株式会社木村桜士堂

私が15年ほど前に家業である木村桜士堂に入社した頃、国内事業に関しては経験豊富なスタッフもおり、安定して業務が回っていました。そのような状況の中で、上司がいないこの環境で自分が主体となり何か会社のためになることを見つけようと思案している時に、まだ取り組んだことのない海外展開というアイデアが浮かびました。ちょうどその頃に、知り合いの紹介で地元の支援団体が主催する海外展開に関する勉強会に参加することになります。その勉強会には、伝統産品を取り扱う、海外志向が強いメンバーが集まっており、大変刺激になりました。また、2005年にはその勉強会のメンバーがジェトロの支援を受けながら、NYギフトショーに出展しました。初めての展示会出展のため、準備不足により現地でのバイヤーからの細かな問い合わせに対応できなかったことなど、海外展開ならではの壁にぶつかりました。しかしながら、現地でバイヤーからのリアクションを見ることができたのは、大変良い経験となりました。

その後は、弊社単独でも海外展開に取り組みました。米国だけでなく、イタリアやフランス、中国に代理店を見つけるなど、欧州の主要な地域や中国へも販路を広げてきました。そうした中で、ジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」の専門家による支援を知りました。この支援を活用して、これまで挑戦したことが無い国であり、市場規模が見込めるロシアへ販路を広げるべく、応募しました。また、ロシア人観光客は弊社の和風人形などをお土産として買ってくれるという経験もあり、文化的に親和性があると考えておりました。担当していただいたジェトロの専門家には、その豊富な知見を生かして、これまで取引経験がないロシアでの代理店候補探しや市場調査から、現地視察の段取りや事前準備まで、大いに助けていただきました。知らない国での販路開拓はわからないことも多くありますが、そのような時にアドバイスや情報をもらえる専門家の存在はありがたかったです。

2019年度の専門家支援を活用したロシアでの取り組みでは、新しい代理店と取引が始まり、満足のいく結果になったと感じています。海外展開には時間や費用といったコストが必要となりますが、売り上げの拡大と収益源の多様化という点で自社の大きな強みになります。また、海外展開の経験がない企業にとっては不安なことも数多くあると思います。私も初めて展示会に出展した時から少しずつ経験を重ねてきました。その結果、海外からの問い合わせにも迅速かつ柔軟に対応することが可能となり、バイヤーからも信用を得られるようになりました。各社の取扱商品や取り巻く環境はそれぞれ異なりますので、最適な市場も千差万別だと思います。そのため、ネガティブな見方に振り回されるのではなく、自身の目で現地を見て可能性を探ることが大切です。また、困難にぶつかったときはジェトロのような支援機関のサポートを受けながら粘り強く試行錯誤していくことが、海外展開を進めるために重要なことではないかと思います。