。変電所の模型

ジェトロのJ-Bridgeを利用してよかったことは何ですか?

スタナード:ジェトロのチャンネルを利用するメリットは、日本特有の情報、知識、コネクションの面で大きな助けになるということです。Urgentemのようなスタートアップや小企業が日本のパートナーを見つける際に、相手との接点になってくれるのはありがたいことです。

木村:J-BridgeがなければUrgentemのような企業とは出会っていなかったので、ジェトロは大きな存在です。私たちの地球は1つしかありません。このような国境を越えたパートナーシップにさらにさまざまな国の企業が関与することで、1つのチームになって取り組んでいければいいと思っています。

企業情報

ICE | Urgentem

GHG排出量のデータ解析、気候リスクの分析ソリューションやコンサルティングを提供する企業として、2014年に英国で設立。2022年には、ニューヨーク証券取引所などを傘下に持つインターコンチネンタル取引所(ICE)に買収され、同グループに加入。現在は、ICEのサステナブルファイナンス事業の一翼として、業種・業界別に5,500社以上のGHG排出量データを収集し、金融業界の顧客向けにそうしたデータの提供や気候リスク分析を行う。

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アジアゲートウェイ株式会社

スマートシティ、ビッグデータ、ゼロエミッション車、再生可能エネルギーを推進するコンサルティング企業として、2015年に東京で設立。JCMやTCFDによるGHG排出量の開示勧告に基づき、東南アジアや南米で企業の省エネやエネルギー効率化に向けてコンサルティング事業を展開する。

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取材:2022年8月5日

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