解雇通知後5営業日以内の報告を2017年から義務化-6ヵ月間で5人以上解雇の場合-
(シンガポール)
シンガポール発
2016年12月07日
人材省は2017年1月1日から、10人以上を雇用する雇用主に対し、6ヵ月間で計5人以上を解雇する場合には、解雇通知から5営業日内に同省へ報告することを義務付ける。期限内の報告を怠ると、最高5,000シンガポール・ドル(約40万円、Sドル、1Sドル=約80円)の罰金が科される可能性がある。景気低迷に伴い、同国の雇用を取り巻く環境は悪化しており、解雇について迅速な報告を義務付けることで、被解雇者への支援を速やかに実行できるようにするのが狙いだ。
<10人以上の雇用主が対象に>
人材省の発表(11月25日)によると、10人以上を雇用する雇用主は2017年1月1日から、6ヵ月間で計5人以上を解雇する際、解雇通知から5営業日以内に同省への報告が義務付けられる(6ヵ月以内に解雇者数が5人目に達した時点で、報告義務が発生)。5営業日以内に報告を怠った場合には、最高5,000Sドルの罰金を含む罰則が適用される可能性がある。
同省への通知義務の対象となる労働者は、国民だけでなく、外国人(永住権者を含む)も含まれる。また、正社員だけでなく、6ヵ月以上のパートタイム労働者も報告義務の対象となる。報告の内容は、(1)個別企業登録番号(UEN)と企業の担当者名、(2)解雇前の社員数、(3)解雇者の詳細(ID番号、国民、永住権者または就労ビザ取得の有無、解雇日、職種)だ。なお、同省への解雇報告の書式は同省のウェブサイトからダウンロードできる。
<2016年通年の解雇者数は前年を上回る見通し>
同国の雇用環境は2016年に入り、景気の低迷に伴い徐々に悪化している(2016年10月17日記事参照)。同省の2016年第3四半期(7~9月)雇用統計速報値(10月27日発表)によると、第1~3四半期の解雇者数は合計1万1,890人と、前年同期比で38.3%増加した。リム・スイセイ人材相は11月7日の国会答弁で、「企業のリストラと、経済成長の減速により、2016年通年の解雇者数が2015年(1万3,450人)を上回る見通しだ」と述べた。
同省は今回の解雇報告の義務化について、「ワークフォース・シンガポール〔WSG、旧労働開発庁(WDA)〕と、責任ある解雇・雇用促進のためのタスクフォース(注)が、被解雇者に対して再就職先のあっせんと、再雇用のために適正な訓練を提供できるようにする」のが狙いだと説明している。
(注)「責任ある解雇・雇用促進のためのタスクフォース(Taskforce for Responsible Retrenchment and Employment Facilitation)」は、景気悪化と経済リストラによって解雇された人の再就職支援のために2016年3月、人材省、WSG、全国労働組合会議(NTUC)など政労機関によって設立された組織。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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