北京市、2017年の賃上げ基準ラインを8.5%に設定

(中国)

北京発

2017年07月06日

北京市政府は6月26日、2017年の賃金ガイドラインを公表した。賃金上昇率の基準ラインを8.5%、上限を14%、下限を4%と定めた。基準ラインは前年より0.5ポイント低く、2014年の12%から3年連続で低下している。

基準ラインは3年連続で低下

北京市人力資源・社会保障局は収入分配政策と北京市の2017年経済見通しに基づき、2017年の賃上げ基準ラインを8.5%、上限を14%、下限を4%と定めた。基準ラインは前年より0.5ポイント、上限ラインは1.0ポイントそれぞれ下げられた。下限ラインは据え置かれた。基準ラインは2014年の12%から3年連続で、上限ラインは2015年の16%から2年連続で低下している(図参照)。

図 北京市の賃上げガイドラインの推移

同ガイドラインでは、企業に対して自社の利益や人件費を考慮しつつ、賃金ガイドライン、労働市場における職種別賃金、業種別の人件費などを参照しながら、以下のように賃金を引き上げるよう求めている。なお、ガイドラインは企業に対して賃金のベースアップ基準を示すもので、強制力はないが、労使交渉の目安となる。

(1)経営状況が正常で利益が伸びている企業は、自社の状況を考慮しつつ、基準ラインを参照しながら賃金上昇率を定めることができる。

(2)2015年、2016年の利益の増加幅が比較的大きく、2017年も引き続き高水準の増益が見込まれる企業であっても、原則として賃金上昇率が上限ラインを上回ってはならない。

(3)利益が横ばい、もしくは減少している企業は、自社の経営状況に合わせ下限ラインを参考に賃金上昇率を定めることができる。経営が赤字で従業員への賃金支払いが困難な企業は、工会(労働組合)あるいは従業員代表との協議により、賃金を据え置くことができる。しかし、北京市の最低賃金基準を下回ってはならない。

北京市で公共サービスを担う企業、国家財政の補助を受ける国有企業、および国有持ち株企業は、賃金上昇率が基準ラインを上回ってはならない。また、北京市に属する競争力のある国有企業と国有持ち株企業は、賃金上昇率が上限ラインを上回ってはならないとされている。国有企業や国有持ち株会社が上限ラインを超えて賃上げを行う場合、以下の幾つかの条件を満たし、かつ北京市国有資産監督管理委員会、北京市国有文化資産監督管理弁公室または企業の上級主管部門の審査・批准(許可)を得た後、2018年1月までに市の人力資源・社会保障行政部門に届け出を行うことを求めている。

(1)前年の従業員平均賃金が市の平均賃金の60%を下回る。

(2)2017年の企業利益が明らかに増加するとみられる。

(3)企業の人件費、労働生産性指標が同業の中で良好な水準にある。

(4)国有資本に課される指標を達成している。

審査・批准部門は以上の原則に基づき、上述企業の申請を審査する。直近2年の従業員平均賃金の増加幅が大きい企業については、当局は市の関連する部門と監督管理を強化する。

このほか、企業は合理的に企業内部の報酬体系を確定させ、不合理な所得分配格差を取り除き、積極的に賃金に関する集団協議を行い、賃金水準が低く賃金増加が緩やかな一般従業員、特にワーカーおよび技能工の賃金水準を高めることに力を注ぐべきだとしている。また、市の国有企業と国有持ち株企業における前述のような一般従業員の賃金上昇率は、経営者と管理職よりも高く設定すべきで、一般従業員の賃金が増加していない企業は、経営者と管理職の賃金を増加させてはならないとしている。

業種別人件費は依然として金融業が最高

北京市人力資源・社会保障局は賃金ガイドラインと併せ、2016年の業種別人件費も発表した。それによると、依然として金融業の人件費が最も高く、年間33万6,998元(約573万円、1元=約17円)で、2015年の前年比2.9%減から11.3%増に転じた。次いで科学研究・技術サービス業が20万8,166元、情報発信・ソフトウエア・情報技術サービス業が18万9,098元と続いており、前年比ではそれぞれ1.0%減、4.1%減となった。2015年と比べて上位3位に変動はなかった。

一方、2016年に最も人件費が低かったのは、前年と同じくリース・ビジネスサービス業の9万6,876元だったが、前年比では37.4%の大幅増となった。リース・ビジネスサービス業と住民サービス・修理・その他サービス業(9万9,782元)を除く各業種は全て人件費が10万元を超えた。

詳細は北京市人力資源・社会保障局ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで閲覧できる。

(張敏)

(中国)

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