株式会社桜顔酒造
パートナー支援により、ベトナムの市場開拓と輸出に成功

農林水産物・食品

社名の「桜顔」(さくらがお)は、”盃を重ねてほんのり桜色に赤らむ顔”に由来。日本最大の杜氏集団である「南部杜氏」の技で醸される清酒は、1600年に南部藩の御用商人が当時開発された樽仕込みの製法を用い、藩酒造の生産を始めたのが発祥とされる。その伝統の技を今に伝える桜顔酒造の南部杜氏「卓越技能士」猪川氏の技により生み出されている。

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特別純米酒五割五分 ベトナムへ輸出

将来の日本酒消費量減少を危惧、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムの支援を活用

昨今の日本酒は消費が落ち込んでいるほか、人口減少が続くなかで、早期に海外展開を進めていく必要性を実感していました。これまで、韓国・台湾を中心に輸出経験はありましたが、あえて輸出実績のない国に売り込みをかける方が市場を開拓しやすいのではと考えました。新規市場参入に向けての戦略を思案していたところ、輸出商社よりジェトロを紹介してもらいました。その後、海外の諸情報を収集し、輸出先国を検討するためジェトロ盛岡を訪問しました。

輸出について相談したところ、新輸出大国コンソーシアムのパートナーによるハンズオン支援の紹介を受けました。海外ビジネスに精通した専門家(パートナー)が、継続的な企業訪問・海外出張同行を通じて、海外展開の作成支援から海外販路開拓まで一貫で支援を受けることができるとの説明を受け、当社にとって大変有益な事業であると考えたことから申請し、2016年6月に採択されました。

米国や欧州への輸出は移動の時間やコストがかさむことからハードルは高いと考え、アジアへの輸出を目指しました。特に経済が活況なシンガポールに強い関心を持っていたため、パートナーの支援のもと調査を開始。ジェトロ・シンガポール事務所とテレビ会議の機会を設けてもらい、現地の状況を確認したところ、既に参入している日本酒メーカーは多く、マーケットは成熟しているとの情報が提供されたため、新規で販路を構築することは難しいことが分かりました。これらのアドバイスを受けて、輸出先の対象国を再度検討する必要性を感じました。

考えていなかったベトナムへの輸出を計画・実行、ついに成果を得る

パートナーとの検討の結果、当初目指していたシンガポールへの輸出は取りやめ、戦略を練り直すための調査を他の市場においても行いました。そこから、ベトナムは日本酒消費成長率、人口増加率、GDP成長率と魅力的な市場であり、後発であっても十分に戦えると判断し方向転換。また、ベトナムのホーチミン市場では、アルコールの消費量が多いことが分かり、新たに輸出戦略の策定に着手しました。市場参入に向けての仮説を立て、FS調査として実際にベトナムを訪問したことで仮説を検証し、様々な情報を得ることができました。例えば、日本で冷酒として飲まれているタイプでも、現地では温めて提供されていることが分かりました。また、飲食店のスタッフも、銘柄に合わせた最適な温度や料理との組み合わせといった、日本酒の扱い方や飲み方に関する知識も不足していることが分かりました。

現地調査の結果から、取引先候補となるベトナムの卸業者に対し、現地でのセールス拡大に向けた「日本酒セミナー」を提案しました。更に、当社日本酒の取り扱い可能な飲食店など、その従業員向けに酒の醸造法、種類、飲む適温や料理との合わせ方、試飲を含む「日本酒セミナー」として提案したところ好意的に受け止められ参加者を拡げて実現しました。


駐日ベトナム大使ご夫妻の桜顔酒造訪問

ベトナムでは「ホーチミン桜まつり」といった催しものがあり、現地でも「桜」は広く親しまれています。ブランド名「桜顔」も「桜」がつなぐ縁としてマッチしています。このネーミングやラベルのデザインは現地にも好感をもって受け入れられ、成功の大きな要因の一つとなりました。また、定期的に卸や飲食店を訪問するなど、良好な関係構築に努めたことで、継続的な受注につながりました。

このような取り組みが功を奏し、2017年秋に駐日ベトナム大使夫妻が桜顔酒造を訪問し、工場見学、意見交換の機会を得ました。また、当社社員も自社の商品が海外で販売されるようになったことで「グローバル企業」を意識するといったポジティブな変化が見えてきています。引き続き海外でのビジネスが継続できるよう、定期的に現地を訪問し、2017年度は輸出金額の倍増、3年後はより一層の輸出拡大を目標に海外展開を進めていきます。

ジェトロ活用のメリット

ジェトロサービスを利用することで、現地訪問前に、精度の高い調査レポートや現地のスタッフからの有益で率直なアドバイスを受けることができます。専門家であるパートナーからの助言のもと、戦略を策定することができ、現地調査や商談同行など、一貫した支援が受けられます。

ジェトロ 新輸出大国コンソーシアム パートナー 桑原賢二から

国によって文化、生活習慣が違うため、日本酒を提供するにしても様々なアプローチがあります。企業とベストなアプローチを心掛け、卸を巻き込んだ継続した訪問活動が功を奏しました。今後も一層の拡大が期待できます。

写真 ジェトロ 新輸出大国コンソーシアム パートナー 桑原 賢二

株式会社桜顔酒造 代表取締役 中井悦史

ご利用いただいたジェトロのサービス

  • 新輸出大国コンソーシアム
    日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開にご関心をお持ちの中堅・中小企業の皆様へワンストップの支援サービスを提供します。
  • 海外コーディネーターによる輸出支援相談サービス
    ジェトロが海外に配置する各分野の専門家(海外コーディネーター)が、海外ビジネス展開に関するお問い合わせに、現地の感覚・目線でお答えします。
  • 海外ブリーフィングサービス
    世界約70カ所の海外事務所にて、現地一般経済事情やビジネス環境について、海外駐在員や専門アドバイザーが情報提供を行います。

株式会社桜顔酒造

岩手県盛岡市川目町23番18号
Tel:019-622-6800
URL:http://sakuragao.com/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表者:代表取締役 中井 悦史

従業員:14名
資本金:9,000万円
事業内容:清酒の製造・販売
目的 :輸出
対象国・地域:ベトナム

2018年7月

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