企業名称の登記に新規定、禁止・制限事項が明確に

(中国)

中国北アジア課

2017年08月29日

国家工商行政管理総局(工商総局)は8月4日、企業名称登記管理改革の一環となる新たな規定を公表した。新規定では、企業名称を登記する際の禁止事項や制限事項のほか、どのような名称が同一あるいは類似していると判断されるのか明確になった。日系企業の名称に関する権益保護にも期待が寄せられる。

「大和」などは使用禁止と規定

中国では企業設立時、最初に管轄地の工商総局に企業名称を申請し仮許可を得る必要がある。工商総局は現在、将来的に企業名称の事前審査を不要とし、企業が名称をオンライン登記できるよう、企業名称登記に関する規定などを整備している。この一環として4月19日に公布された「登記効率の向上、企業名称登記管理改革の積極的な推進に関する意見」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを実施するため、8月4日に「企業名称禁止・制限規則」と「企業名称同一・類似比較対照規則」の2つの規定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが公表された。外資系企業においても「企業名称登記管理規定PDFファイル(0.0B)」や「企業名称登記管理実施弁法」をはじめ、今回新たに規定された内容を理解した上で企業名称を考慮することが求められる。

「企業名称禁止・制限規則」では、禁止事項として企業名に国や公共の利益に反する字句を含むこと(第5条)が規定されている。植民地文化の色彩を帯び、中国国民の感情を害するものも該当し、日本に関わる字句としては「大東亜」や「大和」などが含まれるため日系企業は特に注意を払う必要がある。

名称トラブルの解決手段にも

一方、企業名称に関する権益保護にも期待が寄せられる。「企業名称禁止・制限規則」の制限事項には、同一の登記主管機関で既に登記・登録されている企業名称や審査・承認された同業種の企業名称と類似してはならないこと(第15条)、企業名に別の企業の名称が含まれてはならないこと(第17条)、工商総局が認定した著名商標を同業種の企業名に使用してはならないこと(第27条)などが明示されている。例えば、他者が意図的に日系企業の名称や著名商標と同一ないし類似した企業名称を登録したとする。専門家によると、こうした消費者の誤認や混同を意図して利益を得ようとする場合や、それによって生じる信用低下など直接・間接的なトラブルが起きた場合には、「企業名称禁止・制限規則」とりわけ前述した条文を法的根拠に工商総局へ申し立てるなどの対処が可能になるという。

発音が同じであれば類似名称に

同時に公表された「企業名称同一・類似比較対照規則」では、企業名称が完全に一致しているもののみならず、行政区画や屋号、業種などが入れ替わったものも同一名称と見なす(第3条)としている。例えば、「北京紅光酒業発展有限公司」と「紅光(北京)酒業発展有限公司」は同一名称となる。さらに、同一あるいは同内容の業種表記である場合には、企業名称の漢字が異なっていたとしてもピンイン読み(中国語の発音)が同じであれば類似名称と見なす(第4条)としており、例えば「北京牛欄山酒業有限公司」「北京牛蘭山酒業有限公司」「北京牛藍白酒有限公司」は、「欄」「蘭」「藍」がいずれも「lan」と発音されることなどから類似名称となる。

企業名称登記に関する大きな改革の1つに、2016年10月18日に公布された「工商総局による企業名称データベースを開放し企業名称登記管理改革の秩序ある推進に関する指導意見」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがある。これまで企業名称の照会は管轄地の登記主管機関へ出向かなくてはならなかったが、今後は公式ウェブサイトなどを通じて企業自ら照会が可能となるほか、企業名称として使用禁止または制限される字句のデータベース構築も開始されるなど効率化が図られている。

(田中琳大郎、清水絵里子)

(中国)

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